2017年1月20日金曜日

アメリカの対中政策とアジアの同盟国の動き

トランプへの期待は禁物、米軍は尖閣にやって来ない

「次期国務長官が尖閣防衛を確約」は手前勝手な解釈だ

北村淳
2017.1.19(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48942
 トランプ次期大統領が国務長官候補に前モービルエクソンCEOのレックス・ティラーソン氏を指名した。2017年111日、そのティラーソン氏に対する指名承認公聴会が、アメリカ連邦議会上院外交委員会で開かれた。

 公聴会では、尖閣諸島に中国が侵攻してきた場合の対処方針についての質疑もなされた。ティラーソン次期国務長官は、「尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲であるため、アメリカは条約の規定に従って対処する」と述べた。共和党政権・民主党政権を問わず伝統的にアメリカ外交当局高官が表明してきた通りの発言である。
アメリカ当局の伝統的な模範解答
日本政府や多くのメディアは、アメリカ政府高官が尖閣問題について言及すると一喜一憂するのが常である。今回もその例に漏れず、主要メディアはこぞってティラーソン氏の“尖閣発言”を取り上げていた。
 それらの記事の中には「指名公聴会で次期国務長官が尖閣防衛を確約」といった内容のものまであった。だが、これぞトランプ次期大統領が口にした“フェイクニュース”に類する報道姿勢とみなさざるを得ない。
 このような見出しの文言から多くの日本国民が受ける印象は、「アメリカは尖閣諸島を防衛する義務を負っており、万が一にも中国が尖閣諸島へ侵攻してきた際にはアメリカが防衛義務を果たすことを次期国務長官は確約した」ということになる。
 しかしながら、ティラーソン氏は、「中国が尖閣諸島を占領するために軍事侵攻した場合に、アメリカが軍事力を行使して中国の侵攻を阻止する」と明言したわけではない。「日本とは長年の同盟関係にあるアメリカは、日米安全保障条約の取り決めに従って対応する」と述べただけである。
 このような尖閣諸島に対するアメリカ政府高官の表明は、オバマ政権下においてオバマ大統領やヒラリークリントン国務長官が発言してきた内容とまったく同じであり、アメリカ外交当局の伝統的な模範解答ということができる。
 すなわち、
1)尖閣諸島の領有権が日本に帰属するということに関しては触れずに「現状では、尖閣諸島は日本の施政下にあると理解している」との米側の認識を繰り返し、
2)「日本の施政権下にある以上、尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲ということになる」という原則論を述べ、
3)「条約の適用範囲にある尖閣諸島に中国が侵攻してきた場合、アメリカは日米安保条約第5条に即して対処する」
という、条約が有効な限り当たり前のことを述べているのだ。
 この模範解答を「中国が尖閣諸島へ侵攻を企てた場合には、日米安保条約に基づいて、アメリカが日本救援軍を派遣して中国と対決する」と理解するのは、日本側のあまりにも身勝手な解釈である。
日本救援軍派遣の前に高いハードル
日米安保条約第5条の規定よれば「日本の施政権下にある領域が武力侵攻を受けた場合、アメリカはアメリカ合衆国憲法上の規定および手続きに従って対処する」ということになる。
 ここで明確に理解しておくべきなのは、アメリカ政府による“対処”は、日本防衛のための部隊を派遣して中国侵攻軍と対決することを意味しているわけではないということだ。
 もちろん、そのようなオプションがあり得ないわけではない。1973年に成立した「戦争権限法」によると、アメリカの国益を大きく左右するような極めて重大な緊急事態が勃発した場合に、アメリカ大統領は議会の事後承認を得ることを前提として、アメリカ軍最高指揮官としての大統領権限においてアメリカ軍を海外へ派兵することが可能である。この場合、大統領は軍隊派遣決定から48時間以内に連邦議会に報告し、戦闘期間は60日間を越えてはならず、その間に連邦議会からの承認を取りつけなければならない。
 このような大統領権限があるものの、ホワイトハウスが軍隊を動かす場合には原則として連邦議会の承認を取りつけてからというのが原則である。まして中国の尖閣侵攻に際して日本救援軍を派遣するような場合は、当然のことながら米中戦争を大前提とした軍事行動ということになる。そうである以上、「戦争権限法」に基づいて大統領が独断で日本に救援軍を派遣するためのハードルは、極めて高いものとなる。
米国は日本のために中国と闘うか?
 さらに、中国軍による尖閣諸島侵攻というシナリオは、日本にとっては「国土と領海を奪われてしまいかねない国家の最重大危機」であるが、アメリカにとっては「アメリカ国民の誰もが知らない東シナ海に浮かぶちっぽけな岩礁を巡って日本と中国が対立しており、とうとう中国が武力に訴えた」というだけのストーリーであり、アメリカにとっての危機と捉えられる類いの紛争ではない。
 このことは、フォークランド戦争勃発前に同盟国イギリスから支援要請を受けたアメリカ政府の態度からも容易に類推可能である。
(レーガン政権の幹部たちは、南大西洋の絶海に浮かぶちっぽけな島を巡って軍事衝突など馬鹿げているという姿勢を示した。イギリスのサッチャー首相はその対応に激怒した。もっともイギリスと対立していたアルゼンチンもアメリカの同盟国であった。)
 たとえ、トランプ新政権が中国の軍事力行使に対して(オバマ政権とは違って)強硬な姿勢を示す方針を貫くとしても、大多数のアメリカ国民の目からは、尖閣諸島は“ちっぽけな岩礁”としか理解されない。そんな岩礁を巡る日本と中国の軍事衝突にアメリカが本格的に軍事介入し、米中戦争に突入することは(100%に限りなく近く)あり得ない。
5条解釈の手前勝手な垂れ流しは危険
 日米安保条約のどこを探しても「日本が軍事攻撃をされた場合に、アメリカは軍隊を派遣して日本を救援しなければならない」という趣旨の文言は存在しない。したがって、中国が尖閣諸島への侵攻を企てた場合に、アメリカ軍が中国人民解放軍と戦闘を交えなくとも、条約を履行しなかったという批判を受ける理由はない。
「アメリカ第一主義」を表看板に掲げるトランプ政権が誕生した現在、日本政府もメディアも、あたかも「尖閣有事の際にはアメリカが本格的軍事介入をなして日本を救援する」といったニュアンスを日本国民に植え付けるような言動はいい加減に差し止めなければならない。
 むしろトランプ政権の誕生を機に、日本国民を欺くような手前勝手な日米安保条約解釈に頼ろうとするのではなく、少なくとも日本の領域は自国の国防力で守り切るだけの態勢を構築する努力に邁進する必要がある。

《維新嵐》ティラーソン氏の発言は、議会向けの発言という見方もできますが、至極妥当な、当然の発言であろうと思います。
そもそも日米安全保障条約はアメリカ軍の日本列島、南西諸島での軍事的な駐留を保障しているといえます。在日米軍は、アメリカ合衆国の国防軍です。在日米軍が「守るべきもの」は、「日本国」の主権と独立ではありません。アメリカ合衆国の主権と独立、政治的経済的権益となります。そこのところを多くの日本人は勘違いなさらないように願います。我が国の防衛は、我が国の国民の責務なんです。国民それぞれが職域の中で、職務を通じて国民としての「国防」義務を果たすのです。自衛隊は我が国の独立を「軍事力」で破壊しようとする敵を排除するための「暴力装置」となります。だから警察の延長的存在ではなく、純然たる軍事組織「国防軍」でなければなりません。看板も中身も「国防軍」にトランスフォームすべきなのです。そうなってこそ警察組織や沿岸警備隊たる海上保安庁が働きやすくなるわけです。

自衛隊新兵器実験!スターウォーズ並みの破壊力に驚愕!(防衛省技術研究本部 開発試験) 
2013/12/12 に公開 https://youtu.be/ft___mqgQEc



緊張高まる尖閣防衛の最前線
南シナ海裁定に対抗…中国の行為は異常だ

論説委員・井伊重之
 東シナ海で日中両国の緊張が高まっている。中国海警局の公船と中国漁船が今月初め、沖縄県の尖閣諸島の領海に初めて同時に侵入した。一時は接続水域に230隻に上る中国漁船が集まり、10隻以上の公船とともに日本の領海や接続水域に入ったことが確認された。日本政府が抗議を繰り返す中で、意図的に緊張をもたらそうとする中国の行為は異常だ。
 中国の狙いは明確だ。南シナ海の領有権をめぐり、フィリピンの申し立てを受けてオランダ・ハーグの仲裁裁判所が先月、中国側の主張を全面的に退けた。中国は反発しているが、日本は米国などと協調して中国に裁定の受け入れを求めている。これに対する中国側の対抗措置だろう。
 国連海洋法条約に基づいて仲裁裁判所が出した裁定は、南シナ海のほぼ全域に自らの主権が及ぶとする中国にとって、大きな痛手となった。中国が主張する歴史的な権利について、一方的で国際法違反だと断定したからだ。中国側が埋め立てを進めた岩礁も、国際法的には「島」とは呼べず、排他的経済水域(EEZ)などに関する海洋権益を主張できないと断じた。
 中国にとって最大の誤算は、南シナ海のほぼ全域を囲う「九段線」内で中国側が主張する管轄権の法的根拠が否定されたことだ。事前の予想を上回る明確な裁定だった。
 中国が1950年前後から主張を始めた九段線は、ベトナム沖からマレーシア沖、フィリピン沖を囲む広大な海域だ。九段線は50年代に西沙諸島、80年代に軍事力で南沙諸島を実効支配するに当たっての根拠としてきた。その前提が一気に覆された格好だ。
 力で現状変更しようとする中国に対し、国際司法機関が「ノー」を突き付けた意味は重い。
 川島真東大大学院教授は「南シナ海をめぐる常設仲裁裁判所判決と中国の対応」(中央公論)で、「中国は国家イメージに大きな打撃を受けた。しかし、この判決が中国の対外行動を変えるほどの力を持つのかは、依然として疑問だ」と指摘する。
 川島は「仲裁裁判所は領土問題の結論を出そうとしたわけではない。あくまで国連海洋法条約に照らして中国の主張を判断した。当事国がその受け入れに合意しなければ、裁定に拘束力、強制力はない」と厳しい見方を示している。
 中国は裁定が出た直後に猛反発する政府声明を公表し、新華社通信は「裁定は単なる紙くずだ」との論評を配信した。こうした中国の強硬姿勢が国際的な孤立を招くと分析するのは石平拓殖大客員教授だ。

「習近平外交の大失敗」(Voice)で、「仲裁裁判所の裁定を最初からいっさい認めない、受け入れないという頑(かたく)なな姿勢を取っているからこそ、中国政府は結局、フィリピンとの直接対話の模索においても、この一線から後退できない」と論考している。
 そのうえで「『裁定は認めない』という外交姿勢を対話の条件としてフィリピンに押し付けた結果、当初は対話路線だったフィリピン新政権までも怒らせ、両国間協議の芽を自ら摘んでしまった」と批判する。
 一方、山田吉彦東海大教授は「中国は尖閣を『戦いの海』にする気だ」(WiLL)で、「南シナ海で起きたことは東シナ海でも起きる。それが中国のパターンだ」と警告している。
 この中で山田は、とくに尖閣諸島海域への警戒が必要だと強調する。「中国国民の目を仲裁裁判所の判断から逸(そ)らすため、東シナ海への進出を強化してくるだろう」と指摘し、まるで最近の中国の動きを予測していたかのようだ。
 山田は「わが国は南シナ海の航路を利用し恩恵を受けている。そのためにも南シナ海の紛争抑止や海洋環境の破壊阻止、航行の安全などに積極的に関与すべきだ」と日本政府にも覚悟を求めている。

 中国が露骨な示威行動に出る中で、その最前線に立つのが海上保安庁だ。初の生え抜き長官として注目された佐藤雄二前長官は「尖閣は海保が守り抜く」(文芸春秋)で領海警備の現場を紹介している。
 「中国漁船の多くが中国版GPSを政府に持たされている。これにはメール機能が搭載され、自船の位置を知らせたり、一斉通報を受けられたりする。民間漁船も中国政府とつながっている」としており、中国漁船の尖閣侵入も政府と一体の動きといえよう。
 心強いのは現場の士気が高いことだ。海保の活躍を描いた「海猿」ブームの影響もあるが、佐藤は「若い職員は尖閣の問題をみて海保に入ったと答える。緊迫する国際情勢が若者の心を動かしている」と語る。

 大型巡視船の新規投入など、今後も尖閣警備体制の強化が欠かせない。日本が国を挙げて尖閣を守り抜く姿勢を示す。それが中国に対する強いメッセージとなるだろう。

《維新嵐》 国連海洋法条約の精神に基づくこと。外洋の秩序も法秩序が確立されなければなりません。まずは自衛隊よりも海保でしょう。領海防衛は海上保安庁が先兵となって進められるべきです。
尖閣諸島については、「無人島」にしているのがそもそもの大間違いです。魚釣島については海保が遭難者救護を想定して、隊員の常駐化、ヘリ発着用のヘリポートや港を整備していかなくてはいけません。

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