2019年2月8日金曜日

共産中国の南シナ海人工島の「人間の盾」戦略 ~ある意味最強戦略~


中国が南シナ海・人工島基地に設置する「人間の盾」

困難になりつつある人工島への攻撃

北村淳
フィリピン軍が公開した、南シナ海・ファイアリークロス礁に停泊する中国漁船(2012717日撮影、資料写真)。この後、ファイアリークロス礁には、灯台をはじめとする様々な施設が建設された。(c)AFP/WESTCOMAFPBB News

 中国政府(中国交通運輸部)は、南沙諸島に中国が誕生させた人工島の1つであるファイアリークロス礁に「海上救助センター」を開設した。これによって南シナ海の海上交通の安全がより一層促進されると、中国当局は宣伝している。
純然たる軍事基地島は危険
 もともとは暗礁とも言える無人の環礁を埋め立てて造り出された7つの人工島は、今や中国の前進軍事拠点と化している。当然のことながら一般住民は居住していない。軍関係者それに軍事施設をはじめとする建設関係者や施設運用者だけが滞在している。
 もし、それらの人工島を完全な軍事基地としてしまった場合、つまり、軍事施設が完成して建設関係者たちが引き上げた場合、7つの人工島には原則として軍関係者だけが滞在していることになる。そのような状況は、中国側にとっては極めて不都合であり、反対に、中国の南シナ海軍事化に異を唱えているアメリカ側にとっては好都合である。
 なぜならば、軍関係者だけが存在する純然たる軍事施設ならば、さすがに核搭載兵器を用いるわけにはいかないが、ミサイルや精密誘導爆弾それに強力な地中貫通爆弾などを人工島群に降り注いで壊滅させてしまうことが可能だからだ。もちろん中国側としては、原爆を2回も使用したこともあるアメリカがいざとなれば人工島を消滅させてしまうであろうことは百も承知だ。そのため中国は、南沙諸島の7つの人工島を純然たる軍事基地としておかずに、アメリカ軍がミサイルや誘導爆弾を雨霰と降り注ぐことができないようにするための手を打っているのである。
【第1ステップ】巨大灯台の建設
 その第一歩は人工島への灯台の建設であった。
 灯台といっても、尖閣諸島に日本の民間団体が設置した灯台のような簡易灯台ではなく、永久建造物の本格的な灯台だ(尖閣諸島の灯台は堅固な永久建造物ではないアルミ製櫓型の超小型無人灯台である。現在は海上保安庁が管理している)。ファイアリークロス礁、ジョンソンサウス礁、クアテロン礁、スービ礁そしてミスチーフ礁に建設された5つの灯台は、中国交通運輸部が運用し南シナ海の海上交通の安全に寄与している。ちなみにジョンソンサウス礁に建設された灯台は高さ50メートル、スービ礁の灯台は高さ55メートルの巨大灯台である(下の図)。
【第2ステップ】気象観測所の開設
 そして灯台建設に引き続く第2の方策が、海洋気象観測所の設置である。
 昨年(2018年)11月、中国政府は、南沙諸島の人工島であるファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁に海洋気象観測所を開設した。それぞれの観測所には高空気象観測施設や気象レーダーなども設置されており、南シナ海の様々な気象データ、予報、そして警報をリアルタイムで提供できる態勢が確保された。
国家海洋局南海分局が報じるスービ礁(渚碧礁)周辺の気象情報
中国当局によれば、このような南シナ海の海洋気象情報を国際社会に提供するのは、中国政府の義務であり、これらのデータを提供することにより、南シナ海の海上交通、漁業、そして海難救助などの安全が促進される、ということである。
【第3ステップ】海難救助体制の確立
 海洋気象観測所の次は海難救助施設の設置である。
 すでに昨年夏から、中国交通運輸部 南海救助局は南沙諸島に海難救助船「南海救115」を派遣して、当該海域での海難救助活動を開始している。引き続き「南海救117」も増派して、中国自ら主張する「主権国ならば義務と言える、支配権を及ぼしている海域での救難活動」の態勢を維持していることをアピールしていた。実際に、これまでにそれらの救助船によって16名の命が救われているとのことである。
南海救117(写真:中国交通運輸部)
 また、交通運輸部は南沙諸島に救助船を常駐させたのに引き続いて、ファイアリークロス礁に海難救援施設を設置した。
名称は「海上救助センター」といい、救難隊員たちが常駐する。さらにファイアリークロス礁には軍用滑走路や大型艦も使用できる港湾施設が建設されているため、南海救助局の海難救助船だけでなく海警局の巡視船や各種ヘリコプター、それに場合によっては海軍哨戒機などを投入しての大規模な海難捜索救援活動が行える体裁が整った。
困難になりつつある人工島への攻撃
 3000メートル級滑走路や軍用機の格納施設、それに大型軍艦や輸送船も接岸できる港湾設備まで整った立派な軍事基地のある人工島に、本格的な灯台施設や海洋気象観測所といった非軍事的民生施設を併設させれば、非戦闘員である灯台管理運用要員や気象観測員や海難救助隊員、それに場合によってはその家族たちなどが居住することになる。そして、海洋のまっただ中に浮かぶ観測施設という科学的に貴重な場所柄、民間の研究者などが滞在する可能性も高い。
 狭小な人工島に、航空施設、港湾施設、各種レーダーやミサイルシステムなどの軍事施設と、民間人が居住する非軍事的民生施設が混在している以上、アメリカ軍はむやみに攻撃するわけにはいかない。たとえば軍用レーダー装置だけを破壊するために巡航ミサイルを発射したとしても、中国はもとより国際社会から非難が湧き上がる可能性が高い。このように、いくら命中精度の高い巡航ミサイルや誘導爆弾を保有しているアメリカ軍でも、攻撃することは至難の業である。
次はレジャー施設か?
 中国は南沙人工島軍事基地群に灯台や気象観測施設、そして海難救援施設も誕生させ、軍事施設と民生施設と混在させる「非戦闘員という人間の盾」を手にしてしまう計画を着実に進展させている。次の一手は、漁業関連施設、海洋研究施設、それに人工ビーチやリゾートホテルなどを含む観光施設の設置かもしれない(すでにクルーズ船が南沙諸島周遊をする計画が存在する)。それによって、軍事施設を軍事攻撃から防御するためのより強力な「民間人という人間の盾」を手に入れ、米軍による南沙諸島軍事基地群に対する攻撃を不可能な状況に近づけるのだ。

【南シナ海をめぐる国際情勢】

南シナ海問題はもはやグローバルな問題である

岡崎研究所
201911718日にタイのチェンマイでASEAN外相会議が開催され、ミャンマーのロヒンギャ問題、南シナ海問題などが話し合われた。ここでは、南シナ海問題を取り上げる。18日に発出された議長報道声明のうち、南シナ海に関する部分は次の通り。
我々は、南シナ海における、平和、安全、安定、航行と上空飛行の自由を維持・促進することの重要性を再確認し、南シナ海を平和、安定、繁栄の海とすることの利益を認識した。我々は、2002年の「南シナ海行動宣言(DOC)」が完全かつ実効的な形で実施されることの重要性を強調した。我々は、ASEANと中国との継続的な協力強化を歓迎するとともに、相互に合意したタイムラインに沿って実効性のある「南シナ海行動規範(COC)」の早期策定に向けた中身のある交渉が進展していることに勇気づけられた。我々は、ASEAN加盟国と中国が単一のCOC交渉草案に合意していることに留意し、201811月にシンガポールにおける第21ASEAN首脳会議で発表された通り、2019年中に草案の第一読会を終えることを期待する。この点に関して、我々は、COCの交渉に資する環境を維持する必要性を強調した。我々は、緊張、事故、誤解、誤算のリスクを軽減する具体的措置を歓迎する。我々は、相互の信用と信頼を高めるため、信頼醸成と予防的措置が重要であることを、強調した。
 我々は、南シナ海に関する問題を議論し、地域における埋め立てへの一部の懸念に留意した。我々は、相互の信用と信頼を高め、自制して行動し、事態を複雑化させる行動を避け、国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法に沿って紛争を平和的に解決することの必要性を再確認した。我々は、全ての領有権主張国、あらゆるその他の国による全ての行動において、非軍事と自制が重要であることを強調した。
出典:‘Press Statement by the Chairman of the ASEAN Foreign Ministers’ Retreat’17-18 January 2019
 南シナ海をめぐっては、201711月にフィリピンが議長国を務めたASEAN首脳会議の際に「懸念」の文言が削除されたが、シンガポールが議長国となった昨年に同文言が復活し、タイが議長国を務める今年も維持された。今回の外相会議では、ベトナムとマレーシアが南シナ海への懸念を表明したと報じられている。ベトナムは一貫して対中強硬姿勢を維持してきた国であり、マレーシアは昨年マハティールが首相に復帰して以来、前政権の対中傾斜を大きく強く軌道修正している。「懸念」の文言は、中国による南シナ海の軍事化の加速の前では無力と言わざるを得ないが、こうした国々が、南シナ海問題をめぐりASEANの中でどれだけ声を上げていくのか、行動を示していくのか、今後とも注目される。
 COCについては、早期策定に向けた具体的な日程が示された。声明では「相互に合意したタイムライン」とあるが、中国の李克強首相は昨年11月のASEAN首脳会議に際する関連会議で2021年までに妥結したいと表明している。今回の議長を務めたタイのドン外相は記者会見で、早期妥結が可能である旨、述べている。2021年よりも早く妥結もあり得るという話もある。
 しかし、ASEANと中国との間で昨年8月に合意されたとされるCOC草案は公表されていない。法的拘束力を持たないものになるのではないかとも言われている。中国は軍事活動通告のメカニズムも提案している。域外国と合同軍事演習を実施する場合、関係国に事前通告しなければならず、反対があれば実施できない、という内容である。例えば、ASEAN加盟国が米国と合同演習をしようとしても、中国が反対すれば、実施できないことになる。仮に、こういう内容のCOCになってしまっては、かえって有害と言えるかもしれない。

 南シナ海問題は、もはや地域の問題ではなくグローバルな問題である。航行と上空飛行の自由を確保するための主要各国の取り組みが重要であり、実際に、そのようになってきている。米豪だけでなく英仏など欧州の国も「航行の自由作戦」(あるいはそれに準ずる行動)を実施し始めた。英国のウィリアムソン国防相は、最近、シンガポールあるいはブルネイに基地を置くことについて言及した。南シナ海における英国のプレゼンスを維持するため、補給・維持修理の要員と補給艦を配備するということのようである。また、フランスも、インド太平洋の海洋秩序維持のため、日本との協力を進めつつある。

【管理人コーナー】
離島管理は「共産中国方式」でいけばいいよね?
灯台、気象観測所、海難救助体制の確立、すべて尖閣諸島で実践されてもいいやり方かと思います。以前に日本政府は、尖閣諸島の魚釣島に海保のヘリポートを設置するという方針を打ち出したことがあります。しかしとりやめになりました。共産中国の猛抗議があったからです。日本固有の尖閣諸島の開発について、外国から不当な干渉があり、政府がこれに屈してしまいました。
我が国の離島管理は所詮この程度のものです。まともな日本国民ならこの事実は決して忘れるべきでないでしょう。
ソビエト連邦は樺太や千島を侵略し、我が国から領土を奪っていきましたが、我が国が関与しないヤルタ会談を根拠とし、樺太千島の領有を正当化しています。
アメリカは、血で血を洗う沖縄戦で多くの犠牲を払って入手した沖縄を政治的な背景があって我が国に返還しました。しかし軍事基地は安保条約を盾に変わらず駐留を続けています。
つまり国境の領土は「戦略的に」マネジメントしなければならない、ということです。外国に遠慮したり、事なかれ主義になっていてはだめなんですよ。いわゆる北方領土は、ロシアになってから「南クリル」と呼ばれますが、経済特区になって集中的に資本が投下されています。択捉、国後両島には強襲揚陸艦や対地ミサイルが配備されている軍事拠点化されています。なぜなら日本との国境だけでなく、アメリカの強大な軍事力が日本に駐留しているからでしょう。しかも緩衝地帯なしに隣接していますから、非常に緊張したエリアになっているわけです。
こうした状況の中で、ロシアのプーチン大統領が「引き分け」論から領土解決を含む日露平和友好条約の締結を我が国側に提案してきたことの意味をもっと重く、そして前向きにとらえるべきです。領土問題より前に、ロシアとの「平和友好条約」があるわけですが、日中平和友好条約で尖閣問題を棚上げするようにはいきません。ロシア政府がやはり共産中国の時のようにODAで日本側から無償借款させ、日本の政治家に破格のお金を渡さないと、「四島一括返還」をだされてしまい話がまとまらないように思います。何にせよ「戦略的に」プーチン氏は日露友好を提案したわけですから、安倍官邸が「戦略的」こたえなければイーブンの外交にならないんです。外交は「WIN-WIN」の関係です。どうしたら国益に結びつけるのか?
まさに官邸の腕の見せどころなんですよ。
やはり尖閣諸島や歯舞群島、色丹島(返還が実現したら)は、南シナ海での人工島のように護岸工事と称して埋め立て、ヘリポートや港湾を構築すべきです。特に尖閣諸島と歯舞群島には特に念をいれて、経済要塞化、海保要塞化(海難救助拠点化)すべきです。色丹島は我が国主権域としたうえで、居住するロシア人の生活と権益を保障してやるべき。ソ連政府が日本人にしてきたことを繰り返すことは絶対ダメです。入管法も改正されて外国人移民が増えるわけですから、北にロシア人と暮らす島があっても問題ありません。要はより経済的に豊かになり、二度と流血のない地域にすることでしょう。ただどちらにしても「スパイ防止法」は絶対必要ですな。
巡航ミサイルも海兵隊も海南救助体制構築の後でしょう。


まずは、灯台、気象観測、港湾、経済インフラ、海難救助体制構築、そして国防軍駐留です。外国軍の駐留は国境辺境には必要ないでしょう。ちなみに国際法規の上で「最強」なソフトインフラは、子供、障害者、有色人種かな?




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