2019年8月18日日曜日

日本版CIA創設にむけて 武器となる諜報インテリジェンス 前編

※以下の出典は、『諜報機関』(井上太郎著)平成26年12月初版発行、㈱青林堂より


日本に必要な諜報機関

我が国では、危機管理意識の強い安倍晋三政権時代に諜報機関の形が固まってきていますが、その前の政権のころからもかなり形が具体化したことはありました。

しかし完全に独立した諜報機関となると、諜報機関そのものの暴走もあり得る、という政治家独特の感覚が働いたこと、また仮に諜報機関を内閣や政府直轄機関とすると政権交代などにより、かつての民主党政権のような「左翼・リベラル政権」となった時に逆に恐ろしいことになるという理由でなかなか実現しませんでした。

もっとも「左翼政権」が誕生すれば、諜報員は自ら身をひき必然として組織は解散となり、元来の所属機関に戻ることになると考えられます。諜報機関員ともなればその役割については場合によっては命までもかけているわけですから、組織全体も隠してしまう。つまり組織全体のバックアップ体制が一番の課題となります。

諜報機関というのは、国家(日本)全体で連携しないと全く意味を持たないことになってしまいます。極論すれば、諜報機関が別の諜報機関を見張る場合もあり得ます。分野を決めてきちんと連携しないとかえって混乱を招くだけになります。

平成26年(2014年)に官邸は、日本版CIA創設プランを提出、その可決後に正式に諜報機関を設立する計画を発表します。

諜報インテリジェンスとは?

諜報インテリジェンスは、学問でもなければましてや理論などではありません。学術的に論じることは全く無意味なことであり、何の役にたつのかわかりません。

アメリカにとって日本はスパイの対象なのでしょうか?共有する情報に基づく諜報活動もあり、安保条約からNSAでは相互協力となっています。日本に対してはどちらかといえばCIAが担当であり、それはしかも経済CIAです。アメリカには商務省の諜報機関もありますが、戦略面が強く対象は共産中国やロシアになります。日本の諜報活動はバレません。ロシアに亡命したスノーデンの発言により、アメリカによる同盟国に対しての諜報活動に批判が高まっていましたが、ばれてしまう程度の諜報活動ならばやらない方がマシです。ばれてしまうのは諜報活動とはいえず、単なる偵察活動です。盗聴疑惑騒動は、世界の一般国民や企業にも行われていることなのです。そのことには触れず、気をむけさせないのは不思議なことです。

日本の政治家の場合、機密を漏らしたのが政務三役であった場合、国会議員は特別職の国家公務員であるため、国家公務員法(守秘義務)違反は適用されない上、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」(大臣規範)で違反にはなるが罰則はありません。ですからスパイ防止法は絶対に必要です。

なぜ日本にスパイ防止法がなかったのか

日本にスパイ防止法がなかったのは、政府が戦後長い間共産中国などとの軋轢を避け、優柔不断な弱腰外交を続けてきたからと言われています。ウィーン条約によって「不逮捕特権」が認められる外交官のスパイ活動は、何らかの別件でなければ日本の裁判にかけられません。この辺りにもスパイ防止法が一刻も早く求められる理由があります。

スパイ防止法案がなかなか可決されない理由は、自民党案ではパフォーマンスに過ぎませんでした。日本の諜報機関が作成した案は、刑法81条の外患誘致罪を独立させ、戦争に限らず広く日本の国益を損なうとして死刑までありました。

自民党案が悪いのではありませんが中途半端であり、機密文書の概念が曖昧で特定が困難だったことが問題でした。その時の政権によっては、機密文書の存在が浮かび上がることになり、本来の機密が表面に出ることになってしまいます。スパイ防止法案は「中途半端な法案」よりむしろ「無い」方が、都合の悪いことを闇に葬ることができるので実効性は上がります。なまじ表面化すると報復が一般国民に及びます。

スパイ防止法案という名称からして変えなければいけないと思います。例えば「国益の確保等に関する法律」そして警察法の67条を一部改正して、警察官の武器使用を緩和することです。日本人も含めて、日本でスパイ行為をすれば撃たれることがある。これが警告となり、防止となります。

戦後日本におけるスパイ活動における謙検挙事件だけでも100件近くあることをご存じでしょうか?一時はそのほとんどがロシアと北朝鮮でした。しかしソビエト連邦の崩壊後は、ロシアのスパイは極端に少なくなり、その後は殆どが北朝鮮と共産中国になりました。そして目的のほとんどは軍事機密の入手です。さらに民間からの機密盗難もあります。

日本のスパイ事件の標的の多くは自衛隊です。ただスパイは検挙してもいずれも外交特権により帰国してしまいます。日本にはスパイ防止法がなく、日本側もたいした罪に問われることもなく片付けられてしまいます。

日本の技術は軍事に限らず極めて優秀です。日本の諜報機関は極めて少人数ですが、その能力は友好国から高い評価を受けています。

マスメディアはこの問題については、批判ばかりしていますが,仮に批判するのであれば、日本の諜報活動のどこが、なぜ悪いのか、メディアの責任として論ずるべきです。さらに諜報活動によって得られた情報を秘匿することの何がいけないのか、批判する以上明確にする責任があります。

自衛隊だけではなく、諜報活動はあくまでも日本を守るためです。どこの国も同じですが諜報活動は命がけなのです。工作活動が発覚して捕まれば海外では死刑もあり得ます。そうした内容をマスメディアも国民も知る必要がなく、むしろ知れば危険が及ぶ可能性が高い。

スパイ、工作員、諜報員、とその形は様々であり、様々な役割と使命があります。しかし絶対に必要なのは「国を護る信念」です。そして諜報機関に携わる人は例え家族であってもそのことを絶対に話しません。そうでないと周辺にまで危害が及ぶからです。国家として機密を持たずオープンにすれば、北朝鮮、共産中国等のスパイ工作員もいなくなります。確かによいことかもしれませんが、スパイの必要がない国はすなわち無防備国家であり、格好の標的です。日本はスパイ天国と言われるほどそれだけ機密も多く狙われています。スパイ防止法の制定が早急に必要といわれる理由です。

諜報機関は、対象者もしくは何らかの行動を起こしているグループに対して確実に情報収集を行います。その方法は、その対象グループに潜り込んだり、協力者を確保したり、様々な現実の状況から分析をします。デモの主催者、支援者、と簡単に割り出しています。日本の公安当局には、連合赤軍が世界各国で様々な組織と組んで起こした多くのテロ事件の調査実績がありそのノウハウがあります。ミュンヘン五輪選手村襲撃事件、テルアビブ銃乱射事件、フィリピンのモロイスラム解放戦線、ペルー大使館人質事件などがそうです。日本の警察が現地と協力し解決した事例もあり、その結果は射殺もあれば、逮捕もあり、人質救出もあります。
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