2022年5月12日木曜日

ウクライナ紛争はロシアの完敗! ~ウクライナ軍がしかけるサイバー攻撃~ 

2022年2月に始まったウクライナ紛争は、ロシア軍の一方的な侵攻により開戦しました。軍事力ではロシア側が、ウクライナを圧倒しているようにみえますが、実相はサイバー戦、プロパガンダ戦においては、ウクライナがロシアに対して圧倒的に優勢に戦っています。

 戦争は、軍事力だけではありません。隣国からしかけられた侵攻という非常事態にウクライナは軍事力のほとんどを破壊され、多くの市民がロシア側の攻撃で命をおとしたり、ロシア側へ強制移住させたり、往年ナチスドイツ・アドルフ・ヒトラー以上かもしれない悪行を展開します。



ロシアに多数のサイバー攻撃 残虐行為に義憤か、米報道

共同通信社

2022/05/03 16:16ロシアに多数のサイバー攻撃 残虐行為に義憤か、米報道 (msn.com)

【ワシントン共同】202252日付の米紙ワシントン・ポストは、ロシアがウクライナ侵攻開始後に前例がないほど多数のサイバー攻撃を受け、対応に苦慮していると報じた。専門家らの話としている。攻撃増加の原因は不明だが、一部のハッカーはロシアの残虐行為を理由に挙げており、義憤も動機になった可能性がある。

 各国のハッカーはロシアのサイバー攻撃に関する能力が他国より優れているとみていたが、多数の攻撃を許し「神話」が崩れつつあるとの見方も伝えた。

 3月にウェブ上で暴露されたパスワードや機密情報の数はロシアのものが世界全体の約50%を占め、1月と比べ5倍に増えたという。

サイバー空間で既に完敗のロシア軍、情弱性が白日の下に

伊東 乾

2022/05/03 06:00サイバー空間で既に完敗のロシア軍、情弱性が白日の下に (msn.com)

© JBpress 提供 

サイバー空間ではロシアの完敗が明確になりつつある

 2010年代の第3AIブームから除外されたロシアの旧ソ連型軍備がどれだけたくさんあっても西側の敵とならず、この戦争そのものは長期化しない――

 そうした予測を前回稿(コラム)など一連のコラムで、根拠とともに記しています。 

 ロシアはウクライナ・サイバー戦争に20224月時点で「完敗」という、見えない戦争の敗北焦土が仮想空間上にも広がっているわけです。

 本稿の公開日、202253日は「憲法記念日」ですが、今回はウクライナ戦争の中でも日本国憲法第9条で禁止されない「攻撃」を扱ってみましょう。

 「国権の発動」として「武力による威嚇又は武力の行使」としては一般の「目には見えない戦争」である「サイバー・ウォーズ」。

 このサイバー戦争でも、2022年のロシア連邦が完敗している実情を、やはり背景とともに検討してみます。

 読者の皆さんは「ウクライナIT軍(IT Army of Ukraine)」という存在をご存じですか?

 東側圏で普及しているSNSTelegram」の「IT Army of Ukraine」アカウント(ウクライナIT軍)実物をリンクしますので、ご興味の読者は、ご確認ください。

 SNSのリンクだけでなく、当然ながらホームページも存在しますので、実物をリンクしておきましょう(https://itarmy.com.ua/instruction/?lang=en)。

 興味深いことにウクライナIT軍はツイッターにもアカウントを持っているのですが、ここ(ウクライナIT軍ツイッター)をクリックすると分かるように「Suspended」。アクティブではありません。

  ウクライナ戦争の情報と一見全く関係ないように思われるかもしれない、イーロン・マスク氏によるツイッター買収と「透明化」(ツイッター買収と透明化)の議論。

 実はこの案件の心臓部を射抜くトピックスですが、今回は焦点が違いますので別の機会に譲りたいと思います。

 一点のみ記すなら、イーロン・マスク氏が創業時に出資して軌道に乗せたテスラ・モーターズ(テスラモーターズ)のコア・コンピタンス「自動運転技術」は、本質的に軍事技術として重要であることです。

 マスク氏は2017年に国連に向けて「AI/ロボット技術の軍事転用禁止」を求めるアピールなどを行っています。

 そうした行動による株価変動などを十分意識しており、実質的に最先端の軍事技術を推進しているのと変わらない自覚があることなども付記しておきましょう。

 

ウクライナを支援するサイバー義勇軍

 

 先ほどのウクライナIT軍(IT Army of Ukraine)(ウクライナIT軍)テレグラムを確認すると、ほとんど毎日更新される形で、3040ほど、ロシア・ドメインのURLが並んでいます。

 ウクライナIT軍は「サイバー義勇兵」を全世界から募っており、テレグラムには30万人ほどが登録。

 ここで日々公開される「ターゲット」に対して、キットを用いてDDoS攻撃と呼ばれるサイバー・アタックを仕掛けることが可能です。

 DDoS攻撃(イギリスのEU離脱)とは、複数のマシンから特定のサーバに大量のデータを送りつけることで大量の計算負荷を与え機能不全に陥らせるものです。

 攻撃側のマシンがランダムであると、相互に連関が本質的に存在しないので「犯人」の割り出しが困難で、アタックされた側は防御や対策に苦慮することになります。

 攻撃拠点が特定できれば反撃もできますが、見えないパルチザンから散発的に攻撃されてしまうと、ロシア側サーバは打つ手がありません。

 ツイッターはそういうサイバー攻撃そのものをIT倫理・AI倫理の観点から否定しており、また2013年にロシアで開発、普及しているテレグラムはその種のモラルが低いので、ウクライナの「サイバー義勇兵募集」も可能になっている。

 まさに身から出た錆としか言いようがありません。

 

まるで成功しないロシアのサイバー攻撃

 

 実のところ、2022224日のウクライナ戦争勃発以降、ロシアのサイバー攻撃が功を奏したケースは、開戦以降目につく形では、ほとんど確認されていませんでした。

「何でもあり」の「ハイブリッド戦争」と言いながら、成功しているのは、マリウポリ製鉄所に立てこもるアゾフ連隊+一般避難民を餓死に向かってじりじりと追いつめるなど、弱者迫害的な部分ばかりで、冷戦後の戦闘形態であるネット上でのサイバー戦争では、ほとんど戦果を挙げていません。

 日本では希少な例外である、時事通信に掲載された山田敏弘さんのコラム(山田敏弘)によれば、ウクライナは従来、ロシア・サイバーテロの「実験場」に近い状態で、201516年と2年にわたってサイバーテロで発電所を外部操作、停電を引き起こして国内を混乱に陥れるといったことをしでかしています。

 私が子供の頃(1971年)からオンエアが始まった「仮面ライダー」などテレビの児童番組で「世界を恐怖と混乱に陥れる悪の秘密結社ショッカー」といったアナウンスがありました。

 こういうものが流れると、親が「そんなことしても何も儲からない、子供だましの設定」と注釈してくれました。子供なりに私はしょせんそんなものだろうと思っていたのですが・・・。

 あれから50年を経た2022年、ロシアがウクライナに今現在仕掛けている「ハイブリッド戦争」は、ほとんど「死神博士」のレベル、ショッカー大幹部と変わらない悪事になっており、全く洒落になっていません。

 とりわけ2022224日に先立つ時期、ロシアは非常に頻繁に対ウクライナ・サイバーアタックを仕掛けていました(サイバー攻撃がみあたらない。)が、実際に開戦してみると、さっぱり「ロシアのサイバー攻撃が見当たらない」。

 ニューヨークタイム紙なども20223月時点では(なぜない!ロシアのサイバー攻撃)「なぜない?ロシアのサイバー攻撃」といった論調で報道していました。

 2022427日、マイクロソフトはロシアの対ウクライナ・サイバー攻撃の分析を発表。

 武力侵攻に先立つ2022223日から48日までの間にウクライナ各地37の情報拠点をサイバー攻撃、その特徴は、目立たないけれど成功したケースでは「破壊的で容赦のない」もので、大きな被害を受けた情報拠点が37か所存在すると公表しました。

 サイバー攻撃が成功した場所では、ハルキウやマリウポリの焼け跡のような惨状になっているというわけです。でもそれがちっとも目立っていない。

 2022223日から48日まで45日間で37拠点ということは、11拠点の攻撃にロシアが成功していないことを意味している。

 そんなのどかなペースでサイバー戦を仕掛けていたはずもなく、つまりロシア大半のサイバーアタックは、事前に準備された防御網によって、一蹴された可能性が考えられます。

 

ロシア「サイバー敗北」3つの背景

 

 地上の武力侵攻でも思うにまかせないロシア軍ですが、サイバー攻撃でも目立った戦果を収められていない。

 その背景を考えてみます。

1:まず正攻法的には「泳がせ捜査」による戦術分析に引っかかっていた可能性を指摘しておくべきでしょう。 

 私たち東京大学でもサイバーセキュリティ強化にあたって「ホワイトハッカー」を雇用するプロジェクトを展開することがあります。

 銀行など高度なセキュリティを求められる本物のサーバをモデル・ターゲットとして構築、これを、高度な能力を持ちかつ犯罪に加担しない「ホワイトハッカー」によって徹底攻撃してもらい、セキュリティ・ホールを分析、脆弱性を強化する、いわば「内部のイタチごっこ」によるセキュリティ強化対策です。

 ロシア側は2022223日に至る過程で、この「おとり捜査」に引っかかっていた可能性が考えられるでしょう。

 つまり、成功すれば褒められる、分かりやすい専制ロシアですから、事前のサイバーアタックで効を奏したと思われる「手の内」を、どんどん西側サイバーセキュリティ・アナリストに開陳しているのに、それに気づかず、やりたい放題試してみてしまった可能性があります。

2:他方、ウクライナ~米国側は、物理的な武力攻勢と同期して、本格「ハイブリッド戦」に突入するまで「じっと我慢の子」で、敵側戦術をよく分析、いざという瞬間までは伝家の宝刀を抜かずにおいた。

 そして2022224日以降、全面対決となってから、すでに手の内が知れているロシア側の攻撃を徹底して叩いていった可能性が考えられるでしょう。

 第2の要素は、ロシアのサイバーアタックが「借り物」である弱さです。

 インターネットの基本プロトコルはすべてアルファベットで書かれており、キリル文字は埒外にあります。

 つまり米ソ冷戦が終わり、「米国による平和」が確立されたことで「IT革命」が動き始めた歴史的経緯、旧東側の優秀な技術者も1990年代に西側流出し、21世紀の情報技術はハードもソフトも、米国という舞台にハイライトが当たっている。

 先ほど挙げたイーロン・マスク氏なども南アフリカ出身で、米国というステージを選んで成功しているわけです。

 翻って「ロシア」というステージは、ITについては光に対して陰の部分を担ってきました。

 代表的な例として2013年に世界的なスキャンダルとなった元CIA(米中央情報局)エージェント、エドワード・スノーデンの情報リークが挙げられます。

 スノーデンは事件後、ロシアに亡命。滞在許可を小出しに延ばしていましたが、2020年に子供が生まれるのを機に、ついにロシア国籍の取得を申請しました。

 亡命者にも生活や愛の日常がある。こうしたことは日本の報道にはほとんど載っていないと思います。

 私自身、東京大学福武ホールとロシアのスノーデンを結ぶシンポジウムをサポートした経緯があり、善くも悪しくも「柔軟」かつ「米国による平和」に対立的なロシア側の姿勢が強く印象に残っています。

 米国的な意味でのグローバルITルール、ネット倫理に従わないロシアは、自前の技術力というより、結果的に世界各地のITマフィアに活動の場を与えることとなります。

 それが最も効を奏した例として2016年の2つの出来事を挙げておきましょう。

 英国のEU離脱=「ブレグジット」とアメリカ合衆国大統領選での「トランプチン」共和党政権の成立にまつわる「ロシアゲート」疑惑(ロシアゲート)です。

 このとき、バラク・オバマ政権米国民主党の全国委員会サーバなど、ヒラリー・クリントン候補陣営側にサイバー攻撃を仕掛けたのは、その攻撃手口と規模の大きさからいってロシア連邦のバックがあっての犯行であったことは、現時点では疑う余地がありません。

 この時からまる6年、民主党側米国勢は「二度とこうしたサイバー攻撃にやられるまい」という決意のもと、可能なあらゆる対策を立て、ジョー・バイデン政権成立後はそれが国策になっていることが一つ。

 そしてもう一つが、

3:「世界でもトップクラス」と思われていた「ロシアのサイバーテロ能力」が、実はロシア固有の情報技術力ではなく、舞台としてロシアを選んでいるITマフィアなど、外人部隊、サイバー傭兵の力であって、しょせん借り物であることも注目しておく必要があるでしょう。

 ロシアのサイバー攻撃は、大半がすでにすでに手の内を見破られており、ウクライナ戦争以降に目立った戦果を挙げることは期待しづらい。

 では、ウクライナ・バイデン・NATOのサイバー防衛に対して、さらにカウンター・サイバー戦術を編み出すだけの力が残っているかと問われると、それに対しては疑問、ないし否定的な見解を述べざるを得ません。

 理由は簡単です。

 ITマフィアはカネで動く黒いビジネスマンで、カネの切れ目が縁の切れ目になり、かつ、ルーブル建ての決済などには基本応じないので、じり貧が目に見えているからです。

 ポーランドやルーマニアへの天然ガス提供なら「ルーブルで支払え」と恫喝できても、ロシアにとって貴重な「ブラックハッカー」に、紙切れで言うことを聞く人は少ない。

 彼らはシビアな商売人ですし、ロシアも貴重な戦力であるハッカーに下手な手出しはできない。

 弱い者には見せしめやいじめが通用しても、情弱のロシアにとっては一人のハッキングエンジニアでも何万の軍勢に匹敵しうる戦力ですから、無下には扱えません。

 かといって、ドル建てや金地金建ての報酬など十分に支払えるわけもなく、結局ロシア側の「サイバー・カウンター防衛/攻撃」は早晩手詰まりになるでしょう。

 こんなところにまで経済制裁は露骨に直撃、命中しています。

 他方、西側のハッカーとしては、広く知られたホワイトハッカー集団「アノニマス」が225日時点でロシア連邦に「サイバー戦線布告」済(アノニマス)であり、そのアッパーカット直撃に加えて、着実に相手の体力を奪うジャブのような「ウクライナIT軍」義勇兵の「DDoS攻撃」なども相まってまさに「四面楚歌」の状況にある。

 ロシアはウクライナ・サイバー戦争に20224月時点で「完敗」という、見えない戦争の敗北焦土が仮想空間上にも広がっているわけです。


ウクライナ・ドローン部隊




2022年4月22日金曜日

ウクライナ侵攻にみるFSB(ロシア連邦保安庁)の現状。

 あまり表舞台にでてこない!? ロシアの諜報機関FSB。興味深い記事をみつけましたので以下にとりあげます。少しでも耳目をひくきっかけとなると嬉しい限りです。


ロシア・スパイ帝国の終焉か? 連邦保安庁「FSB」の凋落

日本戦略研究フォーラム

2022/04/22 06:00ロシア・スパイ帝国の終焉か? 連邦保安庁「FSB」の凋落 (msn.com)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員、元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

[筆者プロフィール] 藤谷 昌敏(ふじたに・まさとし)

 1954(昭和29)年、北海道生れ。学習院大学法学部法学科、北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科修士課程。法務省公安調査庁入庁(北朝鮮、中国、ロシア、国際テロ部門歴任)。同庁金沢公安調査事務所長で退官。現在、JFSS政策提言委員、合同会社OFFICE TOYA代表、TOYA危機管理研究所代表。

本稿は、「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」ウェブサイトに掲載された記事を転載したものです。

 

 かつて旧ソ連時代、ソ連国家保安委員会「KGB」は、ソ連共産党と一体化し、国家そのものとも言って良いほどの権勢を誇った。中国やその他の共産圏諸国の情報部を指導・支援し、一大情報帝国を築いた。

 西側諸国、特に米英との秘密戦は熾烈を極め、KGBは米国の原爆開発計画(マンハッタン計画)を盗用したローゼンバーグ事件を引き起こし、「マグニフィセントファイブ」と言われる工作員たちを英国情報部の最高幹部クラスにまで浸透させることに成功した。

 彼らがもたらした重大な機密情報がどれほどソ連に貢献したかは言うまでもない。ソ連を米国と並び称されるほどの大帝国に育て上げ、冷戦の主役としたのはKGBだと言っても過言ではない。

 FSB職員を追放、解雇

  これほどの功績を残してきたKGBの後継機関であるロシア連邦保安庁「FSB」が、今回のウクライナ侵攻以降、次々と不祥事を起こしている実態を見れば、その体たらくぶりには驚くばかりだ。

 20224月に入り、とうとうプーチンはロシア連邦保安庁FSBの情報部員150名を追放した。英紙「TIMES」は「追放されたのは、プーチン大統領がFSB長官在任中に設立された『第5局』の職員。ウクライナなど旧ソ連の構成国をロシアの勢力圏にとどめる役割を担う。侵攻の失敗に対するプーチン大統領の怒りの表れで、スターリン的な大粛清だ」と報じている。追放されたFSB職員らは、大部分が解雇され、幹部クラスの一部は逮捕されたようだ。

 ロシア・メディア「メデューサ」によれば、3月、「第5局」の局長セルゲイ・ベセダ准将と副司令官アナトリー・ボリュク(運用情報部門責任者)らが不正確な情報を報告した疑いで自宅軟禁され、刑務所に送られた。

「第5局」は、侵略に先立ってウクライナの政治・社会・経済情報をプーチンに直接、報告する義務があった。だが、ベセダは、プーチンのご機嫌を損ねることを恐れて、「ウクライナは弱く、ネオナチでいっぱいであり、攻撃された場合は簡単にあきらめるだろう」など、ウクライナ侵略に都合の良い情報を報告していた。ベセダがFSBの特殊部隊を率いてウクライナで活動していた経緯から、プーチンはベセダらの情報にかなりの信頼を置いていたとみられる。

 ベセダらは、破壊活動や工作資金に割り当てられた資金の不正使用や、不十分で不正確な情報を故意に提供した容疑をかけられているという。

 FSB「第5局」とは

  FSBは、KGBの対外諜報活動を担当していた第1総局がロシア対外情報庁「SVR」として分割されたのを機に、防諜活動を主とする組織として独立した。

 プーチンが1998年から約1年間、FSBの長官に任命された際、FSBの権限拡大に力を入れ、海外でも諜報活動を実施できるように新たな担当局を設置した。それがFSBの「第5局」である。正式には「運用情報・国際関係局」(the Operational Information and International Relations Service)と呼ばれている。

 だが、実際にはプーチンのFSB長官就任前から特別チームが編成されており、旧ソ連領における諜報活動は行われていた。それをプーチンが事後的に認めたに過ぎない。

「第5局」の目立った活動といえば、ベラルーシ、モルドバなどにおける地方選挙で親露派の候補者を支援する活動を行っていたことぐらいだが、ウクライナは特別な諜報対象と位置付けられており、ウクライナ政府・軍・情報機関などへの浸透工作や欺瞞工作を積極的に行っていた。その欺瞞工作の例としては、ウクライナとトルクメニスタンの離間を図るために「ウクライナの情報機関がトルクメニスタンの反体制派に秘密裏に資金を提供していた」とする偽造文書を公表したことなどがある。

 ウクライナ侵攻後、FSB内部からと思われる情報漏洩事件が相次いでおり、FSBには様々な問題と混乱が生じているとみられる。

 FSB内部から告発の手紙が漏洩

  今回のウクライナ侵攻の前、FSB内には侵攻に懐疑的な見方があったとみられ、FSBの内部告発情報も暴露された。その告発情報の真偽はいまだ定かではないが、真正だとすれば、FSB内部の不満を裏付けた重要な情報といえる。一部を抜粋する。

「最近、私たちは徐々に指導部の求めに合わせた報告をするよう圧力を受けていた。政治顧問やら政治家やら、その取り巻きたち、影響力のある連中がひどい混乱を作り出していた。一番重要なことは、誰もこんな戦争が起きると知らなかったことだ」

「我々は最初は、ウクライナ国内でゼレンスキーに対する反対行動を準備していた。直接侵攻することは考えていなかった。 これからは市民の損害は幾何級数的に増えるだろう。我々に対する抵抗戦も強まる一方だろう」

「ロシアには出口がない。勝利の可能性がないのだ。敗北は大いにありうる。弱い日本に蹴りを一発入れて早々に勝利してしまおうとしたが、戦争を始めてみると軍は負け戦を続けた前世紀初頭とまったく同じことが繰り返されてしまった(日露戦争のこと)」(テレビ朝日のニュースより)

 この手紙で分かることは、ウクライナ侵攻が突発的に決まったこと、数日でウクライナを降伏させるつもりだったこと、経済制裁によりいずれロシアは破綻するであろう、といったことなどだ。

 FSB工作員の人物情報を暴露

  ウクライナ軍情報部は2022328日、FSB工作員のリストを公表した。そのリストでは、各人の生年月日や出生地、FSBでの経歴、住所や電話番号、Eメールアドレス、旅券番号や所有車のナンバー、人物評価まで記載されている。これだけの詳細な情報があれば、外国の政府、企業、軍、情報機関などに潜り込んでいるスパイを摘発するのは容易なことだろう。

 このリストの漏洩はウクライナ軍情報部のハッキングによるものと考えられているが、情報機関にとって工作員のリストは秘中の秘である。外部からのアクセス不可能なPCに保管されるなど、ハッキング対策は万全だったはずであり、やはり、FSB内部の協力者による情報漏洩ではないかと推測される。

 このようにFSB内で、あってはならない不祥事が続いていることを考えると、ウクライナへの電撃侵攻が失敗したことで、FSB内では、戦争の末路がロシアの破綻となりかねないとする危機感が強く生じているのではないだろうか。

 プーチンと側近たちの戦争計画の失敗をすべてFSBに押し付けられている現状を考えれば、FSBを中心としてプーチン打倒を訴える勢力が出てきてもおかしくはない。


動画でみるロシアFSB






ウクライナ侵攻にみる米英欧の軍事支援の意味。

  まずは以下の記事をあげてみたい。ロシアは当初、ウクライナ北部、東部、南部の3方向から軍を侵攻させました。つまり先にロシアが強引にウクライナからハイブリッド戦争で奪ったクリミア半島から東部への一帯と首都キーウなど主要都市を同時に攻略し、主要領土の獲得とウクライナ政権の転換を同時に、一気に達成しようとした戦略だったとみられます。

 しかし実際にはロシアの目論見は、ウクライナ政府、軍、民間人の強靭な愛国心と根強い抵抗と欧米の手厚い支援の前に失敗します。

 基本的にルトワックの戦略論を思い出せば、「大国は小国に勝てない」となります。ウクライナは小国ではありませんが、現代の経済の相互依存関係と軍事同盟化が進んだ国際社会では、先に理不尽な侵攻をしかけた方が圧倒的に不利なことは常識といえるでしょう。

 ロシアはやらなくてもいい戦争をウクライナにしかけ、自ら侵攻戦略が破綻し、墓穴を掘り続けていることに気づくべきでしょう。侵攻したロシア兵士にも家族がいることでしょう。侵攻したロシアの側でも反戦デモがおこっていることを考えれば、既に勝敗は決しています。

 最初の戦略が破綻し、戦線を東部に縮小したロシアは「敗戦国」です。クリミアから東部2州を入手してもそれで戦争は終わらず、しこりは残り、ウクライナとの間の溝は埋まることはありません。

 欧米各国は、ウクライナに全面的な軍事支援、難民支援を展開しています。それが何を意味するのか?

 タダでウクライナを支援するお人よしはいないでしょう。彼らの狙うものは何なのでしょうか?

 なんてことを考えながら記事をみてみましょう。

総攻撃始めたロシア軍に襲いかかるNATOの最新兵器

西村 金一

2022/04/21 06:00

© JBpress 提供 ロシア軍はNATOの最新兵器とも戦わなければならない(写真は英国が開発し米軍に採用された最新の「M777A2155ミリ榴弾砲、2021930日撮影、米陸軍のサイトより)※目新しい兵装ではありませんが、陸上の破壊力は強く、ヘリで輸送できますね。

  ロシア軍は2022418日夜、東部ドンバス地方で、ウクライナ軍の防衛線を突破し、大規模な攻撃を始めた。

 同時に南部でも継続的な攻撃があった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「戦争は第2段階に入った」と述べた。

 第2段階の攻撃はどのように展開するのかについて、ロシア軍の戦力損耗とウクライナ軍の戦力増強を掛け合わせて考察し予想する。


1.歴史は繰り返す:413日の撃沈

 413日、黒海艦隊旗艦「モスクワ」が撃沈させられた。413日というのは、ロシア海軍にとって「悪魔の日」と呼んでよい。

 というのは、日露戦争の日本海海戦の前年の1904413日朝、旅順港外で、「司令長官(マカロフ)中将ノ旗艦(ペトロパブロフスク)ハ、我機械水雷に罹リ瞬間に爆発、沈没、跡を留メズ」と戦史にあるからだ。

 ロシア極東太平洋艦隊旗艦「ペトロパブロフスク」(23000トン)が、大日本帝国海軍が設置した水中機雷に接触し、撃沈したのだ。

 ちょうど118年前の同月同日である。

 翌年の5月、ロシア海軍は、日本海海戦で日本に完膚なきまで撃破されてしまうのである。

 その時、バルチック艦隊の象徴であった旗艦「クニャージ・スブオーロフ」も撃破され沈没した。

 旗艦「モスクワ」の撃沈と、同日の旗艦「ペトロパブロフスク」の撃沈、翌年の日本海海戦での大敗北が重なり、ウクライナに侵攻しているロシア軍の行く末を表しているように感じられてならない。


2.損耗を充足、戦力転換で再編成中

 米国からの情報によれば、ロシア軍はキーウ正面から撤退して東部・南部に戦力を集中し、また予備戦力まで投入している。

 損耗した部隊に兵員と兵器を補充して、再編制して戦力アップし、攻撃準備を進めているところだ。

 ウクライナ軍はNATO(北大西洋条約機構)から兵器・弾薬の供給を受けているのに比べ、ロシア軍は、強大な軍事力を保有しているが、損失が出れば、自国で賄うしかない。

 ロシア軍は再編成によって、再び総攻撃ができる状況になっているのだろうか。そこで、ロシア軍の現状を分析した。

 ロシア軍の戦闘損耗の実態が最も明確に表れているのが、ウクライナ軍参謀部が発表しているロシア軍の損失数(Russian forces lost)のデータだ。

 ウクライナ軍の発表なので、いくぶん誇張されている可能性があるが、嘘が多いロシア軍発表と比べれば、格段に信頼性が高い。

 ロシア軍が投入した戦力のどれほどの損失(損耗率)が出たのかについて、JBpress『壊滅の可能性もあるロシア地上軍、短期間に高い損耗率』(202241日、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69537)に寄稿した。

 侵攻開始後、概ね2か月が過ぎた現在、さらに戦力転用予備兵力を投入し、再編中である。

 一部は攻撃に加わっている。ロシア軍は、近い将来、改めて総攻撃を開始するであろう。その攻撃とはどのようなものになるだろうか。


3.侵攻1か月後と2か月後のロシア軍損耗率

 ロシア軍のウクライナ侵攻後、2022年322日まで、その後415日までを2つに区分して、兵器損失数と損耗率を算定した。その数値は以下のとおりである。

 

© JBpress 提供 損耗率の算定には、実人員数は編成上の定数(ミリタリーバランス)の90%(充足率)、投入戦力は実人員の65%、損耗率は損失数 /投入戦力とした。戦闘機・攻撃機・ヘリは全力投入できるとして計算した

 侵攻開始から2か月後のロシア軍の損耗率は、ロシア軍がウクライナに投入した戦力の約20%である。

 この20%という損耗率で、今後、東部と南部の正面でどのような戦いができるのだろうか。

 キーウ正面から東部に移動する車列が13キロと報告された。車両の間隔が40メートルだとして、車両縦隊が13キロであれば、車両数は、約325両になる。

 これらの車両に兵員が平均的に7人乗車していたとすれば、約2300人が東部正面に転用されたと見ることができる。

 また、小さな車列もあったであろうから、最大5000人ほどだったかもしれない。

 ロシア地上軍(空挺部隊・海兵隊を含む)の実員が約31.5万人で、この人員から投入戦力を15%引き上げたとすれば、約4万人を投入することができる。

 このほかにも予備役兵が増加されているだろうが、戦闘部隊に編入させられることはないであろう。

 これから投入率を6580%に引き上げれば、保有戦力の15%を投入することが可能だ。

 そうすると、損失した兵員と兵器をほぼ、90%を上回る水準まで充足することができる。ただ、充足された兵士の士気や練度については、さらに低いとみてよいだろう。

 

4.旧態依然のロシア軍に勝ち目は薄い

  侵攻開始から1か月とその後の1か月を比較すると、当初の1か月の損耗率は約16%であった。その後の1か月の損耗率は約6%である。

 当初の1か月の損耗が大きく、次の1か月の損耗は3分の1まで低下した。

 これは、ロシア軍の戦い方の戦術的な練度が上がったのではなく、当初、ウクライナ軍が弱いと見ていて、ただ突進していったところ撃退されてしまったためだ。

 その後、用心深くなって、むやみに突進攻撃しなくなったからであろう。

 用心深く攻撃するというのは、心理的なもののほかに、敵の配備やその攻撃を想定しながら攻撃するということである。

 とはいえ、この12か月で戦い方が変えられるのかというと、一部の将校は変えられるかもしれないが、ほとんどの将校は、旧態依然の戦い方しかできないのが実情だ。

 その戦い方とは、

都市を爆撃して破壊する。

破壊した後に、その都市に対して地上攻撃をかける。

敵が都市に残っていれば、再び爆撃をする。

敵がいなくなった地域を占領するである。

 このような戦いには、創造的な作戦戦術はない。航空攻撃と地上軍の連携、砲撃と歩兵部隊の協同連携、無人機と地上部隊の連携攻撃、情報と作戦の連携、宇宙とサイバー攻撃、地上作戦との連携が欠如している。

 ロシア軍はハイブリッド戦で攻撃し、ウクライナ軍の組織をバラバラにして、それぞれが組織的に機能しないようにして、そこに総合的な火力や機甲戦力を投入して攻撃するだろうと想定していたが、現実はそうではなかった。

 ということは今後、再編成した部隊で総攻撃を行ったとしても、攻撃進展速度が著しく速くなることは考えにくい。

 せっかく再編成して態勢を整えたとしても、それぞれの組織が連携せずに攻撃すれば、待ち構えるウクライナ軍に撃破されることになるであろう。

 

5.新たな戦法生み出すウクライナ軍

  旧態依然のロシア軍に対して、ウクライナ軍は、NATOの兵器支援によって、新たな軍に生まれ変わっている。

 兵器の導入とともに、米軍の作戦戦術を受け入れ、ウクライナ軍独自の作戦戦術を作り上げているようだ。

 

ロシア軍の侵攻当初(1か月)の防御的対戦車戦闘と防空戦闘

  侵攻当初、ロシア軍の戦車・装甲車が道路を走り回り、自動小銃しかないウクライナ軍兵士は、それを茫然と見るしかなかった。

 地上軍の近接航空支援を行った対地攻撃機に対しては、機関砲で防空戦闘を行っていた。ウクライナ軍敗北の気配が漂っていた。

 NATO加盟国が支援した対戦車兵器、特に「シャベリン」が、兵士に行きわたっていくと、強引に攻撃前進してくるロシア軍の戦車や装甲車に向けて発射され、その結果、侵攻1か月以内で、ロシア軍の戦車と装甲車、約2000両が撃破された。

 その数は、日本が保有している量を上回った。

 ロシア軍の戦闘機・対地攻撃機、ヘリによる攻撃に対しては、携帯対空ミサイル「スティンガー」を使用し、たった1か月で合計225機を撃破した。

 この時は、ウクライナ軍は、双方の軍が近接戦闘(接触線から数キロ以内)を行っている。

 この距離では、効果的な戦いができた。だが、後続の戦車等部隊、砲兵部隊や兵站部隊に対しては、効果的な戦闘をすることができなかった。

 

ウクライナ軍のその後の1か月の防御戦闘

 

 ロシア軍が慎重に攻撃するようになってからも、ウクライナ軍は、これまでと同様の防御戦闘を実施してきた。

 併せて、侵攻開始以前に導入していたトルコ製の無人攻撃機「バイラクタルTB2」や「RPG-7」の弾頭をドローン化した「UJ-32 Lastivka」が、後続部隊や砲兵部隊への攻撃を行うことができた。

 その結果、2か月間に366門の火砲を破壊することができた。

左:バイラクタルTB2、右:UJ-32 Lastivka

 



© JBpress 提供 出典:https://www.militaryfactory.com/、https://milirepo.sabatech.jp/category/military/news/

 

 これらの成果が、キーウ侵攻を途中で放棄させ、戦争目的を東部・南部の限定した攻撃へと縮小させた。

 ロシア軍は当初の戦闘で、大きな損害を出したために、戦争目的を縮小し、無謀な突進攻撃から慎重な攻撃に転換した。

 損耗が大きな部隊の再編制を行うことにより、ロシア軍の損耗は3分の1にまで減少した。

 

ロシア軍の第2段階の総攻撃に対するウクライナ軍の防御戦闘

  ロシア軍は、戦線を縮小し、再編成を完了し、東部・南部で総攻撃を始めたようだ。

 一方、ウクライナ軍もNATOから提供された防御用の兵器が部隊に行きわたったようだ。ロシア軍も再編成できたが、ウクライナ軍の防御戦闘能力は著しく高まった。

 特に対戦車戦闘、防空戦闘能力は、広範囲にわたって整備できたであろう。戦車・装甲車軍団が、単独で、広大な土地に広く展開して攻撃してくれば、当初の1か月よりも、多くの損耗が出るであろう。

 本来であれば、戦車・装甲車部隊は、装甲車から下車した歩兵との連携で、火砲によるウクライナ軍の対戦車兵器を破壊すること、または、航空攻撃との連携で、敵対戦車兵器を破壊するのが最も効果的な戦闘である。

 ロシア軍が、この2か月の失敗を教訓に、ここで述べた戦いを実施すれば、ウクライナ軍は苦しい戦闘を強いられるだろう。

 ロシア軍の協同した戦闘に対して、米国から供給される火砲の射撃の威力、無人攻撃機の攻撃の能力が発揮されることになる。

 

ロシア軍総攻撃に対するウクライナ軍の防御戦闘

 

© JBpress 提供 出典:筆者作成

 ウクライナ軍は、ロシア軍の第2段階の総攻撃を凌ぎ切るだろう。そして、ロシア軍に再び重大な損害を与えることができると予想する。

 

ロシア軍の総攻撃を破砕し、ウクライナ軍の反転攻勢に

  ウクライナ軍の攻勢は、2段階に分けられる。

 第1段階は、224日以降の侵攻で占拠された領域を奪い返す。つまり、2014年に占拠されたラインまで押し戻すこと。

 第2段階は、2014年に占拠された地域を奪回し、もとの国境線まで押し戻すことであろう。

 第1段階は5月中に達成するだろう。米国が今年の年末までかかると言ったのは、第2段階のことであろう。

 これは実施可能なのか。

 米国が最近提供しているのが、高機動多用途装輪車両、装甲車、火砲と対砲レーダー自爆型無人攻撃機「スイッチブレード」、偵察用無人機「ピューマ」、対無人機航空機システムである。

 このほかに、英国は装甲車と対艦ミサイル、チェコは戦車、ドイツは歩兵戦闘車を提供する。これらの兵器は、防御的な兵器というよりは、攻撃的な兵器の性格が強い。

 

「スイッチブレード」(イメージ)

 

© JBpress 提供 出典:AeroVironment, Inc.

 反転攻勢に出る時、戦車や装甲車に搭乗して逃げるロシア軍に、対戦車ミサイルなどを担いで徒歩で追いかけるわけにはいかない。

 そこで必要になるのが、装甲車、戦車、装輪装甲車、さらに火砲である。

 特に火砲は、歩兵が戦車などの上に乗って移動するときに、これに対して、射撃を行い、歩兵を殺傷するものである。

 また自爆型無人攻撃機は、ロシア軍の指揮所、火砲陣地、兵站部隊、後続の戦車部隊を破壊するために、最も必要とされる兵器だ。

 この時、敵地の奥深くまで潜入し情報を入手するのが、無人ヘリと無人機だ。市販のドローンも使用されるだろう。

 

ウクライナ軍の反転攻勢

 

© JBpress 提供 出典:筆者作成

 第2段階の攻勢では、2014年で占拠された領土を奪回するための攻撃となる。

 長期間の戦闘になることから、ミサイルや弾薬が必要になる。黒海のロシア軍のセバストポリ軍港に停泊するロシア軍艦を攻撃するには、無人攻撃機と対艦ミサイルの攻撃が有効になるであろう。

 

自爆型無人攻撃機、無人偵察機と地上軍戦闘の連携が最大の強み

  NATO加盟各国の最近の武器提供は、ほとんどが攻勢に出るための兵器である。

 ゼレンスキー大統領は、今後、本気で反転攻勢を狙っていることが分かる。そして、その自信も垣間見える気がする。

 ウクライナ軍は、NATOから提供された兵器の能力を最大限に生かして戦っている。

 その陰には、おそらく米軍の戦争指導が入っているであろう。兵器供与は最大の協力であるが、戦争指導と情報提供も表に出ない重要な力となっている。


※アメリカは兵器の供与だけでなく、兵器の使い方までウクライナ軍に指導していますね。

また最新のドローン兵器をウクライナのためにオーダーメイド販売しています。


ウクライナに「ゴーストドローン」提供へ、米国「空軍が急いで開発」

朝日新聞社

2022/04/22 06:12ウクライナに「ゴーストドローン」提供へ、米国「空軍が急いで開発」 (msn.com)

米バイデン政権は2022421日、ウクライナに対し、新たな8億ドル(約1千億円)規模の軍事支援を決め、新型のドローン(無人機)などを提供することを明らかにした。このドローンは「ウクライナの要望に合わせ、米空軍が急いで開発したもの」(米国防総省のカービー報道官)。ウクライナ東部攻撃を本格化させるロシア軍に備える狙いがある。

 同省によると、ドローンは「フェニックスゴースト」と名付けられ、121機以上が提供される。米国がこれまでウクライナに提供してきた自爆型ドローン「スイッチブレード」に似た性能を持つ。主に攻撃を目的としており、ミサイルのように自ら標的に向かって攻撃することができるようだ。複数の標的に対応できるという。ウクライナ兵への使い方の訓練も行う。

 主な戦場が首都キーウ(キエフ)近郊からウクライナ東部に移り、必要とされる武器も変化している。平地が多く障害物が少ないため、大砲や戦車といった重火器の役割が増す。バイデン米大統領は2021年4月21日の演説で、「戦争の次の段階に向けた重要な時期にある」と指摘。新たな軍事支援について「東部ドンバス地方での戦闘力を高める」と狙いを説明した。

《管理人コメント》

※すべて攻撃兵器です。この背景には一体どんな思惑があるのでしょうか?

先陣きってウクライナ軍事支援を行ったのはイギリス。対艦ミサイルと装甲車を供与。ドイツも軍事支援をしていますね。だからウクライナの士気が下がりません。元々愛国心の強い民族性ということもあって絶対あきらめないでしょう。



ウクライナ、ロシア軍の前進撃退=高い士気を維持英国防省

2022/04/20 12:33ウクライナ、ロ軍の前進撃退=高い士気を維持―英国防省 (msn.com)

【ロンドン時事】英国防省は19日のウクライナ戦況報告で、ロシア軍がウクライナ東部ドンバス地方の各地で砲爆撃を強化する一方、ウクライナ側は「ロシア軍による多数の前進の試みを退けている」との見方を示した。

《管理人コメント》

 報告によると、ロシア軍はこれまでと同様、周辺環境や後方支援、技術面のそれぞれで課題を抱えており、ウクライナ軍は高い士気を維持しながら抵抗を続けている。

※公表しているのはイギリスのメディアです。ウクライナ側は侵略者であるロシア兵士うぃ一人残らず国外へ追い出したい、これは理解できます。

 では欧米の軍事支援の狙いは何でしょうか?

 これはあくまで個人的な見方ですが、欧米のウクライナへの軍事支援の背景は、破壊されたウクライナ国内の支援への投資でしょう。ウクライナが国防戦争で勝利することにより、支援を惜しまなかった欧米各国から「復興支援」を合言葉に、かなりのインフラ投資がなされることが容易に予想できます。

 加えてロシアからの軍事侵攻という現実的な問題が発生したことにより、ウクライナ国内に欧米の軍隊を駐留させられる可能性もあります。いずれにせよ、ロシアを追い出せばウクライナの経済は欧米各国に無理がいえないことになり、経済の上での互恵関係がいっそう深まります。兵器だけに留まらないでしょうね。

 ロシアもウクライナ侵攻後、国際的な兵器市場へ自国兵器をアピールしています。しかし国防戦争で実証されたアメリカの兵器に比べると、侵攻で有効性が証明されたとロシアがアピールしたとしても、買ってくれるのはロシアのお友達だけでしょうね。

 現況を見る限り、欧米側に有利な状況になってきています。人々はロシア当局のいうことを誰が信じているというのでしょうか?

 大衆を納得させ、民意を得ることも大切な勝利条件でしょう。

そういう意味ではロシアの軍事侵攻は完全に失敗、破綻しているといえるのではないでしょうか?

 そろそろ殺さなくていい命を奪ってしまった罪を悔いて、遺族に十分な賠償をしていくこと。ウクライナ政府への正式な謝罪と復興支援への賠償を検討していくべきでしょう。


動画



















































































































































































































































 

 

2022年4月18日月曜日

海上保安庁海洋情報部の仕事。

中韓の主張を突っぱねろ 海上保安庁の「測量船」その知られざる任務とは 一般公開間近

深水千翔(海事ライター)

2022/04/17 06:22中韓の主張を突っぱねろ 海上保安庁の「測量船」その知られざる任務とは 一般公開間近 (msn.com)

海を拓く新鋭船「平洋」&「光洋」

 海上保安庁には、測量船や航空機などを使用して海の調査を行い、そこで得られた情報を管理・提供する組織として「海洋情報部」が設けられています。同部が手掛ける任務は、日本の海洋権益を確保するために必要なデータの収集や、海上での事故・災害を防止するための調査・観測、船舶の安全航行に必要な海図の製作など多岐にわたっており、島国である日本にとって欠かせない役割を担っています。

 その海洋情報部の海洋調査で使用する測量船の中でも最大級の「平洋」が2022422日、東京ビッグサイト横の岸壁(有明西ふ頭)で一般公開されます。日本最大の国際海事展「Sea Japan」におけるイベントの一環で、最新の調査機器を搭載した測量船を間近に見ることができる非常に珍しい機会です。

 

© 乗りものニュース 提供 海上保安庁が誇る最大級の測量船「平洋」(深水千翔撮影)。

  「平洋」は20201月に就役しました。同型船は「光洋」(20213月就役)で、2隻とも建造ヤードは三菱重工業下関造船所。所属は海保本庁になります。両船が加わったことにより、外洋での調査を行う大型測量船は「拓洋」(2400総トン)、「昭洋」(3000総トン)と合わせ4隻体制に拡充されました。

「平洋」と「光洋」の船体規模は4000総トンと、従来の測量船と比べて大型化しています。また観測データに影響を与える船体の振動や雑音を防止し、長時間の低速航行能力を持たせるため、海保の船として初めて電気推進システムを搭載したのも特徴です。

 豊富な海洋観測機器

 「平洋」と「光洋」の推進機には舵とプロペラが一体化し、360度どの方向にも推進力を向けることが可能なアジマススラスターが採用されています。このアジマススラスターを、バウスラスターや自動船位保持装置と組み合わせることで、潮の流れが速く、波のうねりが大きい海域でも、同じ位置に留まり続けることが可能であり、これにより海底地形や地質の精密な調査を行えます。

 長時間にわたって一定の海域を低速で航行しながら実施する水路測量でも、船が自動で位置を調整しながら進むため、測量時に航走する経路(測線)から離れることなく、測量業務が可能だそう。余裕のある大きな船体と、電気推進による静粛性によって、居住性も従来の測量船と比べて向上しています。

 運航しながら水深1mの地形がわかる!?

 

© 乗りものニュース 提供 測量船「平洋」に搭載された自律型高機能観測装置(ASV)(深水千翔撮影)。

 観測機器は音波ビームと反射エコーのデータ水深を計測するマルチビーム測深機や、海流の流れの強さを計測し、データ化する多層音波流速計などを装備しています。

 マルチビーム測深機は海底に向けて広角に音波を出し、音波の往復時間と水中での音の速度から水深を計測する機器です。船の航跡に沿って、最大約11000mの深さの海底地形を明らかにすることができます。

 ほかにも「平洋」の特徴として挙げられるのが、無人観測機器を積んでいる点です。自動で海底近くまで潜航していき、精密な海底地形データを取得する自律型潜水調査機器(AUV)や、海底火山など人の立ち入りが危険な海域で水上から調査を行う自律型高機能観測装置(ASV)、そして船上から遠隔操作し、海底の撮影を行う遠隔操作水中機器(ROV)を装備しました。

 なお、2番船「光洋」は底質などの採取や地殻構造の調査に特化しています。船上には大容量で超高圧の空気を海中で放出し地下深部まで伝わる音波を発生させるエアガンと、その反射波を受診するストリーマーケーブルとエアガンで構成された音波探査装置を搭載。ほかにも海底から堆積物を採取する採泥器として、サンプリングコアラやロックサンプラーも搭載しています。

 その「任務」とは 中韓への警戒が背景に

  「平洋」と「光洋」の建造が決まった背景には、2012(平成24)年に中国と韓国が、日本側の排他的経済水域(EEZ)と接する中間線を越え、沖縄トラフまで大陸棚を延長するよう大陸棚限界委員会(CLCS)に申請したということがあげられます。

 こうした動きを受けて日本は、CLCSに対し「審査入りに必要となる事前の同意を与えていない」と説明。大陸棚延長の申請を検討しないよう求めた結果、同委員会は申請の審査順が来るまで、審査を行うか否かの判断を延期しました。

 一方で中韓両国は相次いで新造測量船を整備し、海洋調査体制の強化を図っていることから、日本としても科学的な調査データの収集・整備が必要となっていました。

 

© 乗りものニュース 提供 測量船「平洋」のブリッジ周りの操船コンソール(深水千翔撮影)。

 日本政府は2016(平成28)年に決定した「海上保安体制強化に関する方針」のなかで「海洋調査体制の強化」を明記。これに基づき海保では大型測量船「平洋」型2隻の新造だけでなく、既存の測量船「昭洋」と「拓洋」の高機能化、ビーチ350型測量機「あおばずく」の導入などを進めてきました。

 日本にとって海は外国との貿易を支える物流ルートであるとともに、新鮮な魚介藻類を得られる食糧確保の場です。ただ、領海と排他的経済水域(EEZ)と合わせた広さは領土面積の12倍に相当する約447万平方キロメートルもあり、海の恩恵を最大限に得るためには、海の情報を事細かに知る必要があります。

 海底地形調査が得意な「平洋」、海底地質調査が得意な「光洋」。それぞれが持つ最新鋭の機器を活用し、海洋権益の確保はもちろん海洋資源や防災といった、海にまつわる多くの調査を担うことを期待しています。


※軍事力の運用ばかりが「国防」ではありません。海洋資源のデータを独自に蓄積させて、活用できる環境を整えておくことも「国防」ですね。

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