2017年2月19日日曜日

新たな対中戦略を展開しつつあるアメリカ ~FONOP実施か?「アジアの盟友」日本へ求めるもの~

日米共同声明に仕込まれた対日要求
日本は口先だけの日米同盟強化から脱却できるのか
北村淳
南シナ海のスカボロー礁付近で中国軍機が米海軍のP-3C哨戒機と「安全でない」距離まで接近していた。写真はP-3C哨戒機(2015129日撮影、資料写真)。(c)AFP/US NAVY/VICTOR PITTSAFPBB News

2017210日(米国時間)、安倍首相とトランプ大統領によって発せられた「日米共同声明」を、多くのアメリカ海軍関係戦略家たちが高く評価している。アメリカ大統領が公の文書で「公海での航行自由原則を守り抜く」ことを明言したからである。
 アメリカ側の軍事専門家にとって、共同声明での尖閣諸島や沖縄の基地問題に関する言及は、オバマ政権はじめこれまでの米首脳の方針を再確認しただけであったため、さしたる関心事ではなかった。しかし、南シナ海(そして東シナ海)での「航行自由原則」を共同声明で明言したことに関しては極めて高く評価している。
 なぜなら本コラムでも繰り返し指摘してきたように、米海軍対中強硬派が長年にわたって主張し続けてきた南シナ海における「航行自由原則維持のための作戦(FONOP)」の実施を後押しすることになるからだ。
FONOPを強力に実施しなければならない段階に
2017年2月初頭に日本を訪問したマティス国防長官は、南シナ海での「航行自由原則維持のための作戦(FONOP)」の実施を強化すると明言した。
 すると、その言葉に対抗するように、マティス長官が日本を離れると中国はすぐに海警局巡視船を尖閣諸島周辺の日本領海内を航行させた。
 それに引き続いて、南シナ海の公海上空(アメリカ側によると)において、中国空軍KJ-2000早期警戒機がアメリカ海軍P-3C哨戒機に対して危険なほど異常接近(300メートル)をする事案も発生している。さらに、中国がスカボロー礁の軍事基地化を開始するという情報も浮かび上がっている。
 オバマ政権下では、質・量共に制限をかけられたような形でしかFONOPは実施が許可されなかった。しかし、以上のような状況において、米国はマティス長官が明言したように、FONOPをより強力に実施しなければならない段階に至っている。
 ただしマティス長官と時を同じくして、ティラーソン国務長官は、公海航行自由原則を堅持する(させる)ための軍事的作戦を実施するといっても、中国艦艇船舶や航空機が人工島へ接近するのを阻止するような作戦(ブロケード)を展開することはない、とも語っている。
 これは、至極当然のステートメントである、というのは、このような軍事作戦を実施することは、実質的に対中戦争に突入することを意味するからだ。そのような事態はアメリカ政府も財界も望んでいないし、そもそもアメリカ軍自身も現時点における南シナ海での中国との軍事衝突だけは絶対に避けたい状況にある。
自衛隊艦艇の参加は可能と考える米国側
いずれにせよ、日米共同声明という公式文書で、アメリカが国是としてきている「公海航行自由原則の維持」が明示された。これは、日米両国が日米同盟強化を推し進めるにあたって、とりあえずはこの分野での役割分担を推し進めるべきであるという強いメッセージが発せられたことを意味している。
 そして、ここで重要なのは、アメリカが南シナ海で実施しようとしているFONOPへの協力として日本に期待されているのは、日本にとって憲法上も予算上(厳しいが)も不可能ではない“軍事作戦”であるということだ。このことは、アメリカ側も当然認識している。
 たとえば、独自の核武装によって日米同盟を強化することは、いくらトランプ大統領が大統領選中に日本核武装を口にしたとは言っても現実的には極めて困難であることは、アメリカ側は十二分に理解している。また、アメリカが実施しようとしている対IS掃討戦に、日本政府が大規模な戦闘部隊を派遣してアメリカ軍の戦闘力を補充することも、自衛隊の現状から判断すればまずあり得ない。
 しかしながら、海上自衛隊と密接な関係を維持しているアメリカ海軍は、海上自衛隊の予算・人員が決して潤沢ではないことは承知しつつも、海上自衛隊が艦艇や哨戒機を南シナ海のFONOPへ派遣する能力を十二分に保有していると考えている。
FONOPの表向きの目的は、公海航行自由原則を一方的に拒否する国家に対して、「国際海洋法秩序に従い公海航行自由原則を踏みにじるな」という強固な意思を示すことである。
 あくまでFONOPは「公海航行自由原則」をアピールすることが目的の、戦闘を想定しない軍事作戦である。結果として「中国が一方的に表明している“中国の海”なる曖昧な概念は認めない」「中国によるそれらの島嶼環礁に関する一方的な領有権の主張も認めない」ということにはなるが、島嶼の領有や領海の主権を巡る紛争に直接的に介入することはない。そのため、アメリカが実施するFONOPへの自衛隊艦艇の参加は戦闘恐怖症の日本社会にも十二分に受け入れられるものとアメリカ海軍戦略家たちは考えているのだ。
日本にFONOP参加を“要請”
マティス国防長官と会談した稲田防衛大臣は、会談後に「アメリカの南シナ海でのFONOPは支持する。ただし、現時点では自衛隊がFONOPに直接参加することはない」と語っていた。つまり、「FONOPを支持するものの、軍艦も航空機も派遣しない」という姿勢である。
 このとき、米軍関係者からは「日米同盟を強化すると言った日本が、FONOPを“口先だけで”支持すると言ったところで、軍事的に作戦に参加しなければFONOPを支持することにならない。まして日米同盟を強化することなど論外だ」という批判の声が上がった。無理もない反応である。
 しかし、安倍首相とトランプ大統領による共同声明では、「航行自由原則の維持」が強調された。ということは、改めてアメリカ側は日本に対して、アメリカが南シナ海で実施を強化することになるFONOPへの参加を公式に“要請”したものと考えられる。
FONOPへの参加に限らず、日本側からは常に「日米同盟の強化」という標語は発せられるものの、何ら具体策は示されていない。
 とりあえずは、輸送艦などの戦闘艦艇ではない軍艦(自衛艦)を東南アジア諸国に親善訪問させ、南シナ海を通過する際に中国人工島周辺12海里内海域を通航するという極めて初歩的なFONOPを実施するだけで、アメリカのFONOPに対する強力な支援になる。
 安倍首相とトランプ大統領との親密さをアピールし日米同盟の強固さを喧伝するからには、いい加減に“口先だけの同盟強化”から脱却して、目に見える形での具体的強化策を実施しなければならない。

【維新嵐】アメリカはまだFOP作戦を転換する意思はないようです。しかし本当に日本に対して南シナ海の航行自由作戦への協力を求めてきた、ということになるのでしょうか?もしFOP作戦を実行するくらいなら、軍事力ばかり頼らずにアメリカも国際海洋基本法を批准すべきでしょう。オバマ政権のころのFOP作戦ははっきりいって共産中国の南シナ海の要塞化の歯止めには何の効果もないようにみえます。トランプ政権になってのFOP作戦構想はオバマ政権時のそれとは質的に異なるものだと思いたいところです。
トランプ政権はFOP作戦の以前に海軍力の大幅な強化が前提にありました。この点はオバマ政権のころとは違いますね。
 「アメリカファースト」を掲げるトランプ新大統領。易々とアメリカのアジアでの権益を奪われかねない共産中国の海洋覇権進出を無視するようなことはないでしょう。

米中建艦競争、15年後には中国海軍が世界一に

岡崎研究所

 元米海軍大佐のジェイムス・ファネルと米海軍作戦部長スタッフのスコット・チェイニー=ピータースが、2017119日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説において、中国は今後も海軍を大幅に増強するものとみられ、米国はそれに対抗するため、思い切った海軍増強策を講じるべきである、と述べています。要旨、次の通り。
iStock
 現行の米海軍艦船建造30年計画では、艦船数を現在の「展開可能な戦艦」273隻から308隻に増加するとしているが、11月トランプの側近は目標を350隻とすべきであると提言した。これは海軍自身の「戦力構成評価」の提案と軌を一にしている。
 これらは中国海軍がインド・アジア・太平洋で、対等の競争者として登場していることを認めるものであるが、中国の今後の拡張を十分考慮していない。米海軍大学の分析によれば、中国海軍は2030年までに430隻以上の主要海上艦と約100隻の潜水艦を有すると予測される。そうなると、今後15年で中国の海軍は、規模と能力で米国海軍を劇的に上回ることとなる。
 中国海軍はこれまで毛沢東時代の旧式の艦船と潜水艦を廃船し、近代的なもので置き換えてきたが、それが終わり、最新の艦船と潜水艦の製造に全力を挙げている。中国の海軍は、空母攻撃艦隊、潜水艦発射弾道ミサイル、艦隊のネットワークにより、世界的プレゼンスを享受するであろう。
 世界秩序に対する中国の海軍力による挑戦に対抗するため、米海軍がより多くの艦船、より信頼できる抑止能力を必要としているのは明らかである。戦艦建造拡大計画についてのトランプ政権の提案を超党派で支持することが、世界における米国の国益を守るために重要である。
出典:James E. Fanell & Scott Cheney-Peters,Defending Against a Chinese Navy of 500 Ships’(Wall Street Journal, January 19, 2017
http://www.wsj.com/articles/defending-against-a-chinese-navy-of-500-ships-1484848417

 米海軍大学の予測によれば、2030年までに中国海軍は、規模と能力で米国海軍を劇的に上回ることになります。これは、米国が海軍の「戦略構成評価」の提案通り海軍力を増強したとしてもそうなるということです。筆者が米国の戦艦建造拡大計画を一層推進する必要があると警告する所以です。
世界的に海軍力を投影しようとする中国
 米海軍大学の予測は、中国が単に南シナ海の制海権を樹立しようとするのみならず、より広く世界的に海軍力を投影しようとしていると見ています。おそらく中国の長期的ビジョンはそうなのでしょう。
 それが可能かどうかは、中国が長期的に国防費を増額できるかどうかと、中国政府の優先度の置き方にかかっています。中国の軍事力の強化を最優先する考え方は、経済・財政的制約がよほど大きくならない限り、基本的に変わらないのではないかと思われます。
 トランプは選挙戦中、米陸軍、海兵隊の規模の増大、海軍の艦船の350隻への増加を中心とする軍事政策を発表しています。しっかりした戦略に基づく発表とは思えませんが、方向としては軍備増強を志向しています。トランプ政権が、中国の長期的海軍増強計画を見据えて、中国の挑戦に対抗できるような海軍増強計画を検討することが望まれます。


【緊迫・南シナ海】米空母カール・ビンソン、南シナ海

で活動「通常任務」と国防総省
  米海軍の原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群が2017218日、南シナ海で活動を始めた。米国防総省が発表した。「通常任務」としている。国防総省当局者は共同通信に対し、18日の活動について、中国が造成した人工島周辺に軍艦を派遣する「航行の自由」作戦ではないと述べた。
 米海軍は昨年、南シナ海に原子力空母のジョン・ステニスやロナルド・レーガンを派遣し、哨戒活動を行った。

 中国は米国が同作戦を実施することを警戒しており、中国外務省の耿爽報道官は15日の記者会見で「いかなる国であれ、航行の自由を理由に中国の主権と安全上の利益を損なうことに断固反対する」と述べていた。

米空母、南シナ海に=中国をけん制か
時事通信20172/19() 1:07配信 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170219-00000003-jij-n_ame

【ワシントン時事】米原子力空母カール・ビンソンは2017218日、南シナ海での活動を開始した。
 米軍は発表で「通常の作戦行動」と説明しているが、軍事面を含め南シナ海への進出姿勢が顕著な中国をけん制する狙いもあるとみられる。
 カール・ビンソンを中心に編成した空母打撃群は1月初めに米西海岸のサンディエゴを出航した。これまでハワイとグアムなどの沖合で訓練を実施してきた。打撃群の司令官は「(作戦)能力を明確に示し、(域内)同盟国との強固な関係をさらに強めたい」と述べた。 
【維新嵐】やはり南シナ海に関する問題もオバマ政権時とは違うスタンスで臨みそうです。しかし共産中国側のいい分は・・あきれて物がいえないです。南沙諸島の主権はフィリピンに返還すべきでしょう。

アメリカ海軍 ロナルド・レーガン
アメリカ海軍 ジョンCステニス




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