2017年12月11日月曜日

これからどうなっていくのか?北朝鮮情勢 ~アメリカは限定的予防戦争に踏み切るのか?~

米国の「予防戦争」発動間近、決断を迫られる日本

北朝鮮の反撃は必至、日本は犠牲を払う覚悟はあるのか?
北村淳
米ホワイトハウスで話すドナルド・トランプ大統領(20171120日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEBAFPBB News

 平成291129日、北朝鮮は「火星15号」と称するICBM(大陸間弾道ミサイル)の試射を実施した。米軍当局の計算では、通常軌道で発射された場合にはアメリカ全域が射程距離にすっぽり収まるという。いよいよ北朝鮮がアメリカ領内を核攻撃できる能力をほぼ確実に手にしつつあることが確実な状況に立ち至ってしまった。トランプ大統領は、すでに半年以上も前から軍事オプション発動をほのめかしているが、実際には中国の影響力が発揮されることを期待しつつ経済制裁を中心とした外交的解決のための努力を継続してきた。しかし、これまでのところ、全く成果は認められない。事態は悪化をたどる一方である。

トランプ政権のオプションは?
 北朝鮮に確実な対米核攻撃能力を手にさせないために現在トランプ政権がテーブル上にのせているオプションは、大ざっぱに言って以下の3通りである。
1)外交的解決
 国際社会とりわけ中国の北朝鮮への影響力をより強化させて、北朝鮮にこれ以上のICBM開発を思いとどまらせる──少なくとも停止させる。
2)限定的予防戦争
 北朝鮮のICBM、移動式発射装置ならびに関連施設を軍事攻撃して完全に破壊する。
3)徹底的予防戦争
 上記軍事攻撃と同時に、金正恩ならびに政権首脳たちを葬り去る──少なくとも軍とのコミュニケーションを分断し(「斬首作戦」と呼ばれている)、可能ならば核関連施設を接収する。
過去四半世紀の経験によると、北朝鮮と外交交渉をしても単に北朝鮮側に時間を与えるだけの結果となりかねない。そこでアメリカ外交当局は、中国を引き入れて、中国の影響力を担保として北朝鮮にICBM開発を中止あるいは凍結させようと考えている。しかしながら、北朝鮮軍と中国軍の裏の関係ははなはだ不鮮明であるうえ、中国が北朝鮮問題を外交カードとして用いながら、南シナ海ならびに東シナ海への膨張主義的進出を加速させているのが現状だ。トランプ政権が、これ以上中国に北朝鮮ICBM開発問題への関与を期待すると、東アジアでのアメリカの影響力はますます低下してしまうことになる。
したがってアメリカにとっては、中国の影響力を当てにせずに、アメリカが主導して北朝鮮による対米核攻撃能力を摘み取る方策、すなわち北朝鮮に対する「予防戦争」の発動しかない、ということになる。とはいっても、軍事オプション発動には、アメリカ軍当局は極めて慎重にならざるを得ない、というのが現状である。
「徹底的予防戦争」のハードルは高い
 アメリカが北朝鮮に対する先制攻撃、すなわち「予防戦争」を実施する目的は、アメリカ領域内を核攻撃可能なICBMならびにそれを発射する地上移動式発射装置(TEL)を完全に葬り去ることにある。
 したがって、アメリカ軍による先制攻撃は、北朝鮮軍のICBMとその発射関連装置の格納位置(山間部の洞窟や地下式施設)が判明した場合に限られることになる。つまり、ICBMとその発射関連装置を完全に破壊することが可能な確証を手にするまでは、「予防戦争」が発動されることはない。
 場合によっては北朝鮮のICBM関連施設のみならず金正恩政権首脳を一網打尽に排除してしまい、ミサイル開発能力と核開発能力を一掃してしまう、といった「徹底的予防戦争」も取り沙汰されてはいる。しかし、国防当局の戦闘態勢準備や政府首脳、そして連邦議会などの論調といった現状からは、とてもそのような軍事作戦を実施することはできない。最大の理由は、「徹底的予防戦争」を実施するには、どうしても地上軍を北朝鮮領内に送り込まなければならないからである。
徹底的予防戦争を実施する場合、韓国軍特殊部隊と行動を共にする米軍特殊部隊に引き続き、米海兵隊上陸部隊が侵攻し、米陸軍の大部隊が投入されることになる。地上軍が北朝鮮領内での作戦行動を開始すると、アメリカ軍将兵の死傷者をはじめとする甚大な損害が予想される。そのような犠牲は極力避けなければならないというのがアメリカ国防当局はじめ米国世論の支配的論調である。
それだけではない。アメリカ軍地上部隊が北朝鮮領内に足を踏み込むと同時に、現在中朝国境付近に展開している中国地上軍大部隊が、「北朝鮮からの難民を保護するとともに、米韓連合軍の侵攻により大混乱に陥った北朝鮮の秩序を維持する」という名目で北朝鮮領内に雪崩れ込むことは確実視されている。
 その結果、米韓連合地上軍は、北朝鮮軍に対する掃討作戦だけではなく、中国地上軍と衝突する可能性にも直面する。
 万が一にも中国軍との間で戦闘が勃発すると、隣接する中国からは中国軍航空部隊それに海軍部隊も出動し、本格的な米中戦争へと発展しかねなくなる。大戦争はちょっとした偶発的衝突が引き金となり得ることは、古今東西の歴史が物語っている。
 以上のような理由によって、現時点では徹底的予防戦争をトランプ政権が発動する可能性は極めて小さいと考えざるを得ない。
十二分に現実的な「限定的予防戦争」
 徹底的予防戦争と違って限定的予防戦争、すなわち北朝鮮のICBM発射・開発能力を破壊して、少なくともアメリカに対する核攻撃の可能性だけは除去する戦争は、現状においても実施される可能性は否定できない。
 もちろん、アメリカ政府、とりわけ国防当局ならびに外交当局としては極力軍事力の行使は差し控えたいのが本音である。だが、外交的対処では中国の動きに期待せざるを得ない。とどのつまりは北朝鮮情勢も打開できず、南シナ海と東シナ海への中国の膨張主義的拡張政策も完成の域に近づけさせてしまい、下手をすると台湾も中国の手中に落ちかねない。
したがってトランプ政権が、より確実にアメリカへの核攻撃の芽を摘むためには限定的予防戦争を敢行するしかないと腹をくくることは、十二分に現実的であるといえよう。ただし、限定的予防戦争は徹底的予防戦争よりもアメリカ側(韓国や日本も含む)の人的・物的犠牲が少ないとはいえ、それでもマティス米国防長官がかねがね口にしているように「想像を絶するほど壊滅的」であることには変わりはない(下の図を参照)。


北朝鮮からの報復攻撃圏

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51782
 そして、日本がそのような言語に絶するほどの損害を被らないためには、トランプ政権に予防戦争を開始させないという選択肢しか存在しない。莫大な税金を投入してアメリカから弾道ミサイル防衛システムを購入することではないのだ。
 しかし、その瞬間に日米同盟は危殆に瀕しかねない。まさに、日本政府・国会は極めて厳しい決断を迫られつつあるといえよう。

維新嵐・アメリカは長距離ミサイルの射程圏内に入ったとしているのはつい最近のことですが、我が国はずっと以前から中距離ミサイルの射程圏内に入っています。日本人拉致問題も抱えており、アメリカよりも繊細かつ大胆な外交政策が常に求められています。

【アメリカの軍事的圧力と抗する北朝鮮】

【寄稿】 北朝鮮は均衡を破るのか そのきっかけは

2017124http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42218067
冷戦中、核戦略の専門家たちは、抑止力と国の安全を保障するために「どれだけあれば十分なのか」を、しばしば問題にしていた。平壌で戦略を策定している担当者たちも今、まさに同じ自問自答をしているかもしれない。
北朝鮮が2017年11月29日に劇的に発射した「火星15」長距離ミサイルは、ワシントンやニューヨークを攻撃することも可能だとみるアナリストもいるからだ。
2006年以降、核実験を6回繰り返し、2017年だけで20回以上もミサイルを発射してきた北朝鮮は、その軍事力の進歩によって、米国の攻撃に対する事実上の核抑止力を確保するところまで達したのだろうか。
この疑問は、単なる学術的な興味にとどまらない。
北朝鮮は常に、自分たちの核兵器など大量破壊兵器はどれも純粋に、防衛目的のものだと主張してきた。それを前提として、もし北朝鮮政府が自分たちは安全だと安心できるなら、金正恩は強い立場から米国と交渉し、政治的・経済的制裁の緩和を要求できるようになる。
米国相手にそのような交渉が可能になれば金氏は、軍の近代化と持続可能な経済成長という二つの戦略上の優先課題を共に実現できる。そしてそれができれば、国民に対して自分の指導者としての地位の正当性を強調することができる。
さらに発射実験を
ミサイル発射後の北朝鮮の正式発表によると、最新の実験は長期間におよぶ技術開発の到達点という位置づけだ。金正恩の言葉を借りるなら、「ついに国の核武力の完成という歴史的大業、ロケット大国建設の偉業が実現した」大事な日だったのだ。
今回の実験は、北朝鮮の技術力がますます高度なものになりつつあることの確認だった。そしておそらく、今後も継続する実験の序曲だった。
北朝鮮のミサイルの推定射程距離。⑤が最新の「火星15
米国と同盟各国は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を載せて、一定の精度で米国の都市に送り込めるようになる日に、じわじわと近づいているのではないかと心配している。得られている証拠からすると、この目的達成までには少なくとも数カ月、あるいは1年か2年かかると思われる。
そのため北朝鮮は、同じような長距離ミサイルの実験を重ねて標的攻撃能力の精度を上げる必要がある。意味のある抑止力となるには、標的に当てる能力、耐熱力、大気圏再突入能力の開発が必要だ。
軍事装備の実験の目的は、単なる抑止力増強に限らない。このことを念頭におく必要がある。軍事力を誇示し、敵からの圧力に抵抗する手段でもある。
北朝鮮幹部はしばしば、外部からの挑発に対して弱い様子は見せてはならないのだと指摘する。特に、歴史的な敵国・米国に対しては。
ダビデとゴリアテの神話
トランプ大統領は、いずれ北朝鮮を「炎と激怒」で「完全に破壊」しなくてはと思うかもしれないと警告し、金正恩を「ロケットマン」と嘲笑した。米国と国際社会は制裁を強化した。トランプ政権はさらに、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した。
これはいずれも北朝鮮からすれば、敵対的意図の証拠だ。
トランプ大統領にすれば、自分のタフな物言いは巧みな交渉戦術だと思えるのかもしれない。現在のこう着状態を打破するため、北朝鮮と中国の両方に圧力をかけているのだと。
北朝鮮外務省の幹部の一人は、トランプを「狂ってる(中略)完全なごろつき(中略)ひたすらみっともない哀れなおしゃべり野郎」と呼んだ。
だとするならば、北朝鮮が今後の実験を抑制する必要はほとんどないように思える。ただでさえ北朝鮮の大掛かりなプロパガンダの仕組みは、韓国との戦争の可能性に向けて、国民を奮い立たせているのだし。
実験を繰り返せば、国内の決意は強化され、米国に立ち向かえるだけの自分たちの能力を示すことになる。
北朝鮮政府は、自分たちは米国帝国主義に抵抗しているのだと主張する。語っているのは、単純とは言えないまでも素朴な(そして根本的には噓いつわりの)物語だ。旧約聖書のダビデとゴリアテのように、国際社会の横暴な巨人に立ち向かう自分たちは勇敢でタフな小国なのだと言わんばかりに。
不注意で不用意なツイートを繰り返し、暴言を公言し続けるトランプは、北朝鮮のこの論調を勢いづかせるばかりだ。
均衡はいつ破れるのか
今のところ、北朝鮮が米国と中身のある対話を求めている様子はない。中国とロシアが提案した、双方向の凍結案(米韓合同軍事演習の中止と引き換えに北朝鮮はミサイル実験を停止するというもの)を受け入れようとする様子もない。
北朝鮮が部分的ながらも自制の様子を見せているのは、周辺地域にとってはわずかだが一定の安心につながる。最新の実験は915日以来初めてで、朝鮮半島に2カ月半近く続いた沈静期の終わりを意味した。
加えて、金正恩の行動には、一定の方法論と一貫性があるように見える。これまでのところは、グアムやハワイにミサイルを発射するなどという、重大な一線を超える挑発は控えている。しかし、これはいつまで続くのか。
大気圏核実験を実施する可能性はある。米国や韓国の軍司令部へのサイバー攻撃や、半島西部の北方限界線付近での海上衝突といった低強度の挑発行為もあり得る。そうなれば米韓は、相応ながらもはっきりとした強硬な反撃に出るかもしれない。
そうなれば今度は北朝鮮側が米韓の動きを誤解し、さらに実質的な軍事行動の前哨戦と受け止めるかもしれない。そうすれば、低強度紛争がもっと大きく双方に破壊的ダメージをもたらす紛争にエスカレートする危険が高まる。
こういう状況では、実験についても同様だが、「どれだけやれば十分なのか」という論点がきわめて重要になる。
片方にとっては、国益保護に最低限必要なもので、相手に警告するための行為だったとしても、相手はそれをいとも簡単に「一線を超えた、やりすぎだ、意図的な挑発だ」と解釈してしまえる。
そのような行為によって、均衡はあっさりと破れる。安定して予測可能な状態から、予測不可能な不安定へと。そして、壊滅的な結果につながりかねないエスカレーションへと。
ジョン・ニルソン=ライト博士は、英シンクタンク「チャタムハウス」(王立国際問題研究所)北東アジア担当上級研究員、およびケンブリッジ大学日本政治東アジア国際関係講師
【北朝鮮には効果的?しかし波紋を呼ぶ米韓合同軍事演習】
米韓最大の合同空軍演習開始 北朝鮮は反発 
BBC News 2017年12月5日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11309 https://youtu.be/vzXgeNrDfGk 約230機の航空機が参加する米韓空軍の定例合同軍事演習「ビジラント・エース」が2017年12月4日、韓国と周辺で5日間の日程で始まった。ステルス戦闘機24機を含む過去最大規模の空軍演習に、北朝鮮は強く反発している。 提供元:http://www.bbc.com/japanese/video-42232846

米戦略爆撃機が朝鮮半島上空を飛行 北朝鮮に武力誇示
BBC News
韓国軍は2017126日、米空軍の戦略爆撃機B1B4日に始まった米韓合同空軍演習に参加したと発表した。北朝鮮に対して武力を誇示する動きとみられる。B1B「ランサー」は戦場の爆撃を想定した訓練を行ったという。
北朝鮮は20171129日、米国本土に到達可能だとする新たな弾道ミサイルの発射実験を行った。米軍は過去にも、北朝鮮のミサイルあるいは核の実験の後に爆撃機を飛ばし武力を誇示したことがある。
韓国軍によると、B1Bは北朝鮮との国境に近い北東の江原道で、戦場への爆撃を想定した訓練を米韓両軍の戦闘機と共に行った。8日までの予定の米韓合同空軍演習「ビジラント・エース」には、200機以上の飛行機と何千人もの兵士が参加している。演習は北朝鮮によるミサイル発射実験の前から計画されていた。
北朝鮮は、米韓の合同軍事演習を戦争のリハーサルだとして、毎回激しく非難してきた。北朝鮮は4日、国営メディアを通じて今回の軍事演習を「核戦争を挑発する動き」だと述べた。
国連のジェフリー・フェルトマン事務次長(政治担当)が現在、政策協議のため北朝鮮を訪問している。国連高官が北朝鮮を訪問するのは2011年以来のこと。
北朝鮮による先月のミサイル発射実験を受けて、国際社会からは強い批判の声が上がった。米国のニッキー・ヘイリー国連大使は、もし開戦となれば北朝鮮の現体制は「徹底的に破壊される」と語った。
聯合ニュースは韓国軍筋の話として、「ドローンボット」と呼ばれる武装したドローン(無人機)の戦闘団を来年発足させると報じた。
ドローンボットは北朝鮮の最も主要な標的である核・ミサイル施設の情報収集を行うほか、攻撃を実施することも可能。ただし、報道は具体的な作戦の実施方法については伝えていない。


維新嵐・アメリカの北朝鮮に対する「斬首作戦」は、はたして可能なのか?
うかつに個別的自衛権を行使して攻撃をかければ、アメリカにとってはイラク戦争の二の舞でしょう。アメリカ軍が、北朝鮮の核施設など攻撃しているうちに共産中国人民解放軍は、鉄道で投射されるかもしれません。首都平壌をおさえて共産中国にとって都合のいい政権をたてようとするでしょう。金正恩は海外に亡命することでしょう。

「北朝鮮問題は中国の問題ではない」とはもう言えない

岡崎研究所

英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、2017116日付け同紙に「中国、トランプと北朝鮮の悪夢:中国は半島での戦争に引きずり込まれうる」との論説を寄せ、北朝鮮問題が中国にとっても頭の痛い問題であると論じています。論旨は次の通りです。
英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、116日付け同紙に「中国、トランプと北朝鮮の悪夢:中国は半島での戦争に引きずり込まれうる」との論説を寄せ、北朝鮮問題が中国にとっても頭の痛い問題であると論じています。論旨は次の通りです。
(iStock.com/Rost-9D/Ognjen18/Ismailciydem)

 西側ではトランプの北の脅威に「火と怒り」で対応するとの警告に焦点が当てられているが、北朝鮮危機は中国にも大きな危険をもたらす。もし戦争になれば、中国は文字通り前線国家になり、核の灰、難民流入、地域での力の均衡の変化に直面する。
 この厳しいリスクは中国の専門家の中に驚くべき種類の多くの意見を生み出している。「中国と米国は北朝鮮に対する共同軍事作戦をすべし」と言う人もいるし、「米国の政策は災難をもたらす。米国とは公に断絶すべし」という人もいる。
 中国の公的立場はこれら二つの策を避け、習近平政権は「凍結のための凍結」(北は核開発を凍結し、米は軍事演習を凍結する)政策で外交を再開することを求めている。これは良い考えに聞こえるが、北朝鮮も米国もその方向に行く気はない。
 その現実を踏まえ、中国は他の過激な代替案も考えざるを得なくなっている。ある高官は、「北制裁に同意し、平壌への影響を失った。対米関係を悪くしても、金正恩政権との関係を再構築すべし」という。しかし中国の学者の中には、全く違う意見の人がいる。彼らは、核の北朝鮮は韓国、日本、米国への脅威であるのみならず、中国への脅威でもある、戦略的には、日韓の核武装につながりかねない、としている。
 中国の専門家は、北の核実験の失敗や寧辺核施設での事故が深刻な環境破壊につながることを心配している。北による核兵器の使用は中国に危険をもたらす。
 そういうわけで中国の専門家の中には、中国が米国との共同軍事作戦で金政権を倒し、核兵器を確保すべしという人がいる。こういう戦略は中国に事態の進展を傍観するのではなく、中国の安全保障のために積極的な措置をとることを可能にする。米国と協働すれば、戦後秩序について「大取引」、グランド・バーゲンを成し遂げられるかもしれない。統一朝鮮からの米軍撤退の保証、台湾の地位や南シナ海問題での譲歩獲得もありうる。しかし米中共同作戦は危険を伴う。北朝鮮が核または通常兵器で報復に出る可能性がある。
 こういうことを考慮し、もしトランプ政権が北を攻撃すれば、中国は国境を守り、難民を押しとどめるために50キロだけ北朝鮮に入ることを主張している人もいる。中国人の中には、米国の先制攻撃は日韓と米国との関係悪化につながり、米国の太平洋での影響力を壊し、中国の利益になるという人もいる。
 しかし、中国が紛争の局外に居れば、これに伴うコストもある。米国が中国の同盟国・隣国で戦争する中、何もできずに傍観者に見える事にもリスクがある。
 ワシントンでは北朝鮮には悪い選択肢しかないと言われるが、北京にとってもそうである。
出典:Gideon Rachman,China, Trump and the North Korean nightmare’(Financial Times, November 6, 2017
https://www.ft.com/content/570b456a-c2d3-11e7-b2bb-322b2cb39656
この論説は、興味深い論説です。北朝鮮核問題について、中国内部ではいろいろな議論があることを良く紹介しています。かなり取材をした結果なのでしょう。
 王毅外相は、以前、「北の核問題は米朝間の問題で、中国の問題ではない」という趣旨の発言をしたことがあります。「凍結のための凍結」などは、その考え方から出たものであるが、北も米国も応じる気がありません。中国は、王毅外相が言ったような姿勢でいることができなくなってきています。
 米中間で北朝鮮の核をどうするか、北朝鮮をどうするか、さらに朝鮮半島をどうするか(二国家併存か統一か)などじっくりと話し合うことになれば、北朝鮮問題の解決が見えてくるかもしれません。しかし、中国がそういう話し合いに応じてくるか否かはいまだ不透明です。
 北に対する圧力強化とともに中国にも北の核開発が中国に不利な状況を作ることを示していく必要があると考えられます。
 中国が対北制裁をきちんとやることを求め、北と中国の関係改善の選択肢(北は習近平に祝意を述べるなど関係改善を狙っている)をなくすことがまず重要です。
 次に、北の核開発が中国に不利な状況を作り出すことを中国に分からせる措置が必要です。
 日韓の核兵器保有が最も効果があるのでしょうが、これはなかなか難しいことです。ただ、日本がNPT脱退を検討するというだけでも相当な効果はあるでしょう。
 もっと現実的な措置は日米によるミサイル防衛の大々的展開です。レーガン大統領はSDI(戦略防衛構想)を打ち出し、これにソ連が驚愕し、レーガン、ゴルバチョフのレイキャビク会談になりました。当時、ソ連は、自分たちの核兵器を時代遅れのものにしようとする米国の計画に大慌てしました。これに倣い、北の核開発を中国が止めないと、中国の戦略核兵器の威力を大幅に減じるようなミサイル防衛が出来上がってくる、と考えさせるのです。韓国へのTHAAD配備への中国の反応を見ると、これは十分に成果が期待できる戦術でしょう。北の核を使えなくする手段にもなるでしょう。もっともミサイル防衛が飛んでくる核ミサイルを全部撃ち落とせるなどとは考えられません。
 トランプ訪中の結果は、良く分析する必要があります。その分析に際しても、一つの視点をこの論説は与えてくれます。


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