2017年9月15日金曜日

日米韓の連携による北東アジアの秩序維持強化を! ~重要なことは「集団的自衛権の行使」~

ミサイル防衛を偏重しすぎている日本

「国産よりアメリカ製品を優先」の不思議

北村淳
北朝鮮平壌近郊で発射台から離れる北朝鮮の中距離弾道ミサイル「火星12」とされる写真。朝鮮中央通信提供(2017829日撮影、30日公開、資料写真)。(c)AFP/KCNA VIA KNSAFPBB News

 北朝鮮が核搭載大陸間弾道ミサイル(ICBM)を手にすることが確実になったため、アメリカでは、ミサイル防衛局(弾道ミサイル防衛システム開発の元締め)はもちろんのこと、連邦議会の議員も多くの人々も、弾道ミサイル防衛システムの強化を唱え始めている。具体的には、北朝鮮から飛来するICBMを迎撃するために、アラスカ州とカリフォルニア州に配備されている「GMD」(米本土防衛用弾道ミサイル防衛システム)から発射するインターセプター(迎撃用ミサイル)の数を増やすべきだという主張である。日本でも、「イージス・アショア」(地上配備型の弾道ミサイル防衛システム)導入の声が急激に力を得ているようである。
既存のBMD態勢で十分という声も
 アメリカで弾道ミサイル防衛(BMD)の強化が叫ばれているのは、北朝鮮のICBMがアメリカ本土に到達するかもしれないという新たな脅威が誕生してしまったからである。これまでも、ロシアと中国のICBM攻撃に対処するためのBMD態勢は、完璧ではないものの充実させる努力を続けてきてはいた。
 しかし、長年にわたって互いに「核攻撃~報復核攻撃」という恐怖の均衡でバランスを取りつつ共存してきたロシアや中国と違って、北朝鮮の出方はアメリカにとっては読み切れない。そのため、北朝鮮の核戦力は、ロシアや中国の核戦力とは比べようがないほど貧弱とはいうものの、まさに新たな脅威としてアメリカ(それもグアムやハワイだけではなくアメリカ本土)に降りかかっているのである。
そうした北朝鮮の脅威に対応して、弾道ミサイル迎撃用インターセプターの数を増強せよ、という声が上がるのは無理もない流れといえる。
 しかしながら、GMDTHAAD(米陸軍が保有する地上移動式弾道ミサイル防衛システム)を増強する、といった考えに対して、「これまでロシアや中国からの脅威に備えていたBMD態勢で北朝鮮のICBMに対処できないわけではない」という声も上がっている。
 つまり、北朝鮮のICBMはたとえ完成してもロシアや中国のICBMより性能が数段劣るし、数も極めて少ない。また、北朝鮮から発射されたICBMがアメリカ本土へ飛来する飛翔コースと、中国(満州エリア)からの飛翔コースは近接している。したがって、ロシアや中国からのICBM攻撃に対処する既存のBMD態勢をもってすれば、北朝鮮のICBMは十分対処可能ということになるのである。
BMDに頼り切ってはならない
 それだけではない。多くの弾道ミサイル専門家たちは、そもそも慌ててGMDTHAADSM3(イージス艦から発射される)などのインターセプターを大増強したところで、「北朝鮮のICBMを必ず撃破できるわけではない」と警告している。なぜならば「現在、調達可能なBMDの迎撃信頼性は、増強に熱心な政治家たちが考えているほど高くはない」からである。
 例えば「BMDに頼り切ってはいけない」といったスタンスの人々は、「最も数多くの迎撃実験を行っているSM-3の迎撃成功率ですら85%であり、その数字も“成功するように設定された実験”によって得られた確率である」と注意を喚起している。
 彼らはBMDそのものを否定しているわけではない。「迎撃率が100%にはほど遠い」という現在のレベルではBMDを「過度に信頼してはならない」と言っているのだ。
そのうえで、「インターセプターの迎撃性能を飛躍的にアップさせない限り、BMDのシステム本体やインターセプターの購入に大金を投じても、迎撃効果、そして抑止効果は向上しない」として、北朝鮮による“新たな脅威”に乗じてBMD関連予算を増強しようとする動きを強く牽制している。
気前よくBMDを購入する日本
 日本でも、北朝鮮のICBM騒ぎに乗じてBMDを強化しようという動きが露骨に強まっている。
 しかしながら、日本にとって北朝鮮の弾道ミサイルによる脅威は、アメリカ攻撃用のICBMやグアム攻撃用のIRBMが完成するはるか以前から存在し続けている。また、弾道ミサイルの脅威は、北朝鮮からだけでなく中国からもロシアからも受け続けており、中国やロシアの弾道ミサイルによる軍事的脅威は北朝鮮の比ではない。
 それにもかかわらず、北朝鮮がアメリカ攻撃用のICBM(米本土攻撃用)やIRBM(グアム攻撃用)を完成させると、ちょうど来年度の防衛予算概算要求の時期とダブっていたことも相俟って、日本国防当局はイージス・アショアの導入といった極めて高価なBMDシステムをアメリカから購入する方向に踏み出した。
 弾道ミサイル防衛システムの本家本元のアメリカでは、「十二分に信頼が置けるレベルに達するまでは頼り切ってはならない」という声も上がっており、過度の調達にブレーキをかけようという動きも見られる。しかし、日本ではそのような議論が戦わされることもなく、再びアメリカから超高額兵器を購入しようとしているのだ。
「通常戦力」の飛躍的強化が必要
 繰り返しになるが、日本が直面している軍事的脅威は北朝鮮の弾道ミサイルだけではない。上述したように中国やロシアの弾道ミサイルはさらに強力だ。
 中国人民解放軍は弾道ミサイルに加えて、大量の長距離巡航ミサイルを日本に撃ち込む能力を持っている。また、中国海洋戦力によって、南シナ海を縦貫している海上航路帯が寸断されかねないし、南西諸島も大きな軍事的脅威を受けている。
このような様々な脅威に対処するには、弾道ミサイル防衛以外の防衛力、すなわち海上自衛隊、航空自衛隊、そして陸上自衛隊の通常の戦力を充実させること、それも飛躍的に強化させることが必要である。なけなしの防衛予算を超高額弾道ミサイル防衛用の装備に振り向けてしまうと、各自衛隊の通常の戦力を充実させることができなくなってしまう。
国産よりもアメリカ製品を優先?
 防衛省はイージス・アショアのような超高額兵器をアメリカから購入する方向性を打ち出す一方で、陸上自衛隊が調達しようとしていた国産の装甲車両などは半分に減らしてしまう方針のようだ。
 不思議なことに、国産兵器の調達は減らしても、アメリカから購入するMV-22オスプレイ(メンテナンス費用も超巨額)やAAV-7水陸両用強襲車(技術的には国産が可能)などの輸入は減らさない。これでは、「どこか国民の知り得ないところで、アメリカからの超高額兵器の購入を促進しようというキャンペーンが推し進められているのではないか?」と疑われても仕方がない。

 いずれにせよ、弾道ミサイル防衛システムを生産して日本に売り込もうとしているアメリカ自身で議論になっているように、現状の弾道ミサイル防衛システムは「頼り切ってはいけない」レベルなのだ。そのようなレベルにある超高額兵器に大金を投入する前に、自衛隊の通常の戦力レベルを高めないと、日本の防衛レベルは降りかかっている脅威を跳ねのけることができない。中国からはもちろん北朝鮮からも軍事弱国としてますます侮られることになってしまうであろう。

《維新嵐》BMDシステム、地上発射型のイージスアショアなどは弾道ミサイル防衛の手段としては「頼りすぎてはいけない」ものの我が国の主権と独立を守るための兵器システムとして必要なものです。北朝鮮は、通常戦力レベルにおいては戦闘継続もままならない状況でしょうから、陸海空の通常戦力の充実、統合防衛力の向上、完成をはかること、軍事戦略、ドクトリンの研究開発、何より自衛隊を「国防軍」化していくことです。基礎レベルでこの国の防衛は不完全です。

BMD~弾道ミサイル防衛~

米国は北朝鮮を攻撃するのか?核保有国として認めるのか?

辰巳由紀 (スティムソン・センター主任研究員)

201793日、北朝鮮は6度目の核実験を行った。今回で6度目となる核実験は、水素爆弾を使用した実験であった可能性が高いと言われている。今年1月から数えても計12回になるミサイル実験を経て行われたこの核実験は、水素爆弾を使用した可能性が極めて高いと言われているが、今回の実験により、金正恩体制発足後、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発プログラムが目覚しい進歩を遂げていることが改めてはっきりした。
 トランプ大統領は、昨年の大統領選挙期間中は、アジアの安全保障については殆ど口にしなかった。例えば、昨年321日、大統領選予備選真っ最中にワシントン・ポスト紙と行った単独インタビューで、日本や韓国が「なぜ駐留米軍経費を100%払っていないのか」「日本も韓国もとても豊かな国ではないか」などと発言したことはある。大統領選挙直後の117日には当時のトランプ陣営でアジア政策のブレーンだといわれていたピーター・ナバロ現通商製造政策局局長とアレクス・グレイ同国防産業基盤担当副部長が共著で「力を通じての平和がトランプ政権のアジア太平洋外交の原則になる」という論考を「フォーリン・ポリシー」誌に寄稿した。それでも、トランプ大統領がアジア政策をどのように考えているのかについては、つかみどころがない状態のまま、トランプ政権は発足した。そんなトランプ大統領が、大統領就任後に初めて対応を迫られることになった安全保障問題が北朝鮮情勢、というのは何とも皮肉なめぐりあわせだ。

トランプ政権の「人手不足」リスクが露呈
 しかも、ドナルド・トランプ米政権発足後最初のミサイル実験となった212日は奇しくも、トランプ政権発足後初の日米首脳会談のために安倍総理が米国を訪問している最中であった。そのため、北朝鮮問題についてのトランプ大統領の第1声は、安倍総理が隣で見守る中、発せられることとなった。
 この212日のミサイル実験以降、北朝鮮は毎月12回のペースでミサイル実験を行ってきたが、トランプ政権が一貫した対応を取ってきたとは言いがたい。これは、北朝鮮情勢のような外交・安全保障問題に対応し、同盟国その関係国と種々の意思疎通・調整の最前線となる国務省・国防総省の中堅幹部クラスの指名が大幅に遅れていることと無縁ではないだろう。例えば、アジア太平洋の外交・安全保障問題への対応の要となる東アジア太平洋担当国務次官や、アジア太平洋担当国防次官補のポストは、9月に入ってもまだ、ホワイトハウスから指名の発表すら行われていない状態だ。また、大使人事についても、駐日米大使はすでにハガティ大使が着任しているが、駐韓米大使については、ビクター・チャ元NSCアジア部長でほぼ決まりだという噂はあるものの、正式な指名には至っていない。このような政権内の人手不足がこれまで、米国の後手後手の対応に影響しているのではないかという疑問は拭えない。
 さらに上記のような人手不足のリスクが露呈したのは、8月初旬、金正恩国務委員長がICBM(大陸間弾道ミサイル)をグアムに向けて発射する準備を進めていると発言。これに対してトランプが、挑発的行為が続けば北朝鮮は「これまで世界が見たこともないような炎と怒り(fire and fury)を見ることになる」と警告したときだ。大統領自らが「炎と怒り」のような煽動的な言葉を使って武力行使をほのめかすことは異例中の異例である。トランプ大統領のこの発言については、事後、「大統領自身の言葉だった」とハッカビー・サンダース報道官が認めているが、通常の政権であれば、このような局面での大統領の発言は一言一句、練りに練られたものとなる。大統領のいわば「アドリブ」に任せるようなことはあり得ないのだ。
 当然、トランプ大統領のこの発言は、国内外から、無責任に緊張をあおるだけだとして厳しく批判された。また、この発言の直後、ティラーソン国務長官やマティス国防長官は一貫して慎重なトーンの発言をづつけた。それでも北朝鮮情勢が打開できない場合、トランプ大統領は対北朝鮮武力攻撃という選択肢を選ぶことをどこまで本気で考えているのかについては今でも議論が続いている。
長らくタブーとされてきた2つの政策オプションの議論
 さらに厄介なのは、93日の核実験以降、ワシントンでは長らくタブーとされてきた(1)対北朝鮮軍事攻撃、(2)北朝鮮を核保有国として認めたうえで北朝鮮が持ちえる核兵器に上限を課し、さらに核兵器・物質の不拡散を目指す国際的枠組に北朝鮮を引き込んでいく、という2つの政策オプションをめぐるワシントンの政策コミュニティ内での議論が、より現実味を帯びてきていることだ。
 現時点では(1)対北朝鮮軍事攻撃オプションは、「言うは易し、行うは極めて難し」だ。なぜなら、アメリカが北朝鮮に武力行使をする場合、北朝鮮の核・ミサイル施設を空爆により破壊すればそれでおしまい、といった単純なものではないからだ。
 北朝鮮に対してアメリカが何らかの攻撃をした場合、北朝鮮の報復は(1)ミサイルによる対グアム攻の試み撃(2)在日米軍基地攻撃(3)在韓米軍攻撃(4)韓国攻撃する、の4つの選択肢の組み合わせになるが、この全ての場合において、日本あるいは韓国(もしくは両方)に被害が及ぶことになる。つまり、アメリカの一存だけでは武力行使オプションを取ることはできず、日本、韓国(あるいは両国)の同意を得ることは必須だ。だが、実際に「戦争」を目の前に突きつけられたとき、日本も韓国も容易には武力行使には同意しないだろう。特に、最近では度重なる北朝鮮からの挑発によって、立場を修正しなければいけなくなったとはいえ、文・新韓国大統領は基本的には北朝鮮に対しては融和的だ。韓国を米側に引き付けておくためには、相当の努力が必要になるだろう。
中国も朝鮮半島における衝突は望んでいない
 朝鮮半島における軍事衝突を望んでいないのは、米国と北東アジアの同盟国だけではない。中国も、朝鮮半島で再び戦争が起こることは望んでいない。中朝国境で大混乱が起きるだけでなく、軍事衝突の結果北朝鮮が消滅すれば、韓国と自国との間にこれまでバッファーのような役割を果たしてきている存在が失われるからで、これは中国の戦略的利益と相反するからだ。したがって北朝鮮に対する武力行使の際には、米中、あるいは米ロで何らかの「落としどころ」の合意が必要になるが、特に現在の米中関係の緊張を鑑みればそれも簡単には実現できないだろう。また、北朝鮮情勢で米中が協力を深めることを良しとしないロシアが今後、どのような動きを見せるかも不透明だ。実際、中国が経済制裁を遵守しはじめてから、ロシア北朝鮮間の貿易量が増大しているという報道もある。中国とロシアをけん制しながら議論を進めていくのは非常に難しいだろう。
 また、細かいところでは、北朝鮮に対し軍事攻撃オプションを取ろうとする場合、日本、韓国、中国に居住する民間のアメリカ人、米軍の家族、大使館員などを退避させる必要がある。本格的な戦闘に備えて在日米軍基地経由で米太平洋軍の指揮下にある部隊を動員する必要も出てくる。いずれも北朝鮮に気づかれないように進めるのは至難の業であるばかりでなく、武力行使を開始するかなり前からそのような準備を始めなければならない。
 ここで米国の出方を占う際に注目すべきは、マティス国防長官、ダンフォード統合参謀本部議長、さらにジョン・ケリー大統領首席補佐官の3名の発言である。彼らはいずれも、イラク・アフガニスタンで01年以降続いている出口の見えない戦いの当事者だった経験があり、戦争が長期化・泥沼化するリスクを身をもって体験している。そんな彼らにとって北朝鮮に対する軍事攻撃は、大統領に進言するには非常に敷居が高いオプションなのだ。トランプですら、「炎と怒り」発言からわずか1カ月後の97日、訪米中のクウェート首長との会談後に臨んだ共同記者会見の席上、北朝鮮による核実験から僅か4日後であったにも拘らず、北朝鮮に対する発言は「不可避なものは何もない」「軍事オプションを取ることは望んでいないが、その可能性はあるということだ」と大幅にトーンダウンした。


制裁決議が採択されたが……
 では、もう一つのタブー、「北朝鮮を核保有国として認めたうえで北朝鮮が持ちえる核兵器の上限について厳しく遵守しているかどうかを見る」というオプションはどうか。これも国際社会に対して悪しき前例を作るものだ。
 というのも、「北朝鮮を核保有国として認めたうえで、彼らの能力に上限を課すことに外交努力を傾注させる」という政策は、1992年に北朝鮮が核不拡散条約(NPT)脱退を宣言して以来、米国はもちろん、国際社会が目指してきた「北朝鮮の核プログラム廃棄」という目標、特にブッシュ政権以来、米国が一貫して主張してきた「包括的、検証可能かつ不可逆的な放棄(CVID)」という目標を放棄することを意味するからだ。このような結果は、これまで国際社会が一貫して取り組んできた核軍縮・不拡散体制にとって極めて大きなダメージとなる。
 また、ニッキー・ヘイリー国連大使が94日の国連安保理緊急会合で発言したように、核保有国には、非核保有国を核兵器で攻撃しない、核をつかった他国に対する恫喝は行わない、核兵器のこれ以上の拡散を防ぐ、などの責任があるが、北朝鮮が「責任ある核保有国」として国際社会で振る舞う可能性は極めて低い。つまり、北朝鮮の核保有をなし崩し的に認めてしまえば、国際社会にとって重大な脅威になる。
 さらに、北朝鮮を核保有国として認めるという劇的な方針転換を図ることは、アメリカの抑止力が効果がなかった証左になってしまう。これは、日本、韓国といった北東アジアだけでなく、世界中のアメリカの同盟国の間で、アメリカとの同盟に対する信頼感を根本から揺るがしかねない事態を招いてしまう。
 つまり、「過去25年間、アメリカは北朝鮮に金を脅し取られてきた」と批判してきたトランプ政権だが、いざ自分達が当事者になってみると、取り得る選択肢の幅は驚くほど狭いのが現実なのだ。
 それでも、トランプ政権は無策のまま時が過ぎるのを良しとはしない。ヘイリー国連大使は、94日の安保理緊急会合で「もう十分だ(enough is enough)」と述べ、対北朝鮮石油禁輸など、今まで以上に厳しい内容の制裁を国連加盟各国に求める安保理決議の採択を呼びかけた。中国、ロシアとの緊迫したやりとりの末、911日に国連安保理で北朝鮮が輸入できる石油量の上限を厳しく設定するなどを盛り込んだ制裁決議が全会一致で採択されたが、ロシアと中国が採択された決議を順守することを優先させた結果、原油全面禁輸や金正恩氏の海外遺産の凍結など、金正恩氏本人にダメージを与えるような内容の経済制裁は見送られた内容のもので、既に米メディアでは「薄められた(watered down)決議」(911日付けニューヨーク・タイムズ紙電子版)と形容され、その効果については懐疑的なトーンで報道されている。とはいうものの、当面は、この決議を特に中国とロシアがまじめに履行するかを見守ることで時間を稼ぎつつ、次の手を考える、というのが現在のトランプ政権が持つ唯一の現実的な選択肢であろう。

フォールイーグル2017
米韓合同軍事演習

核施設のみならず一瞬で北朝鮮の全焦土化狙う米国

中露の支援断ち切るには不可欠、求められる日韓の覚悟

北朝鮮問題に関する国連安全保障理事会の緊急会合で発言するニッキー・ヘイリー米国連大使(201794日撮影)。(c)AFP/KENA BETANCUR AFPBB News

レッドラインを突きつけ合う米国と北朝鮮
「チキンゲーム」へ
 米国は、北朝鮮が米国本土を確実に攻撃できる核弾頭搭載のICBMを保有することを絶対に認めることができない。それが、米国の北朝鮮に対するレッドラインであろう。
 他方、北朝鮮は、最高の国家目標である金王朝の体制存続と朝鮮半島統一のための「最後の切札」である核ミサイルの開発、およびそれを中心とする軍事力の行使と経済社会活動を麻痺させる石油禁輸は絶対に阻止しなければならない。
 それが、北朝鮮の米国(その他日本を含む反北国際社会)に対するレッドラインであろう。
 日本は、アメリカ合衆国(America)、英国(Britain)、中華民国(China)およびオランダ(Dutch)が行った対日貿易制限、すなわちABCD包囲網と、最終的には石油禁輸によって苦境に陥り、その難局を打開するために大東亜戦争(太平洋戦争)へと突入せざるを得なかった。
 それを歴史的先例とすれば、日米などが主張している対北石油禁輸を北朝鮮のレッドラインと見なすことに、さほど異論はないであろう。
 北朝鮮は、201774日、弾道ミサイルの発射実験を行い、ICBMだと発表した。米国は当初慎重であったが、後にICBMだと認めた。そして93日、北朝鮮は201699日以来、6度目となる核実験を強行した。北朝鮮は、ICBMに搭載可能な水爆実験に成功したと主張している。
 報道によると、20177月、米国防情報局(DIA)は、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の生産に成功したとの機密分析をまとめた模様である。
 また、多くの専門家は、弾道ミサイルの実戦配備に必要な弾頭部の大気圏再突入技術を保有しているかどうかは不透明だが、来年末までにこの技術を獲得する可能性があるとみているが、DIAはさらに時期を早め「2018年前半には、核弾頭を載せたICBMを取得する可能性が高い」と指摘している。
 日本政府も北朝鮮の核兵器について、17年版防衛白書で「小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が考えられる」と分析している。
 このように、北朝鮮は、米国本土を確実に攻撃できる核弾頭搭載のICBMの保有に限りなく近づいていると見られており、すでに米国は北朝鮮からレッドラインを突きつけられた格好だ。
 他方、829日、北朝鮮が事前通告なしに日本の上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを受けて、国連の安全保障理事会は日本時間の830日朝、北朝鮮を強く非難しミサイル発射の即時停止を求める議長声明を全会一致で採択した。
北朝鮮に中国などが輸出している石油をめぐっては、これまでも米国が禁輸の対象にすべきだと主張してきたのに対し、中国は市民生活に深刻な影響を及ぼすとして強く反対してきた。
 しかし、今般の弾道ミサイル発射と6度目の核実験を「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と考える日本と米国は、北朝鮮への石油の禁輸も視野に、さらに厳しい制裁決議案を取りまとめる方向で調整に乗り出す方針であり、北朝鮮の生命線にレッドラインを突き付ようとしている。
 つまり、米朝関係は、お互いにレッドラインを突きつけつつ、いよいよ危険な脅し合いの「チキンゲーム」の様相を呈しつつある。
初めから勝敗の明らかな「チキンゲーム」
 本来「チキンゲーム」は2者の間で行われ、米国と北朝鮮との2国間における「チキンゲーム」は、例えれば、米国のスーパー戦車と北朝鮮の中古軽自動車を衝突寸前まで走らせるようなもので、その勝敗は始めから明らかである。
 北朝鮮は、依然として大規模な軍事力を維持しているものの、旧ソ連圏からの軍事援助の減少、経済の不調による国防支出の限界、韓国の防衛力の急速な近代化といった要因によって、在韓米軍や韓国軍に対して通常戦力において著しく劣勢に陥っていることから、「従来の通常兵器を使った“戦場”で米国に直接対抗するのは不可能だ」と認識しているのは間違いない。
 そのため、北朝鮮は、核兵器などの大量破壊兵器や弾道ミサイルの増強に集中的に取り組むことにより際立った劣勢を補おうとしている。それが、米朝関係における軍事能力上の基本構図である。
 北朝鮮の最高目標は、金王朝体制の存続と南北統一であるが、その最大の障害は米韓相互防衛条約に基づいて陸空軍を中心に約1.7万人の在韓米軍を維持する米国の存在である。
 北朝鮮は、米国に戦略的に対抗するためには、核ミサイルが必要不可欠であるとして、国際社会からの非核化の要求をものともせず、核ミサイルの地位と役割を最高度に押し上げ、「最後の切札」として、その開発と運用に大きく依存しようとしている。
 繰り返すまでもなく、世界の覇権国家である米国と世界の最貧国の1つである北朝鮮との2国間における「チキンゲーム」の勝敗は、自明である。
 しかし、米朝間の「チキンゲーム」は、周辺国を巻き込んで展開されているのが特徴であり、同盟国である日本や韓国を人質にすると脅されている米国と、世界の大国である中国とロシアから支援を受けている北朝鮮の置かれた立場が、この「チキンゲーム」を余計に複雑にしている。

中露が絡んで複雑化する「チキンゲーム」
石油禁輸を渋る中国と石油輸出を拡大しているロシア
 北朝鮮の核ミサイル開発をめぐる米朝の対立には、朝鮮戦争における地政学的対立の構図が基層となって横たわっており、日米韓と中露鮮の利害が絡んだ複雑な「チキンゲーム」になっている。
 「中朝友好協力相互援助条約」を締結し、北朝鮮と「血の友誼」の関係にある中国は、8月採択された新たな国連制裁決議に盛り込まれた北朝鮮からの石炭や鉄鉱石、海産物などの輸入禁止には応じた。
 しかし、北朝鮮への石油輸出については、中国から北朝鮮へ年間50万トン程度の原油を供給しているパイプラインをいったんストップすると、その再開に膨大な時間と労力を要するとの理由を挙げて、禁輸を渋っている。
 その一方で中国は、国連の禁輸リストに含まれていない織物材料や他の労働集約財などを輸出し、より安い労働力が享受できる北朝鮮での製造を増やして、「メイド・イン・チャイナ」のタグをつけた北朝鮮製商品を、世界中に輸出している。
 このため、中朝貿易は、国連制裁決議にもかかわらず減少するより増加している模様であり、中国の対北朝鮮制裁は国際社会が期待するような効果を上げていない。
 「露朝友好善隣協力条約」を締結し、北朝鮮への融和姿勢を取るロシアは、今年16月に、ガソリンやディーゼル燃料など石油製品の北朝鮮への輸出を前年比で倍増させていたことが露税関当局の資料から明らかになった。
 専門家は、実際には統計をはるかに上回る石油製品が北朝鮮に輸出されていると指摘する。北朝鮮の核ミサイル開発への国際的な非難が高まるなか、北朝鮮を経済面で支えるロシアの姿勢が改めて鮮明になった。
 また、北朝鮮が発射したICBMに使われたエンジンは、ウクライナで生産され、ロシアに納入されていたものが北朝鮮へ流出した可能性がある、との指摘もある。
 このように、中国は石油禁輸を渋り、ロシアは石油輸出を拡大しており、北朝鮮を現実的に追い詰める厳しい措置に議論が及ぶと、中国やロシアが慎重姿勢を崩さない。
 このため、日米などが石油禁輸によって北朝鮮の生命線を止めようとする「チキンゲーム」は、国連を舞台にした外交的な駆け引きの中で、その行方が見通せない状況になっている。

日米は対北強硬策を緩めてはいけない
 中露は、北朝鮮を支援し、日米が誘導しようとしている「チキンゲーム」を回避しようとする一方で、北朝鮮が米国に対してレッドラインとして突きつけている核ミサイル開発を放棄させるための有効な措置を講じる姿勢を見せていない。
 これに対して米国のドナルド・トランプ大統領は、「レッドラインは引かない」が、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と繰り返し警告している。
 米国は、過去に、旧日本海軍にパールハーバーを攻撃されて日米戦争に突入し、「911」のアメリカ同時多発テロを受けて、アフガン戦争、イラク戦争に突入した。
 その歴史が暗示するように、トランプ大統領が「米国にとって非常に敵対的で危険」と非難する北朝鮮が、米国本土を確実に攻撃できる核弾頭搭載ICBMを保有すること自体、将来への脅威を見越せば、絶対に認めることができないだろう。
 93日、北朝鮮の核実験を受け、トランプ大統領が国家安全保障担当補佐官らと協議した後、ジェームズ・マティス国防長官は「米本土またはグアムを含む海外領土、あるいは同盟諸国に対するいかなる脅威も、大規模な軍事対応をもって迎えられるだろう、実効的かつ圧倒的な対応だ」と言明した。
 このように、今後の外交努力によって北朝鮮の非核化が達成できない場合、同盟国である日韓に及ぼす影響を慎重に考慮したとしても、「米国第一主義」を掲げるトランプ政権が軍事行動をためらう最終的な理由にはならないのである。
 中露や北朝鮮に誤算があるとすれば、その点であろう。中露が支援して日米から突きつけられている北朝鮮に対するレッドラインを回避できたとしても、米国はすでに北朝鮮によってレッドラインを突きつけられている以上、軍事的選択肢を放棄することはできないのである。
 その際、「朝鮮半島の非核化」が国連安保理事国の共通した目標であったとしても、米国による軍事攻撃は、北朝鮮が金王朝体制存続のために全面対決を躊躇ない可能性が大きいことから、核ミサイル(およびその関連施設)だけを標的にした限定攻撃にとどめることはできない。
 金正恩の斬首作戦による体制転覆はもちろんのこと、韓国の首都ソウルを火の海にすると豪語する軍事境界線沿いに配備された13600両といわれる大砲や多連装ロケット砲の一挙制圧、陸海空軍基地や地下に造られた攻撃拠点・兵器弾薬庫の破壊など、国土が消滅するくらいの全面攻撃になることは避けられないのではなかろうか。
 その結果、中露は、米国が隣人となりかねない地政学的最悪の条件を受け入れるか、それとも、北朝鮮を支援して何らかの形で米国との軍事衝突に介入するかの重大な選択を迫られことになる。
 つまり、中露の賢明な選択は、日米が要求する対北朝鮮石油禁輸を受け入れて、米朝両国がギリギリまで追い込まれる、正面からの「チキンゲーム」を成立させることである。
 そのような段階に至れば、ようやく対話や交渉などによって問題の解決を図ろうとする外交の場に役割が移り、北朝鮮の非核化を平和的に解決し、金王朝の体制存続をも可能とする希望が生まれるというものである。それが国際政治を動かす現実である。
 この「チキンゲーム」を通じて日本(そして韓国)に求められることは、「非合理の合理」を追求する北朝鮮が及ぼす自暴自棄的な軍事的リスクに敢然と対決する覚悟を決め、わが国およびアジア太平洋地域の安全保障を確保するうえで必要不可欠な日米同盟とその集団的自衛(相互防衛)の体制を堅持する立場をより明確にして、米国とともに対北強硬策を緩めないことであろう。

《維新嵐》集団的自衛権の行使が肝要!
 とにかく1国による防衛、単独防衛は危険な状況です。海洋国家としての価値観、自由主義の価値観を共有する国家でしっかり連携を崩さないことが最も重要なことです。多分この連携こそあらゆる手段で崩そうとしてくる(というかもう攻撃されてますが)はずですからね。

米共和党マケイン氏、北朝鮮に言及・攻撃行動の代償は「消滅」
2017911 1130 http://news.livedoor.com/article/detail/13596104/
 ワシントン(CNN) 米共和党の重鎮マケイン上院議員は2017910日、CNNの番組で、北朝鮮周辺での米国のプレゼンスを強化するよう求めたほか、米政府は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、「もし攻撃的な行動に出れば、その代償として国が消滅することになる」と確実に分からせる必要があると述べた。
マケイン氏はこの中で、ミサイル防衛など韓国における防衛力の増大や、中国に対する圧力の強化、朝鮮半島への核兵器配備の検討といった措置を含む対北朝鮮戦略を要請。「韓国の国防相もつい数日前、核兵器の再配備を求めていた」と指摘したうえで、「真剣に検討される必要がある」と続けた。
また、対北朝鮮支援の削減に向けた中国の取り組みは不十分だとし、米国は中国政府への影響力を行使するため経済的な手段を利用するべきだと主張。中国に対し、「対中貿易の一部を失えば米国にとって打撃になるだろう。だがそれでも、何かが変わらなければならない」と伝える必要があるとの考えも示した。

北朝鮮はこのほど、同国史上最も強力な核兵器の実験を行ったと発表したほか、ミサイル実験の実施も継続している。いずれも国際社会の意向に反するものだ。トランプ米大統領はこうした動きを非難。8月には、北朝鮮が米国に対する威嚇を続ければ、「世界が見たこともないような炎と怒り」に直面することになると警告していた。
北朝鮮・「グアムミサイル攻撃」の虚構

制裁への耐性強い北朝鮮、経済制裁で核・ミサイル開発は止められない
礒﨑敦仁 (慶應義塾大学准教授)
澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長)

国連安全保障理事会が2017911日(現地時間)、北朝鮮による6回目の核実験(93日)に対する制裁決議2375を採択した。米国が作成した原案には北朝鮮に対する石油の全面禁輸などが入っていたが、北朝鮮国内で大きな混乱を生みかねないと考える中国とロシアが消極的だったため最終的には一定の上限を明示する妥協案となった。今後のためにカードを温存しておくという意味もあろう。
 制裁の目的は懲罰ではなく、核・ミサイル開発に関連する活動を完全に中止するよう北朝鮮に政策変更を求めることだ。しかし、経済制裁だけで核開発放棄などという大きな政策変更を強いるというのは無理のある考え方であり、外交交渉なしに目的を達することは不可能である。今回の制裁決議についても、北朝鮮経済に一定程度の影響を及ぼすものの、核・ミサイル開発を止める効果はゼロに等しいと考えられる。北朝鮮に対する制裁決議は200610月の第1回核実験で採択された決議1718以降、今回で9回目だ。これまでの制裁決議が功を奏してこなかったことは議論の余地がない。
gettyimagesDrew Angerer

政策変更を強いられることを嫌う北朝鮮
 北朝鮮については、もともと閉鎖的な体制であることや朝鮮戦争(195053年)以降に米国から制裁をかけ続けられて「制裁慣れ」していること、対外経済の規模が小さいことなども、経済制裁の効果を期待できない理由として語られる。ここでは、そういった論点とも少し違う「制裁への耐性が強い北朝鮮体制の特徴」について考えてみたい。
 北朝鮮はそもそも他国によって政策変更を強いられることを極端に嫌う。冷戦期には、中ソ両国からの影響を排除しつつ自主路線を歩もうとした。それが北朝鮮憲法第3条で国家の指導指針と規定される「主体思想」である。主体思想を守ってきた結果、ソ連のように崩壊することもなかったし、中国のような改革開放をしなくても体制を護持できた。北朝鮮は、そうした自信を持っているのだ。
 核実験2日前となる91日付けの朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』は、重鎮の董泰官(トン・テグヮン)論説委員による政治論評「偉大な強国の時代」を掲載した。北朝鮮に対して持たれているイメージとは違うかもしれないが、『労働新聞』の論説記事は署名入りが原則となっている。特に重要な論説の筆者は限られており、董氏はそのうちの1人である。
 董氏の論評は、北朝鮮の国際的地位について「人工衛星の製作及び打ち上げに成功し、水素爆弾と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有した世界6大強国」、「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を保有する世界の5大強国」、「移動式発射台を利用したICBM発射技術を保有している世界の3大強国」の一つにのし上がったと強調した。制裁に屈しないで核とミサイルの開発を続けてきたことによって、米国やロシア、中国などという大国と肩を並べられたという自己認識だ。
 論評はさらに「世界で最も強く偉大な人民が保有していることにより、朝鮮は事実上、世界一の強国、天下無敵の国である」とまで主張する。そして「いくら『制裁』と『圧迫』の魔の手がいたるところに広がっても、地球上の敵対勢力が群れを成して襲い掛かってきても、偉大な精神力に全ての戦略兵器を握ったこの朝鮮は、百戦百勝するだろう」と強調する。
餓死者出した「苦難の行軍」に並べて団結を要求
 このような論調は頻繁に見られる。金正恩体制は、核・ミサイル開発は抑止力確保のために必須だと考えている。北朝鮮の外務省は今回の制裁決議採択に対しても「われわれは米国と実質的な均衡を作り上げて、自主権と生存権を守る」という「報道」を発表した(913日)。米国に対抗するために核・ミサイル開発を進めているのであり、制裁を受けても変わらないという宣言だ。
『新版 北朝鮮入門』2017113日刊行)。2010年に出版した「LIVE講義 北朝鮮入門」を全面改訂し、金正恩時代の北朝鮮像を描く。核・ミサイル開発などの最新データを収録している。
 ソ連・東欧社会主義体制の崩壊によって、1990年代の北朝鮮は未曽有のエネルギー難、食糧難に陥った。そのような「苦難の行軍」に打ち勝った金正日国防委員長の「業績」と並列する形で、制裁下の金正恩体制で団結を求める論調も目立つ。「そのお方(金正恩委員長)と一緒であれば、試練も栄光であり、死も幸福」であり、「打ち勝った苦難の強度と、越えてきた峠の高さがその人民の上がって立つ勝利の大きさと高さを決定するもの」と考えるのが北朝鮮なのである。残念ながら、「(強力な制裁をかけられて)草を食べることになっても開発を続けるだろう」というプーチン露大統領の見通しは正しいのだろう。
 『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社、20171月)に収録できなかった最新の決議を含め、これまでの制裁決議についてまとめた。北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける動機や北朝鮮の現状などについては同書を参照していただきたい。
国連安保理決議171820061014日)
対象となった北朝鮮の行動:1回核実験(2006109日)
主な内容:1)核・ミサイル関連物資等の禁輸(2)核・ミサイル開発に関与した個人・組織の海外資産凍結・渡航禁止
日本の独自対応:1)北朝鮮籍船舶の入港禁止(2)北朝鮮籍者の原則入国禁止(3)北朝鮮からの輸入全面禁止
国連安保理決議18742009612日)
対象となった北朝鮮の行動:2回核実験(2009525日)
主な内容:1)北朝鮮からの武器輸出を全面禁止(2)北朝鮮に関連する貨物への検査強化
日本の独自対応:北朝鮮への輸出全面禁止
国連安保理決議20872013122日)
対象となった北朝鮮の行動:テポドン2改良型発射(20121212日)
北朝鮮側主張:地球観測衛星「光明星32号機を搭載した「銀河3」の打ち上げ
主な内容:1)資産凍結などの制裁対象を拡大(2)北朝鮮の金融機関による活動を監視するよう各国に要請
国連安保理決議2094201337日)
対象となった北朝鮮の行動:3回核実験(2013212日)
主な内容:1)核・ミサイル開発に関する金融取引禁止(2)船舶貨物検査を義務化
日本の独自対応:朝鮮総連副議長らの再入国禁止
国連安保理決議2270201632日)
対象となった北朝鮮の行動:4回核実験(201616日)、テポドン2改良型発射(201627日)
北朝鮮側主張(テポドン2について):「地球観測衛星光明星4」を搭載した「光明星」の打ち上げ
主な内容:1)北朝鮮からの石炭などの鉱物輸出を原則禁止(2)北朝鮮への航空燃料輸出制限(3)全貨物の検査
日本の独自対応:12014年に一部解除された制裁の復活(2)在日外国人の核・ミサイル技術者の再入国禁止(3)北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港禁止
国連安保理決議232120161130日)
対象となった北朝鮮の行動:5回核実験(201699日)
主な内容:1)北朝鮮からの石炭輸出に年間の上限を設定(2)銅やニッケルの輸出も禁止(3)北朝鮮からの彫像の輸出禁止
日本の独自対応:1)訪朝した在日外国人の核・ミサイル技術者について入国禁止の対象者を拡大(2)北朝鮮に寄港した全船舶の日本入港禁止(3)資産凍結の対象者拡大
国連安保理決議2356201762日)
対象となった北朝鮮の行動:201699日の第5回核実験以降の核開発及び一連の弾道ミサイル発射
主な内容:金正恩国務委員長の側近らを資産凍結・渡航禁止の対象に追加
国連安保理決議2371201785日)
対象となった北朝鮮の行動:20177月に行われた2回のICBM発射
主な内容:1)北朝鮮からの石炭や海産物の輸出を全面禁止(2)北朝鮮からの労働者派遣の新規受け入れを禁止(3)北朝鮮との新たな合弁企業設立を禁止
国連安保理決議23752017911日)
対象となった北朝鮮の行動:6回核実験(201793日)
主な内容:1)北朝鮮からの繊維製品輸出を全面禁止(2)北朝鮮への原油供給に「現状を超えない」という制限を導入(3)北朝鮮への石油精製品供給を年間200万バレルに制限(輸入実績の半分弱)(4)北朝鮮労働者の雇用契約の更新を禁止

《維新嵐》国連決議は、現代の国際社会の北朝鮮へのスタンス、見方を示しているんでしょうが、どうみても北朝鮮の弾道ミサイル、核弾頭だけでなく、体制そのものの変革も求めているようにも思えてきます。
 北朝鮮を罰する、北朝鮮をやっちまえ的な情勢になってきたように感じます。

生活重視で変化する北朝鮮・平壌
脱北者からの北朝鮮の実態報告



キッシンジャーが考える北朝鮮核問題への対処法

岡崎研究所
2017912http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10525

キッシンジャー元米国務長官が、2017811日付のウォールストリート・ジャーナル紙に「北朝鮮危機をどう解決するか」との論説を寄せています。その論旨は、次の通りです。

北朝鮮の核開発計画は、国際社会の非難にもかかわらず、加速した。
 国連安保理の85日の制裁決議は重要な1歩であるが、共通の目標はまだ樹立されていない。もし金正恩が核開発計画を維持すれば、主要な関係国間の地政学的戦略関係は変化し、アジアにおける米国の核の傘、特に日韓両国に対するものの信頼性は深刻に減少するだろう。
 長期的な問題は、米領土への脅威を超え、核のカオスの見通しにまで至る。北朝鮮のICBMは、核の小型化、ミサイルへの搭載、一定量の生産の必要性を考えれば、まだ時間がかかる。しかし、アジア諸国は既に短距離、中距離ミサイルの脅威のもとにある。もしこの脅威が増せば、ベトナム、韓国、日本などが自前の核で防衛する動機は劇的に大きくなろう。北朝鮮が達成したことを逆戻りさせることは、その進歩を阻止することと同様に重要である。
 北朝鮮に対する外交は、主要なプレイヤー、特に米中が重要目的の合意ができず、失敗した。米国は力の行使に乗り気でなかった。マティス国防長官は朝鮮での戦争を「破局的」と述べた。ソウルに向けられた何千の大砲は、大ソウルの3千万の住民を人質にとっている。
 米国の一方的な先制攻撃は中国との紛争の危険がある。北京は一時的には黙認しても、それを認めることは、1950年代の朝鮮戦争のとき同様、ないだろう。
 トランプ政権は、北朝鮮の非核化の外交努力に中国に協力を求めた。しかしこの努力はこれまで部分的にしか成功していない。中国は原則、北朝鮮の非核化を支持しているが、同時に、北朝鮮の崩壊や混乱の見通しから、2つの主要な懸念を抱いている。第1は北朝鮮の危機の中国への政治的、社会的影響で、第2は北東アジアの安全保障(両朝鮮の非核化)である。中国はまた、非核化後の北朝鮮の政治的進化(二国家併存か統一か)と、北朝鮮に課される軍配備の制限に関心を持っている。これまでトランプ政権は中国に、北朝鮮に圧力をかけるよう求めてきた。北京は北朝鮮への圧力が不十分とされたら、米国との関係が悪化する危険がある。米国と中国は、北朝鮮の政治的進化とその領域における軍配備の制約について両国で了解する必要がある。この了解は、既存の同盟関係に変更を加えてはいけない。こういう了解が多分、朝鮮半島危機の行き詰まりを打開する最善の方策であろう。
 韓国と日本もこのプロセスで重要な役割を持つ。韓国はどの国よりも影響を受けるので、政治的な結果について重要な発言権を持つべきである。日本は、朝鮮半島の核を、自分自身の核能力なしに許すことはないだろう。日米同盟の評価は、米国が日本の懸念をどれくらい考慮するかで影響される。
 米朝直接交渉を主張する人もいる。しかし北朝鮮は合意実施に最小の関心しかない。米中間の了解が圧力と機能する保障のために必要である。北朝鮮は最終会合に出ればよい。
 実験凍結が暫定的な解決になるとの示唆があるが、凍結の解釈や査察をめぐり、諸問題が出されるだろう。暫定的な兵器能力を維持する北朝鮮は、次のような危険を制度化する。貧しい北朝鮮による核技術の販売、米国は自国領土の防衛に集中しアジア諸国からの信頼が低下すること、他国が核抑止力を開発する可能性、結果への不満から中国との紛争、他の地域での核拡散、米国での議論の分裂等である。
 非核化への実質的な進展と、その速やかな達成が最も賢明な路線である。
出典:Henry A. Kissinger ‘How to Resolve the North Korea Crisis’ (Wall Street Journal, August 11, 2017) https://www.wsj.com/articles/how-to-resolve-the-north-korea-crisis-1502489292


この論説はよく考えられた論説です。キッシンジャーは今94歳ですが、今なお明晰な思考をしています。熟読の価値があります。
 トランプ大統領はキッシンジャーを尊敬していると言われています。したがってこの論説はトランプの目にも留まったものと思われます。またキッシンジャーは親中であり、中国も随時、情報提供しています。この論説は中国の考え方も踏まえて書かれていると思われます。
 この論説のいくつかのポイントについて、コメントすると次の通りです。
 1.軍事的解決を試みることに対し、消極的です。北朝鮮が大ソウルの3000万人を人質にしていること、マティス国防長官が戦争すれば、破局的になると言っていることに言及して、軍事的オプションは排除されないとしつつも、慎重な姿勢を強調しています。
 2.外交では米朝交渉より、米中交渉を優先し、米中間で朝鮮半島非核化を共通の目標に設定し、非核化後の北朝鮮の在り方についても了解を作ることを主張しています。
 この主張に賛成です。米中での了解作りが北朝鮮の核問題解決のカギです。
 中国は、北朝鮮に圧力をかけすぎると、北朝鮮が崩壊し、米韓軍が鴨緑江にまで来ること、難民が中国東北部にあふれ出ることなどを心配していると言われます。中国がそういう心配をしているのなら、そんな心配はいらないことにしてやればよいのです。韓国主導の統一は急がない、北朝鮮の領域に米韓軍は配備しないと約束すればよいわけです。ドイツ統一時、東ドイツの領域へのNATO軍配備はしないと約束したこともあります。
 難民についても、日米も中国と協力して対応するとすればよいわけです。
 キッシンジャーは対中融和に傾きすぎている、平和条約締結後の在韓米軍撤退を主張していると聞きましたが、ここでは、アジアの同盟関係に変更を加えないとしています。
 3.核ミサイル計画凍結論についてのキッシンジャーの批判は的を射ています。
 日本は中距離ミサイルの脅威を受けているので、凍結だけでその廃棄がないと、脅威は減りません。核搭載ICBMの問題は、日本から見ると、米国による核の傘の信頼性の問題です。キッシンジャーが核の傘の信頼性が減ると言っている点は気になりますが、decouplingはないと前提する以外にはありません。
 凍結には、北朝鮮の核技術販売などの危険が残ります。
 4.北朝鮮の核計画が残れば、日韓越が核兵器取得に向かうとの判断についてです。
 キッシンジャーは昔から、どうせ日本も核武装するとの意見です。核兵器については反核感情も考慮する必要があります。この点についてのキッシンジャーの判断は間違っている可能性があると思います。中国はアジアの核化を嫌うので、日本が核開発に踏み切れば中国が北の核を押さえようとすることはあり得ます。 この論説はいろいろなことを考えさせる論説です。

維新嵐・北朝鮮を「核保有国」として認めれば、北朝鮮の国際的な位置づけがあがり、相対的に韓国の地位はさがり、朝鮮半島が北朝鮮主導で動くことになりかねない。日韓が問題とすべき拉致問題を追及していくことも難しくなるでしょう。
国交を結ぶことなど言語道断です。国交を開いても北朝鮮は変わりません。むしろ大使館や領事館ができれば、彼らは堂々と邦人を拉致してくることになるでしょう。国家戦略の達成に必要な人材は海外から拉致してくるような「非人道的」な侵略国家が北朝鮮だということを忘れてはいけません。