2015年7月24日金曜日

アメリカ軍におけるアジア太平洋戦略 ~提言・共産中国を戦わずに封じ込める方策 求められる次世代兵器~

【中国封じ込めに東南アジア各国との連携強化】米国がアジアで作る第二のトライアングル
  20150716日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/5126


611日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、米国のシンクタンクAEIのオースリンが、米国のアジア回帰政策を実行するために、日豪韓印(第一の三角形)と東南アジアの国々(第二の三角形)との間で多数国間の協力の枠組み(二つの同心三角形)を具体化すべきである、と主張しています。

日豪韓印(第一の三角形)と東南アジアの国々(第二の三角形) (画像:iStock

 すなわち、シンガポールで開催されたシャングリラ対話で、カーター米国防長官は、南沙諸島での中国による埋め立ては認めないと明言し、同時に、すべての当事者が同様の行動をやめるよう要求した。米国は中国が領有を主張する島の空域や水域に今まで通り米軍機を飛ばし艦艇を通過させることを明確にした。
 シャングリラでの長官発言は具体策を欠いたので、大した対中抑止効果を持たないのではないかとの懸念を惹起したが、その後長官は、中国の拡張主義への具体的対応を明らかにした。ベトナムでは、警備艇などの売却を約束し、防衛ビジョン共同声明を出した。インドでは、防衛産業協力の拡大を約束した。
 オバマ政権は、大きな国のグループと小さな国のグループをリンクして、一体的な多国間協力の枠組みを構築すべきである。米国は、豪日韓印という民主グループとともに、海洋パトロール、諜報共有や軍事教育などの協力拡大を通じて地域の公共財を提供することができる。
 東南アジアの国々は、内側のもうひとつの三角形となる。インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどは、自国の防衛力を増強し役割を果たすことができる。ベトナムを除き、これ等の国は自由主義国家か、あるいは自由主義国家になりつつある国家であり、より広い自由主義国家のグループの一部になることにより、マレーシアのように、民主化へのコミットメントを鮮明にすることができる。
 二つのグループを一体化することを米国の明示的な政策にすべきだ。それが、アジア回帰戦略を一層具体的、効果的にする方法である。この二つの同心三角形アプローチは、中国の一方的な行動を抑止することに貢献するとともに、アジアの繁栄と安定にも貢献するだろう、と述べています。

出典:Michael AuslinTurning the Asia Pivot Into Reality’(Wall Street Journal, June 11, 2015
http://www.wsj.com/articles/turning-the-asia-pivot-into-reality-1434039972
* * *
 上記は、面白い考え方です。豪日韓印を外側の三角形、東南アジアの国々を内側の三角形と捉え、米国はこれらのグループとの関係強化を図るとともに、これら二つのグループ相互間の協力を強めるように仕向けるべきだと言います。同盟国・友邦国との関係を強化し、同時に、これ等の国の間の協力を推進させるとの考え方は、米安全保障戦略にも述べられており、進むべき方向としては、基本的に望ましいものです。
 しかし、オースリンの主張については、優先順位の置き方、アジア諸国の反応、実現可能性などを考えますと、米政府の明示的な政策とするには問題があるように思われます。
 第1に、アジア回帰策の第一の優先順位は、アジア側内部の多国間協力推進というよりも、米国のアジア太平洋でのプレゼンスの強化であり、アジアの同盟国、友邦国との関係強化であるべきです。
 第2に、アジアの国々を大きな国、小さな国、リベラルな国、そうではない国と分類して議論することは、政治的に無用な反発を招くおそれがあります。民主化されたリベラルなアジア連合とも言うべき議論は、微妙な問題です。加えて、東南アジアの中国観は、シャングリラ対話におけるシンガポールのリー・シェンロン首相の基調演説に見られるように、曖昧であり、一般的な中国包囲網と取られるような議論には敏感になるでしょう。アジア回帰政策に、民主主義を持ち込むのは逆効果です。アジア回帰政策の真髄は、台頭する中国の振る舞いがもたらす問題から、如何に地域の秩序と安定を守るかであって、民主主義の話ではありません。また、アジア諸国は、総体として、米国のアジア回帰を歓迎しているのですから、それを複雑化するようなことは避けるべきでしょう。

 米国のアジア回帰政策は、グランド・デザインよりは、個々の協力の積み重ねでいくことがより効果的であると考えられます。すなわち、米国にとって、具体的には、(1)米国の軍事的プレゼンスと活動を強化し、日豪韓印といった同盟国・友邦国との関係強化を図る、(2)それぞれの状況を配慮しつつ東南アジアの関係国との関係を強化していく、(3)日豪韓印の間の協力強化、東南アジアの関係国間の協力強化などを慫慂していく、(4)南シナ海での中国の行動に対しては、日豪韓印や越、比、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどとの間の有志連合を築き、連携、協力していく、(5)中国とのエンゲージメントを維持、強化していく(6月末に米中戦略経済対話がありましたし、9月には習近平の訪米が予定されています)ことこそが重要な要素ではないでしょうか。
中国を突き放すため】米国の新軍事技術開発
岡崎研究所 20150720日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5160
61319日号の英エコノミスト誌は、圧倒的だった米国の軍事的優位は急速に崩れつつあるので、米国は、優位を維持するために新世代の軍事技術の開発に乗りだした、と報じています。
 すなわち、米国はこれまでも、新技術の開発によってライバルの優位を相殺してきた。先ず、1950年代初期にソ連の大規模な通常戦力に直面すると、核戦力の開発で対抗し、1970年代半ばに核戦力でソ連に追いつかれると、精密誘導ミサイル、偵察衛星、ステルス戦闘機等を開発した。これらの新技術の威力が示されたのが1991年の湾岸戦争だった。
 しかし、その後、これらの新技術が拡散する一方、米国はアフガニスタンやイラクで反乱勢力とのローテク戦争に気をとられ、その機に乗じて中国、ロシア、さらにはイランや北朝鮮までもが軍事面で急速な進歩を遂げてしまった。
 中でも、中国は軍を増強、高度化させ、周辺諸国への強硬な姿勢を強めている。また、ロシアもここにきて軍の近代化を急速に進め、旧ソ連圏での影響力回復を狙っている。
 だからこそ、米国は第三の相殺戦略(the third offset strategy)を打ち出す必要があった。ただ、それは、敵に大きなコストを負わせるような軍事技術の開発でなければならない。
 米国が開発に力を入れるのは、
1)無人ステルス戦闘機
2)小型ドローン
3)無人潜水艇
4)長距離ステルス爆撃機
5)電磁レール・ガン及びレーザー・ガン、だろう。
 防衛予算の逼迫が続く中、新技術開発のための資金は、どこか別の所から持ってくる必要がある。課題は、増大する軍人の給与・福祉手当を抑制することだ。不用な基地の閉鎖や軍の調達の改善も助けになる。
 軍自身も身を切る覚悟が必要かもしれない。例えば、射程距離の短いF-35戦闘機の購入数の縮小や、脆弱性が増している空母の一部放棄が考えられる。ただ、空軍は戦闘機に、海軍は空母に強い愛着があるので、実行は容易ではない。陸軍も規模を縮小しなければならない。
 ところで、これらの障害を全て克服したとしても、第三の相殺戦略は、第一や第二ほど長くは西側の優位を保てないだろう。インターネットの影響もあり、技術は以前よりはるかに早く拡散し、消費者市場での激しい競争のおかげで技術革新自体の速度も増している。
 また、同盟国が開発に協力してくれれば助かるが、あまり期待はできない。英国などは国防費をGDP2%以下にすべきかどうかを議論している。

最後に警告する。相殺戦略は、核抑止の論理が有効であることが前提になっている。しかし、「危険を犯す競争」で勝てると思えば、敵は相手の技術的優位を前に核の瀬戸際作戦に走る可能性がある、と報じています。
出 典:Economist Whos afraid of America? (June 13-19, 2015)
http://www.economist.com/news/international/21654066-military-playing-field-more-even-it-has-been-many-years-big
* * *
 「第三の相殺戦略」は、米国が再び世界での軍事的優位を確立しようとする努力の一環です。
 米国が、アフガニスタンやイラクでのローテク戦争に集中している時、他国、特に中国が軍事力を高め、米国の技術優位を脅かすようになってきました。そこで、米国は、「第三の相殺戦略」を打ち出す必要を認識しました。したがって「第三の相殺戦略」は中国の軍事能力の増大を念頭に置いたものであると言ってもよいでしょう。
 「第三の相殺戦略」の中核的技術は、高度な自律性を備えた無人機や無人潜水艇などのロボティクス、それらの運用を支える強靭性の高いネットワーク、次世代長距離ステルス爆撃機、電磁レール・ガンとレーザー・ガンなどです。これら技術の開発に必要な研究の多くは、シリコンバレーなどの民間ハイテク企業が行っていると言われます。歴史的にはいわゆるdual use 技術(軍事・民生の両方に利用可能な技術)はコンピューターのように、まず軍事技術として開発され、後に民生用に広く使われるようになったものが多いですが、最近ではカーボン・ファイバーのように、まず民生用に開発され、それがのちに軍事用にも使われるようになったものが増えています。最近注目を集めているドローンは典型的なdual use技術です。論説は、英国を念頭に同盟国の協力はあまり期待できないと言っていますが、ロボティクスをはじめ、民生用技術が得意な日本は協力する余地が十分にあります。
 米国が世界で軍事的優位を維持することは日本の安全保障にとっても極めて重要です。さる4月に新日米ガイドラインが策定され、10月には、新たに「防衛装備庁」が設置されることもあり、日本は米国の「第三の相殺戦略」確立に向けて、防衛技術面で積極的に協力すべきでしょう。
尖閣諸島周辺での偶発的衝突に「対応する用意ある」米司令官が表明
2015.7.21 20:24更新 http://www.sankei.com/world/news/150721/wor1507210040-n1.html


記者会見するスウィフト米太平洋艦隊司令官=21日午後、東京都港区

 来日中のスウィフト米太平洋艦隊司令官は21日、東京都内で記者会見し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺など東シナ海での日中対立は外交解決を模索すべきだとした上で、偶発的衝突が万が一発生した場合について「米大統領から命令があれば、対応する用意はある」と表明した。
 オバマ米大統領は尖閣諸島に関し、日本防衛義務を定めた日米安全保障条約5条の「適用対象」と明言している。太平洋艦隊が中国と対峙する可能性を示唆することで中国をけん制する狙いがあるとみられる。
 東シナ海での日中の対立について「武力行使は正しい判断ではない」とし、日中両国だけでなく多国間による外交解決を目指すべきだと強調。同時に「太平洋艦隊は(偶発的衝突に)対応できる準備が整っており、とても満足している」と述べた。
 安倍政権が今国会成立を目指す安保関連法案に関しては、日本が決めることだと断った上で「成立すれば、日米両国の(安全保障)関係を深める良い機会になる」と期待感を示した。(共同)

アメリカ第七艦隊

0 件のコメント:

コメントを投稿