現代戦は、空から地上に対しての攻撃によって大勢が決する。
「交響曲のような攻撃」(orchestrated attack)
いくつもの軍、様々な機種を統一的指揮の下に攻撃に参加させる作戦.
第二次大戦以降確立した制空権確保のための空対空戦闘の勝利の重要性は変わっていないが、空を完全に制するために、敵空軍の戦力を無効化する作戦能力が求められている。
〈湾岸戦争〉(1991年)の時の対地攻撃
・6隻の航空母艦+計空軍地上基地(サウジアラビア、トルコ、ディエゴガルシア)による対地攻撃。
1991年1月17日深夜の攻撃で、アメリカのみで合計617ソーティ(出撃)、英空軍なども含めた開戦初日の出撃数は1300ソーティに達する。
〈アメリカ軍の対地攻撃のパターン〉
①
まず制空権を奪う。
②
地上攻撃によって相手の兵力をそぐ。
③
地上部隊がとどめを刺す。
※できるだけ自国兵士の損耗を抑えるということと、地上戦が長期化することを避けるという狙いがある。
〈航空戦理論から分類した空対地攻撃〉
① 戦略航空攻撃(strategic
air strike)
敵中枢の破壊、相手の政治、経済、人口の中枢を直接攻撃して、戦争継続能力や意思を低下させる。
発電所、都市の司令部などをピンポイント攻撃する。(F-117など)肉眼で発見されにくい夜間の攻撃が多い。
② 戦術航空攻撃(tactical
air strike)
前線兵力への直接攻撃。相手の野戦兵力や補給を攻撃して、戦闘能力を低下させる。
飛行機や道路などを爆撃する。肉眼で発見しにくい夜間の攻撃が多い。(B-2など)
戦略爆撃機が遂行する作戦が「戦略爆撃」ではない。作戦距離が長いのが「戦略爆撃」で、短いのが「戦術爆撃」ということではない。
①
航空阻止(Air Interdiction)
②
戦場航空阻止(BAI/Battle field Air Interdiction)
航空阻止よりは距離が短く、最前線より少し後方にいる敵部隊を攻撃する。前線に到着直前の増援部隊、波状攻撃の第二波をたたく作戦。
③
敵防空の制圧(SEAD/Suppression of Enemy Air Defense)
敵の防空用レーダー、地対空ミサイル(SAM)、対空火器(AAA)を攻撃して機能を失わせ、味方機の侵攻を容易にする(進入ルートを啓開する)作戦。(F-16Cなど)
電子戦闘用機(Electronic Combat Aircraft)により、敵のレーダーや通信に電子妨害をかける。(EA6Bなど)
敵の電波源を探知したり、レーダーを逆攻撃できるような特殊な装備などが使われることもある。
④
近接航空支援(CAS/Close Air Support)
敵の最前線の兵力を直接攻撃して、地上部隊の戦闘を助ける作戦。地上部隊の要請と指示の下に行われることが多い。目標となるのは、敵の戦車、トーチカ、砲兵陣地、機関銃陣地などとなる。
※臨機目標(Target of Opportunity)
地上からの要請なしに攻撃機が戦場を滞空して、手ごろな目標を発見しては攻撃することもある。
※CASの欠点
敵、味方が入り混じった最前線で攻撃が行われるため、時に目標を誤認して味方部隊を誤爆してしまうことがある。
そのため前線航空統制官(Forward Air Controller)を派遣してこうした事態をさけるようつとめている。攻撃機を誘導することが役割である。
・無線で攻撃機と連絡 →目標を指示 →攻撃方法、兵器を指定
FACは、高台や観測機により、上空より指示を行う。
⑤
対航空戦(Counterair)
F-15など制空戦闘機が戦域上空に侵入し、敵戦闘機や攻撃機を撃墜して、制空権を確保する。
⑥
戦術航空偵察(TAR/Tactical Air Reconnaissance)
攻撃の効果を確認するために、戦術航空偵察システム(TARS)を搭載したF/A-18Cが単機で進入する。
・無人機(UAV)は、RQ-1プレデターなど偵察と索敵に使用されるが、武装型はヘルファイア対戦車ミサイルによる対地攻撃も可能。
⑦
航空支援(AI)
最前線の兵力ではなく、前線への増援や補給をたちきって前線部隊を弱らせることを目的とする作戦。目標は増援部隊、補給集積地への攻撃、交通インフラの破壊により、前線への移動を困難にする。AIは即効性はない。戦闘が長引くなら効率のいい作戦である。
・爆弾を投下して鉄道や道路などの交通手段を破壊(B-1など)
・増援部隊を攻撃する(A-10)と補給集積地や飛行場を攻撃する(F-15)
・山岳地帯に造られた軍事施設を攻撃する(F-15E)
・補給集積地や港湾などの交通手段を破壊する。非ステルス攻撃機(F/A-18C)は電子戦機(EA-6B)が電子妨害、地対空ミサイル破壊を実施した後に進入する。
・B-52爆撃機がスタンドオフ兵器、巡航ミサイルで敵の後方基地や軍需工場などを攻撃する。
F-16 ・F-15E・A-10による空対地攻撃
A-10対地攻撃、機銃掃射
三沢基地航空祭2016模擬空対地攻撃、空砲訓練
わが航空自衛隊には、国産支援戦闘機であるF-2が配備されています。空対空でスクランブルもこなしていますが、本務は対艦攻撃といえるでしょう。新しい防衛計画により、離島防衛が防衛任務となり、島嶼に上陸する侵攻軍に対する対地攻撃にもますます重要度があがってくることが考えられます。三沢基地航空祭でのイベントを通じて、F-2支援戦闘機の役割をみることができます。納税者としての国民は、自衛隊のオーナーです。通常戦力の装備だけでなく、用途、運用についても知識としてはもっておきましょう。
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