世界的な情報戦に対処するため・・しかし現行憲法に抵触する恐れあり~
防衛省、世論工作の研究に着手 AI活用、SNSで誘導
防衛省による世論誘導工作のイメージ
防衛省が人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが2022年12月9日、複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている。
中国やロシアなどは「情報戦」に活発に取り組む。防衛省は、日本もこの分野の能力獲得が必要だと判断した。改定される安全保障関連3文書にも、情報戦への対処力向上を盛り込む。
防衛省が姿を隠したまま世論誘導をはかるのは、一般の投稿を装い宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」の手法と重なる。
防衛省は「企業のコマーシャル技術と同じで違法性はない。」と説明するが、研究であったとしても憲法が保障する個人の尊重(13条)、思想良心の自由(19条)に抵触する懸念があり、丁寧な説明が求められる。
中国やロシアなどは、人間心理の操作や攪乱をはかる「情報戦」に活発に取り組む。防衛省は戦闘形態を一変させるゲームチェンジャーになるとみて、我が国もこの分野の能力獲得が必要であると判断した。改定される安保関連三文書にも情報戦への対処力向上が盛り込まれる。
複数の政府関係者によると、防衛省が構想する世論操作は、まずAI技術を駆使してSNSにあふれる大量のビッグデータを収集、分析し、どのような対象に工作をするのがふさわしいかなどの全体計画を策定し、ネット上で発信力があり、防衛問題でも影響力がありそうなインフルエンサーを特定する。
さらにインフルエンサーが頻繁に閲覧するSNSやサイトに防衛省側の情報を流し、インフルエンサーが無意識に有利な情報を出すように仕向けるという。
防衛省が望むトレンドができれば、爆発的な広がりになるようにSNSで情報操作を繰り返す。
2022年度予算の装備品を検討する調査研究費をあてた・9月に委託企業公募の入札を実施、10月に世界展開するコンサルタント会社の日本法人に決定した。この会社はアメリカ軍の情報戦活動にも携わる。研究は2023年度以降も3年間ほど継続する。