2019年8月22日木曜日

イランが無人攻撃機を開発してしまった!

どうも現在アメリカのトランプ政権と折り合いのよくない西アジアのイスラム教シーア派の大国イランが無人攻撃機を開発し、中東各国に売りさばいているようである。

核開発だけでもアメリカをはじめとする国際社会では持て余し気味なのに、これでまた中東の不安定さを助長する新たな脅威となると報道されている。

どうもこのイラン製の無人攻撃機、民生品を多用してるようだ。開発コストを極力おさえるためであろう。民生品を使用しているならば、制裁もあまり効果はあるまい。無人攻撃機の部品として輸入しているわけではないからである。このあたりもさしづめよく計算されている。

注目すべきは、この無人攻撃機の技術をイランがどのように入手したのか、ということである。ニュース報道では、どうもイランの隣国であるアフガニスタンからイランの関係当局の人間が入手したということである。アフガニスタンは2001年ごろかアメリカ軍が集落に潜伏するタリバンの兵士を攻撃するために、無人攻撃機プレデターに対戦車ミサイルであるヘルファイアを搭載し、大量に投入している。

上空からタリバン兵士が潜伏する村々を攻撃するわけだが、肝心のタリバンの兵士は村の地下に退避していて、ミサイルがヒットし犠牲になるのは村の民間人という惨劇が繰り返された。

さらにプレデターも何機か撃墜され、墜落し、捕獲されている。おそらくコントロールが不能になって地上に落下した機体を回収した例もあったのでないか、と思われる。

こうしたアフガニスタンに墜落したプレデターをどうもイランの国防当局の人間が回収していったようである。そしてイラン国内に持ち帰り、分解し、中身を解析して構造を研究、ついに自前で無人攻撃機を完成させるに至り、周辺国へ売りさばいているというのである。

イランが支援する海外武装組織に売買されるようであるが、元々反米思想の過激派組織に売るわけだから、攻撃されるターゲットは決まっている。サウジアラビアでは無人機による被害が絶えないらしい。イスラエルでは、低空で侵入してくる無人攻撃機を探知、レーザー光線で撃墜する防空システムが開発された。

直接イラン軍が攻撃するわけではないが、イランが支援する組織を通じての攻撃なのでイスラエルやサウジアラビアを防衛するためにアメリカがどう出てくるか、関心をもってみている。

間接的に運用されることでこうしたステルス的な戦争形態が生じるのであるが、アフガニスタンに墜落した無人機の機体を研究して、新たな開発につなげる手法はイランの専売特許ではない。実はこの手法は元来アメリカの得意技である。

第二次大戦の時に我が国の零戦を無傷で確保して、これを丹念に分解、分析して、オリジナルの戦闘機開発につなげた例、また真偽のほどは定かではないが、アメリカは自国国内に墜落した異星人の飛行物体を生存していた異星人共々回収、機体構造や推進システムまで詳細に調査、解析し、今や極秘に反重力戦闘機なるオブジェクトを開発し、密かにミッションに投入されているという。

アメリカは未知の技術に出会ったときにそれを入手することにそつがないのである。

今回は、こうしたリバースエンジニア的な手法をイランが独自に行い、核兵器や弾道ミサイルとはちがう脅威になりつつある。核兵器、ミサイルは揃えるまでに膨大な予算を必要とする。核弾頭を維持していくのにも多大な予算がかかる・・。

イランはただのアメリカを敵視し、核大国アメリカにオリジナルな核兵器だけで対抗するだけではない。捨てられたアメリカの最新兵器を利用して、安上がりにアメリカの意気のかかった国を攻撃している。くるべき時は勝手にやってきた、

超大国アメリカが結果的にまいてしまった種がぐんぐん育ったあげく、アメリカに間接的に刃をむけて帰ってきつつある。我が国もホルムズ海峡の通航の問題もある。今後の中東問題から目が離せないであろう。


【イラン製無人攻撃機関連動画】










日本版CIA創設にむけて 武器となる諜報インテリジェンス 後編

(※以下の出典は、『諜報機関』(井上太郎著)平成26年12月初版発行、㈱青林堂より)


ペルー人質事件の顛末

ペルーの日本大使公邸占拠事件の時、人質を全員無事に救出できました。テログループはペルー政府の方針により全員射殺されました。日本でいう出前持ちに扮したり、テログループの家族と牧師さん経由で折衝しながら、内部へ地下トンネルを3本掘りました。資金も提供しながら4ケ月かけました。

ペルー日本大使館占拠事件の概要ですが、恒例の天皇誕生日祝賀パーティの最中にトゥパクアマル革命運動の14人により日本大使館が占拠されました。当初は約600人の人質、女性子供その後アメリカ人等が解放され、最終的に約100人になりました。目的は仲間の釈放と資金の為の身代金です。この革命運動には一部の赤軍派が合流していました。そんな関係で日本から公安職員が派遣されました。

ペルー日本大使公邸占拠事件は、解決までに4ケ月かかりました。大使以下人質(ほとんどは企業駐在員)は占拠グループとむしろ交流し、中からも説得工作をしていました。そして近所の日本料理屋から多くの日本食の差し入れがあり、日本の司法当局も料理屋の人間になりすまし、何度も出入りし状況を把握していました。ところが日本のマスコミは司法治安当局の指導を無視して常識外の報道スクープ合戦が行われました。

特にひどかったのはテレビ朝日と共同通信でした。テレ朝は日本料理店と組んで差し入れと称してグループと接触しました。共同通信は、数百万円を占拠グループに渡して、世界から非難を浴びました。ペルー大使公邸占拠事件の時のテレ朝取締役報道局長は、放送法違反に問われた椿貞良です。共同通信の記者はAです。特に共同通信のAは司法治安当局本部の規制ラインもお金をばらまき、完全に無視しました。突入のために3方向から掘っていたトンネルの位置まで占拠グループに情報提供した疑いももたれました。

テレ朝は椿氏を関連会社へ異動させ、共同通信のAは処分の前に自ら退社しました。この共同通信記者はその論調からも、元々ただのスクープ狙いのお金ばらまき作戦だったようで、司法当局の邪魔者として有名です。平気で左翼の味方もすれば、平気で考えが変わります。今日は保守気取りで論調していますが、ペルー人質事件始めとする売国行為は絶対に許されません。

日本の公安当局によるテロ事件の解決方法には世界が評価し、そのノウハウは合同訓練などで友好国の特殊部隊にも引き継がれています。自衛隊にも専門部隊があり、武器の使用期限が警察・自衛隊の活動を縛りますが、海外では現地組織が連携できます。「命が最優先である」が我が国の方針です。


日本の諜報機関

世界には様々な諜報機関があります。アメリカならCIA、イギリスはMI6SIS)イスラエルのモサド、共産中国の国家安全部、南朝鮮ならKCIAの後身となる国家情報院があります。

日本では、内閣府に属する「内閣情報調査室」は「日本版CIA」を目指し、昭和27年(1952年)に創設された組織で、本部は内閣府庁舎6階にあります。諜報部門は、国内、国際、経済部門の3つに分かれています。それぞれ約50人の諜報員を抱えていますが、誰がどんな調査をしているかは、お互いの諜報員同士でもわかりません。

伝統的にアメリカCIAのカウンターパートナーであるため、お互い日常的にCIAとは情報交換をしています。実務におけるトップの内閣情報官を始め、伝統的に職務上からも警察庁からの出向者がほとんどを占めるのも特徴です。

国際部門の諜報員は、拉致問題を始め、北朝鮮に関してはかなりの情報量を持ち、共産中国に関しても一時のソビエト連邦やロシアに匹敵するほどの情報が蓄積されてきています。国内部門では、左翼過激派に対する情報収集が中心ですが、各政党に対する情報収集も行われています。

日本にもアメリカCIA諜報員は配置されていますが、そのほとんどは経済CIAといわれています。一部は日本と連携し、共産中国、ロシアなどの領事館員等に対する諜報活動もしています。

内閣情報調査室の一部局である内閣衛星情報センターでは、現在4基打ち上げられている偵察衛星からもたらされる画像を分析しています。北朝鮮や共産中国の動向を注視しています。平成25年のフィリピン台風被害では、その能力が知られてしまうことから普通は絶対ありえませんが、政府間の超極秘として情報提供され、被害状況のみならず遺体捜索にも大きな役割を果たしました。フィリピンと日本国の信頼関係がわかります。アジアで共産中国と朝鮮半島だけがおかしいのです。

その極めて高い情報収集能力から、日本最強のスパイ機関と評価されているのが警視庁公安部です。公安三課が右翼団体の担当で、一課二課とで極左グループから共産党、その他政府転覆を目指す団体の監視にあたっています。警視庁公安部は通称「さくら」「千代田」という暗号名で呼ばれることもあります。さらに公安総務課には警視庁内部ですら実態が隠されている部署もあり、国家に対する極めて重要な諜報活動を行っています。

外国諜報機関のスパイ行為を捜査するのが通称外事警察です。外事一課がロシアンスパイやミサイルの部品持ち出しなど戦略物資の監視をします。外事二課が共産中国、北朝鮮のスパイや大使館職員の監視等です。外事三課は国際テロ担当ですが、外事三課の場合には、例えばCIAからパキスタンのテロリストの遠い親戚が日本に潜伏しているなどの情報が入ると、対象者として調査し、CIAと連携することもあります。

平成23年(2011年)に発覚し、そしてつい先日時効を迎えてしまいましたが、外事警察の捜査情報がネット上に大量流出する事件が発生してしまいました。世界に極秘手配されているイスラムテロ犯の姻戚関係に始まり、知り合い程度の関係までが網羅されており、監視対象にもなっていました。さらには相当数の各国大使館員の銀行口座の全てが記録されており、その情報収集能力の緻密さに驚かされました。

警察官すべてがそうであるように、警察官は職務に命をかけます。しかしこうした公安部員が相手とするのは世界のスパイ工作員です。命の危険性もあります。しかし彼らは公務員です。当然ですが給料は一般行政職と変わりません。これは自衛隊員も同じだと思います。おそらく人にはいえない日本を護るという誇りが職務に就かせているものと思います。日本の良心であると思います。

公安委員会というのは警察の管理のための委員会(監査相当)であり、公安部とは全く関係ありません。警察では我が国の国益が損なわれることのないよう対日諸工作に関する情報収集、分析に努めると共に、あらゆる法令を駆使し、違法行為に対して厳正な取り締まりを行っています。

公安調査庁は法務省の外局です。破防法等の適用を業務とし、武器の携行も捜査権限もありません。警察庁にあるのは警備局公安課、公安部があるのは警視庁だけです。外事課もあり、主として思想的犯罪を取り締まります。いわゆる諜報機関の役割もあります。よく知らないで区別もなくただ公安と呼ぶ人が多いようです。


日本の諜報能力は優秀

日本と共産中国の諜報機関の関係は、何も相手の全てのを知り、戦争して有利にすることでもかき回して潰してやろうということが目的でもありません。その諜報能力自体が核と同じに抑止力になります。当然直接交流し、お互いの平和が目的という確認もしています。政治関係が冷えても心配はありません。しっかりと安倍政権の戦略を支えています。

佐々淳行氏がいうように、公安警察は民主党政権で職務を制限されたといえます。反日左翼に力をつけられ、放射能をマスコミとグルで大騒ぎ、福島瑞穂のウソに煽られ、孫正義にお金を撒かれ原発をとめる事態に発展しました。自民党政権に戻り、反原発が朝鮮人の煽動ということがわかりました。平和な日本人のデモにしばき隊まで現れました。

日本の諜報機関の某氏が平成26年(2014年)1月の偵察通信衛星の成功について、今改めて民主党政権が終わっていて良かったと述べています。この衛星の成功により半島や共産中国の動向のかなりのことが把握できるようになっています。米国との連携でも民主党だと情報漏洩が懸念されたことも解消され、日本の危機管理は正常に戻ったといえます。

共産中国諜報機関の特徴は、人脈構築工作(ヒューミント)から展開し、目的を悟らせずして知らず知らずに日本の政策や世論を共産中国に有利な方向に仕向け、侵略を図るのが特徴です。日本の危機管理意識のない国会議員や官僚、諜報機関からすれば赤子の手をひねるようなものです。

中国共産党中央統一戦線工作部で、それこそ世界中にちらばっており、その数は20万人を越えるともいわれています。北朝鮮の3号庁舎と並び、何でもありの最も危険な工作機関です。

共産中国のスパイについて玄葉元大臣は、単なる金儲けだと評していましたが、野田元総理を始め民主党の認識はこの程度であり、ここ三年半にどれだけのスパイが潜り込んだか、安倍政権により密かに調査が始まっています。農水省に限らず外務省、経産省、防衛省に疑惑があります。

北朝鮮の動向で日本の諜報能力のどの程度が民主党政権によって把握されてしまったのかが大きな問題です。もちろん民主党が左翼にのっとられて以上、関係機関が民主党に対しできる限り秘匿もしています。しかし民主党からもれた情報がどれだけ共産中国や南北朝鮮に流れたか、これはとても大きな国益の損失になります。安倍政権により民主党の悪政の検証が進んでいますが、一番被害が深刻なのは治安と防衛に関することです。在日帰化人の左翼過激派が民主党本部事務員の身分で内閣府に入り込んでいました。さらに防衛省システム管理にも一人関わっていたことがわかっています。

警察、自衛隊それぞれに多少の役割の違いがありますが、海外での諜報活動も行っています。しかし米英、仏、中、ロシア、独などに比較すると、能力はひけをとりませんが、圧倒的に人員不足です。それこそ百分の一程度の人員規模と言われます。警察、自衛隊の海外での活動は一般的に大使館や領事館で武官もしくは書記官としても勤務します。しかし日本は諜報機関そのものとして現地に派遣できるシステムがありません。完全に民間人に扮装することが不可能な地域は、アフリカや中東にはたくさんあります。




優れた諜報能力は、核兵器以上の抑止力にもなりうるのです。相手国のありとあらゆる情報を把握し、その情報をコントロールできるまでになれば、それは最高の武器となります。仕掛ける諜報戦略によっては、相手国の体制まで崩壊させることができます。

日本の国防、諜報能力の一部でも漏洩することは国益の大きな損失につながります。能力が知られてしまっては敵に対応もされてしまいます。時にはごく一部を匂わすことにより計り知れない潜在能力を悟らせ、抑止力として活かすことができます。

核兵器は「使えない抑止力」ですが、諜報インテリジェンスは、いくらでも使えます。牽制にもなります。場合によっては「核兵器以上の使える抑止力」であると言えます。

2019年8月18日日曜日

日本版CIA創設にむけて 武器となる諜報インテリジェンス 前編

※以下の出典は、『諜報機関』(井上太郎著)平成26年12月初版発行、㈱青林堂より


日本に必要な諜報機関

我が国では、危機管理意識の強い安倍晋三政権時代に諜報機関の形が固まってきていますが、その前の政権のころからもかなり形が具体化したことはありました。

しかし完全に独立した諜報機関となると、諜報機関そのものの暴走もあり得る、という政治家独特の感覚が働いたこと、また仮に諜報機関を内閣や政府直轄機関とすると政権交代などにより、かつての民主党政権のような「左翼・リベラル政権」となった時に逆に恐ろしいことになるという理由でなかなか実現しませんでした。

もっとも「左翼政権」が誕生すれば、諜報員は自ら身をひき必然として組織は解散となり、元来の所属機関に戻ることになると考えられます。諜報機関員ともなればその役割については場合によっては命までもかけているわけですから、組織全体も隠してしまう。つまり組織全体のバックアップ体制が一番の課題となります。

諜報機関というのは、国家(日本)全体で連携しないと全く意味を持たないことになってしまいます。極論すれば、諜報機関が別の諜報機関を見張る場合もあり得ます。分野を決めてきちんと連携しないとかえって混乱を招くだけになります。

平成26年(2014年)に官邸は、日本版CIA創設プランを提出、その可決後に正式に諜報機関を設立する計画を発表します。

諜報インテリジェンスとは?

諜報インテリジェンスは、学問でもなければましてや理論などではありません。学術的に論じることは全く無意味なことであり、何の役にたつのかわかりません。

アメリカにとって日本はスパイの対象なのでしょうか?共有する情報に基づく諜報活動もあり、安保条約からNSAでは相互協力となっています。日本に対してはどちらかといえばCIAが担当であり、それはしかも経済CIAです。アメリカには商務省の諜報機関もありますが、戦略面が強く対象は共産中国やロシアになります。日本の諜報活動はバレません。ロシアに亡命したスノーデンの発言により、アメリカによる同盟国に対しての諜報活動に批判が高まっていましたが、ばれてしまう程度の諜報活動ならばやらない方がマシです。ばれてしまうのは諜報活動とはいえず、単なる偵察活動です。盗聴疑惑騒動は、世界の一般国民や企業にも行われていることなのです。そのことには触れず、気をむけさせないのは不思議なことです。

日本の政治家の場合、機密を漏らしたのが政務三役であった場合、国会議員は特別職の国家公務員であるため、国家公務員法(守秘義務)違反は適用されない上、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」(大臣規範)で違反にはなるが罰則はありません。ですからスパイ防止法は絶対に必要です。

なぜ日本にスパイ防止法がなかったのか

日本にスパイ防止法がなかったのは、政府が戦後長い間共産中国などとの軋轢を避け、優柔不断な弱腰外交を続けてきたからと言われています。ウィーン条約によって「不逮捕特権」が認められる外交官のスパイ活動は、何らかの別件でなければ日本の裁判にかけられません。この辺りにもスパイ防止法が一刻も早く求められる理由があります。

スパイ防止法案がなかなか可決されない理由は、自民党案ではパフォーマンスに過ぎませんでした。日本の諜報機関が作成した案は、刑法81条の外患誘致罪を独立させ、戦争に限らず広く日本の国益を損なうとして死刑までありました。

自民党案が悪いのではありませんが中途半端であり、機密文書の概念が曖昧で特定が困難だったことが問題でした。その時の政権によっては、機密文書の存在が浮かび上がることになり、本来の機密が表面に出ることになってしまいます。スパイ防止法案は「中途半端な法案」よりむしろ「無い」方が、都合の悪いことを闇に葬ることができるので実効性は上がります。なまじ表面化すると報復が一般国民に及びます。

スパイ防止法案という名称からして変えなければいけないと思います。例えば「国益の確保等に関する法律」そして警察法の67条を一部改正して、警察官の武器使用を緩和することです。日本人も含めて、日本でスパイ行為をすれば撃たれることがある。これが警告となり、防止となります。

戦後日本におけるスパイ活動における謙検挙事件だけでも100件近くあることをご存じでしょうか?一時はそのほとんどがロシアと北朝鮮でした。しかしソビエト連邦の崩壊後は、ロシアのスパイは極端に少なくなり、その後は殆どが北朝鮮と共産中国になりました。そして目的のほとんどは軍事機密の入手です。さらに民間からの機密盗難もあります。

日本のスパイ事件の標的の多くは自衛隊です。ただスパイは検挙してもいずれも外交特権により帰国してしまいます。日本にはスパイ防止法がなく、日本側もたいした罪に問われることもなく片付けられてしまいます。

日本の技術は軍事に限らず極めて優秀です。日本の諜報機関は極めて少人数ですが、その能力は友好国から高い評価を受けています。

マスメディアはこの問題については、批判ばかりしていますが,仮に批判するのであれば、日本の諜報活動のどこが、なぜ悪いのか、メディアの責任として論ずるべきです。さらに諜報活動によって得られた情報を秘匿することの何がいけないのか、批判する以上明確にする責任があります。

自衛隊だけではなく、諜報活動はあくまでも日本を守るためです。どこの国も同じですが諜報活動は命がけなのです。工作活動が発覚して捕まれば海外では死刑もあり得ます。そうした内容をマスメディアも国民も知る必要がなく、むしろ知れば危険が及ぶ可能性が高い。

スパイ、工作員、諜報員、とその形は様々であり、様々な役割と使命があります。しかし絶対に必要なのは「国を護る信念」です。そして諜報機関に携わる人は例え家族であってもそのことを絶対に話しません。そうでないと周辺にまで危害が及ぶからです。国家として機密を持たずオープンにすれば、北朝鮮、共産中国等のスパイ工作員もいなくなります。確かによいことかもしれませんが、スパイの必要がない国はすなわち無防備国家であり、格好の標的です。日本はスパイ天国と言われるほどそれだけ機密も多く狙われています。スパイ防止法の制定が早急に必要といわれる理由です。

諜報機関は、対象者もしくは何らかの行動を起こしているグループに対して確実に情報収集を行います。その方法は、その対象グループに潜り込んだり、協力者を確保したり、様々な現実の状況から分析をします。デモの主催者、支援者、と簡単に割り出しています。日本の公安当局には、連合赤軍が世界各国で様々な組織と組んで起こした多くのテロ事件の調査実績がありそのノウハウがあります。ミュンヘン五輪選手村襲撃事件、テルアビブ銃乱射事件、フィリピンのモロイスラム解放戦線、ペルー大使館人質事件などがそうです。日本の警察が現地と協力し解決した事例もあり、その結果は射殺もあれば、逮捕もあり、人質救出もあります。
【関連動画】


2019年7月14日日曜日

軍事アナリスト北村淳氏『シミュレーション日本降伏』(PHP新書)より


実は「地対艦ミサイル先進国」日本の実力

20197/13() 12:36配信 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190713-00010000-voice-pol


北村淳(軍事アナリスト)



軍事アナリストの北村淳氏は近著『シミュレーション日本降伏』(PHP新書)にて、急速に軍備を増強させる中国の戦力と日本の戦力を詳細に比較しつつ、日本の領土・領海が脅かされている現状に警鐘を鳴らしている。



<<米トランプ大統領が「安保条約の破棄を示唆」とのニュースが突如として駆け抜け、日本国民に衝撃を与えた。北村淳氏は近著『シミュレーション日本降伏』にて、海洋進出を加速させる中国が魚釣島に侵攻した場合を想定したシミュレーションを展開しつつ、日本と中国両国の詳細な戦力比較を行っている。

そのなかで地上から敵軍の艦艇を攻撃するミサイル「地対艦ミサイル」について、中国が「地対艦ミサイル大国」で対する日本は「地対艦ミサイル先進国」だと述べている。本稿では同書より日本の現状を解説した一節を紹介する。>>

※本稿は北村淳著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。


アメリカでは必要とされなかった地対艦ミサイル

地対艦ミサイルを語る際にきわめて興味深いのは、アメリカ軍の現状である。

トランプ政権が誕生するまでオバマ政権下で国防予算が大幅に削減されたため、戦力低下に喘あえいでいるとはいっても、依然としてアメリカ軍はありとあらゆる兵器システムを取り揃えている世界最大規模の軍隊だ。

しかしながら、そのようなアメリカ軍といえども地対艦ミサイルシステ
ムを保有してこなかった。両隣がカナダとメキシコに挟まれているアメリカ本土(ハワイ州とアラスカ州を除いた四八州とワシントンDC)は、太平洋と大西洋という広大な海洋でアジア大陸やヨーロッパ大陸と隔てられている。

そのため現在、アメリカ国防当局は自国の海岸線沿岸域での防衛はほとんど考えていない。もちろん本土決戦などまったく想定していない。

要するに、沿岸海域での迎撃戦に威力を発揮する地対艦ミサイル部隊を運用する必要性を認めていなかったのである。

したがって、アメリカ軍需産業も、地対艦ミサイルシステムには関心を示さず製造してもこなかった(ただし、対中軍事戦略の転換に伴って状況は変わりつつある)。

もっとも、地対艦ミサイルシステムはアメリカに限らず、さほど多くの国々で開発製造されているわけではないため、現存する地対艦ミサイルの多くは、軍艦に装備される対艦ミサイルのバリエーションとして副次的に生み出されている場合が多い。



https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190713-00010000-voice-pol&p=2


障害物を避けながら飛翔する日本の高性能「地対艦ミサイル」


西側諸国としては珍しく地対艦ミサイルを開発製造しているだけでなく、地対艦ミサイルの運用に特化した世界的に稀有な地対艦ミサイル部隊も保有している国が、日本である。

日本が独自に開発し製造した地対艦ミサイルシステムは「88式地対艦誘導弾」ならびにその改良型の「12式地対艦誘導弾」である。

88式地対艦誘導弾」(以下、本稿ではミサイル本体と混同するのを避けるため、88式地対艦ミサイルシステムと記述する)は、射程距離が150km以上(おそらく200km近く)で飛翔速度は1150kmhと考えられている。

この地対艦ミサイルシステムはレーダー装置、指揮統制装置、射撃管制装置、ミサイル発射装置などから構成されており、大型ならびに中型トラックに搭載されて陸上を自由に移動することができる。

88
式地対艦ミサイルシステムの改良型である「12式地対艦誘導弾」(以下、12式地対艦ミサイルシステム)は、目標捕捉能力をはじめとする攻撃性能が向上し、射程距離は200km以上(おそらく250km近く)に延伸しているものと考えられている。

88式地対艦ミサイルシステムと同じく、レーダー装置や発射装置などシステム構成ユニットはそれぞれトラックに積載される地上移動式兵器である。

これらの日本製地対艦ミサイルシステムは、地形回避飛行能力(超低空を飛行するミサイルが、地上の地形を認識して障害物を避けながら飛翔する能力)を持っている世界的にきわめて稀な地対艦ミサイルだ。

これは、陸上自衛隊の地対艦ミサイルの運用が当初は北海道に侵攻するソ連軍を想定していたために付加された機能である。

すなわち、北海道沿岸域に迫りくるソ連侵攻艦隊に対して、陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊が海岸線付近に展開した場合、ソ連艦艇からの砲撃やミサイル攻撃に晒されてしまう。

そこで地対艦ミサイル連隊は海岸線ではなく内陸奥深くに潜み、沿岸海域に接近したソ連艦艇を内陸から攻撃して撃破する戦術を立案したのである。そのため、地上上空を100km以上飛翔するという、対艦ミサイルとしてはきわめて稀なミッションを持たされて開発されたのが、陸上自衛隊の地対艦ミサイルなのである。



https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190713-00010000-voice-pol&p=3


ロシア海軍を想定して配備される一方で、中国海軍への備えは手薄


陸上自衛隊には「地対艦ミサイル連隊」と呼ばれる地対艦ミサイルに特化した部隊が設置されており、現在、五個部隊が編成されている。

第一地対艦ミサイル連隊(北海道北千歳駐屯地)
第二地対艦ミサイル連隊(北海道美唄駐屯地)
第三地対艦ミサイル連隊(北海道上富良野駐屯地)
第四地対艦ミサイル連隊(青森県八戸駐屯地)
第五地対艦ミサイル連隊(熊本県健軍駐屯地)

この、世界でも稀に見る地対艦ミサイル連隊は、もともとはソ連軍の侵攻に備えるために生み出されたため北海道方面に集中的に配置された。当初は六個連隊が編成されていたが、ロシアの脅威が縮小したため大幅に削減されることとなった。

しかし、中国の東シナ海への侵出姿勢に対応して縮小は一個連隊にとどまり、今後も五個連隊態勢が維持されることになっている。

以上のように、日本は世界に誇れるきわめて高性能な地対艦ミサイルを開発しているだけでなく、世界でも稀な地対艦ミサイル連隊が設置されているという、いわば地対艦ミサイル先進国なのである。

ただし、このように陸上自衛隊は地対艦ミサイル連隊を五個部隊擁しているものの、南西諸島をはじめとする東シナ海方面で中国海軍に備える配置についているのは一個連隊だけである。

残りの四個連隊は北海道と青森県に配備されていてロシア海軍を想定敵としており、日本が直面する軍事的脅威の変化を無視している状態だ。

さすがに近年、島嶼防衛の重要性を日本国防当局自身が口にするようになってきたためか、地対艦ミサイル部隊(地対艦ミサイル連隊ではなく、地対艦ミサイルシステム運用の最小単位の部隊)の石垣島、宮古島、奄美大島への配備が開始されたため、地対艦ミサイル連隊の配置も修正されるものと思われる。


88式地対艦誘導弾






”米軍は警戒”なのに日本は…中国「史上最強の地対艦ミサイル」の脅威


20190710日 公開https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6594


北村淳(軍事アナリスト)



<<米トランプ大統領が「安保条約の破棄を示唆」とのニュースが突如として駆け抜け、日本国民に衝撃を与えた。北村淳氏は近著『シミュレーション日本降伏』にて、海洋進出を加速させる中国が魚釣島に侵攻した場合を想定したシミュレーションを展開しつつ、日本と中国両国の詳細な戦力比較を行っている。

そのなかで地上から敵軍の艦艇を攻撃するミサイル「地対艦ミサイル」について、中国が「地対艦ミサイル大国」で対する日本は「地対艦ミサイル先進国」だと述べている。本稿では同書より中国の現状を解説した一節を紹介する。>>

※本稿は北村淳著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。



「地対艦ミサイル大国」へと進化する中国


アメリカと異なり、ロシア(ソ連時代から)と中国はさまざまなタイプの地対艦ミサイルを生み出している。

これは、きわめて強力なアメリカ海軍に対抗しうるだけの強力な海軍力を建設することが難しかったソ連や中国が、自国の沿岸域までアメリカ海軍部隊に接近されることを想定していたため、地対艦ミサイルや沿岸砲で沿岸防備を固めようと考えていたためである。

かつて中国が配備を進めていた地対艦ミサイルの多くは、短・中距離ミサイルであった。

これは、人民解放軍の海軍力が弱体であった当時、中国大陸沿岸部に押し寄せる敵を防ぐための沿岸防備用軍艦を取り揃えることすら困難であったため、沿岸から地対艦ミサイルを発射して何とか敵艦の接近を阻止しようとしたためであった。

最も有名であった中国製地対艦ミサイルがシルクワームと呼ばれるものであり、改良型のバリエーションも多く、北朝鮮、イラン、イラクなどにも輸出されている"ポピュラー”な地対艦ミサイルである。

イラン・イラク戦争(イラン軍もイラク軍もともに使用した)、湾岸戦争(イラク軍がアメリカ軍艦とイギリス軍艦に向けて発射したが、イギリス軍艦によって撃墜された)、イラク戦争(イラク軍がクウェートの多国籍軍に向けて発射した)などの実戦でも使用されている。

2006年のレバノン戦争では、ヒズボラが発射したシルクワームの発展型であるC-701地対艦ミサイルがイスラエル海軍コルベットに命中し、イスラエル軍に死傷者が出ている。


https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6594?p=1


対象的なアメリカ海軍関係者と日本の反応


中国の「積極防衛戦略」の進展に伴い、より沖合の敵艦艇を攻撃する必要性に応えるため中国技術陣が開発したのが、シルクワームファミリーの射程距離を倍増させた鷹撃(ようげき)62C-602)地対艦ミサイルである。

シルクワーム型のものよりも搭載爆薬重量は軽量化されたが、マッハ0.8のスピードで射程距離280290㎞を飛翔する。鷹撃62の改良型である鷹撃62-Aも誕生し、飛翔距離は400㎞といわれている。


これらの地対艦ミサイルはロケットエンジンやジェットエンジンで飛翔する巡航ミサイルであるが、中国はより遠距離の敵艦を破壊するための対艦弾道ミサイルの開発に努力を傾注してきた。


2013年ごろから、東風(とうふう)21型中距離弾道ミサイル(日本攻撃用の弾道ミサイル)を母体にして開発された東風21D型(DF-21D)と呼ばれる対艦弾道ミサイルが姿を現す日が間近いと見られていた。そして、20159月に行われた対日戦争勝利七十周年記念軍事パレードにDF-21D対艦弾道ミサイルが登場した。


人民解放軍の発表や米軍情報機関の分析などによると、DF-21Dの最大射程は16002700㎞であり、数個のレーダー衛星、光学監視衛星、それに超水平線レーダーなどからの情報によって制御されつつマッハ10(マッハ5という分析もある)で飛翔し、多弾頭(一つのミサイルに装着されている弾頭内部にいくつかの弾頭やおとり弾頭が仕込まれてい
て、それぞれが制御されながら目標を攻撃する)が空母などの艦艇に向けて超高速で落下する。目標の艦艇は、30ノット(時速56㎞)の速度で航行していても命中可能とされている。



DF-21Dは、主としてアメリカ海軍の巨大原子力空母を攻撃目標として開発されたが、命中精度を向上させて空母だけでなく、米海軍の大型艦から中型艦、たとえばイージス駆逐艦までをも攻撃するために開発されたのが、東風26型弾道ミサイル(DF-26)である。

DF-26は最大射程距離が3000㎞以上(あるいは4000㎞以上)といわれており、艦艇だけでなく、地上建造物などのような静止目標に対する攻撃も可能なため、アメリカ軍ではグアムの米軍攻撃用と考え「グアム・キラー」あるいは「グアム・エクスプレス」などと呼んでいる。


その長い射程距離のため、DF-26対艦弾道ミサイルは西太平洋などの外洋を航行するアメリカ軍艦を攻撃するイメージを持たれていたが、中国沿岸域からはるか内陸のアメリカ軍の攻撃を受ける恐れが低い地域から発射して、南シナ海や東シナ海の中国近海に侵攻してきたアメリカ軍艦(それに自衛隊艦艇をはじめとするアメリカ同盟軍艦艇)を撃破する、という用い方も想定可能である。


DF-21DにせよDF-26にせよ、対艦弾道ミサイルがアメリカ海軍原子力航空母艦のような巨大艦に向けて発射された場合、一発目の命中弾によって航行不能に陥らせ、二発目の命中弾によって撃沈することになるとされている。


中国内陸奥地のゴビ砂漠で実射テストが繰り返されている、といわれているが、実際に海上を航行する艦船をターゲットにした試験は行われていない。


いずれにせよ、中国側の宣伝情報が真実に近ければ、対艦弾道ミサイルはイージスシステム搭載艦でも迎撃はきわめて困難となり、史上最強の地対艦ミサイルということになる。

対艦弾道ミサイルの主たる攻撃目標は、西太平洋や東シナ海を中国に向けて接近してくるアメリカ海軍空母とされているが、米海兵隊を搭載する強襲揚陸艦や、海上自衛隊の大型艦であるヘリコプター空母も格好の標的となる。


しかしながら奇妙なことに、日本ではDF-21DDF-26の脅威はほとんど取り上げられておらず、見掛け倒しのハッタリといった評価が幅を利かせている。

しかし、アメリカ海軍関係者たちは中国対艦弾道ミサイルの完成をきわめて深刻に受け止めており、日本側での受け止め方とは好対象をなしている。





「安保条約があっても」米が日本に援軍を送らない“明確な根拠”


20190626日 公開https://shuchi.php.co.jp/article/6549


北村淳(軍事アナリスト)



<<米トランプ大統領が「安保条約の破棄を示唆」とのニュースが突如として駆け抜け、日本国民に衝撃を与えた。しかし、米シンクタンクで海軍アドバイザーを務めた軍事アナリストの北村淳氏によれば、安保条約が維持されていても、日本の危機に米軍は援軍を送らないと指摘する。


北村氏の近著『シミュレーション日本降伏』では、海洋進出を加速させる中国が魚釣島に侵攻した場合に、日本は短期間で降伏してしまうという衝撃のシミュレーションを展開し、宮古島や石垣島を含む南西諸島を守るための対策が急務だと指摘している。

日中両国の軍事戦力差を冷静に比較分析し、かつ国際社会における中国の立ち回り方も踏まえた結果に導かれたものだが、やはりこのシミュレーションにおいてアメリカ軍は日本の救援に動かない。

なぜなのか? 本稿では同書よりその理由の一端に触れた一節を紹介する。>>

※本稿は北村淳著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。



かつての日本海軍・陸軍と似た陸・海・空自衛隊の状


第二次世界大戦での手痛い敗北後70年以上を経た現在においても、日本の国防システムは日本自身の経験も含めた古今東西の戦例からの教訓をしっかりと反映させているとはいえない。

なぜならば、島嶼国日本の防衛は「海洋において外敵を撃退する」態勢を堅持しなければならないにもかかわらず、相変わらず陸上自衛隊と海上自衛隊、それに航空自衛隊が互いに牽制しながらバランスを取り合っている、というかつての日本海軍と日本陸軍のような状態が続いているからである。

その結果、海上自衛隊と航空自衛隊には「島嶼防衛の鉄則」である海洋において外敵の侵攻を遮断するために必要十分な戦力が与えられておらず、陸上自衛隊は「ファイナル・ゴールキーパー・オブ・ディフェンス」を自認してはばからず、最終的には日本列島という島嶼に立てこもって外敵侵攻部隊と「本土決戦」を交えようとしている始末である(ただし、日本国防当局が来援を期待しているアメリカ軍救援部隊が到着するまでの限定的な「本土決戦」ではあるが)。

東シナ海における中国の侵出政策に対抗する方針に関しても、日本国防当局が想定する戦略は「島嶼防衛の鉄則」を大きく踏み外している。なぜならば、島が占領されたことを前提としての「島嶼奪還」といったアイデアが大手を振ってまかり通ってしまっているからだ。

「島嶼防衛の鉄則」に従うならば「海を越えて南西諸島や九州に迫る中国人民解放軍を海洋上(上空・海上・海中)において撃退してしまうだけの防衛態勢を維持することによって、中国の東シナ海侵出政策を挫折させること」が必要なのである。


https://shuchi.php.co.jp/article/6549?p=1


外敵が侵攻するしてくるまで反撃できない日本


憲法第九条やそれから誕生した専守防衛という概念が日本の国防思想に幅広く浸透してしまった結果、「外敵が自衛隊を直接攻撃した段階、あるいは外敵が日本領域(領空、領海そして領土)に侵攻してきた(あるいは、侵攻してくる状況が明確になった)段階になって初めて迎撃戦を開始することができる」という基本的思考が日本社会には深く浸透してしまっている。国防当局といえどもその例外ではない。


そのため、いくら国防のために軍事合理性があるからといっても、外敵の目に見える形での軍事攻撃が開始されるまでは、敵に先手を打って強力かつ効果的な軍事的対策を実施することすらできない。すなわち専守防衛というアイデアがまかり通ってしまっている。

このような専守防衛概念に固執していると、外敵が日本領域に向かって接近している状況を捕捉していても、外敵から攻撃を仕掛けてこない限り対応できない。

日本の領域の限界線である領海外縁線(その上空には領空外縁線、以下、海空合わせて「領海線」と呼称する)を外敵が越えた時点で初めて外敵を迎え撃つことが可能となるのだ。


海岸線からわずか12海里の領海線周辺まで敵が侵攻してきた段階で迎撃戦を開始するのではあまりにも遅きに失する。しかし歴代内閣の専守防衛の解釈に拘泥(こうでい)する限り、このようなぎりぎりの海域を防衛ラインの最前線に据えるしかないのである。

1海里は1852m。船が1時間に1海里進む速度を1ノットという。戦闘用の軍艦の最高速度は30ノット強程度のものが多い。輸送艦の最高速度は20ノット強程度である。したがって領海線に達した敵艦艇は30分以内にわが海岸線に到達してしまうのだ)

現代の兵器や通信手段の性能からは領海海域は日本沿岸域と見なすことができる。日本の領海線を防衛ラインの最前線とするということは、つまり「島嶼防衛の鉄則」から見ると、通常は第三防衛ラインを設定すべき海域に第一防衛ラインを設定していることを意味している。


要するに、外敵の侵攻を阻止するための海洋での防衛ラインは海岸線ぎりぎりの沿岸域のみであり、これでは海岸線での地上戦を当初より想定せざるをえない。

実際に海岸線での地上戦が大前提になっていることは、自衛隊の装備体系などから明らかである。すなわち「外敵は一歩たりともわが海岸線には上陸させない」という「島嶼防衛の鉄則」は日本国防当局の頭のなかには存在しない、あるいはそのような構想は排斥されているのだ。


そして、海岸線での地上戦のみならず、海岸線沿岸域を突破してさらに侵攻してきた敵を内陸で迎え撃って敵侵攻軍に打撃を与えつつ持久戦に持ち込み、日本各地から増強部隊を集結させて反撃に転ずる、というのが現代日本の「本土決戦」のシナリオである。

実際には、内陸で「本土決戦」を実施している間に、日米安全保障条約第五条が発動されてアメリカ軍救援部隊が駆けつけ、アメリカ海軍艦隊や航空戦力によって敵の海上補給線を打ち砕き、アメリカ海兵隊が敵侵攻部隊の背後側面から上陸して内陸で持久態勢をとっていた自衛隊と挟み撃ちにする。やがて、アメリカ陸軍の大部隊も日本に到着して敵侵攻軍を完全に撃破する、というシナリオが期待されている。


敵の侵攻目的地が離島である場合においても、島嶼周辺沿海域の一重の海洋防衛ラインでは敵侵攻軍を撃退することはできないことが大前提になっている。そのため、「いったんは敵に島嶼を占領させ、しかるのちに奪還戦力を集結して島嶼奪還作戦を実施する」というのが日本国防当局の基本的方針となっている。


ただし、現状では島嶼奪還作戦を自衛隊単独で実施することがきわめて困難なことを認識している日本国防当局は、海兵隊をはじめとするアメリカ救援軍の到着を待って日米共同作戦として実施することを期待しているのである。


https://shuchi.php.co.jp/article/6549?p=2


脆弱な防衛態勢を放置し続ける日本に、アメリカの援軍は来ない


このような日本国防当局の期待には、大いなる疑問符を付せざるをえない。

というのは、過去半世紀にわたって、第三国同士の領域紛争で一方当事国が他方当事国の領域を占領あるいは奪取した事態が生じた場合、アメリカが本格的軍事介入を実施したのは、サダム・フセイン政権下のイラクがクウェートに侵攻し、占領した事例だけだからである。


そのほかの軍事占領(たとえば最近の例では、ロシアによるウクライナ領の奪取)に関しては、アメリカは軍隊を送り込んではいない。


緊密な同盟国であるイギリスが、フォークランド諸島をアルゼンチンに占領されたときでさえ、アメリカは直接援軍を送らないどころか、当初の間はイギリスのサッチャー首相にアルゼンチンとの軍事対決を思いとどまるように説得を試みたほどである。

したがって、アメリカ国民の大半にとって関心の対象ではない日本の離島が中国に占領された事態が生じたとしても、アメリカ政府、アメリカ連邦議会が日本国防当局の期待に応えるかどうかには疑問符を付けざるをえないのだ。


いずれにせよ、島嶼国家日本の防衛方針は「島嶼防衛の鉄則」を完全に踏み外しており、「島嶼防衛の鉄則」によれば絶対に避けるべきである日本領土内での地上戦が想定されている。そのため、尖閣諸島のようないわゆる離島部に対する防衛方針でも「いったん取らせて、しかるのちに取り返す」という「島嶼奪還」がまかり通っている状況だ。


実際に、陸上自衛隊の編成や部隊配置は地上戦が前提とされていて、国民保護法(「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」)は、明らかに日本での地上戦が実施されることを前提とした法律なのである。


要するに現在の日本は、危険極まりない防衛ラインを設定した脆弱な防衛態勢を放置し続けている状況なのである。

※我が国の戦後の憲法9条の解釈は「事なかれ主義」です。現行憲法の9条は自衛戦争も自衛戦力の保持も否定していません。国連憲章の戦力規定にそったものだからです。




本当は「尖閣諸島」に興味がなかった中国共産党


20190627日 公開https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6447


北村淳(軍事アナリスト)


<<海洋進出を加速させる中国。南シナ海をコントロール下に置き、次のターゲットは東シナ海。尖閣諸島を含む南西諸島への挑発ともとれる動きが伝えられている。

米シンクタンクで海軍アドバイザーを務めた軍事アナリストの北村淳氏はいつ中国が魚釣島へ侵攻してもおかしくない情勢であると指摘し、近著『シミュレーション日本降伏』では、海洋進出を加速させる中国が魚釣島に侵攻した場合に、日本は短期間で降伏してしまうという衝撃のシミュレーションを展開している。


なぜ尖閣諸島はここまで危うい存在になってしまったのか? 同書では、かつて尖閣諸島に興味すら持たなかった中国が突如として領有権を主張するようになった経緯に言及している。 本稿ではその一節を紹介する。>>

※本稿は北村淳著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。



東シナ海での領域紛争の起源


尖閣諸島は、石垣島の北北西約170㎞、沖縄本島の西約410㎞、台湾本島の北東およそ170㎞の東シナ海に点在する五つの島(魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島)と三つの岩礁(沖の北岩、沖の南岩、飛瀬)、それらに付属するいくつかの小岩礁からなっている。

これらの島嶼のうち最も広いのが魚釣島で、面積はおよそ三・八平方㎞、尖閣諸島の最高地点もやはり魚釣島にあり海抜三六二mの奈良原岳山頂である。1879年に琉球王国が日本に編入されて以降、尖閣諸島は実質的に日本の領土と見なされた。

ただし日本政府はこれらの島々の帰属を国際法的に明らかにしておこうと考え、1885年から10年近くにわたって尖閣諸島の歴史的な領有状況に関する調査を実施した。

その結果以下の二点が明確になった。

(1)尖閣諸島は永きにわたって無人島である。
(2) 清国(当時の中国は満州民族の王朝である清王朝に支配されていた)をはじめ、いかなる国家も尖閣諸島に支配権を及ぼしていない。



そのため、日本政府は1895114日、「先占の法理」という国際的に広く認められていた原則に基づいて、尖閣諸島を日本領土(沖縄県)に編入した。そして翌1896年、日本政府は民間実業家の古賀辰四郎に尖閣諸島の四島(魚釣島、久場島、北小島、南小島)を貸与することにした。


古賀辰四郎はアホウドリの羽毛の採取やカツオ節製造などを開始し、魚釣島は200名以上の住民が居住する有人島になった。しかし、1940年ごろには事業が衰退し、二代目の古賀善次は事業から撤退したため、尖閣諸島は再び無人島となってしまった。


https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6447?p=1


にわかに尖閣諸島に関心を持ち始めた中国共産党


第二次世界大戦で日本が敗北すると、尖閣諸島はアメリカ軍の占領下に置かれた。サンフランシスコ平和条約締結後も、尖閣諸島を含む北緯二九度以南の南西諸島全域はアメリカの施政下に置かれていた。


やがて1971617日に調印された日米沖縄返還協定によって、1972年五月、日本政府は尖閣諸島に対する主権を回復することとなった。

ところが、尖閣諸島の主権が日本に回復する直前の197112月になると、中国共産党政府は

「尖閣諸島は地理的に台湾に付属する島嶼であって、日本帝国主義が中国より台湾ともども奪取した(筆者注:日清戦争を指しているのだが事実歪曲である)ものであり、それを第二次世界大戦後アメリカ帝国主義が侵略し、さらに日米が結託して日本の領土に組み込もうとしている。尖閣諸島は中華人民共和国の領土であり、中国人民は奪われた領土は必ず回復する」

といった趣旨の声明を発表した(中華人民共和国外交部声明、19711230日)。


中国共産党政府は、尖閣諸島がアメリカから日本に返還されることが決定されるまではいっさいこのような見解を発表したことはなかった。それにもかかわらず、尖閣諸島が日本に返還されることになったら、すかさず領有権を主張し始めたのだ。それは次の二つの理由に基づいている、と考えられる。

第一に、1968年秋までは、中国共産党は尖閣諸島への関心など持っておらず、領有権の主張などは思いもよらなかった。


しかし1968年秋、国連アジア極東経済委員会の学術調査の一環として東シナ海の海底調査が実施された際に、尖閣諸島周辺に石油が埋蔵されている可能性が高いことが判明した。そこで、中国共産党政府はにわかに尖閣諸島に関心を持ち始めたのであった。

中国共産党政府が尖閣諸島周辺海底の地下資源に関心を持ったとはいえ、当時尖閣諸島はアメリカの統治下にあったため、軍事強国であるアメリカに対して領有権を主張することなどはできなかったのである。


幸い、アメリカが尖閣諸島を日本に返還する事が決定したため、またアメリカ政府は第三国間の領土紛争には介入しない外交原則を保持していることから、中国共産党政府は軍事弱国日本に対して尖閣諸島の領有権を主張し始めた、というのが二番目の理由である。

中国共産党政府は尖閣諸島の領有権に関する上記声明を発表しただけで、何ら軍事的行動は取らなかった。だが、それは当時の人民解放軍海軍には短い距離(300㎞~400㎞)とはいえ東シナ海を渡って尖閣諸島に侵攻することはもちろん、東シナ海で海上自衛隊やアメリカ海軍と対峙するだけの軍事能力がまったくなかったためである。


ただし「失地は軍事力を使用しても回復する」という基本原則に従い、「将来人民解放軍の戦力が強化された暁には尖閣諸島を必ず〝奪還〟する」という意思表示としての尖閣諸島の領有宣言をなしたものと考えることができる。


いうまでもなくこの領有宣言は、「1895年に『先占の法理』を根拠として日本領に組み込まれて以降、アメリカに占領統治されていた時期はあったものの、尖閣諸島は一貫して日本の領土である」という立場を取っていた(現在もその立場は不変である)日本政府の認識と真っ向から対立することになった。ここに日中間における尖閣問題が誕生したのだ。

一方、日米沖縄返還協定によって尖閣諸島は日本に返還されたものの、それ以降も久場島と大正島はアメリカ軍射爆場として米軍が日本政府から借用する区域となった。


そして、中国共産党政府が尖閣諸島の領有権を明言しても、第三国間の領土問題には介入しない、という米国伝統の外交原則に沿って、現在に至るまで、尖閣諸島の領有権に関して明確な立場を示してはいない(ただし、領有権とは切り離して尖閣諸島の施政権が日本政府の手にあることは公に支持している)。

※尖閣諸島は日本国の固有の領土です!








2019年4月19日金曜日

南西諸島の陸上自衛隊地対艦ミサイル部隊の抑止力 /モサド元長官が警告するサイバー攻撃の脅威


【第一部】
南西諸島に陸自ミサイル部隊、理解されていない役割

ミサイル部隊が抑止力となる条件は? 防衛省は丁寧な説明を

北村淳

12式地対艦ミサイル発射装置(写真:陸上自衛隊)
(北村 淳:軍事アナリスト)
 2019年326日、防衛省が宮古島と奄美大島に陸上自衛隊駐屯地を開設した。これらの島には地対艦ミサイルシステムと地対空ミサイルシステムを運用するミサイル部隊と、ミサイル部隊はじめ航空施設や港湾施設などの防御にあたる警備部隊が配備されていくことになっている。ようやく、日本防衛に欠かせない南西諸島ミサイルバリアの構築がスタートしたのだ。


2015年7月16日「島嶼防衛の戦略は人民解放軍に学べ」

2018年4月12日「島を奪われることを前提にする日本の論外な防衛戦略」


拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』講談社α新書687-2c 2018年6月20日、など参照)。




「弾薬庫」は保良地区に


 ところが、宮古島での駐屯を開始した警備部隊が、駐屯地内の武器保管庫に中距離多目的ミサイルシステムを持ち込んだことが、地元反対派に問題視され「『保管庫』は実は『弾薬庫』だった」「島民への騙し討ちだ」などと糾弾された。その結果、岩屋防衛大臣は中距離多目的ミサイルシステムに装填する弾薬、すなわち中距離多目的ミサイルなどを島外に撤去するよう指示した。すでにミサイルや迫撃砲弾は宮古島駐屯地から島外に搬出されたとのことである。


 防衛省は駐屯地周辺住民に対する公式説明で、駐屯地内に「弾薬庫」は造らず、小銃などの小火器、小銃弾や発煙筒などを保管する「保管庫」を設置するだけである、としていた。そのため、住民たちが「騙された」と反発しているようである。
いったん宮古島の外に搬出された弾薬は、島内の保良(ぼら)鉱山に建設される弾薬庫が完成し次第、地対艦ミサイルや地対空ミサイルとともに、そこに保管されることになるという。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56137?page=2


ただし保良地区では、弾薬庫の建設そのものへの反対の声も上がっており、今回の「保管庫」を巡るトラブルが弾薬庫建設反対を加速させる可能性もある。それだけではなく、地元の人々からは、宮古島にミサイル部隊が配備されて「ミサイル基地」となることを懸念し、反対する声も上がっているようである。

理解されていないミサイル部隊の役割

 このようなトラブルや反対の声が上がるのは、防衛省が住民に対して、強力な兵器で防衛体制を固めることの意義や必要性について丁寧な説明を怠っているからに他ならない。それどころか防衛省は、反対された場合に説得する努力を避けようとするため、初めから反対されないような隠蔽的説明を行っている。
 たとえば、住民の間から「ミサイル基地」に反対する声が上がっているというが、今後配備が進められていくことになっているミサイル部隊の駐屯地が「ミサイル基地」と認識されてしまうこと自体がそもそも問題である。それはまさに、陸自ミサイル部隊の役割や意義についてまともに説明していないことの表れと言ってよい。
 ミサイル部隊が装備する地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムは、ミサイル基地のような定点にまとまって配置についていたのでは、敵の攻撃目標になるだけである。そのため、地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムは、ミサイル発射装置をはじめ発射管制装置やレーダーシステムなどシステム構成要素の全てが数輌の車輌に積載されており、移動分散できるようになっている。
中距離多目的ミサイル(写真:米国防総省)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56137?page=3
したがって、宮古島で中国軍艦艇や中国軍航空機に対峙する陸自ミサイル部隊のミサイルシステム関連車輛は、島内広範囲にわたって分散配置につき、適宜移動を続ける必要がある。そうでなければ、地対艦ミサイルや地対空ミサイルによる抑止効果を発揮することができない。もしも保良鉱山に設置される弾薬庫に地対艦ミサイルや地対空ミサイル、それに中距離多目的ミサイルが保管され、それらミサイルシステムの発射装置や管制装置などの車輌が駐屯地に整列していたのでは、全く防衛の役に立たないのだ。

中国軍による宮古島攻撃の方法
 中国が日本に奇襲攻撃を仕掛ける場合、まずは長射程ミサイル(弾道ミサイル・長距離巡航ミサイル)攻撃を実施することになる(本コラム・2014227日「『中国軍が対日戦争準備』情報の真偽は?足並み揃わない最前線とペンタゴン」、2015917日「中国軍が在日米軍を撃破する衝撃の動画」、拙著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』講談社α新書、など参照)。
 宮古島を攻撃する場合も同様だ。この場合、最も効果的なのは、東風11型弾道ミサイル(最大射程距離825km1200基以上保有)、東風15型弾道ミサイル(最大射程距離900km1000基以上保有)あるいは東風16型弾道ミサイル(最大射程距離1000km、保有数不明)による、航空自衛隊宮古島レーダーサイト、陸上自衛隊弾薬庫、そして陸上自衛隊宮古島駐屯地への一斉連射攻撃である。

 それらの弾道ミサイルは、東シナ海沿岸地域から発射した場合には4分ほどで、海岸線から200kmほど内陸から発射された場合には530秒ほどで、宮古島の攻撃目標に着弾する。


中国軍が海岸線より100km内陸から弾道ミサイルを発射した場合の最大射程圏
 アメリカ空軍DPS早期警戒衛星が中国ロケット軍による弾道ミサイル発射を探知し、アメリカミサイル防衛局から、相模原のアメリカ陸軍第38防空旅団司令部に転送され、横田の在日米軍司令部を経て宮古島の自衛隊部隊が弾道ミサイル攻撃にさらされている情報をキャッチした頃には、高性能爆薬装填弾頭が降り注いでくるまで長くても23分しかない。わずか23分の間に、駐屯地から弾薬庫に駆けつけることはできないし、駐屯地に整列させてあるミサイルシステム関連車両を退避させることは困難であろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56137?page=4
 不幸中の幸いと言えることは、中国ロケット軍の弾道ミサイルの命中精度は高いため、ほぼ全弾が自衛隊施設敷地内に着弾することぐらいだ。そのため駐屯地周辺の島民に直接的被害は発生しない。ただし中国も国際社会からの非難を受けずに済むことになる。
 ただし、「ミサイル基地」と形容されるミサイル部隊の駐屯地に整列してあるミサイルシステム関連装置を搭載した車輛の多くは吹き飛ばされ、弾薬庫に収納されていた地対艦ミサイル、地対空ミサイル、中距離多目的ミサイルは全て発射されることなく木っ端微塵に吹き飛んでしまうことになる。
 要するに、宮古島をはじめ奄美大島や石垣島に配置につくミサイル部隊が抑止力として適正に機能するには、ミサイルを装填した地上移動式発射装置を含むミサイルシステム関連車輛が島内に分散して、即応発射態勢をとりながら展開していなければならないのだ。

国民への説明は国防の第一歩

日本政府国防当局は宮古島の人々にこのような事情を説明しているのであろうか?

今回の「保管庫」を巡るトラブルのような事態を招来しないためにも、地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムを配備する目的や意義、そしてそれらを抑止力として役立てるための運用方法などを、包み隠さず丁寧に島民に説明しなければならない。
国民の理解と支持こそが民主主義国家における国防の原点といえる。

 《管理人より》↑の文言ではたと思いつくのは,沖縄の名護市辺野古への普天間基地移設についてです。沖縄県の住民投票の結果は、基地移設への反対が圧倒的に多数でした。本来ならばこれで普天間基地の辺野古移設はアンサーが出ています。
 もちろん普天間基地の移設はできません。
住民の意思は大勢が「反対」です。普天間基地は辺野古へは移設しない、で終わりなのです。
しかし安倍内閣は普天間基地移設を進めています。沖縄の住民の民意を安倍内閣はなんと考えているのでしょうか?
まさに「国民の理解と支持」こそが民主主義国家の「国防の原点」なのではないでしょうか?

【第二部】
サイバー脅威を自分たちの問題だと自覚せよ!
イスラエル諜報機関「モサド」元長官が警告

新潮社フォーサイト




 山田敏弘
ジャーナリスト、ノンフィクション作家、翻訳家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などを経て、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のフルブライト研究員として国際情勢やサイバー安全保障の研究・取材活動に従事。帰国後の2016年からフリーとして、国際情勢全般、サイバー安全保障、テロリズム、米政治・外交・カルチャーなどについて取材し、連載など多数。テレビやラジオでも解説を行う。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文芸春秋)など多数ある。


本文
 201949日に総選挙が行われたイスラエル。結果は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる「リクード」がかろうじて与党として連立政権を維持することになった。今回、台風の目となった元軍参謀総長のベニー・ガンツが率いる有力政党連合「青白連合」は大躍進したが、結局はネタニヤフを引きずり下ろすまでには至らなかった。
 選挙前、ドナルド・トランプ米大統領は、支持基盤であるキリスト教福音派を意識して、イスラエル寄りの政策をいくつも強行し、ネタニヤフの後押しになるような動きを見せていた。
 20185月には、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移し、今年3月には、イスラエルが1967年にシリアから奪って占領してきたゴラン高原について、イスラエルの主権を正式に認める文書に署名した。選挙直前には、イスラエルの天敵であるイランの「イスラーム革命防衛隊」を、米政府としてテロ組織に指定すると発表もしている。

 こうした動きが、汚職事件や背信行為のスキャンダルで追い詰められていたネタニヤフに、有利に働いたとも言えそうだ。とにかく、世界はもうしばらく、5期目に突入する彼の顔を見続けることになる。
サイバー政策の歴史に重要な役割
 そんなネタニヤフだが、実はサイバーセキュリティ政策に力を入れた首相として知られている。もっと言えば、イスラエルのサイバー政策の歴史に重要な役割を果たした人である。それゆえ、今後も引き続き、サイバー空間における世界的な動向と、敵国に囲まれたイスラエルの立ち位置から、ネタニヤフの下でサイバーセキュリティが国家の安全の重要な要素と位置付けられていくだろう。

 イスラエルがサイバーセキュリティにおいて、世界でも有数のサイバー部隊と能力を持っていることは、フォーサイトでも以前解説(サイバー大国「イスラエル」から日本は何を学べるか 20171127日)している。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56125?page=2

筆者は今年3月、ビジネス関係のカンファレンスに出席するためにイスラエルを訪問し、様々な分野の関係者たちと話をする機会があった。その流れで、イスラエルが誇る世界に名の知れた諜報機関「モサド(イスラエル諜報特務庁)」の元長官にも、話を聞くことができた。この人物は35年以上にわたってモサドで働き、世界を裏側から見てきた元スパイである。
 モサドの長官にまで上り詰めたこの人物の目には、現在のサイバー空間はどう見えているのだろうか。彼の話に触れる前に、まず世界有数のサイバー大国と言われるイスラエルが、どのようにサイバーセキュリティを発展させてきたのかを簡単に振り返りたい。
サイバーセキュリティの父、ベンイスラエル少将
 イスラエルがコンピューター関連の事業に力を入れ始めたのは、1970年代より以前のことだった。というのも、70年代には、すでに有能な科学者がこの国で大勢育っており、当時、世界的な大手IT企業の「IBM」や「インテル」などが人材確保の観点から、イスラエルに研究施設を設置していたからだ。

イスラエルに「国家サイバー局」を立ち上げた「イスラエルのサイバーセキュリティの父」と呼ばれるアイザック・ベンイスラエル少将は以前、筆者の取材に、「1980年代の終わりまでに、私たちはコンピューターが戦闘におけるテクノロジーを支配することになると認識していました」と語っている。つまり、その頃には、現在のようなサイバー空間の混沌とした様子を感じ取っていたという。
 さらに、「そこで、私たちは兵器製造を始め、コンピューターを戦闘などに使っていたのです。90年代初めにはすでに、イスラエル軍の中でサイバー兵器を作るチームも存在していた」とも語った。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56125?page=3

パソコンや携帯電話が普及し始めたのは、1990年代半ば。その頃からサイバーセキュリティが一般的にも議論されるようになっていくが、当時すでにイスラエルは敵国などからのサイバー攻撃にさらされるようになっていた。
サイバー空間の危険性について警鐘を鳴らす

 例を挙げると、2000年には第2次インティファーダ(パレスチナ人の蜂起)が起きているが、この時も、イスラエルは各地から激しいサイバー攻撃を受けた。そんなことから、イスラエルの対策はおそらく世界水準から見ても、何歩も先を行っていたと言える。

 この頃、ベンイスラエルは、政府に対して初めてサイバー空間の危険性について警鐘を鳴らした。
「私が国防省の研究開発部門のトップだった当時、エフード・バラク首相に書簡を送り、われわれがいかにサイバー攻撃に対して脆弱であるかを伝えたのです」

そして、ベンイスラエルの指摘を受け、イスラエルではサイバー政策の基礎が定められ、監督者の政府と民間のインフラ運営者らの責任も明確にした。このサイバー政策の基礎が、今もイスラエルのサイバーセキュリティ政策の根底にある。

世界で5本の指に入るサイバー大国に

 そして2011年になると、ベンイスラエルは首相の座に着いて3年目のネタニヤフに呼び出しを受けた。

 ネタニヤフは、2009年にイランのナタンズ核燃料施設をサイバー攻撃で破壊したコンピュータウィルス「スタックスネット」を念頭に、「イスラエルがそういう攻撃を受ける可能性はあるのか」と、ベンイスラエルに問うた。
 実はスタックスネットは、米国とイスラエルが共同で作ったとされる「サイバー兵器」であり、その威力を誰よりも知っていたネタニヤフは、スタックスネットのような兵器がイスラエルを襲う日が来るのではないかと恐れたのだという。

 ネタニヤフはベンイスラエルに、包括的なサイバー対策を行える組織を首相官邸内に設置するよう要請した。そうしてベンイスラエルは、官邸や内閣に直接アドバイスをする「国家サイバー局」を立ち上げた。「イスラエルが世界で5本の指に入るサイバー大国になること」を目標に掲げたという。現在、イスラエルのサイバーセキュリティ企業は420社ほどある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56125?page=4
 イスラエルでは主に軍の「8200部隊」が、国家の戦略としてのサイバー工作を専門に行う。世界屈指の精鋭ぞろいの同部隊は、スタックスネットの開発のみならず、最近では、ロシアのコンピューターセキュリティ大手のカスペルスキー・ラボのシステムにも潜入し、ロシア情報機関がカスペルスキーのシステムを使って米国にサイバー攻撃を仕掛けて情報を盗むなどしていると、米国側に通報している。

 当然ながら、イスラエルの諜報機関であるモサドもサイバー工作には関与してきたと見られている。ナタンズの核燃料施設を破壊した際にも、イラン国内で人を使った工作にモサドが関与したとされているし、2007年にイスラエルがシリアの核施設を爆撃で破壊した有名な「オーチャード作戦」でも、サイバー攻撃にモサドが関与している。

元モサド長官が開発した「セキュリティ対策」

 そんなモサドに35年にもわたって関与してきた元長官の名は、タミル・パルド。パルドは、2011年から2016年まで第11代のモサド長官を務めた、モサドを知り尽くした人物だと言える。そんな彼が、退官後に進んだ先は、モサド時代から重要性を目の当たりにしてきたサイバーセキュリティ分野だった。

 パルドは2016年以降、自身のサイバーセキュリティとしてのアイデアを形にするために、モサドや8200部隊などから「世界でもトップクラスのハッカーたち」を集結させたと、筆者に語った。当初その数は30人に上ったという。それでも、アイデアを形にするのは容易でなかった。「開発には2年以上を要したがね」と笑う。

 そんな精鋭を集めて作られたパルドの会社「XMサイバー」が提供するサイバーセキュリティ対策とはどんなものなのか。 このシステム「HaXM(ハクセム)」は、軍事シミュレーションで使われる手法を応用している。つまり、実際のサイバー攻撃をシミュレーションすることで、その脅威への対策を行うものだ

 まずハクセムは、防御するネットワークを把握。現実に起きているサイバー攻撃を担当する「レッドチーム」は、実際の攻撃をシミュレーションしてシステムに攻撃を行い、脆弱性を見つけ出す。いわゆる「ペネトレーション・テスト(侵入テスト)」で、擬似的な攻撃テストだ。これにより、クライアント企業のセキュリティ担当者は、自分の会社のネットワークの弱点を知ることにもなる。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56125?page=5
次に、攻撃に対する防御を担当する「ブルーチーム」は、プログラムの修正やファイルの排除などをして攻撃を食い止め、さらに攻撃を受ける可能性がある部分の修正方法を探り、セキュリティの穴を埋めるソリューションを提案する。

「攻撃される前に対応しなければ意味がない」
 従来なら、これらは基本的に人間が介して行う作業だ。レッドチームとブルーチームがそれぞれの任務での結果を持ち寄って、実際の対策に繋げるために検討を行うので、時間も人員も要する。

 そこに目を付けた同社は、レッドとブルーの間に位置付けられる「パープル・チーム」機能を開発。これにより、レッドチームの攻撃側面とブルーチームの防御側面を合わせて自動解析し、総合的な評価を随時行う。そしてソリューションを伝える。
 パルドによれば、「最大の特徴はすべて自動で機能すること。しかも24時間、365日、休むことなく動く」と言う。つまり、常に巷で発生しているさまざまな攻撃を把握し、それに対処できるよう攻撃が起きる前に対策が打てることになる。

「攻撃される前に対応しなければ意味がない」と言うパルドは、このサイバー対策はモサドの哲学から生まれたものだとし、次のように話してくれた。「私たちモサドは、様々な興味深い経験をしてきた。イスラエルは建国以来、ずっと脅威にさらされてきた。とにかく、私たちそうした様々な脅威を、早い段階で排除する必要があった。すべては、ここイスラエルに安全をもたらすためだ」


 パルドは、「わが社の最大の強みは、人材。スタッフは国のために何年も戦ってきた者たちであり、世界でもベストなサイバー人材だと言っていい。彼らがシステムを作り上げたのです」と言い、「今では、そのシステムを信頼して、オーストラリアや英国などの銀行や証券取引所、自動車産業、病院、インフラ産業へもシステムを提供している。詳細は言えないが、各地で政府にも導入している」と述べる。

政府はすべてを解決できない


そんなパルドは、サイバーセキュリティの現状をこう見ている。「インターネットなどから派生する便利なものが溢れる今日、私たちはサイバー脅威が現実のものであることにまず気がつく必要がある。SNSやテクノロジーからさまざまな利点を得ているが、反対に、リスクも大きい」

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56125?page=6

 パルドは続ける。「まず、私たちはここ1015年で、プライバシーというものを失ってしまった。過去を振り返ると、私の自宅は他人を簡単には侵入させない、まさにだったが、今はそのがスマートフォンになった。スマホにはありとあらゆるものが入っており、外部からでも、人々が何を観て、何を考え、今何をしているのかについて、情報を獲得できてしまう。あなたに危害を加えることもできる。これが今日、私たちが直面している脅威なのだ。子供も含めたすべての人間がそんな世界におり、非常に注意する必要がある」

イスラエルの諜報機関を率いてきた人物の言葉には説得力があった。それこそが彼がモサド長官時代から見てきた「現代の姿」であり、モサドが諜報活動に活用してきた部分でもあるだろう。
 あまりにも便利な「道具」を受け入れた私たちは、暮らしに重要な「プライバシー」を手放してしまったということだ。ただもう後戻りはできない。一度便利さを知ってしまえば、それを捨てるのは難しいからだ。

 そしてパルドはこう言った。「いまだに、政府がすべてを解決できるという間違った考え方をしている人たちがいる。すべての企業、すべての地方都市などが、自分たちでサイバー攻撃に立ち向かうべきである。自分たちの問題だと自覚しなければならない」
 イスラエルのような「そこにある脅威」に直面していない日本人には、こうした話はなかなか届かないかもしれない。だが「令和」の時代には、5G(第5世代移動通信システム)やIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)が普及し、私たちの情報はますます蓄積されていくし、デジタル化もさらに進む。

 日本人も、百戦錬磨のモサド元長官の言葉を受け、城を守れるのは自分たちだけであると、認識すべき時なのかもしれない。


【関連動画】
北芝健のエスピオナージ学
月刊北芝健