日本に突きつけられる現実、「核の傘」は開かない
核戦力の弱体化に危機感を抱く米国、核戦略を抜本的に転換
北村淳
2018.3.22(木) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52638
訪問先のチャドの首都ヌジャメナで演説するレックス・ティラーソン米国務長官。3月13日に国務長官を電撃解任された(2018年3月12日撮影)。(c)AFP
PHOTO / POOL / JONATHAN ERNST〔AFPBB News〕
ティラーソン国務長官が更迭された。そして、国家安全保障担当大統領補佐ハーバート・マクマスター陸軍中将も「トランプ政権内で“宙ぶらりん状態”が続くのではないのか」あるいは「やがてはティラーソン長官のように更迭されるのではないのか」といった微妙な立場におかれている。要するに、トランプ政権誕生後のわずか14カ月程度の間に、トランプ大統領の外交国防政策を支える3本柱のうち盤石なのは国防長官マティス海兵隊退役大将だけとなってしまった。
昨年(2017年)末にホワイトハウスは「安全保障戦略」を公表した。また、ペンタゴンは2018年1月に「国防戦略概要」を、2月には「NPR(核戦略見直し)-2018」を公表している。これらの安全保障戦略、とりわけNPR-2018によって、外交国防の舵取りをする首脳人事が大幅にテコ入れされているのは避けられない流れといえる。
なぜならば、NPR-2018によって明示されたトランプ大統領の核戦略は、これまで半世紀にわたって歴代アメリカ政権が維持し続けてきていた基本的方針を抜本的に(180度)転換するものであるからだ。
米政府の伝統的核戦略は「核戦力削減」
アメリカ歴代政権の核戦略の基本方針は、共和党政権・民主党政権を問わず、「核戦力削減」方針であった。米ソ冷戦の先鋭化に伴い躍起となって核戦力を強化し続けたために「over-kill」状態になってしまった。それに加えて財政的にも逼迫してきたため、ニクソン大統領は核戦力を削減する方針を打ち出した。それ以降、歴代アメリカ政権は核戦力削減を核戦略の基本方針として踏襲し続けていた。
実際にニクソン大統領からブッシュ(父)大統領の時期に至るまでに、ほぼ半数の核弾頭が廃棄され、クリントン政権下では20%、ブッシュ(子)大統領は50%、そしてオバマ大統領時代には24%の核弾頭が削減された。歴代政権による核戦力削減の結果、アメリカの核弾頭保有数は現在6800~7000発レベルに減少した。ちなみにロシアは7000~7290発、保有数第3位のフランスは300発、中国260~270発、イギリス215発となっている。それら国連安保理常任国かつNPT(核拡散防止条約)加盟国以外の核弾頭保有状況は、パキスタン130発、インド120発、イスラエル80発、北朝鮮数発(未確認)である。
アメリカ統合参謀本部をはじめ米軍の核戦略関係者たちの多くは、「たとえ米軍が現在保有している核戦力の3分の1を削減したとしても、中国、ロシア、北朝鮮、イランの核を念頭に置いた軍事作戦を完遂させることが十二分に可能である」と分析している。核戦力とは核弾頭の数量だけではなくそれらの性能や核弾頭を攻撃目標に送り込むミサイルや航空機それに潜水艦などの総合力で判断しなければならない。よって、ロシアのほうが若干弾頭数は多いかもしれないものの、性能などをトータルで考えると米軍核戦力は群を抜いて世界最強であるというわけだ。
アメリカの核戦略実施の最高責任者であるアメリカ戦略軍司令官ジョン・ハイトン空軍大将も「アメリカ軍の核戦力は多種多様な事態に適応できる満足な状態にある」と太鼓判を押している。
核戦力至上主義派の台頭
以上のように、これまで長きにわたってアメリカ政府は核戦力削減を基本戦略としてきた。ホワイトハウスの方針を尊重するペンタゴンも核戦略削減を大前提として各種戦略を策定し、各種戦力を構築し、各種訓練を実施してきたのである。そして、軍関係者たちの主流も、核戦力削減戦略を受け入れてきた。
ところがトランプ大統領は、アメリカの伝統的な核戦力削減方針を受け入れようとはしなかった。「アメリカの核戦力は極めて弱体化してしまっており、抑止効果を失いつつある」と考えているトランプ大統領は、かねてより「たった7000発の核戦力では不十分である」として核戦力増強を唱道し続けてきたケイス・パイン(Keith
Payne)博士を筆頭とする「核戦力至上主義派」に「NPR-2018」を執筆させたのだ。
"Dr.
Strangelove" (映画「博士の異常な愛情」に登場する兵器開発の科学者)の異名をとるパイン博士らは、「核戦力増強によりロシアや中国といった核保有国をはじめとする敵対勢力を威圧して、アメリカの覇権を維持する」という戦略を唱えていた。これまで数十年にわたって、その戦略が採用されることはなかった。歴代アメリカ政権の核戦略は「核戦力削減」であった以上、当然といえよう。
ところが、伝統的核戦略から決別しようとしているトランプ大統領の登場により、アメリカの核戦略は「核戦力削減」から「核戦力増強」へと180度変針させられたというわけだ。
「異常な事態」に突入した核環境
トランプ政権が「核戦力削減」から「核戦力増強」へと核戦略の根本原則を180度変針した直接の原因は、北朝鮮によるアメリカ本土を直接攻撃可能な核弾頭搭載長距離弾道ミサイル開発が米側の予想以上のスピードで伸展してしまい、実戦配備も間近に迫っているという情勢であることはいうまでもない。
北朝鮮が核弾頭搭載長距離弾道ミサイルを実戦配備につかせた場合、アメリカ本土を直接核攻撃できる敵対勢力が2カ国(中国・ロシア)から3カ国(中国・ロシア・北朝鮮)になってしまう。さらには、イランやリビアやパキスタンなどアメリカがいうところの“ならず者国家”やテロリスト集団に核弾道ミサイルをはじめとする核兵器が拡散してしまう恐れがますます高まることになる。
要するに、トランプ政権は、北朝鮮によるICBM開発状況がアメリカの安全保障環境(とりわけ核環境)を根本的に転換させるだけの「異常な事態」とみなしているのだ。そして、そのような核環境の危機に対応させるべく核戦力至上主義派の主張に沿った核戦略の大転換を打ち出したのである。
日本にとっては「異常な事態」ではないのか?
トランプ政権が核戦力増強方針に踏み切ったのは、「アメリカの核戦力は極めて弱体化してしまっており、抑止効果を失いつつある」と判断した結果である。これは日本にとって深刻な事態を意味する。つまり、日本政府が信頼し続けてきた(本心かどうかは定かではないが)、そして全面的に頼り切っている、アメリカの「核の傘」が「いざというときには開かない」可能性が低くはないことをトランプ政権が暗に認めているということになるのだ。それにもかかわらず、日本側の反応にはまったく危機感がみられない。日本政府高官などが「トランプ政権の新核戦略を高く評価する」と持ち上げているだけでなく、少なからぬ軍事専門家たちも「米国の核の傘に頼っている我が日本としては、アメリカが強力な核戦略を打ち出したことを大いに歓迎する」といったメッセージをアメリカ側に伝達したりしている。
日本政府や国会は、日本を取り巻く核環境をはじめとする安全保障環境が「異常な事態」に突入しているとの認識を欠いているのであろうか?
それとも、日本を取り巻く核環境が「異常な事態」に突入したことを認めた場合、日本政府や国会としては日本自身の核戦略に関する真剣な再検討、たとえばNPT(核拡散防止条約)からの脱退に関する議論などを開始せざるを得なくなるため、そのような面倒を回避しようとしているのであろうか?
いずれにしても、日本政府や国会には、「アメリカの『核の傘』というレトリックを全面的に受け入れ、それに対して疑いを持たない」といった日本の核戦略の基本方針を見直そうという意思も勇気も存在していないことだけは明らかなようである。
〈管理人より〉政府の安全保障政策、国家防衛戦略が無策という事態ほど怖いことはないでしょう。我が国は、「核の傘」の前に他国の国際関係の上でも「先手」にインフォメーションを評価、分析しインテリジェンスを生成できる能力の充実、細心のインテリジェンスに基づいて国家戦略を構築できる体制を早急に充実させるべきでしょう。
これがアメリカの核戦略だ!
米国が核戦略を見直しへ
【どうなるか!?米朝関係】
北朝鮮、対話姿勢は制裁のせいでないと主張
BBC News
2018年3月21日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12289
北朝鮮の国営・朝鮮中央通信(KCNA)は2018年3月20日の論説記事で、米国や韓国との交渉の席に着くのは制裁による圧力によるものではなく、「自信」があるためだと述べた。
3月初めに訪朝した後、米国でドナルド・トランプ米大統領と面会した韓国の特使団は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長からの首脳会談の提案をトランプ氏が受諾したと発表している。しかし、首脳会談の場所など詳細は明らかになっていない。KCNAの論説は、米朝首脳会談に直接言及せず、「平和を愛する提案」が米国との関係に「変化の兆し」が生まれるきっかけになったと述べた。
北朝鮮が対米政策の変化について触れるのは、首脳会談の可能性が明らかになって以来、初めてのこと。論説記事には、「DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)の対話・平和攻勢は、望んでいたことがすべて手に入り、自信を得たことの表れだ」と書かれている。
さらに、「制裁や圧力の結果」、交渉の席に着いたというのは「ばかげている」とし、「雰囲気をぶち壊そうとするくずども(中略)の度量の狭さの表れだ」と主張した。
米朝首脳会談の可能性は、訪米した韓国特使団が今月8日に明らかにした。金委員長は、首脳会談の提案のほか、非核化への「強い決意」を表明したという。トランプ氏は首脳会談の提案を受け入れたが、北朝鮮指導部からの反応は、それ以降出ていない。米国と北朝鮮は過去約1年間にわたり、双方を激しく非難し武力行使の可能性をちらつかせてきた。
金委員長と来月会談する予定の韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は3月21日、米韓に北朝鮮を加えた3カ国の首脳会談が開かれる可能性を示唆した。文大統領は、「北朝鮮と米国の首脳会談そのものが歴史的だ。(中略)成り行きにもよるが、韓国と北朝鮮、米国3カ国の首脳会談につながる可能性がある」と述べた。
韓国・平昌で先月開かれた冬季五輪は、開会式で南北の選手団が一つの旗の下で入場行進するなど、両国関係の緊張緩和が進むきっかけとなった。
韓国と米国は毎年恒例の合同軍事演習を五輪終了後まで延期しており、南北対話の環境整備に役立ったとされる。
合同軍事演習は来月1日に開始される予定。
米朝首脳会談で金正恩氏が「最後の大勝負」に出る可能性
北朝鮮の対話攻勢は周到に準備されたもの
礒﨑敦仁 (慶應義塾大学准教授)
澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長)
澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長)
2018年3月22日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12277
北朝鮮の金正恩国務委員長が米韓両国に対話攻勢をかけている。韓国の文在寅大統領とは4月末、米国のトランプ大統領とは5月までに会談が開かれると発表された。ティラーソン国務長官の解任などトランプ政権の安定性に不安が持たれるものの、戦争の危機が語られた一時の危機感は遠のいた。この流れが北朝鮮核問題の平和的解決につながるのであれば、それは歓迎されるべきことである。
ただし、「経済制裁を受けて苦しくなった北朝鮮が対話を求めてきた」というような単純な見方をしていると情勢判断を誤る。
北朝鮮に対する経済制裁は核開発の進展を受けて一昨年(2016年)から格段と厳しいものになった。それ以前は核・ミサイル開発に関連する個人や団体を個別に対象としていたが、同年からは外貨収入源を直撃し、人々の生活にも影響を及ぼしうるような制裁に変わった。それだけに北朝鮮に一定の「痛み」を与えていることは確実だ。毎年元日に発表する「新年の辞」で、金委員長が昨年から制裁に言及するようになったことがそれを物語る。「制裁」という言葉は昨年2回、今年は3回使われた。
しかし、それにもかかわらず核・ミサイル開発は進められ、北朝鮮は昨年11月29日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」発射を受けて、「核武力完成」を表明する政府声明を発表した。核抑止力を確保したという「勝利」宣言であり、それまでに北朝鮮の行動を止められなかったことからも制裁が決定打になりえなかったのは明らかだ。
「核武力完成」の自信が背景に
今回の対話局面は、金委員長が今年の「新年の辞」で平昌冬季五輪への参加を表明したことに始まっているように見える。だが実際には、金委員長が2013年3月に打ち出した「経済建設と核武力建設の並進路線」という中長期的な戦略に基づいたものだと考えられる。
「並進路線」は、経済建設と核開発を同時に進めるというものではない。まずは核開発を急ぎ、核抑止力を確保する。そうすれば米国から攻撃を受けることもなくなるから経済建設に集中できるようになる。そういった段階論的な考え方だ。
昨年11月の「核武力完成」という政府声明は、とりあえず抑止力の確保にめどをつけたという政治的判断の反映だろう。核を保有して「戦略的地位が向上した」という自信を持ったからこそ対話に出てきたという構図になる。
北朝鮮が何を重視しているかのバロメーターとなる金委員長の「現地指導(視察)」を見ても、6回目の核実験を行った後の昨年9月下旬からは軍部隊への現地指導がぱたりと止み、農場や工場への現地指導に集中するようになった。これからは経済建設を重視したいという考えが明確に出ていたということだ。
北朝鮮では制裁に負けない経済建設を目指すということで「自力更生」「自給自足」「自強力」といった用語が多用される。ここ数年は実際にかなり高い成長率を記録したと見られているが、やはり制裁を受けたままでの経済成長には限界がある。そこで経済制裁解除への道筋をつけるため、米韓両国への対話攻勢に出てきたようだ。
経済面では韓国との経済協力を必要とするが、その前提となる制裁の解除や緩和には米国から理解を得る必要がある。それに米国からは体制の安全の保証を取り付ける必要もある。南北関係と米朝関係は経済と非核化という別々の課題を掲げながら、密接にリンクしているのである。
予定通りに進んだ核・ミサイル開発
2016年夏に韓国へ亡命した北朝鮮の元駐英公使、太永浩氏が同年末に韓国国会や記者会見で行った証言も興味深いものだ。太氏の証言はおおむね以下のようなものだった。
北朝鮮は2017年末までに核開発を終える計画を立てており、それまでに追加核実験を行う。それに対応できるよう準備しておくようにという指示が平壌の外務省から在外公館に来ていた。これは、2016年5月の朝鮮労働党大会で金委員長が打ち出した方針で、米国の大統領選(2016年11月)と韓国の大統領選(朴槿恵前大統領の罷免がなければ2017年12月だった)の期間に核開発を進めてしまい、米韓の新政権を相手に有利な立場で交渉を始めようという計算だ。
脱北者の証言には誇張されたものが少なくない。太氏がこの後に行った証言の中にも、他の証言と突き合わせると疑問を抱かざるをえないものがある。この証言に対しても「核実験の予定などという機密情報をわざわざ在外公館に事前に教えるだろうか」という疑念が持たれ、ニュースで取り上げられはしたものの大きな扱いにはならなかった。
だが現時点で改めて検討すると、この証言に対する評価は変わってくる。
北朝鮮は2016年1月に4回目の核実験を強行し、「核抑止力を質量ともに絶えず強化していく」という政府声明を発表した。これを契機に北朝鮮は核・ミサイル開発の速度を急速に上げた。同年9月に5回目、一年後の昨年9月に6回目の核実験を強行した。ミサイル発射も、防衛省によると2016年に15回23発、昨年は14回17発に上った。昨年最後のミサイル発射となったのが11月29日のICBM「火星15」であり、北朝鮮はこの時に「核武力完成」という政府声明を出した。
2016年1月の政府声明で開発加速を宣言し、2017年11月の政府声明で完成を宣言したということだ。太氏の証言は、この方針が2016年5月の党大会で明らかにされ、それに従った在外公館への指示を亡命直前に読んだということになる。
核開発と並行して交渉の体制を整備
北朝鮮は並行して外交交渉のための準備を進めた。
2017年4月の最高人民会議(国会に相当)では19年ぶりに外交委員会が復活した。委員長に起用されたのは、党の国際部門を統括する李洙墉(リ・スヨン)党副委員長だ。委員には、1990年代から対米交渉に携わってきた金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官や対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソングォン)委員長らが入った。
李善権氏は平昌五輪開会式の際、金委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏とともに韓国を訪問。青瓦台(韓国大統領府)での文大統領との会談にも同席している。
さらに10月の党人事では李容浩(リ・ヨンホ)外相が政治局員に昇格し、与正氏も政治局候補委員に抜てきされた。今年に入ってからは、金次官とともに対米交渉を担当してきた崔善姫(チェ・ソニ)北米局長の次官昇格が判明した。崔氏はこの間も米政府の元当局者らと接触を続けてきた人物だ。
米韓との交渉担当者を重用する一連の人事は、外交交渉の本格化に備えたものであろう。与正氏は平昌五輪の際に金委員長の特使という役目を担ったが、与正氏を対外交渉でのキーパーソンとして活用する方針も昨年のうちから決まっていたのかもしれない。
太氏の証言と外交重視の人事を合わせて考えれば、今回の対話局面はすでに一昨年から計画されていたと見ることができる。さらに、より大きな構図で見れば5年前に「並進路線」が打ち出された時から方向性は決まっていたのではないか。決して「苦し紛れ」で対話に出てきたわけではなさそうだ。
北朝鮮の非核化に関する約束は新味なし
韓国と北朝鮮が首脳会談開催に合意した際の内容を見ても、非核化に関する北朝鮮側の主張に大きな変化があったわけではない。むしろ今回の変化は、別の部分にある。
北朝鮮の側では、これまで非核化の問題では完全に無視してきた韓国に米国との仲介役を担わせた点だ。金委員長は今回、朝鮮半島問題の当事者として「運転席」に座りたいと語ってきた文在寅政権に花を持たせた。対話の重要性を一貫して訴え、金委員長の面子をつぶさないようにしてきた文政権を厚遇することで、米国や日本に対話の重要性を示したことになる。一方で中国に対しては、朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて名指し批判したり、最近では「大国主義」だという強い批判をしたりと反発を強めている。
米国側の変化も大きい。北朝鮮が表明した「具体的な措置」と呼べるものは、核実験やミサイル発射の一時凍結程度にすぎない。それにもかかわらずトランプ大統領がいきなり首脳会談に応じたことは、北朝鮮にとっても驚きだったはずだ。
ただ北朝鮮としては、「ディール(取引)」を好むトランプ大統領の性格を分析し尽くし、ある程度の勝算を見込んでいるのは間違いない。核を保有してこそ米国と対等に取引できると考えてきた北朝鮮にとって、まさにそうした状況が成り立ちつつあるといえるのだろう。
対話の先にある「米朝衝突」、最悪のシナリオから目を背けるな
米朝開戦前夜 「対話」の先に解はなし
香田洋二
(ジャパンマリンユナイテッド顧問 元自衛艦隊司令官)
2018年3月23日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12278
過去最大の経済制裁でも北朝鮮が非核化に応じなければ「手荒な第2段階」の圧力を予告したトランプ大統領
■米朝開戦前夜 「対話」の先に解はなし
文、インタビュー・香田洋二、鐸木昌之、ヤング・C・キム、平野 聡
PART 1 対話の先にある「米朝衝突」 最悪のシナリオから目を背けるな
PART 2 北朝鮮が米国にぶつける3枚の「核カード」
CHRONOLOGY 年表・北朝鮮の暴走を許した25年間
PART 3 INTERVIEW 「非核化」めぐる米朝の埋まらぬ溝 南北融和で冷める米韓関係
PART4 適度な危機を望む中国「善意の仲介者」という虚像
文、インタビュー・香田洋二、鐸木昌之、ヤング・C・キム、平野 聡
PART 1 対話の先にある「米朝衝突」 最悪のシナリオから目を背けるな
PART 2 北朝鮮が米国にぶつける3枚の「核カード」
CHRONOLOGY 年表・北朝鮮の暴走を許した25年間
PART 3 INTERVIEW 「非核化」めぐる米朝の埋まらぬ溝 南北融和で冷める米韓関係
PART4 適度な危機を望む中国「善意の仲介者」という虚像
平昌五輪中は延期された米韓合同軍事演習だが、米軍は2018年3月18日のパラリンピック閉会以降に実施を宣言している。
北朝鮮の核攻撃能力は、近年その技術水準が確実に上昇している。2月8日に北朝鮮が実施した軍事パレードでは、その自信の表れが見えた。最新鋭のICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星15型」などが華々しく披露され、昨年4月に実施された金日成主席生誕105年パレードと比較し、質的にも明らかに上回っていた。これまで短・中距離ミサイルについて多くの種類を保持し過剰感があったが、最近は射程距離ごとに機種を絞り合理化している。
現時点では、「火星12型」が通常の弾道ミサイルより角度を上げて宇宙空間まで飛ばすロフテッド軌道での打ち上げに成功し、昨年9月の通常発射で約3700キロの水平飛行ができたことから、そのミサイル部分の戦力化は完成したと見ていいものの、核弾頭部分が未完成である。
一方、「火星14型・15型」については、核弾頭は完成したとしているものの、ミサイルの戦力化が完成しておらず、ロフテッド軌道における発射にとどまっている。どちらも完成まで課題を残しているが、実戦配備に向けた開発の時間稼ぎをしているといえるだろう。
そんななか、3月上旬、北朝鮮は突如米国・韓国との首脳会談実施を表明した。米国は南北融和・対米対話姿勢と核実験不実施方針を歓迎しつつも、非核化までは最大限の圧力を維持する構えを崩していない。特に、後述の通り過去何度も北朝鮮の「ちゃぶ台返し」によって植え付けられた不信感は拭い難く、現時点では明るい兆しも見えるとはいえ互いの牽制(けんせい)が続いている。
金正恩委員長は体制の維持を国家目標にしており、そのためには現体制の保証を米国に認めさせなければならない。米国と対等に交渉するには、核に加え、米国本土を射程に収めたという交渉カードが不可欠だと考えている。
前述のとおりICBMの技術を確立させるためには水平発射の実験が欠かせない。しかし、昨年8月に北朝鮮が4発の中距離弾道ミサイルをグアムに向けて発射する計画を聞いたトランプが、「世界で誰も目にしたことのない炎と怒りに直面することになる」と発言し、北朝鮮は態度を硬化させた。そのため、いまだ2発の発射にとどまっている(襟裳岬沖着弾)ように、金正恩が躊躇(ちゅうちょ)しているのは間違いない。ICBMを水平方向に試射できる海域は限られており、米国本土近海に撃ち込めば米国に反撃される恐れがあり、北朝鮮はジレンマに陥っているはずだ。
そこで北朝鮮はミサイル実験の口実を得るために五輪を利用した。つまり、北朝鮮は平昌五輪に選手団等を派遣することで世界へ融和姿勢を示し、米韓との首脳会談も要請して直接対話の意思を示した。米韓合同軍事演習の実施にも態度を急変させ「理解」を示しているが、受け入れたわけではない。「米韓合同軍事演習が強行され善意が踏みにじられた」として、ミサイル実験をする可能性もある。相手側に擦り寄ったと見せて、自らの論理で反攻する、まるで「トロイの木馬」を想起させる。
一方米国も、北朝鮮が早ければあと2、3カ月でICBMを完成させると見ている。国家の安全を脅かすICBMを放棄させ、北朝鮮の核拡散のリスクに終止符を打つため強い威嚇・牽制を続けており、北朝鮮が完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄を実施することが対話の条件としている。
冷静に向き合うべき暴発の「シナリオ」
米国に「核保有国」として認めさせたい北朝鮮と、北朝鮮の「非核化」を絶対に譲らない米国という相容れない構図に、米国の国家安全保障に直結するICBMの完成が迫っているこの状況は、いつ軍事衝突が起こってもおかしくはない。
それでは、米朝開戦の条件は何か。米国はいつ攻撃を仕掛けるのか。そこに明確な「レッドライン」は存在せず、対話の決裂や核実験などの個別事象とも必ずしもリンクしない。米国が自国に対する脅威を認識したのち、最も攻撃が機能すると判断したタイミングが開戦の時だ。
第一次朝鮮核危機時は極東地域の問題でもあり、同盟国である韓国の反発と嘆願によって米国は攻撃を思いとどまった。しかし今回は、同盟国が反対しようとも米国は個別的自衛権を発動して北朝鮮を単独で攻撃するだろう。
では、米国の攻撃にはどういう選択肢があるだろうか。北朝鮮の核関連施設だけを限定的に先制攻撃する「ブラッディ・ノーズ作戦」、いわゆる〝鼻血作戦〟が一部で報道されているが、軍事的にいえば非常識な作戦だ。相手の反撃能力を残すことによって返り討ちにあう可能性を高めるだけである。相手の軍事能力を徹底的に叩き、反撃をさせない「ノックアウト作戦」以外に効果はない。同様に、金正恩の暗殺だけを企図する〝斬首作戦〟も、北朝鮮の体制転覆が狙いではない米国がその作戦を実行する可能性は低い。
なぜなら米軍の攻撃は、〝衝撃と畏怖(いふ)〟が特徴であるからだ。誰もがやらないと思うタイミングで、空からの総攻撃を仕掛ける可能性が高い。民間人を事前に退避させれば、北朝鮮に気づかれ逆に攻撃を受けるリスクが増大する。一部報道では、韓国で200万人以上が犠牲となるという予測もあるが、それは地上戦を前提とした仮定である。
直近3回の戦争で、米軍は奇襲攻撃により相手の戦闘能力をほぼ無力化することを成功させている。今回も、既に米軍は衛星等を動員した情報戦で北朝鮮のミサイル配置箇所や地下施設の出入り口等の位置を掴んでおり、北朝鮮の指揮命令系統を麻痺(まひ)させた上で一気に叩くことができる。そのため初動で北朝鮮の反撃能力の9割を無力化することが可能である。
もっとも、開戦後に中国と衝突する最悪のケースを避けたい米国は「4つのNO」(①北朝鮮の体制変更を求めない②金正恩体制を崩壊させない③38度線を越え北進しない④南北統一を急がない)を表明していることからも、中国に対して事前の申し合わせをすることは考えられる。米軍地上軍が38度線越えの北進をしないため、中国軍は米軍事作戦に介入できない。
トランプが許さない25年間の「食い逃げ外交」
これまで北朝鮮は、核やミサイル開発などの強硬的な姿勢を示し、その後開発停止に合意することで制裁解除とエネルギーや食糧支援を受けると、約束を実質的に反故(ほご)にする、いわば「食い逃げ外交」を実施してきた。
トランプ大統領は、四半世紀にわたり弱腰姿勢であった過去の大統領と同じ轍(てつ)は踏めぬと考え、実質的な放置の時代から軍事力も辞さないという転換を図っている。したがって、開戦を避けるために「米国が北朝鮮の核兵器保有を許容し管理する」シナリオは許さない。世界中への核拡散許容を意味するからだ。
2017年末の米韓合同軍事演習は過去最大規(写真・YONHAP
NEWS/AFLO)
世界には中東を中心に核兵器の所持を欲する国家が多く存在する。例えばサウジアラビアは、自ら核開発する力を持たない。そこで北朝鮮が自国での開発を「許された」核ミサイルを売り込むだろう。米国はじめ他国がそれを止めれば、北朝鮮は自国への介入だとして、核による反撃で恫喝(どうかつ)し、結果として白昼堂々核と弾道弾を世界中に輸出することができる。北朝鮮一国を「許容する」ことで、国連の制裁などこれまでの各国の努力が骨抜きになる格好だ。これは米国に対してだけでなく、全ての人類に対する大量破壊兵器の脅威への挑戦なのである。
米朝関係の緊張のなか、日本は自国の領土を守ることを最優先にすべきである。それにより米軍は攻撃に特化できることから、米国にとって日本は最も付加価値の高い同盟相手である。日本の存在が、米国の世界戦略にとって最大の国益となっており、これが北朝鮮への軍事力行使に関する決断のカギとなる。日本にとっては、その際に米国を明確に支持できるかどうかが問われる。目前の危機に対して準備せねばならないが、日本国内の現状は危機感が乏しい。
日本にとって最悪のシナリオは、米国が北朝鮮対応や国際社会からの罵詈雑言(ばりぞうごん)に疲れ、本件への興味をなくし、北朝鮮が核保有国になることだ。日米同盟を機軸に、考えられる「全ての可能性」について検討し、より具体的で実効性のある態勢を構築する覚悟が求められる。(2018年3月9日時点の報道などに基づき執筆)
「常識」超えるリーダー同士の対決
今回の対話局面が北朝鮮の思惑通りの展開で運んでいるとしても、それは北朝鮮の一方的な勝利を意味するものではない。現在の北朝鮮の目標は、韓国に侵攻しての武力統一ではなく、核保有を単に誇示することでもない。北朝鮮の現状は、現体制の「生き残り」を最大の目標にしなければならないというものであり、目指すは韓国との「平和共存」だ。若い金委員長としては特に、数十年後も安泰だと思える環境を作らねばならない。北朝鮮だって、米国との交渉をなんとかまとめたいと考えているのだ。
北朝鮮はこれまで「朝鮮半島の非核化」を掲げてきた。米国にも核放棄と在韓米軍の撤収を求めるという考え方だが、それが現実離れした要求であることは北朝鮮も理解しているはずだ。だから実際には平和協定の締結や国交正常化を米国に求めつつ、米本土を攻撃できるICBMの放棄には応じるという取引を考えていたように思われる。
ただ、金正日国防委員長時代のように交渉カードを小出しにする「サラミ戦術」を取った場合、トランプ大統領を怒らせて情勢を悪化させるリスクがある。交渉相手の性格を徹底的に研究する北朝鮮がそれを分からないはずがない。しかも、「核武力完成」を宣言して臨む米国との交渉は、いわば「最後の大勝負」である。それだけに金委員長が、一気に妥結を図ろうと踏み込んだ提案をしてくる可能性もあるだろう。
その際には、北朝鮮が完全な非核化に応じることなどありえないという従来の常識を疑う必要が出てくるかもしれない。
北朝鮮はこれまで核兵器こそが自らを守ると信じて多大なコストと時間を投じてきたが、現実には核兵器がなくても日本と韓国に大きな被害を与えることはできる。核兵器ほどの威力はなくても、日韓が政治的に耐えられない程度の被害を与えることは難しくない。日韓両国を人質にすることで対米抑止力を持てるなら、それで十分だという考えに金委員長が至る可能性は否定できない。
金委員長とトランプ大統領は過去の常識にとらわれない。それがプラスに出るか、マイナスに出るかは分からないが、場合によっては大きなパラダイム・シフトにつながるだろう。史上初の米朝首脳会談は、これまで以上に予断を許さない展開になりそうだ。
【共産中国の現状は?】
人民解放軍90周年
中国の軍拡は止まらない
岡崎研究所
2018年3月20日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12197
2018年2月14日、ハリス米太平洋軍司令官は、米下院軍事員会にてインド太平洋情勢に関して発言した。そのうち中国に関する部分を以下に紹介する。
中国人民解放軍(PLA)の近代化は著しい。世界一の早さで能力の向上が図られている。2017年10月の第19回党大会で習近平総書記は、軍の発展は国家の優先事項であり、2035年までに近代化を完成させ、2049年までに「世界一流」の軍隊にすると宣言した。おそらくPLAはもっと早く目標を達成するだろう。
PLAは近年、より統合され、外に向かった軍隊になっている。朝鮮半島情勢が緊迫すると北方軍が半島有事に備えた訓練をしたり、昨年の夏から秋にかけては中印国境地帯で西方軍が活発な動きを見せたりした。
PLAの中で最も進んだ分野は弾道ミサイルである。特に中距離弾道ミサイル(IRBM)の向上は著しく、中国のミサイル全体の95%を占める。ミサイルのうち、近距離は台湾と洋上の米国空母戦闘部隊を、中距離は在日米軍基地とグアムを、そしてICBMは米国本土を狙っているのが分かる。更に、中国が今後数年間で超音速ミサイル技術を取得すれば、それはより大きな挑戦になる。
中国海軍(PLAN)は、建艦計画を拡大させている。この計画が進めば、中国はロシアを抜いて2020年には世界第2の海軍大国になる。中国初の055型ミサイル発射巡洋艦は、2017年6月に竣工した。来年には他の複合艦隊とともに運用される。そして、少なくともあと4隻は同型の戦艦が建造中である。052型ミサイル発射型駆逐艦は既に6隻就航中で、更に7隻が建造中である。また、水陸両用能力も向上している。2017年10月、中国は、空母を支援する初の後方支援艦となる901型高速戦闘支援艦を就航させた。中国海軍2隻目の空母は大連で進水式を済ませ、順調に洋上試運転をしている。新たな潜水艦の建造には、039A型5隻と093型攻撃型原子力潜水艦4隻が含まれる。これら全ての艦船が、優れた通信設備や防衛システム、そして射程が長く殺傷力の強い兵器を搭載している。
中国空軍や中国海軍の航空戦力にも幾つか特記すべき進展がある。それはより洗練された訓練にみることができる。数年前に日本海や南シナ海で爆撃機が訓練していた時は基礎的なものにすぎなかったが、今では戦闘機、空中給油機等を用い総合的訓練になっている。J20多機能戦闘機も、開発段階から運用段階に入っている。J31の計画は思ったほど早くは進んでいないが、それでもこの2種類の戦闘機計画で、中国は数年内に第5世代戦闘機の能力を確実なものにするだろう。少なくとも2機の重量輸送機(Y-20)の導入は、PLAが兵力や装備品を中国全土や世界中に移動させるのに役立つだろう。
PLA陸軍(PLAA)は統合再編中である。この再編によりPLAAはより柔軟に様々な事態に対応できるようになる。PLAN等の戦力も拡大している。2旅団が8に増え、2旅団ずつ各戦区に配置される。PLA初の海外基地ジブチにもPLAN等は昨夏から駐留している。
2015年の設立以来、PLA戦略支援部隊(PLASSF)は、サイバー、宇宙等の分野で活躍してきた。PLASSFは、その専門能力で、他国の宇宙、電気、通信及びデータ網システムの利用を妨害できる。PLAは、システム戦で勝とうとしているのである。
このような新しく拡大された能力を実現化するために、PLA、特に海軍は、より様々な地域で、より頻繁に、より高度な訓練を行っている。PLANのアデン湾における海賊対処行動は9年目に入り、隊員たちの貴重な経験となっている。中国の潜水艦は、この4年間で7回インド洋に展開し、中国艦船は、欧州、アフリカ、中東及びアジアの各所で、何十回と寄港している。PLANの存在感と影響力は着実に増加している。活動の多くは、中国の野心的一帯一路構想と結びついている。それは、中国中心の貿易網を通じて、中国の世界的影響力を拡大しようとするものである。中国の行動の一部や閉鎖性には、懸念材料もある。例えば、昨年のジブチの基地開設は、後方支援基地とされていたが、PLANは、開設間もない数か月に装甲車や大砲も使用した火力演習を数回行った。このことは基地が単なる後方支援のためのものではなく遠征軍の前方展開基地としての機能をもつことを示す。
先般、議会では、外国投資リスク検討近代化法が提出された。これは国家安全保障を高めるものである。米国及びインド太平洋地域における軍事施設付近の不動産を含む中国の投資は、米国及び同盟諸国等の安全保障を脅かす。我々は議会の活動を支持するとともに、中国からの投資を包括的に検討し中国の意図を理解すべきであろう。
出典:‘STATEMENT OF ADMIRAL HARRY B. HARRIS
JR., U.S. NAVY COMMANDER, U.S. PACIFIC COMMAND BEFORE THE HOUSE ARMED SERVICES
COMMITTEE ON U.S. PACIFIC COMMAND POSTURE’February14, 2018)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12197?page=2
2018年2月中旬にハリス米太平洋軍司令官が、米下院軍事委員会で行った発言は、A4全58ページにのぼる長文のレポートとしてネット上でも読めるが、上記はそのうち中国について語ったほんの一部の紹介である。中国の軍事力拡大に関して、海軍力、空軍力、陸軍力の他、サイバー部隊や宇宙戦力に関しても簡単に触れられている。2020年、すなわち、東京オリンピックを迎えるほんの2年後には、中国が世界第2の海軍国家になるというのには、中国の軍拡の早さに驚かされる。中国と海で国境を接し、東シナ海問題を抱える日本にとっても他人事ではない。特に、尖閣諸島周辺では、年々、中国の公船が大型化、武装化して、数を増やしてやってきていると言う。
ハリス米太平洋軍司令官の分析は淡々として簡潔ながら鋭かった。中国の軍拡は止まらない。2018年3月5日、中国の第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕したが、その中でも、中国の軍国化路線は鮮明に打ち出された。李克強首相が行った政府活動報告では、2018年度の国内総生産(GDP)の成長率目標は6.5%前後と示された。が、同日に公表された2018年度の予算案の中で、国防予算の増加率は、GDP成長率を上回る8.1%だった。総額にすると1兆1069億5100万元、日本円では約18兆4000億円にもなる。
ハリス太平洋軍司令官は、中国の軍拡は、一帯一路構想や米国内の不動産投資等経済分野とも関係していると述べた。3月5日の全人代では、そのことを中国が認めるように、李克強首相が、「海洋経済を大きく発展させ、国家の海洋権益を断固として守る。」と発言している(2018年3月6日付産経新聞)。海洋権益と言えば、南シナ海や東シナ海における中国の一方的主張や行動が思い出される。南シナ海では、領有権の争いのある海域に人工島を造設し、そこに軍事基地をつくっている。東シナ海でも、日本との合意を無視する形で一方的にガス田開発を行なったり、日本固有の領土である尖閣諸島に対して領有権を主張し始めたりしている。
日本としては、今後も、日米同盟を基軸に、インド太平洋地域の平和と繁栄のために、外交的にも軍事的にも、経済的にも、米国と密接に連携を取って行くことが重要だろう。経済的にも軍事的にも巨大化して世界中に出てきている中国に対しては、日本一国では太刀打ちできない。インドや豪州、欧州諸国も含めて仲間を増やして行くことが大事だろう。幸い、米国のトランプ政権では、安全保障上、インド太平洋地域を重要視して、安倍政権の掲げる日米印豪のダイヤモンド構想と共通の認識を持っている。また、欧州でも、最近の中国の動きを見ていて、対中脅威認識が高まってきている。例えば、2018年2月中旬に行われたミュンヘンの安全保障会議では、ドイツのガブリエル外相が、中国の一帯一路構想は自由か独裁かの選択を迫るものであり、西側諸国はこれに代わる構想を打ち出さなければならないと述べた。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12197?page=2
2018年2月中旬にハリス米太平洋軍司令官が、米下院軍事委員会で行った発言は、A4全58ページにのぼる長文のレポートとしてネット上でも読めるが、上記はそのうち中国について語ったほんの一部の紹介である。中国の軍事力拡大に関して、海軍力、空軍力、陸軍力の他、サイバー部隊や宇宙戦力に関しても簡単に触れられている。2020年、すなわち、東京オリンピックを迎えるほんの2年後には、中国が世界第2の海軍国家になるというのには、中国の軍拡の早さに驚かされる。中国と海で国境を接し、東シナ海問題を抱える日本にとっても他人事ではない。特に、尖閣諸島周辺では、年々、中国の公船が大型化、武装化して、数を増やしてやってきていると言う。
ハリス米太平洋軍司令官の分析は淡々として簡潔ながら鋭かった。中国の軍拡は止まらない。2018年3月5日、中国の第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕したが、その中でも、中国の軍国化路線は鮮明に打ち出された。李克強首相が行った政府活動報告では、2018年度の国内総生産(GDP)の成長率目標は6.5%前後と示された。が、同日に公表された2018年度の予算案の中で、国防予算の増加率は、GDP成長率を上回る8.1%だった。総額にすると1兆1069億5100万元、日本円では約18兆4000億円にもなる。
ハリス太平洋軍司令官は、中国の軍拡は、一帯一路構想や米国内の不動産投資等経済分野とも関係していると述べた。3月5日の全人代では、そのことを中国が認めるように、李克強首相が、「海洋経済を大きく発展させ、国家の海洋権益を断固として守る。」と発言している(2018年3月6日付産経新聞)。海洋権益と言えば、南シナ海や東シナ海における中国の一方的主張や行動が思い出される。南シナ海では、領有権の争いのある海域に人工島を造設し、そこに軍事基地をつくっている。東シナ海でも、日本との合意を無視する形で一方的にガス田開発を行なったり、日本固有の領土である尖閣諸島に対して領有権を主張し始めたりしている。
日本としては、今後も、日米同盟を基軸に、インド太平洋地域の平和と繁栄のために、外交的にも軍事的にも、経済的にも、米国と密接に連携を取って行くことが重要だろう。経済的にも軍事的にも巨大化して世界中に出てきている中国に対しては、日本一国では太刀打ちできない。インドや豪州、欧州諸国も含めて仲間を増やして行くことが大事だろう。幸い、米国のトランプ政権では、安全保障上、インド太平洋地域を重要視して、安倍政権の掲げる日米印豪のダイヤモンド構想と共通の認識を持っている。また、欧州でも、最近の中国の動きを見ていて、対中脅威認識が高まってきている。例えば、2018年2月中旬に行われたミュンヘンの安全保障会議では、ドイツのガブリエル外相が、中国の一帯一路構想は自由か独裁かの選択を迫るものであり、西側諸国はこれに代わる構想を打ち出さなければならないと述べた。
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