中国国防白書に見る「はぐらかし話法」
2015年06月30日(Tue) 岡崎研究所 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5094
新アメリカ安全保障センター(CNAS)のジャクソン客員研究員が、National Interest誌ウェブサイトに5月29日付で掲載された論説において、中国は国防白書で、海軍力をはじめとする軍事能力の強化を強調する一方で、中国の意図は平和的で、その行動は受け身である、と言っているが、これは中国の得意のはぐらかし話法である、と述べています。
すなわち、最近発表された中国国防白書は、近隣の紛争地帯で隣国と闘う意思を改めて述べているのみならず、九段線より遥か外側で戦うことを想定している。しかし中国の「はぐらかし話法」のため、中国に対する適切なイメージや中国の長期的意図についての議論は決着を見ず、より主張を強める中国にいかに対処すべきかについての東アジア諸国の見解は、ばらばらのままであろう。
中国が経済大国になるに伴い、その利益を守るため世界中で力を投影しようとするのは当然で、国防白書は心配するに及ばない、という向きもあるが、中国の軍事能力を懸念する者にとっては、国防白書は分水嶺である。
人民解放軍は兵力を拡大し、海軍力を重視する。近隣以外の地域に力を投影する能力を高め、白書は否定しているが、世界的な基地と港湾ネットワークを求めている。
中国の軍事戦略は、既存の紛争において譲歩せず、東・南シナ海に力を投影し、人民解放軍は海外での展開により、戦闘準備能力と、これまで人民解放軍の最大の弱点の一つであった統合力を強化する、というものである。白書は、人民解放軍がより大きく、より能力を増し、人民解放軍の敵と戦い、これを破る意欲を高めると明記している。かくして、時は中国側にある。
しかし中国は、「はぐらかし話法」により、その意図は平和的で、その行動は防衛的で受け身である、と言っている。中国は「積極防衛」を語り、平和、開発、協力、相互利益が時代の抗し難い時代の流れである、中国が覇権や拡大を求めることは決してない、と言う。
軍事戦略に関する中国の最新の声明は、「はぐらかし話法」だらけであり、勇敢で新しい世界のための、勇敢で新しい人民解放軍について述べる一方で、自己矛盾していたり曖昧な表現や穏やかな言い方をして、新しい自己主張をごまかしている。軍事問題についての中国の「はぐらかし話法」は新しいものではないが、結果として、アジアで中国の自己主張を認めたがらないグループと、このままではいつか中国の野心を受け入れざるを得ないのではないかと考えるグループの間の分裂はさらに強まるだろう、と論じています。
出典:Van Jackson,‘Beware China’s Strategic Doublespeak’(National Interest, May 29, 2015)
http://nationalinterest.org/feature/beware-china%E2%80%99s-strategic-doublespeak-12994
http://nationalinterest.org/feature/beware-china%E2%80%99s-strategic-doublespeak-12994
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論説は、今回の中国の国防白書について、中国の得意とするはぐらかし話法によって、中国の軍事戦略の真の意図をごまかそうとしている、と述べていますが、国防白書では、中国は言いたいことをはっきり言っています。論説は「積極防衛」に関する言及をはぐらかしの例に挙げていますが、白書は積極防衛の戦略概念は中国共産党の軍事戦略思想の中心で、長期にわたる革命戦争の経験に基づくものであり、「攻撃されなければ攻撃しないが、攻撃されれば確実に反撃する」ことを意味すると言っています。これは核の先制不使用に通じるものであり、はぐらかしとは言えません。むしろ、今般の中国の国防白書は、今までにない明確さをもって中国の戦略的意図を表明した点にこそ注目すべきでしょう。
白書は「中国軍の使命と戦略的任務」の章では、「中国の夢は中国を強くすることである」と述べています。これは、中国の国家目標を端的に表したもので、中国の内外の政策の原点であり、原動力です。中国に対応するに際し、常に念頭に置くべきことです。
また、白書は、「海洋が中国の平和と安定、持続的発展に関わっており、陸が海より大切であるとの伝統的考えは捨てるべきである、海洋の管理と海洋の権利と利益を擁護することが重要であると言っている。その上で海軍は近海の防衛から近海の防衛と公海での防護の組み合わせに重点を移すべきである」と言っており、海軍重視の考えがはっきりと述べられています。
さらに、白書は「軍事闘争への備え」という章を設け、軍事闘争に備えることは、平和を守り、危機を封じ込め、戦争に勝つための重要な保証であり、中国の海洋の権利と利益を守るためにも準備をすべきである、とも主張しています。いざとなれば海洋の権利と利益を守るため、武力行使も辞さないということであり、当然、東シナ海、南シナ海にも当てはまります。
最近の南シナ海での中国の人工島の建設が話題になっていることもあり、国防白書についても、当然、中国の海洋重視、海洋での軍事闘争での備えが関心の中心となりますが、白書は、中国の国家安全保障をめぐる状況の章の中で、まず台湾を取り上げ、台湾独立の動きが、依然として両岸関係の平和的発展にとり最大の脅威であるとの警戒感を表しています。中国の国防上の最優先事項が台湾であることには変わりありません。
中国の南シナ海での島作りは「国際規範への挑戦」
2015年07月01日(Wed) 岡崎研究所 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5092
米戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン日本部長らが、同研究所のウェブサイトに、5月29日のカーター米国防長官がシンガポールで南シナ海での中国による岩礁埋め立ての中止などを求めた演説を評価し、全体として支持する論説を掲載しています。
すなわち、カーター国防長官は、中国が南シナ海で島作りをし、緊張が高まる中、島の軍事化は国際規範への挑戦であり、米国は航行の自由と上空飛行の自由を擁護し、国際法を守る、と述べた。また、すべての国が台頭する権利を実現しうる地域的な安全保障アーキテクチャーを作ることを呼びかけた。
カーターは、アジアの台頭は米国にとって良い事であり、アジアがいま世界で最もダイナミックな地域であり、米国も太平洋国家である、と述べた。その上でアジアへのリバランスへの米のコミットメントを強調し、P-8哨戒機など兵器の配備とともに、TPP締結に意欲を示した。同盟強化、規範の遵守も繰り返し述べられた。
スプラトリー諸島での中国の埋め立てによる島づくりについては、カーターは中国がどの国よりも「より遠く、より早く」やっているとし、埋め立ての中止を求め、紛争の国際仲裁を支持した。また、米国は国際法が許容する航行や飛行を続けると宣言し、人工島での滑走路などは主権の根拠にはならないとし、南シナ海では、米国よりも中国が既成事実を作っており、多くの国が米国の懸念を共有している、と述べた。
カーターは、ベトナムとの共同ビジョン声明、インドとの防衛枠組み作りを明らかにし、また、東南アジア海洋安保構想を打ち出し、地域の国に海洋能力整備のために4億2500万ドルの支援をすると述べた。南シナ海での拘束力ある行動規範の策定も呼びかけた。
カーター国防長官はオバマ政権でアジア政策担当者として重きをなすようになっている。太平洋軍司令長官ハリー・ハリスとともに南シナ海での中国の動きに、よりしっかりと対応し、中国に埋め立て地の軍事利用や防空識別圏の設定をしないように説得するために、米国がリスクもとることを主張しているようである。しかし、ホワイトハウスが同じようなリスクを取るか、中国が引き下がるかは不明である、と論じています。
出典:Michael J. Green, Ernest Z.
Bower & Mira Rapp Hooper‘Carter Defends the South
China Sea at Shangri-La’(CSIS, May 29, 2015)
http://csis.org/publication/carter-defends-south-china-sea-shangri-la
http://csis.org/publication/carter-defends-south-china-sea-shangri-la
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カーター国防長官は、オバマ政権内で、南シナ海問題について中国により強い対応をすべきであると主張してきた人です。シャングリラ会議でのカーター演説は、南シナ海問題に力点が置かれています。
中国の南シナ海での埋め立てについて中止を要求したことは、適切なことです。これに対し、中国の孫建国副参謀長は、埋め立ては「中国の主権の範囲で合法」、「軍事、防衛上必要」と翌日には反論し、日米に「介入するな」と要求しました。日米と中国の間で、これからも議論は続くでしょう。
国連海洋法上、島は満潮時にも海面上に陸地が出ているものと定義されています。満潮時に海面下にあるものをベースに埋め立てて、島であると主張してもそんなことは認められません。そのいわゆる人工島をベースに領海を主張することも、当然認められません。日米は、埋め立て前の状況を写真に撮るなど、正確に把握して置く必要がある。こういう場合には、人工島の12海里内に、海洋法上の「無害通航」以外であっても入ることは、国際法上、許容されます。
満潮時に海面上に陸地が出ている場合は、岩か島かの問題になります。岩であれば、経済水域(EEZ)や大陸棚の権利は生じません。しかし、わずかに海面上に出ているがほぼ水没している場合はどうかなど、なお検討すべき問題がありますので、海洋法上の問題について、よく研究しておく必要があります。
中国のものと確定している岩礁の埋め立てならば、軍事目的であろうがなかろうが、中国が「主権の行使である」と言えば、争う余地はないでしょう。係争中の岩礁について埋め立てを強行した場合は、これが紛争の平和的解決義務に違反するかは法的には難しい問題です。しかし、政治的には不適切と言えるでしょう。いずれにせよ、国際法上の論点をさらに整理していく必要があります。軍事利用云々の問題は、国際政治的次元の話として、透明性を求めていく必要がありますが、単に「軍事利用だからいけない」などといった、法的に杜撰な議論をするべきではないと思われます。
通商路としての南シナ海の重要性にも鑑み、関係国が集まって会議をし、その結果が出るまで、現状を凍結するなど、知恵を絞る段階に来ていると思われます。中国がどんどん既成事実を作ってくるのを止めるためには、こういう提案をするとともに、場合によってはリスクのある対応も辞さないことが肝要です。オバマ政権にやる気があるのかとこの論説は疑問符をつけていますが、衝突を忌避したがるオバマの傾向がここにも影響しかねません。
東シナ海に続き、南シナ海でも「防空識別圏」を設定しようとする中国
2015年07月02日(Thu) 岡崎研究所 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5091
2015年5月14日付のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙で、海洋政策の専門家で、現在は中国南シナ海研究院の客員研究員を務めるマーク・ヴァレンシアが、南シナ海における防空識別圏(ADIZ)の設定可能性について、いくつかのパターンを例示して分析しています。
すなわち、2013年11月、中国は東シナ海に突如防空識別圏(ADIZ)を設定し、日米を驚かせた。現在、多くの分析官やメディア、米政府高官までもが、中国はいずれ南シナ海にも同様の領域を設定するであろうと見ている。
ただ、中国外交部の報道官は、「一般的に言って、中国はASEAN諸国からの航空脅威を感じておらず、ADIZを設定する必要性を感じていない」と言っている。だがそれでも、米国のISR(情報・監視・偵察)が増し、米国の同盟国が増強されるにつれて、中国は空からの安全保障上の脅威に対処するため、ADIZを設定することはありうる。
中国の南シナ海ADIZの設定方法には、いくつかのパターンが考えられ、それぞれ政治的な意味合いが異なる。
1つ目の方法は、沿岸から200~250マイルの距離で、かつパラセル諸島とプラタス(東沙)諸島の、あらゆる係争島嶼部を含まない範囲でADIZを設定する場合である。この場合、理論上の要求と実際の運用に食い違いが生まれるかもしれないが、批判的な人々でも何とか受け入れ可能なものとなる。
南シナ海ADIZは東シナ海におけるそれと似たような規則を含むものになると考えられる。中国の領空に向かわず、そこを通過するだけであっても、外国機には事前通告などを求めるということだ。
もう1つの方法として、もし中国が、他の係争地であるスプラトリー(南沙)諸島やその海域を含める形でADIZを設定するとなると、情勢は極めて不安定化する。中国が南シナ海の航空回廊とシーレーンをコントロールすることになれば、それは米国、日本、東南アジア諸国にとって最大の恐怖となる。航行の自由を脅かすことは、米国にとっての「レッドライン」である。
例え、中国のADIZが実効性に乏しくとも、それ自体が国際秩序に対抗することを意味し、おそらく意図的な挑発をも招くだろう。
この地域は、既に潜在的な紛争を抱えている。中国が南シナ海にADIZを宣言すれば、この地域の平和と安定を崩すこととなる、と警告しています。
出 典:Mark Valencia‘China's potential security game changer in the South China Sea’ (South China Morning Post, May 14, 2015) http://www.scmp.com/comment/insight-opinion/article/1796488/chinas-potential-security-game-changer-south-china-sea
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今日、中国は南シナ海における領有権拡張の主張を強め、岩礁埋立て、滑走路の建設、あるいは観測所の設置などにより、既成事実を積み重ねつつあります。本論評は、これら既成事実の上に、中国が南シナ海の防衛識別圏(ADIZ)を設定する可能性が出てきたことに警鐘を鳴らすものとなっています。
本論評によれば、南シナ海のうち、パラセル(西沙)、プラタス(東沙)の諸島については、中国が係争島嶼部を含まない範囲でのADIZ設定もあり得ると言います。その場合には、これに批判的な国々もなんとかそれを受け入れることが可能かもしれませんが、中国にとっては設定の意味が少ないと指摘しています。
もう一つの可能性として、スプラトリー(南沙)を入れてADIZを設定する場合、この地域の秩序を一挙に不安定なものにするだろう、と本論評は述べています。この場合には、米、日、ASEAN等にとって「飛行、航行の自由」は害され、それは国際秩序に対する一大挑戦になるだろう、と指摘しています。
中国が南シナ海上空にADIZを設定する可能性については、現段階では必ずしもはっきりしません。しかし、東シナ海で2013年11月に突如としてADIZを設定したように、南シナ海において中国の領有権主張に対し異議を申し立てる国々の力が弱いと判断すれば、今後中国が同様の挙に出ることも十分に考えられます。
最近の米国政府は、南シナ海領有権問題について「埋立て作業を行っても、これは領有権主張の根拠にはならない」としてこれまでより明白な反対の意思表示をし、同海域への米軍機、艦船の派遣を含めた対応策を検討しつつあります。
これに対し、中国は島嶼に新しく設置された観測所や観測記録を公表していますが、もちろん、これらは国連海洋法条約など国際法上、領有権を有する根拠とはなり得ないものです。
中国は、先般の米国偵察機の南シナ海への派遣を非難しつつ、米国が人工島建設の停止要求を取り下げなければ、「戦争も避けられない(「環球時報」)」と恫喝的な発言を行いました。米国はこれまで後手にまわっていましたが、やっと本気で中国の独善的な拡張主義阻止に乗り出した形です。
中国海軍・孫建国提督
南シナ海での中国の行動は「適法、穏当、正当」
南シナ海での中国の行動は「適法、穏当、正当」
2015年07月07日(Tue) 岡崎研究所 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5113
米シンクタンクCSISのボニー・グレイサー中国研究部長が、6月3日付のパシフィック・フォーラムCSISのサイトで、シンガポールで行われたシャングリラ・ダイアローグについての所感を書いています。
すなわち、今年も中国は入念に準備して代表団を送ってきた。会議直前には国防白書を公表した。南シナ海に焦点が当たることを予期して団長に海軍提督の孫建国を選んだ。
孫建国は、南シナ海における中国の行動は「適法、穏当、正当」であると主張し、軍は断固として国の「核心的利益」を守ると述べた。
米国は会議の直前、海軍の哨戒機P‐8Aを埋め立て工事現場に派遣し、同乗させたCNNのカメラによる映像と、その際に発せられた中国軍の警告の音声の録音を放映させた。カーター国防長官は、ハワイで、中国は国際的な規範から逸脱していると非難した。従って、中国は米国の非難がシャングリラで最高潮に達するのではないかと怖れていた。しかし、そうはならなかった。
中国代表団は明らかに安堵した様子であった。カーターは、米国は国際的な水域と空域を航行し飛行することを止めない、中国はルールと規範を踏み外している、埋め立ては直ちにかつ永続的に停止すべし、と述べた。しかし、カーターは中国のみならず他国の埋め立てにも言及した。両国の軍と軍との関係の改善の継続にも触れた。この地域で全ての国が勝者となる安全保障の枠組が必要とも述べた。
演説の後、中国代表団に聞いてみたところ、カーター演説は「バランスがとれている」「穏当である」との評であった。中国がいう程、カーターの演説は昨年のヘーゲルの演説に比べて激しくなかったわけではないが、中国は范長龍中央軍事委員会副主席の訪米、米中戦略経済対話、習近平の訪米を控えて、対決を避け、米中関係への悪影響を避ける決意であった。
周到な準備にも拘わらず、中国は目標を達成出来なかった。孫建国は1ダース以上の質問に正面から答えようとせず、資料の公式見解を読みあげるにとどまった。中国は、その意図と行動について提起された近隣諸国の懸念に向き合う機会を逃した。中国は、他国の懸念は知ったことではなく、既定路線を進むだけという印象を残すこととなった、と書いています。
出 典:Bonnie Glaser ‘China’s missed opportunity at the Shangri-La
Dialogue’(Pacific Forum CSIS, June 3, 2015)
http://csis.org/files/publication/Pac1338.pdf
http://csis.org/files/publication/Pac1338.pdf
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筆者のグレイザーは、シャングリラの会議に出席していたようで、上記は、現場で得た所感を書いたものです。
中国代表団が、カーター国防長官の演説に安堵し、「バランスがとれている」「穏当である」と評価しているというのは困ったことであるし、俄かに信じ難いことです。中国の外務報道官は、演説を「馬鹿げている」と一蹴しています。もし、中国代表団がそういう評価を口にしたとすれば、それは既成事実を積み上げる間、時間を稼ぎ、非難をやり過ごすための便法に過ぎないでしょう。
中国は昨年のヘーゲルの演説程の厳しさはなかったと思っているといいますが、そんなことはありません。二つの演説の南シナ海の部分を比較すれば、カーター長官の演説の方がむしろ厳しいともいえ、分量は倍位あります。
問題は、これから米国がどう動くかです。人工島の12カイリ内に航空機や艦船を進入させるのが次のステップと国防総省の報道官が述べたのですから、これをやってみるべきです。9月の習近平総書記の訪米を控えて、米国がどう対応するのか注目されます。
【『孫子』謀攻篇にみる用兵の上策(戦争の原則)】
①国を全うすること。(自国を損傷しないこと。)
②軍を全うすること。(軍団を無傷に保つこと。)
③旅を全うすること。(旅団を無傷に保つこと。)
④卒を全うすること。(大隊を無傷に保つこと。)
⑤伍を全うすること。(小隊を無傷に保つこと。)
このようなわけで、百たび戦闘をして百たび勝つというのは、最高にすぐれたことではない。戦わないで敵兵を屈服させることこそ、最高にすぐれたことなのである。
※南シナ海と東シナ海は共産中国にとって海洋地下資源を確保するため、漁業海域の確保のため、シーレーン確保のための「核心的利益」であり、共産中国が13億人の生活と中国共産党の権益と権力を維持していくための「核心的利益」であると考えられる。
こうした「核心的利益」を確保していくためには、漁船や資源採掘のための作業船のための拠点、またこれらを保護するための海軍や空軍戦力の拠点が必要であり、その拠点が南沙諸島や尖閣諸島というように理解することができるだろう。
ただ共産中国が確保をめざす海域自体が、元来海洋国家がゆるやかに実行支配してきた海域であることで政治的摩擦がおきているのである。
どの国家も民族も存亡にかけて、未来へむけて国家や自国企業の権益追求をはからなければならない。大陸国家である共産中国と海洋国家であるアメリカ、日本、台湾、フィリピン、ベトナムなどが未来へむけて折り合いをつけるためには、国際的な「法規」に基づいて海洋資源がそれぞれ担保され、軍事力が活用されなければならない。
経済的依存関係が強まっている国同士で実弾がとびかう紛争がおこることは考えられないが、政治力の象徴としての軍事力は、各国とも外交力とリンクして行使できる体制を整えておくことは不可欠であろう。
海洋国家同士による連携強化と有事における正規軍出動を背景とした海上治安能力の向上、沿岸警備隊能力の強化が大陸国家共産中国とおりあいをつけられる手段としてまずはかられなければならない。と同時に港湾機能の整備、リンクした陸上拠点の整備も制海権、制空権を担保する上でかかすことはできない。
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