2017年10月15日日曜日

共産中国は北朝鮮へ軍事的干渉を行うのか? ~中朝国境に集結する人民解放軍~

中国の「北朝鮮への電撃侵攻」は起こり得るのか?

北朝鮮との国境周辺地帯に中国人民解放軍が集結

北村淳
中国が米国に先駆けて北朝鮮に先制侵攻することはあるのか? 香港で、中国人民解放軍の兵士を閲兵する習近平国家主席(2017630日撮影、資料写真)。(c)AFP/DALE DE LA REYAFPBB News

 現在、中国と北朝鮮の国境周辺地帯に、中国人民解放軍が集結していると考えられている。もし米国のトランプ政権が北朝鮮に先制攻撃を仕掛けた場合、直ちに北朝鮮領内に進出し、北朝鮮から中国に逃げ込もうとする北朝鮮難民をコントロールし、混乱状態に陥っている北朝鮮の治安を維持するため、とみられる(本コラム2017928「中国の掌で対決しているアメリカと北朝鮮])このような中国の戦略に加えて、「より積極的に中国人民解放軍が北朝鮮国境を踏み越えるのではないか?」という別のシナリオまでもが、アメリカのシンクタンクの中国・東アジア研究者などの間で取り沙汰されるようになってきた。

中国が先制侵攻する理由
 中国軍による先制侵攻の可能性を指摘する人々は、侵攻は次のような流れになるものと考えている。
「北朝鮮が弾道ミサイルに搭載する核弾頭の製造能力を獲得し、アメリカ西海岸には確実に届くと言われているICBMも手にすることになると、いよいよアメリカによる北朝鮮先制攻撃の可能性が強まる」
「アメリカによる先制攻撃が実施された場合、韓国や日本に対しても北朝鮮は核攻撃を加えるかもしれない──少なくとも何らかの“報復攻撃”を実施することはほぼ確実だ。そして、朝鮮半島は大混乱に陥り、隣国である中国にも大量の難民が流入してくることは避けられない。場合によっては隣接している中国領内も放射能汚染の被害を受けるかもしれない。いずれにせよ朝鮮半島で戦闘が勃発すれば、中国にも大混乱が波及することは必至である」
「そのため中国指導部が、アメリカの先制攻撃に先んじて、満州の中朝国境地帯に集結している中国人民解放軍(以下、中国軍)部隊を北朝鮮に侵攻させる可能性が高まってきた。先制侵攻の場合、中国が国境を越えるタイミングを自ら決定することができ、完全な主導権をもって侵攻作戦を実施できるからだ」
「朝鮮人民軍(以下、北朝鮮軍)は韓国との国境地帯に重点配備されているので、中国国境の防衛体制は手薄である。そのため、中国側が中朝国境から北朝鮮領内に大部隊を送り込むのは容易である。もちろん、中国の海軍力や航空戦力に対して北朝鮮の海軍力や航空戦力はものの数ではないため、中国軍は北朝鮮西海岸からも侵攻することが可能だ」
「それ以上に侵攻作戦成功の決め手となるのは、中国が北朝鮮軍内部に“裏切り者”を醸成する工作を進めていることだ。それらの反体制分子を利用した『トロイの木馬』戦術によって、北朝鮮に侵攻した中国軍部隊は着実に戦略要地を制圧していき、金正恩の核・ミサイル戦力を接収していく」
「このような中国軍による北朝鮮への先制電撃作戦によって、北朝鮮軍によるアメリカ、韓国、そして日本に対する核ミサイル攻撃は阻止される。また、中国軍が主導して金正恩一派を制圧する結果、北朝鮮や朝鮮半島での混乱状態は極小化され、中国は“国際的調停人”としての名声を勝ち取ることになる」
「それ以上に中国にとって重要なのは、中国軍が北朝鮮を占領してしまうことで、朝鮮半島での軍事バランスが圧倒的に中国に有利な状態となることだ。北朝鮮全域の占領は一時的であるものの、その後も中国軍は「核関連施設の管理」等の名目で北朝鮮各地に進駐を続け、米韓側を圧迫することになる」
「北朝鮮への先制攻撃は、最後の手段の1つである。しかし中国にとっては“最悪の度合いが極小の、最も望ましい形の軍事行動”と考えられるのだ」

中国国境の中国人民解放軍

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51296?page=3

多くの戦略家は懐疑的
 このような考え方に対しては、賛同しかねている米軍関係者やシンクタンク関係者なども多い。賛同しかねる理由としては、下記のような疑問が挙げられている。
「中国軍による先制侵攻が極めてスムーズに達成されるという考えは、北朝鮮軍の中朝国境に対する警戒反撃態勢がとられていないことが大前提になっている。しかし、金正恩一派が中国に対して全く反撃作戦や報復作戦を用意していないと考えることは困難だ(もちろんそのような作戦の存在が示されているわけでも、存在しないことが確認されているわけではないのだが)。おそらくは、中国による電撃侵攻が開始されると、北朝鮮軍による捨て身の反撃に直面し、双方に莫大な死傷者が生ずることは避けられないであろう」
「さらに問題なのは、『トロイの木馬』戦術の成功を想定していることだ。中国の工作によって中国側に協力する勢力を増殖させて北朝鮮軍を内部から崩壊させて中国軍側に寝返らせることなど、北朝鮮そして北朝鮮軍の現状からはとうてい想定することはできない。というよりは、そのような期待を前提とする侵攻作戦は危険極まりない」
「そもそも、金正恩一派だけでなく北朝鮮軍指導部は、中国に核施設をはじめとする戦略資源を管理されてしまい、中国の完全なる軍事的保護国となることは断固として拒否するはずだ。彼らは強固かつ極端な超国家主義者であり、その伝統は金日成以来綿々と受け継がれている。たとえば、朝鮮戦争の際に中国軍が北朝鮮軍を支援して共に戦っているときでさえ、北朝鮮指導部と中国指導部の対立は深かった。その後も、北朝鮮では過度の親中国派や親ソ連派は排除されている。つい最近でも、金正恩の叔父で親中国派の張成沢や、中国に保護されていた金正男が殺害されているではないか」
このほかにも、なぜ中国が軍事力を行使してまで、北朝鮮によるアメリカや韓国それに日本に対する報復攻撃を阻止しなければならないのか? という疑問も生ずる。
「中国が放射能汚染の被害を受けるのを阻止する」と言っているものの、万が一にも韓国や日本が核攻撃された場合、中国よりも日本のほうが数倍の放射能汚染を被ることになる。そして核攻撃がなされなくとも、韓国や日本が北朝鮮の弾道ミサイル攻撃を受けて社会的インフラをはじめ大打撃を受けることは、中国にとってはむしろ望ましい状況である。それを想定すれば、少なくとも中国が軍事力を行使してまで阻止する必要はないのである。

結局、得をするのは中国だけ
 中国共産党首脳の戦略も、金正恩政権首脳の戦略も、当然のことながら現時点では明らかにされていない。しかしながら、中国による北朝鮮に対する先制侵攻という想定には無理が多い。
 中国軍が中朝国境に集結しているのは、やはり、トランプ政権が北朝鮮を軍事攻撃するや否や北朝鮮に雪崩れ込み、朝鮮半島における中国の優勢的立場を確実にするためである、と考えた方が自然であろう。

 いずれにしても、日本やアメリカにとっては極度のマイナス要因だけしか生み出さない北朝鮮情勢から、なんらかの利益を得られるかもしれないのは中国だけといえよう。

《維新嵐》これら北村氏のご指摘される人民解放軍の中朝国境への部隊集結については、関連記事があります。7月あたりには集結していたようです。

中国が半島有事にらみ国境部隊を増強
 
最悪の事態回避に向け 露は影響力アップ狙い経済支援


 朝鮮半島情勢が緊迫する中、中国が2017年7月30日に挙行した大規模軍事パレードが改めて関心を集めている。実戦に近い形式で行われた異例のパレードでは、最新の大陸間弾道ミサイル(ICBM)のほかにも、陸軍特殊部隊やNBC(核・生物・化学兵器)防護部隊が披露された。中朝国境付近では中国人民解放軍の増強も伝えられており、最悪の影響が自国に及ばないよう手を打っているもようだ。
 軍事パレードの冒頭を飾ったのはヘリコプター部隊だった。習近平国家主席ら軍首脳らが見守る中、武装ヘリ36機が飛来し、着陸するや数百人の兵士が銃を構えながら展開、敵陣に迫るという実戦さながらの演習が繰り広げられた。
 パレード初参加という陸軍の空中突撃部隊で、指揮官は中国メディアに「迅速な機動力と正確な攻撃力を兼ね備え、これからの戦争で重要な使命を担っている」と強調した。
 パレードでは、陸軍特殊部隊も登場。全地形対応可能な車両32台に乗った、顔に迷彩を施した兵士たちが習氏の前を通過していった。同部隊は2002年に創設された後、今年4月に改編を終えたばかりだ。
 国防省報道官はこの日のパレードについて「周辺情勢とは関係がない」とコメントしているが、朝鮮半島専門の軍事関係者は「最新のICBM・東風31AGが初公開されており、米国を意識したパレードとみていい。ただ、それだけではない」として、北朝鮮対応も念頭に置いているとみる。


 中国は、米国が制裁を通じた問題解決を断念し北朝鮮を限定攻撃した場合、(1)中朝国境から遠くない寧辺(ニョンビョン)などにある北朝鮮の核関連施設で事故が起きる(2)大量の難民が国境に押し寄せる-事態を懸念している。
 米紙ウォールストリート・ジャーナルは7月下旬、「中国が国境付近で軍を改編・増強し、核・化学兵器の攻撃に備えて地下壕を整備している」「最近、北朝鮮へ派遣される可能性がある特殊部隊などの訓練や、武装ヘリによる実弾演習が行われた」と報道した。
 さらに「米国が北朝鮮を攻撃すれば、中国は軍事介入しなければならなくなるだろう」とする軍事専門家の見方を紹介し、北朝鮮北部を占領した中国人民解放軍が、(1)核施設を管理下に置く(2)中国へ北朝鮮難民が押し寄せるのを防ぐため安全地帯を設ける-可能性を指摘している。
 ただ、朝鮮半島の混乱を恐れて強力な制裁発動を見送っている習氏にとって、米軍の対北攻撃と中国の軍事介入は最悪のシナリオ。制裁発動を受け入れるにしても、秋の中国共産党大会が終わり自らの権力基盤が固まるまで、時間稼ぎをする必要に迫られている。


「あれは中距離弾道ミサイルだ」。北朝鮮による2016年7月28日のICBM発射をめぐり、ロシア国防省はこう一方的に発表し、反発を強める米国を牽制(けんせい)し、北朝鮮を擁護する姿勢を示した。
 北朝鮮のミサイルを故意に“過小評価”する露政府は、4日発射のミサイルに関しても北朝鮮発表の内容を大幅に下回る計測値を公表した。
 こうしたロシア側の態度に業を煮やすティラーソン米国務長官は28日、ロシアを「北朝鮮のミサイル開発を経済的に支援する主要国」だと中国と同列に扱って批判。だが、ロシアは米国が非難する北朝鮮との密接な経済関係は国連安全保障理事会の制裁決議に反していないとし、批判を受け入れる気配はない。リャプコフ外務次官は30日、北朝鮮経済を破綻させることに賛同できないと主張した。
 ロシアがこれほどまで北朝鮮の肩を持つのは、北朝鮮やシリアなど、問題を抱える国々に接近することで、「国際社会での発言力を高める」(露専門家)狙いがあると指摘されている。


 ロシアはこれまで、北朝鮮・羅先(ラソン)にある羅津(ラジン)港の改修を手がけたほか、同港につながる鉄道路線の軌道にロシア規格を導入するなど、着々と関係を強化。今年5月には、羅津港と露極東ウラジオストク間で、貨客船「万景峰(マンギョンボン)」を就航させた。両国間の貿易額は急増しているといわれる。
 ロシアは人権上の問題なども指摘されながら、大量の北朝鮮労働者も受け入れている。北朝鮮への影響力行使に利用する思惑があるとみられる。
 露政府は6月末、北朝鮮問題解決に向けた「ロードマップ」を作成したと発表した。他国とも協議する用意があるとし、同問題の解決を主導する姿勢を示している。
 ただ、北朝鮮への経済支援は同国の核開発を“加速”させかねず、ロシアは結果として、核保有大国としての地位を押し下げられるジレンマに直面しかねない。(モスクワ 黒川信雄、北京 藤本欣也)

厳戒態勢の人民解放軍 北朝鮮情勢で・・・。


《維新嵐》共産中国は、勝てない戦は絶対しません。中朝国境に集結している事実は、政治的に何かあるとみていいでしょう。アメリカの動きに連動したものであることは、あるでしょうけど。

人民解放軍(軍区から戦区へ)


ついにアメリカ軍が本格的に動いてます。めざせ日本海。


北朝鮮、ミサイル搭載の移動式発射台に動き
 
米空母、原潜、爆撃機…続々集結 偶発的衝突の恐れも
【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮で最近、弾道ミサイルを積んだ移動式発射台の動きが捕捉されたと、韓国紙が20171014日、報じた。米韓両軍は17日から原子力空母を中心に40隻を超える艦艇を日本海などに展開し、共同演習に入る。米軍は原子力潜水艦などの戦略兵器も朝鮮半島周辺に次々集結させており、北朝鮮がこの間にミサイル発射に踏み切れば、偶発的衝突を引き起こす危険もはらんでいる。
 韓国紙、東亜日報によると、平壌付近や平安北道(ピョンアン・プクト)など3、4カ所で、移動式発射台が格納庫から移動するといった様子を米偵察衛星がとらえた。大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」か、開発中とされるICBM「火星13」、中距離弾道ミサイル「火星12」の可能性があるという。

 一方、神奈川県横須賀市が拠点の米海軍第7艦隊は2017年10月14日までに、原子力空母、ロナルド・レーガンなどと韓国軍の演習を17~20日に日本海や韓国西方の黄海で行うと明らかにした。当初、16~26日としていた日程を訂正した。レーガンを中心にした空母打撃群は、中小国の海空軍力に匹敵するともいわれ、演習では、北朝鮮の特殊戦部隊の奇襲に備えた訓練も行う。


 米最大級の原潜、ミシガンも13日に韓国南部の釜山(プサン)に入港。シリア攻撃に使われた巡航ミサイル、トマホークを最大154発搭載でき、このクラスの原潜2隻でレーダーなど北朝鮮の防空網の破壊が可能だとの分析もある。最新の攻撃型原潜、ツーソンも7~11日に南部の鎮海(チネ)に入港した。
 米韓軍は今回の演習について「定例演習だ」としているが、最近、軍事オプションを想定したとみられる動きも目立つ。顕著なのが10日夜間、日本海や黄海で行われたB1戦略爆撃機2機と韓国空軍の共同訓練だ。
 「死の白鳥」との異名を持つB1は、米戦略爆撃機中、最大量の兵器の搭載が可能で、3、4機を展開すれば、平壌を焦土化できるともいわれる。20171010日の訓練では、北朝鮮・平壌の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の執務室▽平壌郊外の兵器工場▽北東部、豊渓里(プンゲリ)の核実験場▽東部、新浦(シンポ)の潜水艦基地-など、計約40カ所を標的にしたミサイル発射のシミュレーションが実施されたと報じられている。
 訓練と同時間帯、トランプ米大統領は、ホワイトハウスの危機管理室で、北朝鮮の攻撃に対応するさまざまなオプションについて報告を受けたという。

空母ロナルドレーガン


陸自と米海兵隊の訓練「ノーザンヴァイパー」、818日からMV-22も参加
2017/08/17 20:24http://flyteam.jp/airline/japan-ground-self-defense-force/news/article/83085
 防衛省は2017818()から、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の部隊が810()から828()に実施している実動訓練「ノーザンヴァイパー」にMV-22Bオスプレイが参加すると発表しています。オーストラリア・クイーンズランド州ショールウォーター・ベイ訓練場の沖合で飛行中に発生したMV-22Bの事故を受け、自治体からも安全性について懸念が示され、防衛省、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊で調整が続けられてきました。
「ノーザンヴァイパー」には、航空機の運用として、陸自からUH-1CH-47など、アメリカ海兵隊から第36海兵航空群第265海兵隊のMV-22Bをはじめ、CH-53UH-1AH-1などを使用する予定でした。



《維新嵐》共産中国、北朝鮮、我が国日本、アメリカ、韓国などの国による東アジアでの主導権をめぐる争いは、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルによって「核戦争」のリスクをかかえながら、どこまで続くのでしょう。

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