2016年9月25日日曜日

アメリカ軍の「世界最強」伝説を考えるための論説

最強の米軍は不変

岡崎研究所 2016919http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7755

 元米CIA長官で元イラク駐留米軍・中央軍司令官のペトレイアスと米ブルッキングス研究所上席研究員のオハンロンが、201689日付のウォールストリート・ジャーナル紙に連名で論説を寄せ、米軍の即応性危機は神話であり、予算の強制削減の影響はあるものの米軍は世界最強の戦闘能力を維持していると述べています。主要点は次の通りです。
米軍の即応性に危機はない

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 米軍の即応性が大統領選挙で再び争点になっているが、幾つかの重要な事実が見過ごされている。国防費強制削減の影響はあったが米軍の戦闘態勢は整っている。米軍は各般の戦闘経験を有し、ハイテク国防産業は最新兵器を供給し、秀逸な諜報能力が米軍を支えている。幾つかの事実を指摘しておきたい。
 目下6000億ドル超の国防予算は冷戦時代の予算を上回る。その額は米国に続く中国、ロシアなど世界上位8か国の国防予算の合計よりも大きい。国防支出はブッシュ政権後期やオバマ政権初期に比べれば少ないが、海外での作戦行動の縮小と財政緊縮のためであり理由のあることである。
 さらなる強制削減がないとすれば、国防省の装備購入予算は今や年間1000億ドルを超える。1990年代から2000年代にかけての低調な調達の時代は終わった。一部航空機等は老朽化し交替や改修が必要だが、大半の装備は概ね良好である。陸軍装備の戦闘使用可能比率は90%にもなる。
 訓練も、テロ等への対処を重視し、10年以上やってきた。2017年までに、陸軍は、毎年全体の三分の一を、海兵隊は、全体の半分を訓練に投入する。空軍は、フル稼働の8098%レベルの訓練をする予定である。兵士は優秀で士気も高い。軍隊の在籍期間は下士官で約80カ月となっている。
 このように、米軍は、即応性の危機にはない。しかし、次のような緊急を要する課題がある。近年、縮小された陸軍、海軍は、もう少し強化すべきではないか。航空機の近代化計画では、ドローンや爆撃機をより重視すべきではないか。海軍は、海中ロボットや無人システムの導入を強化すべきではないか。米国は他国の弾道、巡行ミサイルの性能により効果的に対処すべきではないか。
 サイバースペース能力は十分か。中東、欧州等での支援体制を如何に強化するか。シリコンバレーなどの技術革新を国防分野に取り込む方法はないか。国防予算の規模はどれほど拡大すべきか。自己主張を強めるロシアと中国に対し更に何をすべきか。これらの課題に対する答えは分かっている。問題は、それらの課題が現下の議論では十分に議論されていないことである。
出典:David Petraeus & Michael OHanlon The Myth of a U.S. Military Readiness Crisis’(Wall Street Journal, August 9, 2016
http://www.wsj.com/articles/the-myth-of-a-u-s-military-readiness-crisis-1470783221

 米軍の即応性は大統領選挙のイシューになり易いです。今回の選挙でも、トランプは民主党政権下で米軍は弱体化した、と民主党を攻撃しています。トランプは、自分が大統領になれば、軍隊の規模、能力を増やす、国防予算の上限を外すと公約しています。他方、クリントンは世界最強の米軍を維持していくとして、基本的には目下の政策の継続を示唆するとともに、むしろ同盟の強化に重点を置いています。
依然として世界最強
 ペトレイアス元在イラク司令官等によるこの記事はトランプ流の米軍衰退の主張に反論するものです。トランプ共和党候補の言っている米軍の危機論については、米メディアも懐疑的です。実際、例えば、兵器近代化支出は、今もブッシュ政権時代と同じレベルにあります。また、オバマ政権時代の国防費削減は、議会の共和党、民主党双方の主張によって合意されたものだと指摘されています。
 この論説記事は、米軍は予算規模、装備、訓練、兵士の質などから依然として世界最強であると強調します。しかし同時に、今後の課題の指摘も忘れていません。自己満足のコメントではありません。
 最近潜水艦戦力バランスが議論になっています。西側の優位が崩れつつあるのではないかと指摘されています。ロシアや中国の潜水艦が一層静かになり、装備する武器も高度化しているといわれます。水中ドローンの導入を含め、米国などによる潜水艦の追跡能力強化の必要性が指摘されています。
 西側にとって大きな課題は、特に中国とロシアの軍事力強化です。ハードウェア、訓練、ポリティコ・ミリタリー(同盟強化、友好国拡大等)という三つの分野で対応を強化していくことが重要です。その関連で、南シナ海問題を抱えるフィリピンについて、麻薬取り締まりに係る人権批判をした国連からの脱退も厭わないとの大統領発言など今後に不安はありますが、フィリピンとの連携に努めていくことは極めて重要なことでしょう。

米軍が考える第三の相殺戦略

岡崎研究所 2016921http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7766

ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、2016816日付同紙掲載のコラムにて、米国防総省は、ロシアと中国の軍事能力の向上を相殺するため、新しいハイテク通常兵器の開発を進めている、と解説しています。要旨、次の通り。

最新通常兵器
 ワーク国防副長官は、「第三の相殺戦略」により、中ロに対する米国の技術的優位を確保する、と述べた(第一の相殺戦略は1950年代の戦術核、第二は1970年代の精密誘導通常兵器)。その前提は中ロの軍事能力の著しい向上である。ダンフォード統合参謀本部議長は、7月の公聴会で、ロシアは今や米国の存在にかかわる脅威であると述べ、中国については最近のランド研究所の報告が、その軍事能力の向上により、かつては戦えば米国が勝利すると考えられていたのが、いまや決定的な勝利はなく、双方に多大の損害が生じるだろうと述べている。
 ワーク国防副長官は、4月ブリュッセルでの演説で、新しいドクトリンと考えを打ち出す時が来たと述べ、米国が十分な技術的優位を保たなければ、通常戦力の抑止が弱まり、危機に際して不安定が増し、米国の将来の軍事作戦のコストが大幅に高まるだろう、と警告した。
 考えられている最新通常兵器とは、空中の無人機、海中の無人潜水艦、敵の戦闘管理ネットワークを無力にする陸上の最先端システムである。国防総省によれば、過去一年に、これまで極秘であった兵器計画の一部を明らかにしたのは中ロの軍事計画を攪乱するためで、将来の戦闘の有効性を維持するため、他の計画は秘匿しているとのことである。
 米政府当局者は、中ロの軍事的台頭を相殺するこれらの計画は、大国関係を不安定化させるのではなく、安定化させる効果を持つという。世界の不安定の現状に鑑み、この問題は大統領選挙で広く議論するのに値する。
出典:David Ignatius,America is no longer guaranteed military victory. These weapons could change that.’(Washington Post, August 16, 2016
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/america-is-no-longer-guaranteed-military-victory-these-weapons-could-change-that/2016/08/16/004af43e-63d2-11e6-be4e-23fc4d4d12b4_story.html?utm_term=.045585fcecef

 イグネイシャスは米国の「第三の相殺戦略」に深い関心を持ち、取材を続けており、去る2月にも国防副長官と統合参謀本部議長を取材した結果を報告しています(330日付本欄『米国のハイテクすぎる近未来戦の全容』http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6422参照)。
 戦後の「米国の平和(パックス・アメリカーナ)」を支えてきたのは米国の軍事的優位であり、それが中ロにより脅かされるに至った今、優位を再び取り戻そうというのが「第三の相殺戦略」です。「第三の相殺戦略」に含まれる最新兵器には、論説に列挙されたもののほかに、小型レールガン(注:電磁誘導により音速の7倍で弾丸を発射)や現在より小型の高性能爆弾などがありす。
繰り返されるいたちごっこ
 技術の優位は脅かされる宿命にあります。後発国は先発国の技術を習得しようと懸命の努力を払います。最近はサイバー攻撃による技術の窃取もあり、技術の優位を維持できる期間が以前より短くなっています。米政府当局者は、「第三の相殺戦略」は大国関係を安定化させる効果を持つと言っているとのことですが、これは「第三の相殺戦略」により、米国が再び通常戦力での優位を確立する間のことであり、中ロの必死の努力でこの優位が再び脅かされることになれば、情勢は不安定化するでしょう。
 このようないたちごっこは繰り返されるでしょうが、米国が健全な技術革新の国家的基盤を維持する限り、米国が常に優位を保つことは可能であり、それは日本を含む西側世界にとって望ましいことです。

世界サイバー大戦の時代です!

 他国に対して軍事的に優位にたちたいが、表だって実弾の飛び交う戦争はできない。なぜなら自国の経済的な利益を損なうことになり、悪影響を及ぼすから。国際的な信用を失い、やはり経済的、政治的なデメリットははかりしれない。しかし戦略上どうしても手に入れたい権益、技術があるときに活用される手段がインテリジェンスということになります。

 インテリジェンスを入手するためには、元になるデータが不可欠。それを収集するために熟練されたヒューミント要員(情報工作員)を送りこむこともまた戦術ですが、もっとステルス的に、手間も時間も、コストもかからない収集方法が、サイバー攻撃ということになります。

 どこの誰がやったのか調査はできても「推定」の範囲をこえることはありません。
確実にデータを手に入れ、うまくいけば分析されたインテリジェンスを入手できるかもしれない手法で、家は知らないよ的な態度で逃げ切ることができるサイバー攻撃というSIGINT(信号情報)といわれる情報入手の方法は、今後ますます巧妙化、ステルス化、兵器化の一途をたどるものと考えています。
 宣戦布告なき開戦の時代は、既に始まっています。熟練された工作員よりも目的に応じて開発されたマルウェアがインテリジェンス戦略の主流になっていく流れはとめようもないでしょう。正直背筋が凍りつく思いです。

サイバー新部隊の実情と各国サイバー事情について、伊東寛氏が語ります。

 

米中サイバー戦争 国防総省の決断


サイバー攻撃はたとえ同盟国であっても油断できないのです。むしろ同盟国だからこそ知っておきたい何かがあるということでしょう。


アメリカの高度な情報戦略が生み出した最新兵器

無人攻撃機MQ-1プレデター・MQ-9リーパー

艦上無人攻撃機X-47B

アメリカ?の極秘攻撃機TR-3B反重力戦闘機アストラ。1980年代より飛行し、湾岸戦争にも投入されていたといいます。核融合エネルギーで飛行し、大気圏外の飛行も可能。大気圏突入性能もあります。ロズウェル事件以来、アメリカが秘かに異星人と共同開発してきた技術により開発されたといわれますが、真偽のほどはどうなんでしょうか?
UFOではありませんが、これを運用すれば国籍不明機として、処理することでアメリカの政治的立場を守ることはできますね。


アフガニスタンのタリバン勢力を掃討するTR-3B。戦争に使われるとは異星人もびっくりでしょう。想定外!?


日中にみるとそのフォルムがよくわかります。空間移動ができることでも知られています。



 



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