2022年2月1日火曜日

英国流 オープンソースインテリジェンスの扱い方

【イギリスの元スパイが説く】激しい拷問の末、射殺されたスパイ

デビッド・オマンド

2022/02/01 06:00【イギリスの元スパイが説く】激しい拷問の末、射殺されたスパイ (msn.com)

 重要な政治決定の裏側には、スパイが絡んでいる。かつての国際的な危機や紛争、国家元首の動きもすべてお見通しだった。それは単なる偶然ではない。政治指導者の力でもない。さまざまな情報を分析したスパイたちのおかげだった。イギリスのスパイの親玉だったともいえる人物が、『イギリス諜報機関の元スパイが教える 最強の知的武装術 ――残酷な時代を乗り切る10のレッスン』を著した。スパイがどのように情報を収集し、分析し、活用しているのか? そのテクニックをかつての実例を深堀りしながら「10のレッスン」として解説している。マネジメントを含めた大所高所の視点を持ち合わせている点も魅力だ。本書から、その一部を特別公開する。

 激しい拷問の末、射殺されたソ連のスパイ

 イギリスとアメリカへ情報を流すスパイとなり、キューバ危機において重要な役割を果たしたソ連軍参謀本部情報総局(GRU)のペンコフスキー大佐のスパイ活動は、悲劇に終わった。彼のフィルムは、ソ連に監視されているなかで、デッド・ドロップ(秘密受け渡し地点)まで運ばれた。
 引き渡すべきものがあるときは、街灯柱に印がつけられた。この手法は、のちにイギリスのスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの作品で知られるようになる。受けとり役を務めたのは、英秘密情報部(MI6)の作戦要員の妻で、正体を隠してモスクワの大使館で働いていたジャネット・チザムだった。チザムはこの任務を志願し、ペンコフスキーがロンドンを公に訪問した際、彼に会っている。
チザムがモスクワのツヴェトノイ・ブリヴァールの歩道のベンチに座って、自分の子どもたちが遊んでいるのを見ていたとき、私服のペンコフスキーが通り過ぎたのは偶然ではなかった。
 ペンコフスキーは子どもたちに話しかけて、この目的のためにロンドンで渡されていた小さな菓子の箱を渡した。なかには、ロンドンとニューヨークの諜報部門が一刻も早く必要としている文書のマイクロフィルムが隠されていた。
同じような受け渡しが何度か続いた。しかし、チザムはその後、定常的な監視の対象とされ、運悪く、偶然を装ってロシア人と接触するところを目撃された。ソ連国家保安委員会(KGB)は、すぐにはその人物を特定できなかったが、さらなる調査によって、ついにペンコフスキーの逮捕に至った。
 仲介役の諜報連絡員であるイギリスの企業家グレヴィル・ウィンは、ハンガリーの首都ブダペストへ出張中に誘拐され、ペンコフスキーとともにモスクワで見せしめの裁判にかけられた。両者ともに有罪判決がくだされ、ペンコフスキーは激しい拷問の末、射殺された。
ウィンのほうはソ連の刑務所に何年間か投獄され、1964年にアメリカで有罪判決を受けたKGBのスパイ、ゴードン・ロンズデール(本名コノン・モロディ)と彼の連絡役だった古書商人のピーター・クローガー、その妻ヘレンの3人との交換でイギリスへ帰国した。
 クローガー夫妻は、KGBスパイのロンズデールが、イギリス南部ポートランド島のイギリス海軍本部研究所でスパイ組織を運営する手助けをした。

オープンソースから情報分析する「オシント」

 ペンコフスキーは、いまなら関連するデータベースにアクセスする方法を見つけて、もっと安全にミサイル計画の機密を盗み出すことができただろう。いまやデジタル衛星は地球のどこの画像も撮ることができる。高解像度カメラを搭載した遠隔操縦航空機がつくられたおかげで、精度の高いデジタル画像が軍事・警備・治安、または農業・公害防止・調査報道・そのほかの公共目的に利用されるようになった。
 どんな事件が起こっても監視カメラがあるし、そもそも個人が高解像度カメラ付きのスマートフォン(あるいはドローン)で事件を撮影できる時代だ。テレビ局などの報道機関は、そうした動画をすぐにアップロードできるサイトを用意している。誰もが、偵察員になる可能性があるのだ。
 もっとも、デジタルデータがあまりに増えたため、その分析が不可能になる危険もある。膨大なデジタル情報のなかから、重要だと思われるものを選り分けるために人工知能(AI)のアルゴリズムを活用する必要も出てくる。アルゴリズムは、ベイズ推定で求める結果をいかに探せばいいかを学習する。
 ある人間の顔が大量の顔写真データのなかにあるか、データベースのなかに筆跡のサンプルと一致するものがあるか、というように調べる目的が明確であれば、アルゴリズムはとても効率がいい(しかも人間より信頼性が高い)。ただし、アルゴリズムが信頼できるのは教え込まれたデータについてだけなので、誤認識することもある。アルゴリズムが選んだデータを精査し、意味づけをするには、やはり人間の情報分析官が必要だ。
 同時に、デジタルの世界には、敵が匿名でネット上の操作をしたり、こちら側のシステムに侵入して機密を盗んだりする機会が多い。こうした脆弱性があるため、民主主義の社会では、厳重な安全対策のもと、攻撃を仕かけてくる者たちの証拠を大量のデータから見つけ出す目的で、治安・諜報機関に膨大なデジタル情報を扱わせる。
情報をデジタル化する副次的効果は、「状況認識」の民主化だ。強力な検索エンジンを使えれば、誰もが情報分析官のようなことができる。かつては夢にも思わなかった情報収集力が、インターネットから得られるのだ。
 オープン・ソース・インテリジェンス(オシント)と呼ばれる、公開されている情報ソースからデータや情報を収集して分析する新しい分野もある。
 これは、たとえば選挙で投票すべき党を決めるために各候補がどんなことを表明しているかを知りたい、あるいはどこかの不動産価格を詳しく調べたい、どの大学が最も有意義なコースを提供しているかを知りたい、といったときに利用される。
 インターネットは、正しい決断に必要な状況認識を可能にする。ただし、情報分析官と同じように情報の識別が必要なことを忘れてはいけない。
 グーグル画像には100億以上の写真や絵がインデックス登録されている。世界中のどこでも、住所を入力すればグーグルのストリートビューで建物を見ることができ、方向や情報が示された地図が提供されて周辺を仮想ドライブできる。ヨーロッパのほぼ全土にわたって、列車・船・輸送用コンテナの位置が地図上に表示される。画像ライブラリーを検索すれば、ほんの一瞬で場所・人物・アート作品などを特定できる。
 創意工夫と経験があれば、ネットを駆使することで諜報機関や大手放送局に劣らない「状況認識」ができる。
 イソップ寓話(ネコの首に鈴をつけて近くに来たのがわかるようにしようと思いついたものの、どのネズミも鈴をつける役を引き受けたがらないという話)から名前をとった英調査報道機関「ベリングキャット」は、民間人とジャーナリストによる戦争犯罪、紛争地域の状況、重大な犯罪者の活動について、非公式な調査の結果を公表している。
 最も注目を浴びたのは、英秘密情報部(MI6)の工作員だったロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)高官セルゲイ・スクリパリとその娘を、イギリス南部ソールズベリーで殺害しようとし、なんの罪もない市民を殺害した2人のGRU局員の正体を公開したことだ。
 
デビッド・オマンド(David Omand
英ケンブリッジ大学を卒業後、国内外の情報収集・暗号解読を担う諜報機関であるイギリスの政府通信本部(GCHQ)に勤務、国防省を経て、GCHQ長官、内務省事務次官を務める。内閣府では事務次官や首相に助言する初代内閣安全保障・情報調整官(日本の内閣危機管理監に相当)、情報機関を監督する合同情報委員会(JIC)の委員・議長の要職を歴任したスパイマスター。『イギリス諜報機関の元スパイが教える 最強の知的武装術 ――残酷な時代を乗り切る10のレッスン』を刊行。


動画


【イギリスの元スパイが説く】日常生活においても大事な「秘密」と「謎」の区別

デビッド・オマンド

2022/02/13 06:00

 © ダイヤモンド・オンライン 提供 Photo: Adobe Stock

 重要な政治決定の裏側には、スパイが絡んでいる。かつての国際的な危機や紛争、国家元首の動きもすべてお見通しだった。それは単なる偶然ではない。政治指導者の力でもない。さまざまな情報を分析したスパイたちのおかげだった。イギリスのスパイの親玉だったともいえる人物が、『イギリス諜報機関の元スパイが教える 最強の知的武装術 ――残酷な時代を乗り切る10のレッスン』を著した。スパイがどのように情報を収集し、分析し、活用しているのか? そのテクニックをかつての実例を深堀りしながら「10のレッスン」として解説している。マネジメントを含めた大所高所の視点を持ち合わせている点も魅力だ。本書から、その一部を特別公開する。


現実の予測には限界が内在している

 アメリカのSF作家アイザック・アシモフの著作『ファウンデーション対帝国 銀河帝国興亡史2』では、架空の学問である「心理歴史学」という経験科学が、文明の興亡を社会学・歴史学・数理統計学を用いて宇宙規模でモデル化されている。

統計力学では気体中の個々の分子の動きは(量子効果の影響を受けるために)予測ができないものの、分子群全体の動きは予測できる。これと同じように、アシモフは、歴史の大きな流れを推測できると設定している。心理歴史学の生みの親とされる作中人物のハリ・セルダン博士によると、行動がモデル化される母集団は十分な規模があると同時に、心理歴史学的分析の結果が知らされていないことが重要な前提になる。母集団が結果を強く意識すれば、行動を変えるからだ。

このほかにも「人間社会に根本的な変化がない」「人間の本質と刺激への反応が変わらない」という前提もある。よって、アシモフは、銀河系規模での危機の到来は予測することができ、最も必要とされるときに開くようにプログラムされた「時間霊廟」を建設して、(セルダン博士のホログラムによって)助言を与えられるとした。

心理歴史学は、SF小説の作中だけの架空の学問のままになるだろう。おそらくそれでいいと思う。こうした発想には、初期条件を十分に示すことができないという大きな問題がある。天気の決定論的予報も、1週間ほど過ぎると、予報と観測の乖離が大きくなりすぎて役に立たなくなる。また、複雑系ではモデルが非線形であることが多く、小さな変化がすぐに大きな変化に変わる。

現実の予想には、限界が内在しているのだ。大きな流れの予想はできるかもしれないが、詳細についてはできない。ごく小さな乱れ(チョウの羽ばたきとしてよく語られる)からさまざまな事象が積み重なって増幅され、気象が大きく変化して、地球の反対側でハリケーンが発生する。国際情勢の予想は、検証の基準が細かくなるほど、考慮すべき変数、不可測要素や仮定が増え、長期予想の精度が低下する。

物理現象のレベルでも、すべての活動がモデルに従うわけではない。原子核の放射性崩壊が一定期間内に何度起こるかは発生確率によって知ることができるが、それが実際にいつになるかは予想ができない。光の粒子や電子が狭い一対のスリット(隙間)を通過するときの正確な経路も、確率によってしか事前には予想できない(量子物理学の重要な原理を実証する有名な二重スリット実験)。


日常生活においても大事な「秘密」と「謎」の区別

 情報について、さらに考えるべきことがある。それは「秘密」と「謎」を区別することだ。秘密は、「創意工夫」「技術」「手段」といったものがあれば見つけ出すことができる。ところが、謎はそうもいかない。秘密を多く暴いても、独裁者の心理状態の謎が解けるとは限らないのだ。

それでも情報分析官は最善を尽くして潜在敵の心理を評価する。それが政策立案者の方針決定に影響を与えるからである。政策に関係する人を知り、その動機を解釈したうえで、人が通常どのような行動をするかという観察にもとづいて推測する。とはいえ、その判断を「誰が行うか」によって見方は変わる。中立の者と、侵略される危険がある国にいる者とは、見方が異なるのだ。

謎は証拠状況が大きく異なり、まだ起こっていない(したがって起こらないかもしれない)出来事に関する懸念である。情報を活用するには、こうした謎をいかに解決するかが重要になる。

1982年初頭、アルゼンチン軍事政権の海軍総司令官で、強硬派の筆頭だったアナヤ大将は、フォークランド諸島侵攻計画に着手するよう密かに命令を出した。この瞬間に収集すべき「秘密」が生じた。一方、その計画を軍事政権が承認して実行を命じるのか、それがいつになるのかは、ずっと「謎」だった。

さらにやっかいなのは、「複雑な相互作用」によって問題がより難しくなることだ。1982年、アルゼンチンの軍事政権は、自軍がフォークランド諸島に侵攻した場合、イギリスがどのように反応するかを完全に読み違えた。

また、米英の長年にわたる軍事関係を十分に考慮しなかったため、アメリカの反応も見極めそこねた。英国防大臣ジョン・ノットと米国防長官キャスパー・ワインバーガーが、個人的な親交を深めていたことにも気づいていなかったのかもしれない。ワインバーガーは、フォークランド諸島奪還のために海軍の特別部隊を派遣するというマーガレット・サッチャー英首相の鉄のように強硬な対応を支持した。武力による侵略は割に合わないということをソ連に示す意図もあった。

「秘密」と「謎」の区別は、日常生活においても大事だ。たとえば、パートナーがかつての恋人からのメールを携帯電話に保存していて、それをあなたには「秘密」にしているとしよう。ところが、そのメールを見ても見なくても、なぜパートナーがかつての恋人からのメールを保存しているのか、そして昔の恋人にそのうち連絡するつもりなのかという「謎」は解決しないし、それはパートナー自身にもわからないだろう。

パートナーがどうするかは、これから何ヵ月かのあなたの振る舞いによって左右されるかもしれない。なぜなら、あなたがどう振る舞うかによって、2人の関係が変わるからだ。このような複雑な相互作用が起こる状況下での予測は、つねに難しい。

[レッスン2]の教訓を学ばずに状況認識から状況予測へと飛躍するのはたとえば、傾向の推定や、状況が変わらないという仮定によってよく起こしがちな過ちで、「帰納的誤謬」と呼ばれている。窓の外を見て天気を予報するようなものだ。今日の天気は明日も続くかもしれないが、急速に発達する前線があればそうはならない。気象に内在する力学を考慮しなければ、ふだんは当たる予想が当たらなくなる。

予想がはずれたときは鉄砲水が起こったり、予期せぬハリケーンに襲われたりといったような大規模な被害につながるかもしれない。それは国際情勢においても、人生においても同じだ。思い込みに頼って間違えたときは、とても大きな過ちになる。専門家でさえ、この罠に陥る。

私はリスクの予測には、実践的な知恵を働かせる必要があることを説明するため、ギリシャ語の「フロネシス」(実践的な知)という言葉をよく使う。それは過去から未来を予測し、現在を正しく判断する直感のようなものだ。美術史家のエドガー・ウィントは、状況に対して健全で実用的な衝動からなる人間の行動にも、すぐれた判断が適用できると述べている。


まとめ 推定と状況予測

 事態がどう展開するか、また次に何が起こるかを予測するには、信頼できる「説明モデル」と十分な「データ」が不可欠だ。たとえそれを意識していなくても、未来について考えるときには、私たちは頭のなかで現在のモデルを構築し、選択した説明が時間の経過とともに、そして異なる情報や刺激に反応してどう変わるかを判断する。

「影響を受けそうな最も重要な要因は何か」「環境の変化がどのくらい影響をおよぼすか」を見極めれば、「次は何が、次はどこが」ということを考えられる。その問いに答えるには、次のポイントが欠かせない。


 ・状況認識からすぐに状況予測をして「帰納的誤謬」に陥るのを避けるため、重要な変数の相互作用を考えるための説明モデルを用いる

・「どのような予測にも限界がある」という現実を受け入れ、予測した結果を確からしさの度合いとともに示す

・「可能性がある」などの語を使用するときの一貫性に注意し、判断に対する信頼度を確率言語で示す

・(可能性は少ないものの)損害をもたらす可能性があるものについて、最も可能性の高いものと同じように考察する

・フォールスポジティブ(誤検出)の基準を下げれば、フォールスネガティブ(見逃し)の増加が予測されることに注意する

・個人または組織の「行動能力」と、その「行動意図」を混同しない

・他者の動機や意図を説明するときは、「文化」の違いや「偏見」に注意する

・情報にもとづいた結論と、過去の経験・推定・直感(秘密・謎・複雑なもの)をもとに考えたことを区別する

・他者の動機を理解しようとするときに、判断を誤らせる「先入観」に警戒する

・自分が思った通りに事態が展開するか、また行動や政策の変更を引き起こそうとして積極的に行われる議論に注意する

 

デビッド・オマンド(David Omand

英ケンブリッジ大学を卒業後、国内外の情報収集・暗号解読を担う諜報機関であるイギリスの政府通信本部(GCHQ)に勤務、国防省を経て、GCHQ長官、内務省事務次官を務める。内閣府では事務次官や首相に助言する初代内閣安全保障・情報調整官(日本の内閣危機管理監に相当)、情報機関を監督する合同情報委員会(JIC)の委員・議長の要職を歴任したスパイマスター。『イギリス諜報機関の元スパイが教える 最強の知的武装術 ――残酷な時代を乗り切る10のレッスン』を刊行。


※サッカーの国際試合一つみても、実際のゲーム展開に入る前から戦いは始まっているといえます。対戦チームの情報をいかに収集し、精緻に分析して味方の戦略に活用していくか?
 対戦チームの弱点をみつけて、効果的にどうそこを攻略していくか?




2021年12月12日日曜日

【日本】警視庁公安部の諜報戦。

海外のスパイから機密情報守れ 【警視庁警視庁【手口伝授】

テレ朝news

2021/12/02 08:13海外のスパイから機密情報守れ 警視庁“手口”伝授 (msn.com)

 日本を狙う海外のスパイから企業の最新技術や機密情報などを守るため、スパイの手口を伝授する警視庁公安部のプロジェクトが本格的にスタートしました。

 宮沢忠孝公安部長:「(都内には大企業や研究機関はもちろん)高度な技術を保有し、高いシェアを確保している中小企業が多く存在し、それらは諸外国のターゲットになっている」

 都内の警察署の警察官が霞が関の警視庁本部に集まりました。

 「経済安全保障戦略会議」というスパイ対策プロジェクトのメンバーで、海外のスパイが狙う企業に直接、その手口を伝えます。

 これまでのスパイと言えば巧妙にターゲットに近付いて親密になり、情報を取ることが多いと思われていますが、最近はインターネットにもスパイが潜んでいます。

 例えば、ターゲットの企業にいる転職希望の社員にスパイが就職先を紹介するメッセージを送り、社員が会社のパソコンでそのURLを開くと会社の情報が流出するなどという手口です。

 警視庁の幹部は「スパイは近隣諸国の国家プロジェクトとしてごく身近なところで暗躍しているので被害に遭っても恥ずべきことと思わず、ささいなことでも相談して官民で連携したい」と話しています。


そのスパイは「好意」と「恐怖」で社員を支配した 警視庁スパイキラーが手口を直伝 日本企業を守れるか

FNNプライムオンライン

2021/12/04 12:14そのスパイは「好意」と「恐怖」で社員を支配した 警視庁スパイキラーが“手口”を直伝 日本企業を守れるか (msn.com)

「好意」と「恐怖」で支配 まるでスパイ小説の世界

「とても勉強熱心でこちらの研究に興味を持ってくれたので嬉しかった」「機密情報を渡した際に、これが最初で最後だと伝えると、急に私の家族の話をしだした。家族に危害が及ぶかもと怖くなった」

警視庁は、121日、経済安全保障戦略会議を開いた。

これは、過去に起きた産業スパイ事件で、ある企業の社員が、勤務先の機密情報を外国のスパイに漏洩したとして逮捕された際に、捜査関係者へ語った内容だ。最初はターゲットに好かれるような振る舞いを続け、相手が拒否感を示した途端に、恐怖で支配しようとする。

なんとも小説のようなスパイの手口だが、日本国内で外国のスパイがいまも活動を続けているのは確かなようだ。ちなみにこの事件で情報を得ていたスパイは逮捕されることなく帰国してしまった。

警視庁公安部がスパイの手口を企業に直伝

さて、こうした外国によるスパイ活動に目を光らせてきたのが警視庁の「公安部」と呼ばれる組織だ。そして今月から、この公安部がこれまで経験してきたスパイの手口、を企業や大学などに直伝するという何とも大胆な取り組みが始まった。

企業や大学などからの技術情報の流出については、政府も経済的な側面から国の安心や安全に関わる問題だとして、いわゆる軍事的な脅威に対する安全保障と区別して、経済安全保障という言葉で警鐘を鳴らし、法制化を進めているところだ。

こうした中、121日、宮沢忠孝警視庁公安部長は、警視庁本部で開催された経済安全保障戦略会議の席で、都内97カ所の警察署から集まった代表者を前に、一部の国は、日本の重要技術を入手するために「合法・非合法を問わずあらゆる手段を駆使している」と指摘。

その上で、「積極的な広報活動や啓発活動によって、企業や大学・研究機関において、経済安全保障についての意識を高めていく必要がある」と強調した。そして、そのための具体的な取り組みとして以下の3点を掲げた。

重要技術を保有する企業などの選定外国の動向や過去の実例検挙事例、サイバーインテリジェンスの手法等の紹介個別の相談 まずは、外国のスパイから狙われる可能性がある企業をピックアップ。

その上で、当該企業を訪問してスパイによる被害の実例やその防止策を伝授する。加えて、企業側からも生の声を聞き情報交換の場としていくという試みだ。しかも公安部は、すでに、およそ2000の企業を選定し、全警察署と連携しての企業訪問を順次開始しているという。

企業側からは「驚き」と「困惑」の声が

さて、実は公安部では、今回スタートした訪問活動の先行的な位置付けとして、213月に経済安全保障のプロジェクトチームを立ち上げて、半導体など世界中が注目する技術を扱う企業などを中心におよそ50社を訪問している。

そしてその際に、スパイの手口を伝えられた企業側からは「サイバー攻撃についての危機意識はあったが、スパイといった人的な行為については初めて耳にした」といった驚きの声が聞かれたという。

その一方で、既に外国企業と合併していたり、外国人の従業員を雇っている企業からは、現実的な対応がどこまでできるのか「悩ましい」との声も聞こえたそうだ。果たして警視庁の虎の巻は、どこまで日本企業を守ることができるのか。注目していきたい。

(フジテレビ社会部・警視庁担当 福井慶仁)

2021年11月12日金曜日

NASAの情報戦略。

 NASAの最高情報責任者が語るデータ運用とセキュリティの最前線

Martin Giles

2021/11/08 06:00NASAの最高情報責任者が語るデータ運用とセキュリティの最前線 (msn.com)

© Forbes JAPAN

提供米航空宇宙局(NASA)は、宇宙ミッションから気候変動の研究まで幅広い任務を担っており、日々膨大な量のデータを扱っている。NASAの最高情報責任者(CIO)であるジェフリー・シートン(Jeffrey Seaton)は、宝の山であるこれらの情報から貴重な知見を導き出す上で、量子コンピュータの活用が鍵になると考えている。

これまでにない計算能力を実現する量子コンピュータは大きな話題となっているが、その本当のパワーが発揮されるのは、まだ当分先のことになりそうだ。フォーブスが先日開催したカンファレンス「CIO Next」に登壇したシートンは、NASAの業務に量子コンピュータを活用するのはいつ頃になるかと問われ、「恐らく5年以上先になるだろう」と答えた。

今年1月にNASACIOに就任したシートンは、もともとインターンとしてNASAの業務に参加して以来、30年にわたり、高パフォーマンスのコンピュータに携わってきた。

NASAは良質なデータを保有しているが、それらはサイロ化され、繋がりのないデータだった」とシートンは話す。彼のチームは、研究者がより多くの生データにアクセスできるようにすると同時に、それらのデータが悪者の手に渡らないようセキュリティの強化を図り、優れた機械学習などのアルゴリズムを提供している。

チーム間でデータのやり取りを行うために、シートンは民間企業と同じように、NASAのテクノロジーを組織内で共通化するか、部門ごとに最適なソフトウェアやハードウェアを導入するかを決めている。

NASA部門とは、米国内に9つある大規模な研究センターのことで、センターごとに研究分野は異なる。シートンは、バージニア州にあるLangley Research Centerで長年勤務し、NASAの中央ITチームから提供される技術サービスの品質を向上させるために、同センターのCTOを務めた。

現在、シートンは中央ITチームの責任者として数千人の従業員や請負業者を監督している。彼は、NASA全体のオペレーションに一貫性を持たせると同時に、職員たちによる中央ITチームに対する評価を把握するより良い方法を構築しようとしている。

サイバー攻撃の脅威

サイバー攻撃の脅威は、NASAでも拡大している。NASAは、宇宙や未来の航空機のデザインを研究しているため、国内外のハッカーにとって最大の攻撃目標の1つとなっている。NASAの技術チームによると、この1年で職員に対するフィッシング攻撃の件数が急増したという。

ハッカーたちは、リモートワークが増える中、職員の認証情報を盗んでNASAのシステムへの侵入を試みている。シートンと彼のチームにとっての最優先事項は、これまで通りサイバーディフェンスであり、彼らが定めたルールや基準をNASAの全職員に遵守させることだ。

シートンらは、AI(人工知能)を用いたセキュリティソフトを導入し、疑わしいメールをブロックしたり、ソフトウェアの脆弱性を修正するパッチを定期的にアップデートしている。他にも、NASA職員たちがハッカーに騙されないよう、教育活動も行っている。

「最高レベルのテクノロジーがあっても、人間による判断ミスが致命的な事態につながる」とシートンは述べた。

拡大するサイバー攻撃の脅威への対応や、ミッションクリティカルなソフトウェアの信頼性を確保することへのプレッシャーは増しているが、シートンは、それを前向きに受け止めている。

10年前には、多くのメディアがテクノロジーの利便性が向上することで、CIOの存在は不要になると書いていたとシートンはカンファレンスで述べた。彼によると、当時のテック分野のリーダーたちは基礎的なことに専念し、先進的なプロジェクトに十分取り組んでいなかったという。

それ以来、世界は大きく変わり、ITチームにとっては、自社を大きく変革するミッションに携われるチャンスが増えた。「今は、CIOにとって最高にエキサイティングな時代だ」とシートンは述べた。


量子コンピュータの開発と実用化でも「日米欧vs共産中国」の構図ができている。

新たな通信技術は我が国で新しく開発されました。今後アメリカにも売り込まれることになるのか?

KDDI総研ら、世界最速の暗号アルゴリズム開発 6G時代見据え

202111/9() 12:45配信KDDI総研ら、世界最速の暗号アルゴリズム開発 6G時代見据え(ITmedia NEWS) - Yahoo!ニュース

総合研究所と兵庫県立大学は2021119日、高速大容量通信を実現するBeyond 5G6G通信に対応できる処理速度をもった暗号アルゴリズム「Rocca」を開発したと発表した。処理速度は138Gbpsで世界最速としている。

 Roccaの鍵の長さは256ビット。認証機能を統合し、データが改ざんされていないことを保証できる「認証付き暗号」にした。KDDIによればRoccaの処理速度は米国標準の暗号アルゴリズム「AES」と比較して4.5倍、256ビットの鍵長に対応した認証付き暗号アルゴリズムとして初めて100Gbpsを超えたという。  KDDIによると、Beyond 5G6G通信は100Gbpsを超える通信速度の実現に向けて研究が進められているという。RoccaBeyond 5G6G通信の速度を損なわないよう、100Gbps以上の処理速度がありつつ、量子コンピュータでの解読に耐えられるような鍵の長さを持つ暗号として開発した。  今後はさらなる高速化を目指すとともに安全性を確認。実用化に向け、スマートフォン上などで性能評価を進める。









2021年11月5日金曜日

脱北者が語る北朝鮮の諜報工作。

 共産大学の教授時代に見聞きした北朝鮮スパイの対南工作の実情

金 興光

2021/10/31 06:00共産大学の教授時代に見聞きした北朝鮮スパイの対南工作の実情 (msn.com)

© JBpress 提供 北朝鮮派金正日総書記が統治した90年代に、韓国に対する工作員を劇的に増やした(写真:AP/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

「北朝鮮工作員が韓国の主な機関だけでなく、各界の市民団体にも潜入し、活発に活動していると申し上げることができます」

 30年間、北朝鮮諜報機関に身を置いた脱北者、金国成氏(キム・ククソン、仮名)氏が20211011日、英BBCのインタビューに登場し、韓国内で暗躍する北朝鮮スパイの実態と、北朝鮮による天安沈没事件などの詳細を証言した。とりわけ衝撃を与えたのが、大統領府に自身が工作員として潜入していたという事実である。

 BBCによれば、インタビューに応じた金国成氏は北朝鮮の諜報機関で活動し、対南工作や暗殺などの特殊任務を担当していた。北朝鮮を支配する金一族の統治資金を作るため、麻薬生産に従事した経験もあるという。その後、2014年に脱北し、現在は韓国・国家情報院傘下の機関で仕事をしているという話だ。

 BBCは「彼が暴露したすべての内容を検証することはできなかったが、彼の身元と、一部の主張が事実と一致するという点も確認した」と報じている。

 国家情報院は「脱北者の身の上および主張に対して確認する必要はない」としながらも、「(金国成氏がスパイとして)1990年代初頭、大統領府56年勤務したという内容は事実無根」と明言した。もっとも、仮に事実だったとしても、国家情報院が事実無根だと言わざるを得ないことは子供でも分かることだろう。

 北朝鮮の大学教授であった私から見ても、脱北者の金国成氏が明らかにした大統領府工作員潜入事件は、事実である可能性がいくらでもあると主張したい。その理由は3つある。

 まず、金国成氏が韓国に派遣された、いわゆる南派工作員の秘密を語ることのできる地位にいた可能性が高いという点だ。

脱北スパイの話が本当だと感じた理由

 金国成氏は、北朝鮮で自身が引き受けた業務の一つが、対南対応戦略の開発だったと語っている。脱北者が北朝鮮社会の一般的な実情について語る場合は、直接本人が目撃したことを述べることが大半だ。だが、体制内部の実態については、高い地位の人間でなければ知り得ないため、「誰々から聞いた」と伝聞になることが多い。

 それに対して、金国成氏の話は伝聞ではなく、実際に見聞きしたという話だ。彼が30年間にわたって北朝鮮諜報機関で仕事をしていたとすれば、スパイの派遣と管理を担当した中央党連絡所、あるいは中央党社会文化交流部、中央党調査部、統一戦線工作部などに所属していた可能性が高い。30年以上のスパイ関連業務を担当したベテランだからこそ語ることのできる内容だと感じた。

 次に、金国成氏の陳述が具体性を帯びていることだ。

 金国成氏は「私が直接スパイを送った」と語る一方、「1990年代初め、南派工作員が大統領府で56年間勤めた後、無事に北朝鮮に帰国した事例もある」と述べた。大統領府にスパイを直接派遣し、指揮したという話は、大半の脱北者が「重要な情報」と囁く内容とは明らかに違う。

 90年代であれば、盧泰愚元大統領、金泳三元大統領の時代だが、この時代は北朝鮮が対南赤化統一政策を最も積極的に推進した時期だ。金正日総書記は南派工作員を指揮する中央党連絡部を拡張し、南派工作員の数を劇的に増やしたため、この時期に大統領府に工作員が潜入したという金国成氏の話は信憑性が高い。

 そして、私の個人的経験からも、北朝鮮工作員が大統領府に潜入した可能性は十分にあると主張できる。

 私の経験とは、北朝鮮の共産大学の教授だった時、工作員を家族に持つ同僚の教授や学生たちから、韓国内へのスパイ派遣に関する話を数多く聞いたことを指す。共産大学とは、北朝鮮の党や行政機関、勤労団体の幹部を養成および再教育する、朝鮮労働党の幹部養成機関だ。

 共産大学には多様な学科が開設されたが、その中には前述した「6グァデサン(韓国に派遣された家族を管理する党の専門担当部署)」に対する教育、南朝鮮任命幹部教育班、さらに金日成主席や金正恩総書記の身辺警護をする護衛部隊「974軍部隊」の除隊軍人を再教育する班もあった。

 その他にも大学には、除隊軍官再教育班もあり、偵察局をはじめ北朝鮮軍の主な部隊を除隊した将校に対する特別教育を実施していた。

 そういった中で様々な話を聞くことによって、私は地位の高い幹部でも知らない党、軍、行政の主な部署の内部の実態と、特に南朝鮮に派遣したスパイの関連情報をある程度知ることができたのだ。

 今でも思い出すのは、南への派遣工作業務と関連した情報を知っている多くの学生たちが揃って、「南朝鮮には北朝鮮のスパイが電信柱の数よりも多く、高い地位層や大統領がいる大統領府にも目玉(スパイのこと)が潜入している」と話していたことだ。

 たまたま聞いた話ではなく、一人二人ならまだしも、別の時期、別の経歴の学生たちが電信柱の話だけは必ず同じ内容を口にするので、大きな衝撃を受けた。彼らの話が事実ならば、電信柱並みに多い工作員がどうして労働者や農業従事者にだけ潜伏していると言えるだろうか。

 その後、韓国で暮らしてみて、南に送り込まれた工作員はかなり多いだろうと確信を持つようになった。

 そのような確信を持つことになったのは、南に送り込まれた工作員が韓国に定住し、偽装工作として潜入した組織や機関で昇進しているのを目の当たりにしたからだ。韓国には、能力の高い工作員が北朝鮮寄りのプロパガンダを流す親北活動に従事できる条件と環境が揃っていると感じた。

 もちろん、韓国の中央情報部や安全企画部が盛んに毒を盛った時期は、北朝鮮工作員が潜入したり、韓国内の協力者や情報元を確保したりというような、スパイ網を拡張する活動は非常に骨を折ったようである。

© JBpress 提供 北朝鮮の工作員は韓国だけでなく日本にも潜入していた。写真は北朝鮮の工作員として知られる辛光洙。横田めぐみさんなど複数の日本人を拉致した(写真:AP/アフロ)

韓国が北朝鮮のスパイ天国になった要因

 ここで、私なりに考えた、韓国に対する北朝鮮のスパイ派遣と、その活動に十分な条件というものを、いくつか提示してみようと思う。

 まず、韓国の国家保安法が有名無実になってしまったことが挙げられる。次に、スパイの基準が曖昧になったこと、さらに防諜機関がスパイを捕らえても起訴し、裁判にまで至らないケースが多々あることもある。最後に、大統領府から国民に至るまで、親北朝鮮の感情が深く深く根を下していることである。

 今日まで、北朝鮮から南に送り込まれたスパイの首を締め、国家安全保障の規律を生み出すことにつながった国家保安法と国家情報員は、今では存在しているかどうかも分からない状況だ。

 私は、2004年に脱北して韓国に来たが、その時はまだスパイの申告と、それ関連した案内文をあちらこちらで見た。住民がスパイを申告する文化も生きていた。だが、いつからかスパイと親北朝鮮関係者の区別がなくなってしまった。

 メディアは北朝鮮の首謀者を敬称付きで呼び、大韓民国の体制を破壊する諜報活動を実施し、逮捕・服役した南派工作員を非転向長期囚ともてはやしている。スパイ事件に関わり処罰を受けた犯罪者が、国会議員はもちろん、大統領府にまでダイレクトにつながっているこの状況には開いた口が塞がらない。

韓国に生息する北朝鮮スパイのタイプ

 韓国には、北朝鮮の息がかかった様々なスパイがいる。

・日本の植民地支配から解放された時に北朝鮮の指令を受けて南へ派遣されたスパイ

・朝鮮戦争時に北朝鮮の政治工作通りに南下し、朝鮮労働党の指示により韓国に定着したスパイ

・智異山パルチザンなどに関連したスパイ

・主体思想に心酔したあげく、北朝鮮工作員とともに平壌にまで行き、隠密教育を受け、正体を隠している韓国の民主化闘士

・欧州で大学に通っていたが、高額の学費を出せなくなり、北朝鮮の金日成奨学金を受けて大学を卒業した後、韓国の指導層にまでのし上がったスパイ

・北朝鮮に訪問した際に北朝鮮の美人局や賄賂に惑わされ諜報活動をするようになった主要人物

・北朝鮮と事業をしようと海外の北朝鮮大使館を探して通ううちにスパイに転落した者

 これだけではない。最近は、スパイを捕らえることすら、夢のまた夢のように大変だ。スパイを捕まえる国家情報院要員がスパイを捕らえようとしたところ、適法性を問われ、逆に監獄へ送られたケースも一度や二度ではない。また、せっかくスパイを捕らえても、親北朝鮮の弁護団が弁護し、無嫌疑で処理されてしまうことが日常茶飯事だ。

 このような事実を見れば、大統領府にスパイは絶対に潜入できないという判断は韓国の実際の状況を歪曲し、大黒柱から腐り果てようとしている大韓民国の安全保障に対する不安に目を閉じてしまう、近視眼的な考えだという他にない。

動画

盗聴器をしかける北の工作員

北朝鮮の対南工作

※北朝鮮にとっては韓国の屈服と朝鮮半島の赤化統一は、宿願といっていいかもしれません。


2021年8月20日金曜日

最も危険な教科書 陸軍中野学校の新史料

  第二次大戦の終戦時にすべて焼却処分されたと思われていた陸軍中野学校の教材資料一式が、新潟県の旧家に保存されていたことがわかりました。

 史料の所有者は、陸軍中野学校8丙の卒業生だった齋藤津平氏(陸軍参謀本部軍事調査部・中野学校83班)。史料を発見した時の経緯は以下の通り。

「久しぶりに蔵の中を整理したんです。机の上に忘れていた布製のリュックサックがありまして中のものを取り出してみると中野時代の教材が入っていたんです。どうして蔵の中にあったのか、その時は思い出せなかったのですが、中に日記(修養禄と表題が書かれている)もありまして、読んでみると理由がわかったんです。リュックサックを送ってくれたのは、親しくしていた同期の由良見習士官で、彼は私の私物を実家に送るときに教材を間違えて入れてしまったんです。後に未回収が問題になったこともないので私は忘れていました。」

齋藤津平氏所蔵の陸軍中野学校テキスト資料


『修養録』

194529日のページ

《晴れ・「風と共に去りぬ」を見学す。宣伝映画としては当を得たものなり。然して、映画内容よりアメリカ人の気質を知りえたることは幸いなり。南部アメリカ人の野性的にして闘争的なスピレット(原文ママ)は軽視すべからず。些細な情報源からも敵の国民性を観察すること必要なり。映画よりかかる教訓を得たるは可なり。》

 資料はノートの修養録のほかに、粗末なワラ版紙にガリ版と和文タイプで印刷された教材が保存されており、それらがぼろぼろに風化することなく、判読できる状態で今日まで残されていた。

津平氏が蔵から持ち出してきた資料を列挙すると、以下の通り。(教材の表題)

『国体学』、『謀略』、『宣伝』、『諜報』、『偵謀』、『人に対する薬物致死量調』、『伝染病と灸法』、『重慶政権の政治』、『経済動向観察』、『総合演習計画書』(演習目標を示す手製の地図、同じ地図が20枚綴られる)など。(積み上げると10cmの厚さ)

 宣伝教材としては、例えば謀略放送を企画するときは、ゲーテの戯曲ファウストに登場するメフィストの気持ちを真似る方法を解説している。

 《謀略放送とは、親しい友人の間に水を差して、互いに疑惑の目をもって見るように導き、遂に闘争をさせるということである。まず敵国民なり、前線兵士なりに同情していう。そこで「メフィストフエレス」の様に一言耳に囁き、それによって為政者なり、将校なり疑わせ、聞く者の心に偽みを起こさせるのである。(後略)》

 メフィストの心理を謀略放送に用いるなど、なかなか斬新なアイディアを研究している。女性の口説き文句としても通用するであろう。

 他にも謀略の本義や薬物の致死量を解説した教材もあり、当時の中野学校の教育内容がレベルの高いものであったことが、これらの資料によって裏付けられた。

『謀略の本義』

《国家間の闘争は、武力に依るのみならず、政治、経済、思想等いわゆる総力戦の全部門にわたり、行はるるものにして、従って平戦時とも、軍事、経済、思想等国家対外施策全部門にわたり、用いらる(後略)》

 内容は現代の情報戦にも通じる謀略の本質を解いており、中野学校が“見えない戦争(UnseenWar)”を実戦向きに教育していたかを示している。

 津平氏ら8丙の学生は、昭和20715日に移転先の富岡校を卒業しているが、8丙の教育機関は、中野時代と富岡時代をあわせて7ケ月間であった。ただ終戦が近くなると戦局が切迫してきたため、より実戦を想定した演習や訓練が主体となった。

「英語班、支那班、ロシア班の三班があった中で、私は支那班に席がありました。富岡時代は諜報員としての教育よりも、図上演習による遊撃戦、米軍の本土上陸を想定したゲリラ戦のシュミレーションを各地でやっていました。それは群馬の高崎であったり、埼玉の児玉、あるいは本庄といった町でした。当時の米軍との決戦場は、関東平野と南九州が想定されていました。」(津平氏談)

ゲリラ戦の訓練をうけた元兵士

陸軍中野学校の疎開先




2021年7月5日月曜日

 米IT企業にサイバー攻撃=世界に被害拡大の恐れ

2021/07/04 18:12米IT企業にサイバー攻撃=世界に被害拡大の恐れ (msn.com)

【ワシントン時事】米IT企業がサイバー攻撃を受け、同社のソフトを利用する企業に身代金が要求される被害が広がっていることが3日までに分かった。影響は米国外でも確認されており、世界各地に拡大する恐れがある。バイデン大統領は3日、関係当局に調査を指示した。

 標的となったのは、ITシステム管理ソフトを提供するカセヤ。ハッカーは2日までに同社のシステムに侵入し、サーバーを通じて顧客企業のデータを暗号化して身代金を要求する「ランサムウエア」を仕組んだ。ロイター通信は、4日の米独立記念日に伴う連休を狙ったサイバー攻撃だった可能性があるという専門家の見解を報じた。

 カセヤの顧客企業はさらに幅広い企業のデータ管理サービスを提供しているため、被害が連鎖的に広がる恐れがある。スウェーデンのスーパー大手「コープ」は、レジのシステムに障害が発生、3日までに約800店舗が一時閉鎖に追い込まれた。

 カセヤは、顧客企業にサーバーを停止するよう通知し、3日時点で「被害は極めて少数だと思われる」としているが、AFP通信は1000社以上のデータが暗号化されたと伝えている。 


ランサムウェア感染の様子。
ランサムウェア感染画面。
脅威と対処法

データを暗号化して、いわば人質にとるわけですが、身代金を支払ったとしても暗号化されたファイルは元に戻るのかな?
そこまでしてくれるなら、お金をいただけるなら確実にファイルの安全は保障します、お戻しします、という確約がほしいな・・・そういう問題じゃないか!
病院や公的機関については、ぜひこういう攻撃はやめてほしいものだ。人間のやることじゃないな。







2021年7月3日土曜日

イギリス国際シンクタンク報告書 「日本のサイバー戦能力は最下層レベル」・・・かなりヤバイ評価。

 日本、北朝鮮と同じ最下層に「サイバー能力」情報共有・防衛で見劣り

読売新聞

2021/06/30 14:49日本、北朝鮮と同じ最下層に…「サイバー能力」情報共有・防衛で見劣り (msn.com)

【ロンドン=池田慶太】英国際戦略研究所(IISS)は20216月28日、主要国のサイバー能力を総合評価した報告書を発表した。国別では米国をトップとする一方、日本は民間との情報共有や、防衛能力で見劣りするとみなされ、最も低いグループに位置付けられた。

 日米欧や中露など15か国を、国家戦略やサイバー分野のインテリジェンス(情報)、国際的リーダーシップなど7項目で評価した。

 最も能力が高い第1グループは米国のみ。中国による欧米の先端技術獲得を同盟国と共に阻止し、今後10年は優位を保つと分析した。

 英仏などが並ぶ第2グループでは、中露がやや勝ると評価。特に中国については、「唯一、米国の仲間入りをする可能性がある」と指摘した。最下層には日本のほか、北朝鮮、ベトナム、インドなどが入った。


さらに詳しくみていきましょう。


日本のサイバー能力は「脆弱」=英シンクタンクが報告書

2021/06/30 12:34日本のサイバー能力は「脆弱」=英シンクタンクが報告書 (msn.com)

【ロンドン時事】英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」が公表した15カ国のサイバー能力を分析した報告書で、日本は3段階で最低の「第3級」に分類された。「いくつかの分野では強みがあるが、他の分野では大きな脆弱(ぜいじゃく)性がある」という。日本のデジタル分野の出遅れが響いた。

 報告書は20216月28日付。最高の「第1級」に分類されたのは米国のみ。「第2級」はオーストラリア、中国、フランス、ロシア、英国など。「第3級」は日本のほか、インドやインドネシア、イラン、北朝鮮などだった。

 報告書は米英など英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」の同盟国としてフランス、イスラエル、日本の3カ国を挙げた。ただ、フランスとイスラエルを「サイバー能力の高いパートナー」と位置付けたのに対し、日本は「同じく同盟国だが、強力な経済力にもかかわらず、サイバー空間の安全保障面では能力が低い」と指摘した。

 日本に関してはさらに、「多くの企業が防衛力強化のためのコストを負担しようとしない」などと問題点も列挙した。

 報告書はそれぞれの国の能力を「戦略とドクトリン」「サイバー空間における世界的リーダーシップ」など七つの項目で分析した。その上で、「少なくとも今後10年は米国の優位が続く可能性が高い」とする一方、中国が「第1級の米国に加わる軌道に乗っている」と結論付けた。 

ホワイトハッカー育成トレセン(サイバー演習)

我が国のサイバー戦争への対策は、まだまだ緒についたばかりというところか?
予算面でのとりくみに十分さが感じられないのか? 国家的な規模のサイバーコマンドが正規軍として存在しないからなのか? 民間での人材育成が遅れているからなのか?

今や先進国、経済力、技術力の高い国への「攻撃」は、軍事攻撃ではありません。情報、経済において仮想敵国の中枢に切り込む、そして骨抜きにする戦争が主流です。そして当事国はその攻撃を否定するという「ステルス攻撃」の時代といえるでしょう。
まさに宣戦布告なき仮想敵国の政治や経済の中枢を狙う「機略戦」の時代といえるかもしれません。
我が国もエシュロンの中核を担うべき国際的な立場を実現したいのなら、情報戦大国となるべく体制を整えなくてはならないはずです。

太平洋諸国との国際平和関係を深めることが、我が国のプレゼンスを強化すること、自衛隊ばかりが国防の最前線ではありませんね。
太平洋は今や日米VS共産中国との情報戦、外交戦の熾烈な戦場といえるでしょう。

島嶼国めぐり対中暗闘 インフラ整備阻止、情報戦がカギ

2021/07/02 19:56島嶼国めぐり対中暗闘 インフラ整備阻止、情報戦がカギ (msn.com)

菅義偉(すが・よしひで)首相は20217月2日の太平洋・島サミットで、太平洋島嶼国に対するインフラ整備支援に向けた意欲を改めて強調した。政府は表向き中国に対抗する意図を否定するが、太平洋島嶼国への進出を強める中国系企業に対する警戒感を強めている。特に安全保障に直結するインフラ分野では、米国などと連携して中国の影響力をそぎたい考えで、島サミットはこうした取り組みを進めるうえで重要な会議となった。

「特定の国を念頭においての発言ではない」

会合終了後、坂井学官房副長官は記者団に、首相が「権威主義との競争」に言及したことをこう説明した。資源が乏しい太平洋島嶼国の多くが対中依存を強めており、中国に対する敵対的なイメージを回避したい島嶼国への配慮がにじむ。

だが、日本政府は水面下で中国の影響力排除を狙った動きを進めている。ミクロネシア3カ国での海底通信ケーブル敷設事業をめぐる中国企業の進出に「待った」をかけたのも、その一つだった。

昨年、島嶼国のミクロネシア連邦、ナウル、キリバスの3カ国では、世界銀行とアジア開発銀行(ADB)が主導して海底通信ケーブルの敷設事業が計画されていた。日本とフランス、中国の企業が入札に参加したが、中国企業が最低価格を提示したため、事業主体となる可能性が高かった。

中国の企業は米国が投資禁止対象としている通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の関連企業だった。通信ケーブルは陸上施設が標的となって情報流出の恐れがある。

「中国企業が主体になれば安全保障上の脅威になりかねない」。危機感を抱いた日本政府は水面下で米国に協力を求めた。計画では米領グアムで米国企業が敷設したケーブルと接続されることになっていたため、米政府はグアムでの接続に難色を示し、計画の仕切り直しにこぎつけた。

中国系企業は携帯電話事業や港湾整備をめぐっても太平洋島嶼国への進出を強めている。日米両政府などは事前に進出を阻むべく「情報戦」を展開しているが、政府高官は「それぞれに事情があるだけに日頃の関係強化が重要だ」と話す。日本政府としては島サミットで構築した信頼関係やネットワークも活用することで、島嶼国で繰り広げられる情報戦を制したい考えだ。(市岡豊大)

米中情報戦が本格化、日本はチャンス!?
何もしなければチャンスはただすぎていくだけ・・・尖閣諸島にしろ軍事力でなく、情報戦(プロパガンダ)と海洋警察力、漁業の産業力で領海、排他的経済水域の確保を!