米太平洋軍、「インド太平洋軍」に名称変
更 新司令官就任
2018.5.31 07:20更新https://www.sankei.com/world/news/180531/wor1805310006-n1.html
【ワシントン=黒瀬悦成】マティス米国防長官は2018年5月30日、ハワイの真珠湾で行われた米太平洋軍の司令官交代式に出席し、太平洋軍の名称を同日付で「インド太平洋軍」に変更したと発表した。新司令官にはフィリップ・デービッドソン海軍大将が就任した。
名称変更は、トランプ政権が「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げているのを受けた措置。南シナ海やインド洋での中国の覇権的な海洋進出などをにらみ、活動地域を明確化することで存在感の強化を図った。参加の軍部隊や管轄地域に変更はなく、引き続きインド以東から米大陸沿岸部を除く太平洋を担当する。前任のハリー・ハリス海軍大将は駐韓国大使に指名された。
F-16コクピット映像(日本の山間部)
米国はなぜ「太平洋軍」の名称を変更したのか
飛躍的に強力になってしまった中国海洋戦力
北村淳
2018.6.7(木) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53251
南シナ海を航行する米空母「セオドア・ルーズベルト」。米海軍提供(2018年4月11日入手)。(c)AFP
PHOTO /US NAVY/ANTHONY J. RIVERA/HANDOUT〔AFPBB News〕
2018年5月30日、アメリカ太平洋軍司令官がハリー・ハリス海軍大将からフィリップ・デイビッドソン海軍大将に代わった。過去5年近くにわたって太平洋艦隊司令官そして太平洋軍司令官を務め、中国海洋戦力の急速な拡大に警鐘を鳴らし続けていたハリス司令官がホノルルを去った(ハリス提督はトランプ大統領によって韓国大使に指名されている)。そして、ハリス氏とともに「アメリカ太平洋軍(US Pacific Command: PACOM)」という名称も「アメリカインド太平洋軍(US Indo-Pacific Command: INDO-PACOM)」へと変更された。
最大の戦力を誇るアメリカ太平洋軍
アメリカが費やす軍事費は、世界各国の軍事支出を合計した額の30%にのぼり、世界中に戦力を展開し続けている。アメリカは世界で軍事作戦(戦闘を伴わない災害救援作戦や人道支援作戦なども含めての広義の軍事作戦)を実施する6つの担当区域を設定している。そして、それぞれの地域ごとに、アメリカ軍の軍事作戦を直接指揮統制する機構として、以下のような「統合戦闘集団(統合戦闘軍)」(Unified Combatant Command)を設置している。
アメリカ軍「統合戦闘集団」の担当地域
・アメリカ太平洋軍(US PACOM)
→ アメリカインド大平洋軍(US INDO-PACOM)へ名称変更
→ アメリカインド大平洋軍(US INDO-PACOM)へ名称変更
・アメリカ北方軍(US
NORTHCOM)
・アメリカ南方軍(US
SOUTHCOM)
・アメリカ中央軍(US CENTCOM)
・アメリカ欧州軍(US EUCOM)
・アメリカアフリカ軍(US
AFRICOM)
さらに、これらの担当地域ごとの統合戦闘集団と並んで、活動地域を限定しない方がより効率的と考えられる軍事機能に関しては、下記の3つの機能別統合戦闘集団が編成されている。
・アメリカ戦略軍(USSTRATCOM:核戦力の統合指揮)
・アメリカ輸送軍(USTRANSCOM:世界的規模での各種輸送任務の統合指揮)
・アメリカ特殊作戦集団(USSOCOM:各種特殊作戦の統合指揮)
上記9つの統合戦闘集団の中で伝統的に最も重要と考えられており実際に最大の戦力規模を維持しているのが「アメリカ太平洋軍」、新名称「アメリカインド太平洋軍」である。
アメリカインド太平洋軍の担当地域
なぜ名称を変更したのか?
「太平洋軍」(以下「PACOM」)が「インド太平洋軍」(以下「INDO-PACOM」)へと名称を変えたといっても、その担当領域が変更されたわけではない。アメリカ軍はこれまで太平洋(島嶼線によって囲われている南シナ海、東シナ海、日本海、オホーツク海などを含む)を強調していたが、今後は太平洋だけでなくインド洋も等しく重要視しているという姿勢、ならびに南アジア地域の安全保障におけるインドの役割と米印関係の強化に多大な期待を寄せているという姿勢を鮮明にするための名称変更である。要するに、シンボリックな名称変更と考えられる。したがって、INDO-PACOMを構成する各軍種(太平洋艦隊・太平洋空軍・太平洋海兵隊・太平洋陸軍・太平洋特殊作戦群:それらの名称はいまだ「太平洋」から「インド太平洋」には変わっていない)の戦力が、近々目に見えて増強されるわけではない。そして、INDO-PACOMにとって最大の仮想敵である中国人民解放軍が立脚している海軍戦略「積極防衛戦略」(アメリカでは中国A2/AD戦略と呼ばれている)に対抗するための新たな軍事戦略が生み出されたわけでもない。
PACOMからINDO-PACOMへと名称変更をしなければならなくなった最大の要因は、PACOM時代に中国海洋戦力が飛躍的に強力となってしまったという現実である。中国海洋戦力は、中国本土の「前庭」に横たわっている東シナ海や南シナ海で軍事的優先を拡大しているだけでなく、中国本土からはるかに離れたインド洋へもその影響力を及ぼしつつある。しかしながら、アメリカ海洋戦力の巻き返しは、南シナ海ですら極めて困難な状況に陥りつつある。
新機軸の海軍戦略が必要に
このような南シナ海での軍事バランスを以前のようなアメリカ優位に戻すとともに、インド洋や太平洋への中国海軍戦力のこれ以上の伸張を抑制するためには、アメリカ海洋戦力を飛躍的に増強(少なくとも中国のペースを質量ともに上回る勢いでの増強)しなければならない。同時に、それを補うためのINDO-PACOM担当領域内の同盟友好諸国の海洋戦力も増強が必要となる。実際に、トランプ政権は355隻海軍を建設するための法的基盤を創出し、海軍力大増強へと舵を切っている。しかし、355隻海軍が達成されるのは、可能な限り楽観的に見積もっても2035年前後と言われており、2050年を待たねばならないとの分析もあるくらいだ。
それだけではない。太平洋とインド洋だけではなく大西洋や地中海そして北極海と世界中の海洋に睨みを効かせる必要があるアメリカ海軍としては、355隻海軍の規模では十二分に中国海洋戦力に対して優位に立つことは不可能であると考えられている。
なぜならば、中国自身も海洋戦力の拡大を続けており、それも共産党国家の特質を生かしてハイスピードで拡大させているからだ。アメリカが300隻海軍を建設する頃には中国は400隻海軍を達成し、アメリカが355隻にたどり着く頃には中国では500隻海軍が誕生している、という事態になりかねないのである。したがって、INDO-PACIFIC軍を中心とするアメリカ軍が人民解放軍海軍・空軍、そしてロケット軍を中心とする中国海洋戦力に対峙し押さえ込んでいくには、「強大な海洋戦力には、さらに強大な海洋戦力で対抗する」という従来の基本方針ではなく、新機軸の海軍戦略を生み出し、それを実施していかねばならない。
このような戦略はいまだに策定されていないが、いくつかの草案が誕生しつつある。それらの中には、日本が対中海軍戦略の先鋒として中心的役割を果たすというアイデアも含まれる。ますます日本に求められる軍事的役割が増大することになるのだが、それらについては稿を改めたい。
※数で対抗するのではなく、質と戦術で対抗する方法もあるでしょう。例えば未来兵器の実用化ですね。
近未来のアメリカ軍のロボット兵器
※これは飛躍しすぎるでしょうか?地球外のテクノロジーをアメリカが実用化している可能性はどうでしょうか?
反重力戦闘機TR-3Bアストラ
プラズマワープシステムで瞬間移動が可能?
日中から飛行するTR-3Bアストラ
本当にアメリカ空軍の新兵器なのでしょうか?
【アメリカ・トランプ政権のインド太平洋戦略構想】
インド太平洋戦略とは何か 込められた厳しい現実
2018.6.7 10:15更新https://www.sankei.com/column/news/180607/clm1806070005-n1.html
【プロフィル】宮家邦彦(みやけ・くにひこ) 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
今回の原稿は2018年6月4、5日に東京で開かれた国際会議の真っ最中に書き上げた。主催は米シンクタンクCSISの太平洋フォーラム、多摩大学のルール形成戦略研究所と在京米国大使館で、テーマは「インド太平洋地域の民主主義と同盟関係」だった。日本人より外国人参加者の多い、日本で開かれるこの種のシンポジウムとしては出色の会議だ。今回はここでの筆者の発言内容を簡単にご紹介しよう。
振り返ってみれば、世界のアジア専門家が「インド太平洋」なる概念を頻繁に使い始めたのは2017年11月、初のアジア歴訪中に米トランプ大統領が再三言及してからだ。12月には米国の国家安全保障戦略にも記載され、今や米国の公式政策にもなっている。「インド太平洋」について当時、英BBC記者は、「アジアに関する米国の新たな戦略概念」ではあるが、「従来のアジア太平洋の焼き直しにすぎない」と断じた。
おいおい、それは違うだろう。確かにワシントンの新政権は新語の発明が得意だが、アジア太平洋とインド太平洋は相互に異なる概念であり、そこには一定の戦略的意義があるはずだ。
「アジア太平洋」について東京では「日本が提唱した戦略に米国が歩調を合わせた」との思いが強い。トランプ氏が言及した「自由で開かれたインド太平洋」は安倍晋三首相が2016年ケニアで開かれた第6回アフリカ開発会議で打ち出したものだからだ。日本の一部には、この概念の始まりが12年末に安倍首相が発表した「アジア民主主義安全保障のダイヤモンド」論文だったとか、更には、07年の第1次政権時代の訪印で行った演説こそが原点だとする向きもある。
いずれにせよ、この種の概念に特許権はない。インド太平洋なる概念を最初に提唱したのはインド海軍の研究者だったとの指摘もある。問題は誰が先に言い出したかより、同概念が意味する現実の深刻さではないか。こう述べた上で筆者はこう結論付けた。
インド太平洋が意味する現実は想像以上に厳しい。アジア太平洋にインドを加える必要があるということは、現状では米国が単独で、もしくは既存の同盟システムのみで、地球規模で拡大する中国の自己主張を抑止できなくなりつつあるということだ。オバマ政権時代から顕在化しつつあったが、米国第一を標榜(ひょうぼう)するトランプ政権に代わった今事態は一層深刻であろう。
一方、良いニュースもある。アジア太平洋にインドが加わることは当該地域の平和と安定に関心を持ち、具体的貢献を真剣に考える国々が増えつつあることを意味する。いずれにせよ、従来「インド太平洋」の平和と安定は米国ハワイに司令部を置く米太平洋軍(現在はインド太平洋軍)が過去70年間事実上維持してきた。その意味で「インド太平洋」なる概念は少なくとも一部関係国にとって決して新しいものではない。
しかしながら、インド太平洋なる概念は日本の安全保障にとって必ずしも十分なものではない。日本の生存は東京からインド洋だけでなく、エネルギーの豊富な湾岸地域までのシーレーンの維持に大きく依存している。インド洋からアラビア海、湾岸に至る水域はインド太平洋軍でなく、米中央軍の責任範囲だ。
されば、インド太平洋を語るにはインドの西方にあり、宗教的過激派が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する中東地域を含める必要がある。ところが、アジア専門家の多くは中東に関心がなく、中東専門家はアジアに関する知識が乏しい。こうした「知的蛸壺(たこつぼ)現象」は憂うべき悲劇だが、残念ながら、この傾向は日本だけでなく、欧米アジア主要国の政府関係者・研究者の間でも顕著だ。どうやらインド太平洋かアジア太平洋かの議論には深淵(しんえん)なる戦略的発想が必要であるようだ。
※そして海洋超大国であるアメリカに戦略の変更を強いている共産中国の戦略的意図とは?
中国が太平洋島嶼国の取り込みを狙う理由
2018年6月6日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12953
2018年5月18~19日に、日本と太平洋の島嶼国による第8回太平洋・島サミットが福島県いわき市で開催された。今回の太平洋・島サミットの首脳宣言では、開発・発展、水産資源の管理、環境問題に加え、安全保障と戦略の側面にも重きが置かれた。首脳宣言の注目点は次の通りである。
・太平洋において、法の支配に基づく自由で開かれた持続可能な海洋秩序の重要性を強調。
(a)法の支配及び航行の自由の普及及び定着、
(b)連結性の強化を通じた経済的繁栄の追求、
(c)海上安全及び防災の分野における協力等の平和と安定に対するコミットメントの3本柱から成る「自由で開かれたインド太平洋戦略」等による積極的かつ建設的な貢献を歓迎。
・全ての国が航行及び上空飛行の自由、その他の国際的に適法な海洋の利用を含む国際法を尊重することの重要性を改めて表明。国家が国連海洋法条約を始めとする国際法に基づき領土及び海洋に係る主張を行うとともに、自制し、武力による威嚇又は武力の行使に訴えることなく平和的方法により紛争を解決することの重要性を強調。
・海洋安全保障及び海上安全の分野において緊密に連携する意図を再確認。国境管理及び警備を含む,海上安全及び海上法執行の分野における太平洋諸島フォーラム島嶼国のための能力構築の重要性を改めて表明。安倍総理は、海上法執行及び北朝鮮関連の国連安全保障理事会決議の履行に関する太平洋島嶼国のための能力構築プログラムの立上げを発表。
・港湾及び空港等、国際スタンダードにのっとった、開かれ、透明で、非排他的かつ持続可能な形での、主権及び平和的利用を尊重する、質の高いインフラ整備を進めていくことの重要性を強調。
・4月下旬の南北首脳会談において発出された「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言文」を歓迎。米朝首脳会談を通じ、この目標に向けた北朝鮮による具体的な行動が示されることに期待を表明。国連安全保障理事会決議を完全に履行・執行し、北朝鮮に対して圧力をかけ続けていく。「瀬取り」を含む北朝鮮による制裁回避戦術に対して深刻な懸念を表明し、自国が旗国となっている貿易又は漁業に従事する北朝鮮船舶の船舶登録の解除を含め、関連の国連安全保障理事会決議に従った取組を加速させていく。
出典:第8回太平洋・島サミット(PALM8)首脳宣言(外務省ホームページ)
日本と太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国(豪州、ニュージーランド、太平洋島嶼国14か国)は、1997年以降3年に1回、太平洋・島サミットを日本国内で開催している。今回は、上記17か国に加えてPIFの準加盟国である仏領ポリネシアとニューカレドニアが参加した。太平洋の島嶼国は長年にわたり日本と緊密な関係にある。特に、マグロやカツオなどの水産資源の管理、気候変動による海面上昇への対策などで協力を深めてきた。
上記首脳宣言は、法の支配、国際法の重視を謳い、日本の国家戦略である「自由で開かれたインド太平洋戦略」を明記するなど、日本が国際的ルールに則った海洋秩序を擁護する海洋国家のリーダーの一員であることを示す、良い内容である。最近、中国による太平洋島嶼国への進出が目立つが、当然、それを意識していると思われる。「自由で開かれたインド太平洋戦略」の明記もそうであるし、「国際スタンダードにのっとった、開かれ、透明で、非排他的かつ持続可能な形での」質の高いインフラ整備というのもそうであろう。
中国が太平洋の島嶼国の取り込みを狙う第一の理由は、台湾と国交を持つ国が6か国(ツバル、ソロモン諸島、マーシャル諸島、パラオ、キリバス、ナウル)も集中しているためである。今や台湾と国交を持つ国は、最近、中米のドミニカ共和国とアフリカのブルキナファソが相次いで断交し、18か国に減っている。太平洋の島嶼国が3分の1を占める計算になる。太平洋の島嶼国は、中国にとり、もっと大きな戦略的意味もある。これらの国々は、中国が中期的な進出目標とする第二列島線(小笠原~グアム~サイパン~パプアニューギニア)の終点およびその周辺に位置するという点である。中国は、これらの国々に対し、他の地域におけるのと同様、経済支援による攻勢を強めていくであろう。また、中国は、PIFへの関与も強めようとしている。
中国の進出に対し、同地域を「裏庭」と見てきた豪州やニュージーランドは警戒を強めている。ただ、2006年にフィジーで起きたクーデターに対し両国が厳しい姿勢を示したことにフィジーが反発し対中傾斜を強めるなどの事例もあり、島嶼国と豪州、ニュージーランドの双方と良好な関係を持つ日本の役割は重要である。
今回新たに参加した仏領ポリネシアと仏自治領ニューカレドニアには、フランス軍が駐留しており、フランスは中国の太平洋進出に目を向け始めている。日本とフランスとの間では「2プラス2」(外交・防衛閣僚会合)があり、両国は防衛協力を強化している。英国も航行の自由を掲げ、同じく日本と「2プラス2」を持ち、豪州への英軍の立ち寄りを頻繁にするなど、太平洋への関与を強めている。法の支配に基づく国際秩序を支持する西側の主要国が太平洋において連携を深めていく流れが出来つつあるように見える。太平洋・島サミットを中心とする、日本と太平洋島嶼国との緊密な関係は、間接的であるにせよ、益々貴重な財産になると思われる。
なお、今回の首脳宣言では北朝鮮について詳細な言及があり、一つには、北朝鮮の核・ミサイル問題が国際社会全体の問題であること、もう一つにはPIF加盟国のサモアやマーシャル諸島に設立されたペーパーカンパニーが「瀬取り」に関与していた事案が指摘されるなど、具体的な問題として対応する必要があるためである。
※既に「情報戦」ははじまっています。共産中国がアメリカ政府内部に諜報員を送り込んでいる事実。セキュリティクリアランスの問題もあるのでしょうか?まずは、「情報戦」を制することにより、外交の主導権をとらないことには、いくら軍事力で勝利をつかんでも勝利とはならないのですよ。
FBI、中国スパイ容疑で元国防総省の諜報職員を逮捕
BBC News
中国のためにスパイ活動をしようとしていたとして米連邦捜査局(FBI)に逮捕された元米諜報員が2018年6月4日、出廷し、訴追された。ロン・ロックウェル・ハンセン容疑者(58)は6月2日、シアトル空港で中国行きの飛行機に乗るところを逮捕された。
司法省は、同容疑者が中国のスパイとして活動し、情報を提供する代わりに、少なくとも80万ドル(8900万円)を受け取っていたとしている。ハンセン容疑者は法廷で、自宅のあるユタ州へ戻り裁判を受けることに同意した。
告発の内容は?
ユタ州シラキュースに住むハンセン容疑者は、中国政府のために国防に関する情報を収集、あるいは届けようとしていた疑い。
容疑は計15件で、中国の代理人として未登録のまま活動していたことや、高額の現金密輸、資金授受の仕組みづくり、米国からの製品密輸などが含まれる。
スパイ活動未遂で有罪となれば、容疑者は長くて終身刑となる。
ジョン・ディマーズ司法次官補(国家安全保障問題担当)は、容疑者のスパイ疑惑は「わが国の安全保障に対する裏切り」であり、「彼の元同僚たちへの侮辱」だと話した。ユタ州のジョン・フーバー連邦検事は、疑惑について「非常に心配だ」としている。
ハンセン容疑者とは?
司法省が引用した法廷資料によると、ハンセン容疑者は米陸軍に准士官として従軍し、電波傍受や人的情報源による諜報活動の経験を持っていた。その後、2006年に非軍事的情報収集を担当する諜報員として、国防情報局(DIA)に採用された。
司法省は、容疑者は北京語とロシア語が堪能で、最重要機密情報の閲覧権を「何年も」持ち、2013~2017年にかけて頻繁に米中間を行き来していたとしている。ハンセン容疑者はDIAを退職後も、機密情報を閲覧できるようにしようと画策していたとされ、これが当局が問題に気づくきっかけとなった。
国防情報局とは?
DIAは国防総省の一部署で、軍事情報の分析・拡散を任務に、1961年に創設された。DIAの主要任務は米軍の戦闘作戦のために外国の軍情報を提供することで、現在およそ1万7000人が働いている。
米中関係は?
ハンセン容疑者の逮捕は、米中関係が難局に直面している最中に起きた。ジェイムズ・マティス国防長官は2日、中国が領有権問題のある南シナ海でミサイルを発射し、周辺国を脅かそうとしていると非難した。中国軍は、この発言を「無責任」だと一蹴している。
また、北京で行われていた両国間の通商協議も、米国の制裁関税導入を前に暗雲が立ち込めている。
5月末、ホワイトハウスは500億ドル(約5兆4800億円)規模の中国製品に25%の追加関税をかけるとの計画を明らかにし、米中間の貿易戦争に拍車がかかっている。
これまでに報告されたスパイ行為は?
ハンセン容疑者のほかにも、中国のためのスパイ行為を行った元米諜報員が何人か逮捕されている。
元中央情報局(CIA)のの元捜査員ジェリー・チュン・シン被告は、国防情報を収集し中国に受け渡そうとしていたとして今年1月に逮捕され、6月初めに起訴された。
同じく元CIA捜査員のケビン・マロリー被告も、中国に情報を売りつけた罪で起訴され、現在バージニア州の法廷で公判中。
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