2017年12月6日水曜日

緊迫状態が続く北東アジア情勢 ~北朝鮮が核弾頭と弾道ミサイルに活路を求める限り終わらないか?~

米朝関係というより、北朝鮮という国がどういう国であり、どう国際社会と関わっているのか、世界が何を北朝鮮に求めているのか、をおさえておきましょう。

戦争を好きでおこそうとする国はありません。しかし世界は、戦争を外交的なカードとしてみせながら、活路を見出していく国もあるということです。

今、北朝鮮がガチでリアルな戦争という手段に訴えれば、確実に体制崩壊でしょう。北朝鮮は戦争を継続できるような状況ではないからです。弾道ミサイル一つ作るだけでも膨大な国家予算とインフラをつぎこんでいる状況からみても、彼らにとって不可欠な戦争とは、兵器で渡り合うような戦争ではないかと思います。

まさに金政権体制の生き残りをかけた政治的な戦いを国際社会にしかけていますが、彼らがそのために要求する「核大国」「弾道ミサイル配備」は、周辺国や既存の核大国にとっては、国防上、体制維持のために容認できるものではないのです。

核とミサイルを国家戦略の柱にすえていく政策を続けるために北朝鮮の金政権は、なりふり構わず様々な核以外の「戦い」をしかけてくるでしょう。

米政府、全ての国に北朝鮮との関係断絶呼びかけ

BBC News


北朝鮮が新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射し、米国本土全域に到達すると主張している事態を受けて、米政府は20171129日、国連安全保障理事会の緊急会合で、「全ての国」に北朝鮮との国交と通商関係を断絶するよう呼びかけた。
ニッキー・ヘイリー米国連大使は安保理で、ドナルド・トランプ大統領が中国の習近平国家主席に、北朝鮮への石油供給を停止するよう求めたと明らかにした。
「我々は中国にもっと対応してもらう必要がある」と大使は述べ、「トランプ大統領は今朝、習主席に電話をかけ、中国が北朝鮮への石油供給を断たなくてはならない時点に達したと伝えた」と説明した。
「北朝鮮の核開発を推進しているのは石油だと分かっている。その石油を最も提供しているのは中国だ」と大使は強調した。
中国は北朝鮮にとって最大の同盟国で、最重要な貿易相手。北朝鮮は石油供給の大半を中国に依存しているとみられている。
ヘイリー大使は、米国は紛争を求めていないが、もし開戦となれば北朝鮮の現体制は「完全に破壊される」と強調。さらに、「相次ぐ攻撃的行為」は朝鮮半島周辺の情勢をいっそう不安定なものにしているだけだと警告した。
安保理に先駆けてホワイトハウスは同日、トランプ氏が習主席と電話会談し、「挑発をやめて非核化への道に戻るよう北朝鮮を説得するため、あらゆる手段を使う」よう促したと発表していた。
ミズーリ州の集会で税制改革について演説していたトランプ氏は、政府の減税策が米国経済にとって「ロケット燃料」になると述べる途中で、「小さいロケットマン」と言い、さらに米国経済の話をしながら、「病気の子犬だ」と最高指導者の金正恩・朝鮮労働党委員長を嘲笑した。
トランプ氏はさらにツイートで、「つい先ほど、北朝鮮の挑発行動について中国の習近平国家主席と話した。本日中に北朝鮮に追加制裁を科す。この状況に対応する!」と書いた。
中国国営新華社通信によると、習主席はトランプ氏に、「北東アジアの平和と安定を維持し、朝鮮半島を非核化すること」は中国にとって「揺るぎない目標」だと伝えたという。
北朝鮮は29日未明に発射した弾道ミサイルは、高度4475キロに到達したと発表。これは国際宇宙ステーションの高度の10倍で、大気圏に再突入できる弾頭を搭載していたと主張している。金委員長は、ミサイル発射を「申し分ない」「画期的」なものだと称賛したという。
北朝鮮のこの主張は第三者によって立証されていない。北朝鮮にその技術力があるのか疑う専門家もいる。一方で、「火星15」が高度4475キロに到達したならば、通常の発射角度で13000キロ飛行できることになり、ワシントンも射程圏に入る可能性がある。ただし北朝鮮は、核弾頭の小型化に成功したという主張をまだ立証していない。

朝鮮中央テレビというメディアに騙されることなかれ!北朝鮮が威勢のいい発言をする裏を考えてみましょう。


米でも高まる日本の〝核武装論〟トランプ

「戦争か対話か忍耐か」

樫山幸夫 (産經新聞前論説委員長)
 金正恩は、トランプ大統領の対話呼びかけに挑発をもって応えた。北朝鮮は先週、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、〝火星15〟の発射実験を強行した。「友人になろう」と呼びかけたトランプ氏はメンツをつぶされ、特使を派遣して仲介を試みた中国も顔に泥を塗られた。米政府高官ですら「戦争」の可能性が高まったという悲観的な観測に言及している。自らのコートに入ってきたボールをトランプ大統領は、どう打ち返すのか。緊張が高まるなか、米国内でも日本の核武装、核抑止に関する論議が台頭している。

裏切られた期待感 
 今回のミサイル発射は、2017年11月8日にトランプ大統領が、韓国国会で行った演説のなかで、北朝鮮に対話を呼びかけたことへの、先方なりの〝回答〟なのだろう。大統領は、これまでの北朝鮮の政策がいかに無謀、誤りであったかを指摘、北朝鮮が核開発を放棄すれば、「はるかによりよい道を提示する」として、支援を惜しまない考えを表明した。
 大統領はその後も、「ロケットマン」などどいう金正恩に対する揶揄を封印、「私は彼(金正恩)の友人になろうと大いに努力する。いつの日かそうなるかもしれない」とまで述べ、金正恩の前向きな姿勢を強く促した。
 トランプ大統領を対話呼びかけに駆り立てたのは、北朝鮮がことし9月以来2カ月以上、あらたな挑発行動を控えていたからだった。
 「ひょっとして」という期待感は今回の歓迎されない回答で打ち砕かれたが、米国内の専門家の間には、そもそも、北朝鮮は挑発を控えていたのではなく、より高性能のミサイルを完成させることに科学者たちが没頭、そのための時間がかかっただけだとする見方がもっぱらだ。
 だとすれば、米国は完全に北朝鮮の動向、出方を見誤り、次なる邪悪な策謀をめぐらす相手に秋波を送るという無駄な努力を続けていたことになる。トランプ大統領が「ロケットマン」という揶揄を再開したのは、怒り心頭に発した結果だろうが、米国の情報収集能力という観点からは極めて深刻な事態といわざるをえない。
 トランプ大統領が、北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことも北朝鮮を刺激したという見方もなされている。再指定によって北朝鮮がどれほどの痛痒を感じているかはわからず、その反発だとは断定しがたいが、再指定そのものは歓迎すべきとしても、対話を呼びかけておいて、「テロ支援国家再指定」というのでは、北朝鮮もにわかには、応じられなかったろう。
 繰り返すが、再指定そのものは必要、歓迎すべきことであるが、むしろ、もっと早く行っておくべきだった。早い時期に行っておいて、しばらくしてから、対話を呼びかけるのと、対話を呼びかけておいて、舌の根も乾かぬうちに再指定というのでは、やはり状況が大きく異なる。
 さて、今後の展開は、どうみるべきか。①武力行使ー戦争②話し合い、交渉による解決③にらみ合いの状況が続くーなどの可能性が予測ができるだろう。

国連大使も「戦争」に言及
 最も危険、誰もが避けたいのは、武力行使、戦争だが、米国のヘイリー国連大使は2017年1129日の国連安全保障理事会の緊急会合で、「米国は望まないが、戦争はより現実味を帯びてきた。そうなれば北朝鮮の体制は完全に崩壊する」と述べ、可能性を示唆した。
 北朝鮮が米国の本土やグアムなどに対して、先制攻撃を仕掛けてくることはあり得ない。そういうことをすれば、これまで営々と築き上げてきた核施設が報復によって完全に破壊されるだけでなく、体制の存続はおろか、金正恩の生命すら危険にさらされるからだ。戦争になるかならぬかは、一つにかかって米国、トランプ大統領が武力行使を決断するかにかかっている。
 攻撃を断行したとしても、〝撃ち漏らし〟が生じるのは避けられず、報復による甚大な被害を考えた場合、トランプ大統領としても、すぐに武力行使は難しいだろうという見方は、米国内でも強い。
 しかし米国の専門家らは、ヘイリー大使の発言などに加え、最近、武力行使慎重派のマティス国防長官、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らの発言があまり伝わってこないことなどから、武力行使の可能性もあながち否定できない、という憶測もなされている。
 やはり武力行使に慎重なティラーソン国務長官の更迭問題も、こうした見方を勢いづけている。ティラーソン長官は一貫して外交努力による解決を主張、〝火星15〟の発射後も、外交努力にこだわる姿勢を変えなかった。
 武力行使になった場合、最も大きな影響を受けるのは、日韓両国であり、米国の専門家の中には、安倍首相の影響力に期待する向きも少なくない。「トランプ大統領は安倍首相のアドバイスに耳を傾けるから、とにかく、武力行使が不可であると徹底的に説いてほしい。韓国と中国の首脳も、同様に説得すべきだ。日中韓3国の首脳が協力することも必要だ」とは、元米国務省の朝鮮半島専門家が筆者に語った言葉だが、日中、日韓関係の複雑さを考慮しても、なおという響きが感じられた。
 首相は、すべての選択がテーブルにあるという米国の政策を支持すると繰り返しているが、大統領との信頼関係が本物かどうか、試される時が来るかもしれない。
前提条件なしでの交渉も
 2のシナリオ、対話・交渉による解決は、現時点では、最も可能性が少ない。しかし、依然として多くの国、多くの人々が望む解決手段ではある。
 意外に感じるかもしれないが、北朝鮮が挑発を中断していた期間だけでなく、それ以前から、米国と北朝鮮は、さまざまな形で接触を持ってきている。米国と国交がない北朝鮮にとって、米国内での唯一の公館はニューヨークの国連代表部であるため、ここを通じて米側との接触、協議が折に触れて行われる。「ニューヨーク・チャンネル」といわれ、表舞台に登場することは少ないが、常に活用される重要な窓口だ。
 今年春には、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表がオスロで、北朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)米州局長と会っていることも、米朝接触が頻繁であることを裏付けている。
 
 ただ、交渉を行うにしても、現時点では、その糸口をつかむのが難しい。交渉が実現しても、何を与えて何をとるのか、つまり、交渉の条件を設定するにも困難がある。核開発を断念する意思のない北朝鮮は、「核」が議題ならば、交渉に応じないと宣言しているからだ。トランプ大統領がイランとの核合意について、否定的な認識を示していることも、北朝鮮にとっては、警戒要因になっているとみていい。
 しかし、とりあえずは、前提条件なしで話し合う可能性を模索する動きも米国内ではあるともいう。条件抜きでとにかく双方が顔を合わせて信頼関係を築くことから始めるー。それによって何らかの展望が開けてくる可能性もあるという期待感だ。願望に近いというべきだろうが、きっかけさえつかむことができれば不可能ではないだろう。
 その場合、かつての6か国協議の再開、米朝2国間対話、6か国協議の原型ともいえる、米朝に中国を加えた3か国協議などさまざまななど方式がありうる。情勢の緊迫にかかわらず、米朝による水面下、秘密裏の接触が静かに進むだろう。

「戦略的忍耐」の再来も 
 第3の展開、このままの緊張状態、にらみ合いが続くという展開だ。
 このケースでは、北朝鮮が核開発放棄の意思を示さない限り対話に応じないというオバマ政権の「戦略的忍耐」政策にみられたように、事態が膠着し長期化する可能性がある。
 トランプ大統領がさきに、中国の習近平国家主席に、北朝鮮への原油供給を停止するよう迫ったが、北朝鮮を〝日干し〟にするための制裁はさらに継続・強化されるだろう。
 しかし、罪のない市民に影響が出ないようにするのは困難であり、その限りにおいて、制裁には限界がある。そもそも北朝鮮は朝鮮戦争当時の19506月以来、70年近く制裁を科され続けてきている。いまごろ、制裁を強化しても北朝鮮の指導部が痛みを感じるとは思えない。米国の一部メディアが、「冷戦の再来」などと長期化の可能性を報じているのはこのためだ。
知日派も「核戦略」議論の必要性指摘 
 こうしたなかで、注目すべきは、米国内で日本の核武装、日本に対する核抑止力提供という議論が米国内でなされ始めていることだ。
 米外交界の長老で、ニクソン政権の大統領補佐官や国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏が20178月に米紙、「ウォールストリート・ジャーナル」 への寄稿の中で、朝鮮半島での現在の危機が続けば、いずれ日本は核武装するだろうと〝予測〟したのが契機だった。その後、米シンクタンクや軍事専門家の間で、歓迎も含めてさまざまな論議がなされている。
 121日の産経新聞で、知日派のケント・カルダー米ジョンズホプキンス大ライシャワー東アジア研究所長のインタビュー記事が掲載され、カルダー教授はこの中で、「米国と日本は、核戦略を集中的に議論し、抑止力の信頼性について、今以上に日本が信頼を持てるシステムを構築する必要がある。韓国や日本に戦術核を配備することも考えられる」との見解を示した。知日派として日本の核アレルギーの存在を承知のうえで、「戦略的な観点から理解されるだろう」と予測している。
 112日の米フォックス・ニュースはトランプ大統領へのインタビュー番組を放映したが、聞き手の人気トークショーホスト、ローラ・イングラハム女史が、「日本は米国の核抑止力を望んでいるのではないか」と質問。大統領は、「日本は(現在の状況を)大変懸念している。中国やだれに対しても、北朝鮮にこういうことを許しておくと、自分自身が大変なことになると伝えている」と答えた。明確さは欠くものの、相当に含みのある答えだった。
 日本国内でも、自民党の石破茂元幹事長ら、核武装論議について言及するむきが散見されるのは周知のとおりだ。今後の展開は予断を許さないが、わが国の核武装まで他国で論じられることはかつてなかったことだ。北朝鮮の核問題は、日本にとっても、深刻、切実なところまで来たようだ。

核弾頭と弾道ミサイルは北朝鮮が「生き残る」ための切り札ですから、そう簡単に使ったりしません。彼らが日常的に国際社会と向き合うための攻撃手段は、別のところにあります。朝鮮半島の「緊張状態」が破れるか、否かのカギは、アメリカと共産中国にあるように思います。米中関係の動向に目を離すことなかれ。




【寄稿】 北朝鮮は均衡を破るのか そのきっかけは

BBC News


ジョン・ニルソン=ライト博士、ケンブリッジ大学および英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)
冷戦中、核戦略の専門家たちは、抑止力と国の安全を保障するために「どれだけあれば十分なのか」を、しばしば問題にしていた。平壌で戦略を策定している担当者たちも今、まさに同じ自問自答をしているかもしれない。
北朝鮮が20171129日に劇的に発射した「火星15」長距離ミサイルは、ワシントンやニューヨークを攻撃することも可能だとみるアナリストもいるからだ。
2006年以降、核実験を6回繰り返し、2017年だけで20回以上もミサイルを発射してきた北朝鮮は、その軍事力の進歩によって、米国の攻撃に対する事実上の核抑止力を確保するところまで達したのだろうか。
この疑問は、単なる学術的な興味にとどまらない。
北朝鮮は常に、自分たちの核兵器など大量破壊兵器はどれも純粋に、防衛目的のものだと主張してきた。それを前提として、もし北朝鮮政府が自分たちは安全だと安心できるなら、金正恩は強い立場から米国と交渉し、政治的・経済的制裁の緩和を要求できるようになる。
米国相手にそのような交渉が可能になれば金氏は、軍の近代化と持続可能な経済成長という二つの戦略上の優先課題を共に実現できる。そしてそれができれば、国民に対して自分の指導者としての地位の正当性を強調することができる。
さらに発射実験を
ミサイル発射後の北朝鮮の正式発表によると、最新の実験は長期間におよぶ技術開発の到達点という位置づけだ。金正恩の言葉を借りるなら、「ついに国の核武力の完成という歴史的大業、ロケット大国建設の偉業が実現した」大事な日だったのだ。
今回の実験は、北朝鮮の技術力がますます高度なものになりつつあることの確認だった。そしておそらく、今後も継続する実験の序曲だった。
米国と同盟各国は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を載せて、一定の精度で米国の都市に送り込めるようになる日に、じわじわと近づいているのではないかと心配している。得られている証拠からすると、この目的達成までには少なくとも数カ月、あるいは1年か2年かかると思われる。
そのため北朝鮮は、同じような長距離ミサイルの実験を重ねて標的攻撃能力の精度を上げる必要がある。意味のある抑止力となるには、標的に当てる能力、耐熱力、大気圏再突入能力の開発が必要だ。
軍事装備の実験の目的は、単なる抑止力増強に限らない。このことを念頭におく必要がある。軍事力を誇示し、敵からの圧力に抵抗する手段でもある。
北朝鮮幹部はしばしば、外部からの挑発に対して弱い様子は見せてはならないのだと指摘する。特に、歴史的な敵国・米国に対しては。
ダビデとゴリアテの神話
トランプ大統領は、いずれ北朝鮮を「炎と激怒」で「完全に破壊」しなくてはと思うかもしれないと警告し、金正恩を「ロケットマン」と嘲笑した。米国と国際社会は制裁を強化した。トランプ政権はさらに、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した。
これはいずれも北朝鮮からすれば、敵対的意図の証拠だ。
トランプ大統領にすれば、自分のタフな物言いは巧みな交渉戦術だと思えるのかもしれない。現在のこう着状態を打破するため、北朝鮮と中国の両方に圧力をかけているのだと。
北朝鮮外務省の幹部の一人は、トランプを「狂ってる(中略)完全なごろつき(中略)ひたすらみっともない哀れなおしゃべり野郎」と呼んだ。
だとするならば、北朝鮮が今後の実験を抑制する必要はほとんどないように思える。ただでさえ北朝鮮の大掛かりなプロパガンダの仕組みは、韓国との戦争の可能性に向けて、国民を奮い立たせているのだし。
実験を繰り返せば、国内の決意は強化され、米国に立ち向かえるだけの自分たちの能力を示すことになる。
北朝鮮政府は、自分たちは米国帝国主義に抵抗しているのだと主張する。語っているのは、単純とは言えないまでも素朴な(そして根本的には噓いつわりの)物語だ。旧約聖書のダビデとゴリアテのように、国際社会の横暴な巨人に立ち向かう自分たちは勇敢でタフな小国なのだと言わんばかりに。
不注意で不用意なツイートを繰り返し、暴言を公言し続けるトランプは、北朝鮮のこの論調を勢いづかせるばかりだ。
均衡はいつ破れるのか
今のところ、北朝鮮が米国と中身のある対話を求めている様子はない。中国とロシアが提案した、双方向の凍結案(米韓合同軍事演習の中止と引き換えに北朝鮮はミサイル実験を停止するというもの)を受け入れようとする様子もない。
北朝鮮が部分的ながらも自制の様子を見せているのは、周辺地域にとってはわずかだが一定の安心につながる。最新の実験は915日以来初めてで、朝鮮半島に2カ月半近く続いた沈静期の終わりを意味した。
加えて、金正恩の行動には、一定の方法論と一貫性があるように見える。これまでのところは、グアムやハワイにミサイルを発射するなどという、重大な一線を超える挑発は控えている。
しかし、これはいつまで続くのか。
大気圏核実験を実施する可能性はある。米国や韓国の軍司令部へのサイバー攻撃や、半島西部の北方限界線付近での海上衝突といった低強度の挑発行為もあり得る。そうなれば米韓は、相応ながらもはっきりとした強硬な反撃に出るかもしれない。
そうなれば今度は北朝鮮側が米韓の動きを誤解し、さらに実質的な軍事行動の前哨戦と受け止めるかもしれない。そうすれば、低強度紛争がもっと大きく双方に破壊的ダメージをもたらす紛争にエスカレートする危険が高まる。
こういう状況では、実験についても同様だが、「どれだけやれば十分なのか」という論点がきわめて重要になる。
片方にとっては、国益保護に最低限必要なもので、相手に警告するための行為だったとしても、相手はそれをいとも簡単に「一線を超えた、やりすぎだ、意図的な挑発だ」と解釈してしまえる。
そのような行為によって、均衡はあっさりと破れる。安定して予測可能な状態から、予測不可能な不安定へと。そして、壊滅的な結果につながりかねないエスカレーションへと。
ジョン・ニルソン=ライト博士は、英シンクタンク「チャタムハウス」(王立国際問題研究所)北東アジア担当上級研究員、およびケンブリッジ大学日本政治東アジア国際関係講師

朝鮮半島の平和秩序の均衡を破られるとしたら、アメリカの軍事的攻撃と北朝鮮の内部崩壊でしょう。アメリカの軍事的圧力による北朝鮮国内の反金体制の動きからくる内部崩壊です。ただアメリカの狙いはまさにそこにあるかもしれませんが。





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