2021年11月12日金曜日

NASAの情報戦略。

 NASAの最高情報責任者が語るデータ運用とセキュリティの最前線

Martin Giles

2021/11/08 06:00NASAの最高情報責任者が語るデータ運用とセキュリティの最前線 (msn.com)

© Forbes JAPAN

提供米航空宇宙局(NASA)は、宇宙ミッションから気候変動の研究まで幅広い任務を担っており、日々膨大な量のデータを扱っている。NASAの最高情報責任者(CIO)であるジェフリー・シートン(Jeffrey Seaton)は、宝の山であるこれらの情報から貴重な知見を導き出す上で、量子コンピュータの活用が鍵になると考えている。

これまでにない計算能力を実現する量子コンピュータは大きな話題となっているが、その本当のパワーが発揮されるのは、まだ当分先のことになりそうだ。フォーブスが先日開催したカンファレンス「CIO Next」に登壇したシートンは、NASAの業務に量子コンピュータを活用するのはいつ頃になるかと問われ、「恐らく5年以上先になるだろう」と答えた。

今年1月にNASACIOに就任したシートンは、もともとインターンとしてNASAの業務に参加して以来、30年にわたり、高パフォーマンスのコンピュータに携わってきた。

NASAは良質なデータを保有しているが、それらはサイロ化され、繋がりのないデータだった」とシートンは話す。彼のチームは、研究者がより多くの生データにアクセスできるようにすると同時に、それらのデータが悪者の手に渡らないようセキュリティの強化を図り、優れた機械学習などのアルゴリズムを提供している。

チーム間でデータのやり取りを行うために、シートンは民間企業と同じように、NASAのテクノロジーを組織内で共通化するか、部門ごとに最適なソフトウェアやハードウェアを導入するかを決めている。

NASA部門とは、米国内に9つある大規模な研究センターのことで、センターごとに研究分野は異なる。シートンは、バージニア州にあるLangley Research Centerで長年勤務し、NASAの中央ITチームから提供される技術サービスの品質を向上させるために、同センターのCTOを務めた。

現在、シートンは中央ITチームの責任者として数千人の従業員や請負業者を監督している。彼は、NASA全体のオペレーションに一貫性を持たせると同時に、職員たちによる中央ITチームに対する評価を把握するより良い方法を構築しようとしている。

サイバー攻撃の脅威

サイバー攻撃の脅威は、NASAでも拡大している。NASAは、宇宙や未来の航空機のデザインを研究しているため、国内外のハッカーにとって最大の攻撃目標の1つとなっている。NASAの技術チームによると、この1年で職員に対するフィッシング攻撃の件数が急増したという。

ハッカーたちは、リモートワークが増える中、職員の認証情報を盗んでNASAのシステムへの侵入を試みている。シートンと彼のチームにとっての最優先事項は、これまで通りサイバーディフェンスであり、彼らが定めたルールや基準をNASAの全職員に遵守させることだ。

シートンらは、AI(人工知能)を用いたセキュリティソフトを導入し、疑わしいメールをブロックしたり、ソフトウェアの脆弱性を修正するパッチを定期的にアップデートしている。他にも、NASA職員たちがハッカーに騙されないよう、教育活動も行っている。

「最高レベルのテクノロジーがあっても、人間による判断ミスが致命的な事態につながる」とシートンは述べた。

拡大するサイバー攻撃の脅威への対応や、ミッションクリティカルなソフトウェアの信頼性を確保することへのプレッシャーは増しているが、シートンは、それを前向きに受け止めている。

10年前には、多くのメディアがテクノロジーの利便性が向上することで、CIOの存在は不要になると書いていたとシートンはカンファレンスで述べた。彼によると、当時のテック分野のリーダーたちは基礎的なことに専念し、先進的なプロジェクトに十分取り組んでいなかったという。

それ以来、世界は大きく変わり、ITチームにとっては、自社を大きく変革するミッションに携われるチャンスが増えた。「今は、CIOにとって最高にエキサイティングな時代だ」とシートンは述べた。


量子コンピュータの開発と実用化でも「日米欧vs共産中国」の構図ができている。

新たな通信技術は我が国で新しく開発されました。今後アメリカにも売り込まれることになるのか?

KDDI総研ら、世界最速の暗号アルゴリズム開発 6G時代見据え

202111/9() 12:45配信KDDI総研ら、世界最速の暗号アルゴリズム開発 6G時代見据え(ITmedia NEWS) - Yahoo!ニュース

総合研究所と兵庫県立大学は2021119日、高速大容量通信を実現するBeyond 5G6G通信に対応できる処理速度をもった暗号アルゴリズム「Rocca」を開発したと発表した。処理速度は138Gbpsで世界最速としている。

 Roccaの鍵の長さは256ビット。認証機能を統合し、データが改ざんされていないことを保証できる「認証付き暗号」にした。KDDIによればRoccaの処理速度は米国標準の暗号アルゴリズム「AES」と比較して4.5倍、256ビットの鍵長に対応した認証付き暗号アルゴリズムとして初めて100Gbpsを超えたという。  KDDIによると、Beyond 5G6G通信は100Gbpsを超える通信速度の実現に向けて研究が進められているという。RoccaBeyond 5G6G通信の速度を損なわないよう、100Gbps以上の処理速度がありつつ、量子コンピュータでの解読に耐えられるような鍵の長さを持つ暗号として開発した。  今後はさらなる高速化を目指すとともに安全性を確認。実用化に向け、スマートフォン上などで性能評価を進める。









2021年11月5日金曜日

脱北者が語る北朝鮮の諜報工作。

 共産大学の教授時代に見聞きした北朝鮮スパイの対南工作の実情

金 興光

2021/10/31 06:00共産大学の教授時代に見聞きした北朝鮮スパイの対南工作の実情 (msn.com)

© JBpress 提供 北朝鮮派金正日総書記が統治した90年代に、韓国に対する工作員を劇的に増やした(写真:AP/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

「北朝鮮工作員が韓国の主な機関だけでなく、各界の市民団体にも潜入し、活発に活動していると申し上げることができます」

 30年間、北朝鮮諜報機関に身を置いた脱北者、金国成氏(キム・ククソン、仮名)氏が20211011日、英BBCのインタビューに登場し、韓国内で暗躍する北朝鮮スパイの実態と、北朝鮮による天安沈没事件などの詳細を証言した。とりわけ衝撃を与えたのが、大統領府に自身が工作員として潜入していたという事実である。

 BBCによれば、インタビューに応じた金国成氏は北朝鮮の諜報機関で活動し、対南工作や暗殺などの特殊任務を担当していた。北朝鮮を支配する金一族の統治資金を作るため、麻薬生産に従事した経験もあるという。その後、2014年に脱北し、現在は韓国・国家情報院傘下の機関で仕事をしているという話だ。

 BBCは「彼が暴露したすべての内容を検証することはできなかったが、彼の身元と、一部の主張が事実と一致するという点も確認した」と報じている。

 国家情報院は「脱北者の身の上および主張に対して確認する必要はない」としながらも、「(金国成氏がスパイとして)1990年代初頭、大統領府56年勤務したという内容は事実無根」と明言した。もっとも、仮に事実だったとしても、国家情報院が事実無根だと言わざるを得ないことは子供でも分かることだろう。

 北朝鮮の大学教授であった私から見ても、脱北者の金国成氏が明らかにした大統領府工作員潜入事件は、事実である可能性がいくらでもあると主張したい。その理由は3つある。

 まず、金国成氏が韓国に派遣された、いわゆる南派工作員の秘密を語ることのできる地位にいた可能性が高いという点だ。

脱北スパイの話が本当だと感じた理由

 金国成氏は、北朝鮮で自身が引き受けた業務の一つが、対南対応戦略の開発だったと語っている。脱北者が北朝鮮社会の一般的な実情について語る場合は、直接本人が目撃したことを述べることが大半だ。だが、体制内部の実態については、高い地位の人間でなければ知り得ないため、「誰々から聞いた」と伝聞になることが多い。

 それに対して、金国成氏の話は伝聞ではなく、実際に見聞きしたという話だ。彼が30年間にわたって北朝鮮諜報機関で仕事をしていたとすれば、スパイの派遣と管理を担当した中央党連絡所、あるいは中央党社会文化交流部、中央党調査部、統一戦線工作部などに所属していた可能性が高い。30年以上のスパイ関連業務を担当したベテランだからこそ語ることのできる内容だと感じた。

 次に、金国成氏の陳述が具体性を帯びていることだ。

 金国成氏は「私が直接スパイを送った」と語る一方、「1990年代初め、南派工作員が大統領府で56年間勤めた後、無事に北朝鮮に帰国した事例もある」と述べた。大統領府にスパイを直接派遣し、指揮したという話は、大半の脱北者が「重要な情報」と囁く内容とは明らかに違う。

 90年代であれば、盧泰愚元大統領、金泳三元大統領の時代だが、この時代は北朝鮮が対南赤化統一政策を最も積極的に推進した時期だ。金正日総書記は南派工作員を指揮する中央党連絡部を拡張し、南派工作員の数を劇的に増やしたため、この時期に大統領府に工作員が潜入したという金国成氏の話は信憑性が高い。

 そして、私の個人的経験からも、北朝鮮工作員が大統領府に潜入した可能性は十分にあると主張できる。

 私の経験とは、北朝鮮の共産大学の教授だった時、工作員を家族に持つ同僚の教授や学生たちから、韓国内へのスパイ派遣に関する話を数多く聞いたことを指す。共産大学とは、北朝鮮の党や行政機関、勤労団体の幹部を養成および再教育する、朝鮮労働党の幹部養成機関だ。

 共産大学には多様な学科が開設されたが、その中には前述した「6グァデサン(韓国に派遣された家族を管理する党の専門担当部署)」に対する教育、南朝鮮任命幹部教育班、さらに金日成主席や金正恩総書記の身辺警護をする護衛部隊「974軍部隊」の除隊軍人を再教育する班もあった。

 その他にも大学には、除隊軍官再教育班もあり、偵察局をはじめ北朝鮮軍の主な部隊を除隊した将校に対する特別教育を実施していた。

 そういった中で様々な話を聞くことによって、私は地位の高い幹部でも知らない党、軍、行政の主な部署の内部の実態と、特に南朝鮮に派遣したスパイの関連情報をある程度知ることができたのだ。

 今でも思い出すのは、南への派遣工作業務と関連した情報を知っている多くの学生たちが揃って、「南朝鮮には北朝鮮のスパイが電信柱の数よりも多く、高い地位層や大統領がいる大統領府にも目玉(スパイのこと)が潜入している」と話していたことだ。

 たまたま聞いた話ではなく、一人二人ならまだしも、別の時期、別の経歴の学生たちが電信柱の話だけは必ず同じ内容を口にするので、大きな衝撃を受けた。彼らの話が事実ならば、電信柱並みに多い工作員がどうして労働者や農業従事者にだけ潜伏していると言えるだろうか。

 その後、韓国で暮らしてみて、南に送り込まれた工作員はかなり多いだろうと確信を持つようになった。

 そのような確信を持つことになったのは、南に送り込まれた工作員が韓国に定住し、偽装工作として潜入した組織や機関で昇進しているのを目の当たりにしたからだ。韓国には、能力の高い工作員が北朝鮮寄りのプロパガンダを流す親北活動に従事できる条件と環境が揃っていると感じた。

 もちろん、韓国の中央情報部や安全企画部が盛んに毒を盛った時期は、北朝鮮工作員が潜入したり、韓国内の協力者や情報元を確保したりというような、スパイ網を拡張する活動は非常に骨を折ったようである。

© JBpress 提供 北朝鮮の工作員は韓国だけでなく日本にも潜入していた。写真は北朝鮮の工作員として知られる辛光洙。横田めぐみさんなど複数の日本人を拉致した(写真:AP/アフロ)

韓国が北朝鮮のスパイ天国になった要因

 ここで、私なりに考えた、韓国に対する北朝鮮のスパイ派遣と、その活動に十分な条件というものを、いくつか提示してみようと思う。

 まず、韓国の国家保安法が有名無実になってしまったことが挙げられる。次に、スパイの基準が曖昧になったこと、さらに防諜機関がスパイを捕らえても起訴し、裁判にまで至らないケースが多々あることもある。最後に、大統領府から国民に至るまで、親北朝鮮の感情が深く深く根を下していることである。

 今日まで、北朝鮮から南に送り込まれたスパイの首を締め、国家安全保障の規律を生み出すことにつながった国家保安法と国家情報員は、今では存在しているかどうかも分からない状況だ。

 私は、2004年に脱北して韓国に来たが、その時はまだスパイの申告と、それ関連した案内文をあちらこちらで見た。住民がスパイを申告する文化も生きていた。だが、いつからかスパイと親北朝鮮関係者の区別がなくなってしまった。

 メディアは北朝鮮の首謀者を敬称付きで呼び、大韓民国の体制を破壊する諜報活動を実施し、逮捕・服役した南派工作員を非転向長期囚ともてはやしている。スパイ事件に関わり処罰を受けた犯罪者が、国会議員はもちろん、大統領府にまでダイレクトにつながっているこの状況には開いた口が塞がらない。

韓国に生息する北朝鮮スパイのタイプ

 韓国には、北朝鮮の息がかかった様々なスパイがいる。

・日本の植民地支配から解放された時に北朝鮮の指令を受けて南へ派遣されたスパイ

・朝鮮戦争時に北朝鮮の政治工作通りに南下し、朝鮮労働党の指示により韓国に定着したスパイ

・智異山パルチザンなどに関連したスパイ

・主体思想に心酔したあげく、北朝鮮工作員とともに平壌にまで行き、隠密教育を受け、正体を隠している韓国の民主化闘士

・欧州で大学に通っていたが、高額の学費を出せなくなり、北朝鮮の金日成奨学金を受けて大学を卒業した後、韓国の指導層にまでのし上がったスパイ

・北朝鮮に訪問した際に北朝鮮の美人局や賄賂に惑わされ諜報活動をするようになった主要人物

・北朝鮮と事業をしようと海外の北朝鮮大使館を探して通ううちにスパイに転落した者

 これだけではない。最近は、スパイを捕らえることすら、夢のまた夢のように大変だ。スパイを捕まえる国家情報院要員がスパイを捕らえようとしたところ、適法性を問われ、逆に監獄へ送られたケースも一度や二度ではない。また、せっかくスパイを捕らえても、親北朝鮮の弁護団が弁護し、無嫌疑で処理されてしまうことが日常茶飯事だ。

 このような事実を見れば、大統領府にスパイは絶対に潜入できないという判断は韓国の実際の状況を歪曲し、大黒柱から腐り果てようとしている大韓民国の安全保障に対する不安に目を閉じてしまう、近視眼的な考えだという他にない。

動画

盗聴器をしかける北の工作員

北朝鮮の対南工作

※北朝鮮にとっては韓国の屈服と朝鮮半島の赤化統一は、宿願といっていいかもしれません。


2021年8月20日金曜日

最も危険な教科書 陸軍中野学校の新史料

  第二次大戦の終戦時にすべて焼却処分されたと思われていた陸軍中野学校の教材資料一式が、新潟県の旧家に保存されていたことがわかりました。

 史料の所有者は、陸軍中野学校8丙の卒業生だった齋藤津平氏(陸軍参謀本部軍事調査部・中野学校83班)。史料を発見した時の経緯は以下の通り。

「久しぶりに蔵の中を整理したんです。机の上に忘れていた布製のリュックサックがありまして中のものを取り出してみると中野時代の教材が入っていたんです。どうして蔵の中にあったのか、その時は思い出せなかったのですが、中に日記(修養禄と表題が書かれている)もありまして、読んでみると理由がわかったんです。リュックサックを送ってくれたのは、親しくしていた同期の由良見習士官で、彼は私の私物を実家に送るときに教材を間違えて入れてしまったんです。後に未回収が問題になったこともないので私は忘れていました。」

齋藤津平氏所蔵の陸軍中野学校テキスト資料


『修養録』

194529日のページ

《晴れ・「風と共に去りぬ」を見学す。宣伝映画としては当を得たものなり。然して、映画内容よりアメリカ人の気質を知りえたることは幸いなり。南部アメリカ人の野性的にして闘争的なスピレット(原文ママ)は軽視すべからず。些細な情報源からも敵の国民性を観察すること必要なり。映画よりかかる教訓を得たるは可なり。》

 資料はノートの修養録のほかに、粗末なワラ版紙にガリ版と和文タイプで印刷された教材が保存されており、それらがぼろぼろに風化することなく、判読できる状態で今日まで残されていた。

津平氏が蔵から持ち出してきた資料を列挙すると、以下の通り。(教材の表題)

『国体学』、『謀略』、『宣伝』、『諜報』、『偵謀』、『人に対する薬物致死量調』、『伝染病と灸法』、『重慶政権の政治』、『経済動向観察』、『総合演習計画書』(演習目標を示す手製の地図、同じ地図が20枚綴られる)など。(積み上げると10cmの厚さ)

 宣伝教材としては、例えば謀略放送を企画するときは、ゲーテの戯曲ファウストに登場するメフィストの気持ちを真似る方法を解説している。

 《謀略放送とは、親しい友人の間に水を差して、互いに疑惑の目をもって見るように導き、遂に闘争をさせるということである。まず敵国民なり、前線兵士なりに同情していう。そこで「メフィストフエレス」の様に一言耳に囁き、それによって為政者なり、将校なり疑わせ、聞く者の心に偽みを起こさせるのである。(後略)》

 メフィストの心理を謀略放送に用いるなど、なかなか斬新なアイディアを研究している。女性の口説き文句としても通用するであろう。

 他にも謀略の本義や薬物の致死量を解説した教材もあり、当時の中野学校の教育内容がレベルの高いものであったことが、これらの資料によって裏付けられた。

『謀略の本義』

《国家間の闘争は、武力に依るのみならず、政治、経済、思想等いわゆる総力戦の全部門にわたり、行はるるものにして、従って平戦時とも、軍事、経済、思想等国家対外施策全部門にわたり、用いらる(後略)》

 内容は現代の情報戦にも通じる謀略の本質を解いており、中野学校が“見えない戦争(UnseenWar)”を実戦向きに教育していたかを示している。

 津平氏ら8丙の学生は、昭和20715日に移転先の富岡校を卒業しているが、8丙の教育機関は、中野時代と富岡時代をあわせて7ケ月間であった。ただ終戦が近くなると戦局が切迫してきたため、より実戦を想定した演習や訓練が主体となった。

「英語班、支那班、ロシア班の三班があった中で、私は支那班に席がありました。富岡時代は諜報員としての教育よりも、図上演習による遊撃戦、米軍の本土上陸を想定したゲリラ戦のシュミレーションを各地でやっていました。それは群馬の高崎であったり、埼玉の児玉、あるいは本庄といった町でした。当時の米軍との決戦場は、関東平野と南九州が想定されていました。」(津平氏談)

ゲリラ戦の訓練をうけた元兵士

陸軍中野学校の疎開先




2021年7月5日月曜日

 米IT企業にサイバー攻撃=世界に被害拡大の恐れ

2021/07/04 18:12米IT企業にサイバー攻撃=世界に被害拡大の恐れ (msn.com)

【ワシントン時事】米IT企業がサイバー攻撃を受け、同社のソフトを利用する企業に身代金が要求される被害が広がっていることが3日までに分かった。影響は米国外でも確認されており、世界各地に拡大する恐れがある。バイデン大統領は3日、関係当局に調査を指示した。

 標的となったのは、ITシステム管理ソフトを提供するカセヤ。ハッカーは2日までに同社のシステムに侵入し、サーバーを通じて顧客企業のデータを暗号化して身代金を要求する「ランサムウエア」を仕組んだ。ロイター通信は、4日の米独立記念日に伴う連休を狙ったサイバー攻撃だった可能性があるという専門家の見解を報じた。

 カセヤの顧客企業はさらに幅広い企業のデータ管理サービスを提供しているため、被害が連鎖的に広がる恐れがある。スウェーデンのスーパー大手「コープ」は、レジのシステムに障害が発生、3日までに約800店舗が一時閉鎖に追い込まれた。

 カセヤは、顧客企業にサーバーを停止するよう通知し、3日時点で「被害は極めて少数だと思われる」としているが、AFP通信は1000社以上のデータが暗号化されたと伝えている。 


ランサムウェア感染の様子。
ランサムウェア感染画面。
脅威と対処法

データを暗号化して、いわば人質にとるわけですが、身代金を支払ったとしても暗号化されたファイルは元に戻るのかな?
そこまでしてくれるなら、お金をいただけるなら確実にファイルの安全は保障します、お戻しします、という確約がほしいな・・・そういう問題じゃないか!
病院や公的機関については、ぜひこういう攻撃はやめてほしいものだ。人間のやることじゃないな。







2021年7月3日土曜日

イギリス国際シンクタンク報告書 「日本のサイバー戦能力は最下層レベル」・・・かなりヤバイ評価。

 日本、北朝鮮と同じ最下層に「サイバー能力」情報共有・防衛で見劣り

読売新聞

2021/06/30 14:49日本、北朝鮮と同じ最下層に…「サイバー能力」情報共有・防衛で見劣り (msn.com)

【ロンドン=池田慶太】英国際戦略研究所(IISS)は20216月28日、主要国のサイバー能力を総合評価した報告書を発表した。国別では米国をトップとする一方、日本は民間との情報共有や、防衛能力で見劣りするとみなされ、最も低いグループに位置付けられた。

 日米欧や中露など15か国を、国家戦略やサイバー分野のインテリジェンス(情報)、国際的リーダーシップなど7項目で評価した。

 最も能力が高い第1グループは米国のみ。中国による欧米の先端技術獲得を同盟国と共に阻止し、今後10年は優位を保つと分析した。

 英仏などが並ぶ第2グループでは、中露がやや勝ると評価。特に中国については、「唯一、米国の仲間入りをする可能性がある」と指摘した。最下層には日本のほか、北朝鮮、ベトナム、インドなどが入った。


さらに詳しくみていきましょう。


日本のサイバー能力は「脆弱」=英シンクタンクが報告書

2021/06/30 12:34日本のサイバー能力は「脆弱」=英シンクタンクが報告書 (msn.com)

【ロンドン時事】英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」が公表した15カ国のサイバー能力を分析した報告書で、日本は3段階で最低の「第3級」に分類された。「いくつかの分野では強みがあるが、他の分野では大きな脆弱(ぜいじゃく)性がある」という。日本のデジタル分野の出遅れが響いた。

 報告書は20216月28日付。最高の「第1級」に分類されたのは米国のみ。「第2級」はオーストラリア、中国、フランス、ロシア、英国など。「第3級」は日本のほか、インドやインドネシア、イラン、北朝鮮などだった。

 報告書は米英など英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」の同盟国としてフランス、イスラエル、日本の3カ国を挙げた。ただ、フランスとイスラエルを「サイバー能力の高いパートナー」と位置付けたのに対し、日本は「同じく同盟国だが、強力な経済力にもかかわらず、サイバー空間の安全保障面では能力が低い」と指摘した。

 日本に関してはさらに、「多くの企業が防衛力強化のためのコストを負担しようとしない」などと問題点も列挙した。

 報告書はそれぞれの国の能力を「戦略とドクトリン」「サイバー空間における世界的リーダーシップ」など七つの項目で分析した。その上で、「少なくとも今後10年は米国の優位が続く可能性が高い」とする一方、中国が「第1級の米国に加わる軌道に乗っている」と結論付けた。 

ホワイトハッカー育成トレセン(サイバー演習)

我が国のサイバー戦争への対策は、まだまだ緒についたばかりというところか?
予算面でのとりくみに十分さが感じられないのか? 国家的な規模のサイバーコマンドが正規軍として存在しないからなのか? 民間での人材育成が遅れているからなのか?

今や先進国、経済力、技術力の高い国への「攻撃」は、軍事攻撃ではありません。情報、経済において仮想敵国の中枢に切り込む、そして骨抜きにする戦争が主流です。そして当事国はその攻撃を否定するという「ステルス攻撃」の時代といえるでしょう。
まさに宣戦布告なき仮想敵国の政治や経済の中枢を狙う「機略戦」の時代といえるかもしれません。
我が国もエシュロンの中核を担うべき国際的な立場を実現したいのなら、情報戦大国となるべく体制を整えなくてはならないはずです。

太平洋諸国との国際平和関係を深めることが、我が国のプレゼンスを強化すること、自衛隊ばかりが国防の最前線ではありませんね。
太平洋は今や日米VS共産中国との情報戦、外交戦の熾烈な戦場といえるでしょう。

島嶼国めぐり対中暗闘 インフラ整備阻止、情報戦がカギ

2021/07/02 19:56島嶼国めぐり対中暗闘 インフラ整備阻止、情報戦がカギ (msn.com)

菅義偉(すが・よしひで)首相は20217月2日の太平洋・島サミットで、太平洋島嶼国に対するインフラ整備支援に向けた意欲を改めて強調した。政府は表向き中国に対抗する意図を否定するが、太平洋島嶼国への進出を強める中国系企業に対する警戒感を強めている。特に安全保障に直結するインフラ分野では、米国などと連携して中国の影響力をそぎたい考えで、島サミットはこうした取り組みを進めるうえで重要な会議となった。

「特定の国を念頭においての発言ではない」

会合終了後、坂井学官房副長官は記者団に、首相が「権威主義との競争」に言及したことをこう説明した。資源が乏しい太平洋島嶼国の多くが対中依存を強めており、中国に対する敵対的なイメージを回避したい島嶼国への配慮がにじむ。

だが、日本政府は水面下で中国の影響力排除を狙った動きを進めている。ミクロネシア3カ国での海底通信ケーブル敷設事業をめぐる中国企業の進出に「待った」をかけたのも、その一つだった。

昨年、島嶼国のミクロネシア連邦、ナウル、キリバスの3カ国では、世界銀行とアジア開発銀行(ADB)が主導して海底通信ケーブルの敷設事業が計画されていた。日本とフランス、中国の企業が入札に参加したが、中国企業が最低価格を提示したため、事業主体となる可能性が高かった。

中国の企業は米国が投資禁止対象としている通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の関連企業だった。通信ケーブルは陸上施設が標的となって情報流出の恐れがある。

「中国企業が主体になれば安全保障上の脅威になりかねない」。危機感を抱いた日本政府は水面下で米国に協力を求めた。計画では米領グアムで米国企業が敷設したケーブルと接続されることになっていたため、米政府はグアムでの接続に難色を示し、計画の仕切り直しにこぎつけた。

中国系企業は携帯電話事業や港湾整備をめぐっても太平洋島嶼国への進出を強めている。日米両政府などは事前に進出を阻むべく「情報戦」を展開しているが、政府高官は「それぞれに事情があるだけに日頃の関係強化が重要だ」と話す。日本政府としては島サミットで構築した信頼関係やネットワークも活用することで、島嶼国で繰り広げられる情報戦を制したい考えだ。(市岡豊大)

米中情報戦が本格化、日本はチャンス!?
何もしなければチャンスはただすぎていくだけ・・・尖閣諸島にしろ軍事力でなく、情報戦(プロパガンダ)と海洋警察力、漁業の産業力で領海、排他的経済水域の確保を!




2021年6月12日土曜日

ロシア当局による諜報活動

 このロシア大使館職員による機密情報漏洩事案については、記事を追いながらどういう内容の諜報活動であったか、みていきたいと思います。


軍事文献、不正入手の疑いで逮捕 「ロシア人スパイに提供」

20216/10() 20:10配信https://news.yahoo.co.jp/articles/6549b7da40fa7d49d57aec0f47e8ee6ef30fb64a

 在日ロシア通商代表部の職員に譲渡する目的で、データベースの利用規約に反して不正に軍事技術関連の文献を入手したとして、神奈川県警は2021610日までに、電子計算機使用詐欺の疑いで、元調査会社経営の無職宮坂和雄容疑者(70)=神奈川県座間市=を逮捕した。  

県警によると、宮坂容疑者は長年、技術文献の調査会社を経営しており「30年間で複数のロシア人スパイに文献を提供し、約1千万円を受け取った」と供述している。  逮捕容疑は通商代表部の40代の男性職員と共謀し、2019712月、文献を検索するデータベースにアクセスし、技術文献のコピー8点を入手した疑い。


ロシア側に軍事関連の文献提供「1000万円以上稼いだ」元調査会社経営の70歳逮捕

6/10() 22:17配信https://news.yahoo.co.jp/articles/24ed8da5d2ebef1ddb79c8dd53eb8f3e2f00faf9

在日ロシア通商代表部の職員に渡す目的で軍事技術関連などの文献を不正に入手したとして、神奈川県警は2021610日、同県座間市、無職の男(70)を電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕したと発表した。県警は9日、外務省を通じて、ロシア大使館に職員を出頭させるよう要請した。

 発表によると、男は2019年7~12月、利用目的を偽って国内のデータベースサービス会社に会員登録し、レーダーを用いた偵察能力向上や半導体の研究開発などに関する日本や米国の文献の複写8点を入手した疑い。

 調べに対し、同代表部の40歳代の男性職員に依頼され、文献を渡したと説明。「約30年間、複数のロシア人に軍事や科学関係の文献を提供し、1000万円以上を稼いだ」と供述している。県警幹部によると、長年、都内で技術文献の調査会社を経営していたという。

 利用されたデータベースサービスは「国内の個人」を会員登録の対象としている。県警は、ロシア側が自分たちの欲している情報や技術を悟らせないように、男を使った可能性もあるとみて調べる。

文献詐取容疑で70歳逮捕 「ロシア人に30年提供」

6/10() 20:33配信https://news.yahoo.co.jp/articles/cc7c016055b85f48f053ef2a1945ba2d08d1a8f9

 在日ロシア通商代表部の職員に渡す意図を隠して不正に文献を入手したとして、神奈川県警は同県座間市の無職、宮坂和雄容疑者(70)を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕し、2021610日発表した。  

宮阪容疑者は「約30年にわたって複数のロシア人に軍事、科学技術関係の資料を渡し、対価として1千万円以上を受け取った」と供述。県警は特別捜査本部を設置して捜査を続ける。  外事課によると、宮坂容疑者は2019712月、通商代表部の40代の男性職員と共謀し、本人に渡す目的を隠して、データベースサービス提供法人のシステムに会員登録し文献8点を入手した疑いがある。  

文献は半導体の研究開発にかかわる先端技術や無人戦闘車両についてのもので、米国のものも含まれていた。宮坂容疑者はこれらを職員に渡したと説明。県警は在日ロシア大使館に職員の出頭を要請した。  

県警によると、宮坂容疑者は以前、要望に応じて文献を調査する会社を経営していたという。県警は、宮坂容疑者が入手した文献に基づく技術がロシアで軍事転用された場合、安全保障環境や経済安全保障に悪影響を生じさせる恐れがあったとみている。  

ロシア大使館は朝日新聞の電話取材に対し、「コメントすることができない」と話した。(大宮慎次朗)朝日新聞社

軍事文献を不正入手 70歳男を逮捕、ロシアのスパイに渡したか

6/10() 21:57配信https://news.yahoo.co.jp/articles/113650cfcd4e2a004076191118f4a8cf1f58678b

 在日ロシア通商代表部の職員に渡すため軍事的文献を不正に入手したとして、70歳の男が逮捕されました。  

逮捕されたのは神奈川県座間市の無職・宮坂和雄容疑者(70)です。警察によりますと、宮坂容疑者はおととしから去年にかけて、在日ロシア通商代表部の男性職員(40代)に渡す目的を隠し、文献を検索できるデータベースから無人戦車や偵察用レーダーの文献8点を不正に入手した疑いがもたれています。  

不正入手した文献は男性職員に渡したということで、宮坂容疑者は取り調べに対し「30年にわたって文献を複数回渡して1000万以上稼いだ」「ロシアのスパイだとわかっていた」などと供述し、容疑を認めているということです。  

神奈川県警は、外務省を通じてロシア大使館に対し男性職員を出頭させるよう要請しています。(1021:14


ロシアスパイ事件のまとめ

軍事文献など不正入手 ロシア外交官に譲渡した疑いで無職逮捕

6/10() 20:37配信https://news.yahoo.co.jp/articles/c94517fd3050ba17ef83d84380a5626872f43fcf

 神奈川県警は2021610日、軍事関係の文献を不正に入手したとして、同県座間市立野台、無職、宮坂和雄容疑者(70)を電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕したと発表した。宮坂容疑者は30年以上にわたり、ロシアの外交官に軍事や科学技術に関する文献を譲渡し、報酬として1000万円以上を受け取っていた疑いが持たれている。県警はロシアによるスパイ事件とみて外事課に特別捜査本部を設置し、全容解明を進める。  

逮捕容疑は2019712月、40代の在日ロシア通商代表部の男性職員と共謀し、論文の複写や提供を行うデータベースサービス提供会社から、無人戦車やレーダーを用いた軍事偵察、半導体の研究開発を記した米国などの文献8点を、第三者に渡す意図を隠して会員登録し、不正に入手したとしている。容疑を認めているという。県警は9日、ロシア大使館に対し、男性職員の出頭を要請した。  

外事課によると、この男性職員は複数の日本人協力者と接触して情報収集していたとされる。宮坂容疑者は以前、技術文献の調査会社を経営していたことから、文献の入手や調査に精通していた。この男性職員以外にも複数のロシア人に文献を譲渡し、1回あたり10万~15万円の報酬を受け取っていたとみられている。【牧野大輔】


スパイの機密情報を渡すテクニック

ロシアの日本人スパイ 一瞬で手渡しする手法使用か

00:45 2021/06/11 15:36ロシアの日本人スパイ 一瞬で手渡しする手法使用か (msn.com)

「フラッシュコンタクト」と呼ばれるスパイの手法を使っていたとみられます。 神奈川県座間市の宮坂和雄容疑者(70)はおととし、在日ロシア通商代表部の40代の男性職員に譲り渡す目的を隠し、論文などの検索データベースから軍事技術に応用できる文献を入手した疑いで今月11日に送検されました。 その後の警察への取材で、宮坂容疑者が「ひとけのない場所で一瞬で文献と報酬の現金の受け渡しをしていた」と供述していることが分かりました。 周囲に気付かれないよう、すれ違った瞬間に情報を手渡す手法は、フラッシュコンタクトと呼ばれています。 受け渡し場所は主に都内で、ロシア側が毎回、指定していたとみられています。

この典型的?ともいえるスパイ事件のオチはなんともね・・・大丈夫か、この国は。


ロシアスパイと日本人の男性を不起訴処分 横浜地検

テレ朝news

2021/07/16 22:44ロシアスパイと日本人の男性を不起訴処分 横浜地検 (msn.com)

ロシア側に譲り渡す目的を隠して軍事関係などの文献を入手した疑いが持たれていた日本人の男性らについて、横浜地検は不起訴処分としました。

 神奈川県座間市の70歳の男性と在日ロシア通商代表部の42歳の男性職員はおととし、文献検索データベースから軍事技術に応用できる文献など8点を入手した疑いが持たれていました。

 横浜地検は2人について、今月16日付で不起訴処分としました。

 理由については明らかにしていませんが、起訴猶予とみられます。

 日本人の男性は警察の取り調べに「30年に渡ってロシアスパイに文献を渡し、1000万円以上稼いだ」と容疑を認めていました。

 一方、在日ロシア通商代表部の男性職員は警察の出頭要請を無視して先月12日に出国し、書類送検されていました。


ロシアによる諜報活動・動画編




※積極的に外国諜報員を摘発できる法律が必要なんじゃないのかな?
小泉進次郎氏あたりに国会に法案提出してもらったらどうかな?




2021年4月6日火曜日

次世代の量子通信暗号技術。

 将来のデジタル社会基盤を支える「東芝の量子暗号通信」

絶対に盗聴、解読できない暗号通信技術が実用化

将来のデジタル社会基盤を支える「東芝の量子暗号通信」 |日本経済新聞 電子版特集 (nikkei.co.jp)

ネットワークを通じて多種多様かつ大量の機密情報がやりとりされる今日、それらの情報をいかにして保護するかが大きな社会課題となっている。量子コンピューター技術の実用化をはじめとし、デジタル技術のめざましい発展により、現在の複雑な暗号が瞬時に解読されてしまうのも時間の問題だと言われているからだ。この社会課題を解決し、将来にわたり通信の安全性を担保できる新しい暗号通信技術が実用化された。量子力学を応用した「量子暗号」だ。東芝はこの技術の研究開発に20年以上前から取り組み、ついに実用化にこぎ着けた。量子暗号通信は、情報の安全の確保という社会課題の解決にどう貢献するのだろうか。

ネットワーク社会に迫る安全性の課題

インターネットの普及が始まって四半世紀が経過した。この間、通信や端末の技術革新が急速に進み、ネットワークはもはや私たちの生活やビジネスになくてはならない重要な社会基盤となっている。しかし、高度にデジタル化した現代社会において大きな課題となっているのが、ネットワークを流れる通信の安全性をいかに守るかということである。

ネットワークでは個人・企業・国家に関するあらゆる機密情報がやりとりされている。そのなかには金銭的価値を持つ情報も数多く含まれており、そうした情報を狙った悪意ある攻撃者による盗聴・窃取・改ざんの脅威に常にさらされているのが実状だ。このような脅威に対抗するため、これまでは情報を暗号化する技術が使われてきた。たとえネットワークの経路途中で通信内容が漏れたとしても、暗号を解読できなければ情報そのものは漏えいしないという発想である。

ところがコンピューティング技術の発展により、従来の暗号技術は今後リスクにさらされる可能性がある。現在のコンピューターとはまったく異なる原理で計算処理を行う「量子コンピューター」が登場してくると、解読のための計算に数千~数万年かかると言われていた暗号であっても、瞬時に解読されてしまうという可能性があることがわかってきた。このまま手を打たなければ、ネットワークに求められる「情報を安全にやりとりする」という基本機能が果たせなくなり、ひいてはネットワークに頼った現代社会の崩壊を招くおそれもある。

そこで注目されているのが、量子コンピューターにも応用されている「量子力学」の理論に基づいた暗号技術だ。東芝もいちはやく量子暗号の研究開発に着手し、実用化に向けて動き出している。

20年以上にわたり「量子」を研究

東芝をはじめ、世界の企業がこぞって開発を急ぐ量子の技術。そもそも量子とは何なのか。量子コンピューターや量子暗号通信に量子力学の理論を応用するとは、どういうことなのか。量子暗号通信の事業化プロジェクトで責任者を務める村井信哉氏は次のように説明する。

「量子とは粒子の両方の性質を併せ持つ、小さな物質やエネルギーのことです。原子を構成する陽子や電子、光の粒子である光子などが代表的な量子です。この量子の微視的な物理現象を表すのが量子力学であり、重ね合わせや量子もつれといった量子力学の現象を計算に利用して処理速度を飛躍的に高めたのが、量子コンピューターです。一方、東芝が取り組んだ量子暗号通信は、暗号鍵の通信に量子力学の原理を利用した技術です。どちらも量子力学の原理を応用したものですが、応用先が異なっているわけです」   東芝が量子暗号通信に関する研究開発に着手したのは20年以上も前のことだという。

「東芝は1991年に英国ケンブリッジ研究所を設立し、さまざまな技術の基礎研究に取り組んでいます。そうした研究テーマの一つとして、2000年頃に始めたのが量子でした。基礎研究の結果、応用先として注目したのが量子暗号通信です。およそ10年にわたって基本的な原理についての研究を進め、10年頃からは日本の通信技術研究部門と共同で量子暗号通信の実用化に向けた研究開発を推進してきました」(村井氏)

 東芝の技術的優位性は「高速」「安定性」

 量子暗号通信は、従来の暗号通信とどのような違いがあるのか。従来の暗号通信は情報を暗号化して読めなくしたうえで、暗号を解くための鍵を相手に送るという仕組みになっている。暗号も鍵も非常に複雑で、解読に膨大な時間を要することが安全性の担保につながっている。だが、上述したように量子コンピューターを使えば、簡単に解読されてしまうおそれがあるのだ。

「量子暗号通信はこの暗号鍵の受け渡しに量子力学を応用し、どんなに計算処理が高速なコンピューターを使っても絶対に解読できないことが基本機能です。ネットワークを流れる通信は光ファイバーなどを波として伝播しますが、量子暗号通信では非常に微弱な光の粒 ―― 光子に鍵の情報を乗せて通信します。光子はネットワークの経路途中で搾取されたとしても、その粒が取られて減少するので必ず気づきます。また意図的に同じ光子の粒を作成することもできません。これらが量子力学のふるまいを応用した量子暗号通信の原理であり、安全である根拠となります」(村井氏)

 ただし、量子暗号通信には条件もある。ネットワーク経路の途中で光子の増幅やコピーはできないので、長距離の伝送が難しいということだ。「量子暗号通信の原理自体は一般的なものなので、他社の同等製品との違いはありません。しかし東芝の量子暗号通信は、光子のノイズ除去や並列計算処理により高速化を実現、光子を安定させて最大120kmの長距離配送ができるなど、これまでの研究開発の積み重ねによる技術的な優位性があります。当社による資料比較になりますが、鍵配送速度や通信距離において当社製品は他社製品を大きく上回っており、まさに現時点で世界最高性能と自負しています。また専用の光ファイバー回線を用意しなくても、既設の光ファイバーに量子暗号通信を多重化できるところも大きな特長です」(村井氏)

図1:従来の暗号通信と「量子暗号通信」の違い

図2:量子暗号通信の原理


実証実験の成果を受けて実用化が始まる

 東芝が量子暗号通信システム製品の提供を開始したのは2010月である。ここに至るまでに数多くの実証実験が繰り返し行われてきた。11年には情報通信研究機構(NICT)が運営する「東京QKD(量子鍵配送)ネットワーク」を利用した最初の実証実験が行われ、20年には宮城県仙台市の東芝ライフサイエンス解析センターと東北大学東北メディカル・メガバンク機構を結び、数百ギガバイトを超えるデータ量のゲノム配列データを量子暗号通信で伝送する実証実験が行われている。また海外でも複数の実証実験が実施されており、米国・ニューヨーク市のウォールストリート金融市場とニュージャージー州のバックオフィス拠点を結ぶQuantum Xchange社の「Phio QKDネットワーク」などでその効果が確認されている。

 量子暗号通信ビジネスを担当する江島克郎氏によると、量子暗号通信システム製品に関する引き合いは官公庁・金融機関・医療機関など機密性の高い通信を必要とする分野を中心に幅広い領域の企業から寄せられているという。

 「量子暗号通信システム製品は、盗聴されるとその損失や被害額が極めて大きい情報、あるいは秘匿価値の極めて高い情報を安全に通信するための用途を中心に商談を進めています。例えば国家安全保障にかかわる政府機関の機密情報、金融機関における高額かつ高度な金融取引(トレーディング)情報、医療機関におけるゲノム情報、臨床データ、製薬開発など秘匿性の高い情報などが最初の応用先になると考えています」

 このほか製造業でも、製品開発・生産情報など付加価値の高い知的財産(IP)をやりとりする用途などを想定して実証実験が一部始まっているそうだ。

図4:仙台市で行われたゲノム配列データ転送の実証実験


普及に向けてさらなる改善に取り組む

 いよいよ実用化に向けて動き出している東芝の量子暗号通信だが、同社では今後、さらなる改善に取り組む予定だという。

 「研究開発を現在進めているのが、通信可能な距離を倍にする当社の独自技術『ツインフィールドQKD』です。まずはこの技術をしっかりと実用化していくことが重要だと考えています。また光ファイバーを敷設できない拠点間を接続するために衛星を使った量子鍵配送を可能にしたり、さまざまなユーザーが容易に利用できるソフトウェアプラットフォームを用意したりといった取り組みをしています。とくにプラットフォームづくりには、光ファイバー回線を提供する通信事業者などパートナー各社との協業を進めています。前述したとおり、機密性の高い情報を取り扱う医療分野、政府機関、金融機関向けのネットワークセキュリティへの適用も期待されています。英国の研究機関との実例としては、量子暗号を使用して離れた生産施設間で機密データを安全に転送することにも成功しています。インダストリーIoTを支えるインフラとしての可能性を期待されています。今後は国内外で量子暗号鍵配送ネットワークを構築し、金融機関を中心とした顧客向け量子鍵配送サービスを25年度までに本格的に開始する予定です。東芝の予測では量子鍵配送サービス市場は35年度に全世界で約200億米ドル(約2.1兆円)と見ています。東芝は30年度には約30億ドル(約3150億円)の売上高を目指し、量子暗号通信業界のリーディングカンパニーを目指します」(江島氏)

 将来にわたって安全な通信を確保する ―― この社会課題の解決に取り組んだ東芝の量子暗号通信は、これから着実に普及していくことだろう。

 

※絶対に、といってしまって大丈夫なんでしょうか?