2021年2月20日土曜日

福岡ソフトバンクホークスの情報戦略 ~プロ野球でのデータ解析~

  令和に入ってからの日本シリーズにおいてセントラルリーグの読売ジャイアンツ相手に4連勝を二度、2年連続ストレートで日本一を達成している目下のところ最強球団の福岡ソフトバンクホークス。工藤公康監督の采配もさることながら、それだけではこの快挙は成し遂げられないことでしょう。観戦していて、特に思うのは、先発投手の調子が芳しくなくても打線がワンチャンスを逃さずに効果的に攻撃し、得点をあげて逃げ切る、対戦チームのことが深く分析していないとなかなか難しい試合運びをしているな、と思いました。

 プロ野球のレベルも日進月歩ですが、現代的な野球の在り方を実践しているホークスの強さの源はこれんだな、という記事をみつけました。

 その根本にあるのは、やはりデータの収集と分析。そのクオリティがどれだけの正確性に裏付けられているかですね。昨今あらゆる競技でデータ収集と解析の重要性がいわれますが、プロ野球も例外ではなかったということです。

 これは采配の妙とあわせて観戦する側も、どっちのチームが勝った負けたではなく、野球のもつ知的なかけひき、インテリジェンスの妙なども楽しめるようにグレードアップしていかないとなりませんな。人生の戦略、仕事の進め方にも参考になるかもしれません。

記事

最強ソフトバンクにある「研究開発」部門って何だ?

その仕事内容は

西日本スポーツ

2021/02/19 12:09最強ソフトバンクにある「研究開発」部門って何だ? その仕事内容は (msn.com)

キドコロ研究開発中?

担当スタッフは「城所氏」球団OB城所龍磨氏と意外な縁も

5年連続日本一を目指す福岡ソフトバンクの宮崎春季キャンプは実戦段階に入った。ポジション争いが本格化する一方で「RD担当」が奮闘している。RDとはリサーチ&ディベロップメントで、研究開発のこと。メーカーやITを中心に多くの分野に広がりつつあるが、プロ野球チームでは? 今キャンプで行われている「RD」の取り組みとは。実態に迫った。(取材・構成=森 淳)

◇ ◇ ◇

RD」には今キャンプ第3クールから各日数人ずつが参加している。室内練習場の一角。野手が手にしたバットのグリップには「ブラストモーション」と呼ばれるスイングの速度や軌道を測る機器が装着されている。上半身の拘束具のような「Kベスト」は、動作の連動性や効率を測る。別の日には投手がセンサーを装着してブルペン投球。モーションキャプチャ「オプティトラック」で動作を解析する。フィードバックは後日、ビデオ会議アプリなどを使って行われる。

これらの取り組みを任されているのが城所収二RD担当(35)だ。元高校球児でスポーツ科学博士。バットとボールの衝突運動を研究してきた。球団に入る前は国立スポーツ科学センターで主に卓球を担当。バイオメカニクスの先端を担ってきた。球団OBで元外野手の城所龍磨氏(現球団職員)と親戚関係はないが「出身が隣の街、同学年ですし私は存じていました。入団当初、名字で知ってもらいやすかった」と笑う。

RD担当は昨年、球団のチーム戦略室に置かれた。契機は2019年の秋キャンプ。米大リーグの選手らが利用し、日本でも浸透しつつあった米トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」のスタッフを招き、選手の動作解析を行った。

首脳陣や選手の反応も踏まえ、導入にあたって球団は考えた。チーム戦略室の須山晃次室長(43)は「彼らとの提携も一つだが、球団内で人材を抱えてやれるのでは?という発想になった。バイオメカニクス、データサイエンスなどを研究し、活動している人をリクルートした」と言う。

測定機器や分析システムが増え、採れるデータも増えたが、的確に読み取り、活用できなければ効果は乏しい。選手や首脳陣に、どんなデータを提供するか。昨年、福岡県筑後市のファーム施設で始動した城所担当も「かなり考えました。イメージできるものに重きを置きました」と言う。

専門的な数値なら、身近な数字に置き換える必要がある。必要に応じてグラフなどビジュアル化した。その仕事は発掘や翻訳のようでもある。データにハイスピードカメラの映像も組み合わせ、見た目に分かりやすくもした。最初の12カ月はフィードバックする中身の吟味に費やした。

スタッフは今年1人増えて2人になったが、それでもフィードバックに数週間が必要。時短が課題で、お家芸の人工知能(AI)活用も今後のテーマだ。また、測定はあくまでも練習のみ。選手に機器を着けて試合に出てもらうわけにもいかないが、近年は映像を使ってAIで動作解析する技術も発達してきた。城所氏も「近い将来(機器を装着しての測定と)精度の遜色ないAIアルゴリズム(計算手法)が出てくるのでは」と注視を続ける。

引き続き筑後を活動のベースに、今年は選手を定期的に測定する。並行してペイペイドームでの計測環境も整備。新たな機器の導入も検討中だ。須山室長によると、動作解析のほか選手の育成方針、コンディショニングなど、さまざまな情報を体系化してデータベースにするアイデアもある。城島球団会長付特別アドバイザーは選手育成の「マニュアル化」を提唱したが、共通するような考えだ。

新たな取り組みに理解があり、特にIT関連を奨励する球団の土壌もある。楽天やDeNAなど他球団も力を入れている分野だが、城所氏は「ホークスでやっていることが他球団に波及していくぐらい先頭を切っていかないと。そう思って日々取り組んでいます」と力を込めた。


須山晃次(すやま・こうじ)1977516日生まれ。浜松市出身。浜松北高から早大、ローソン野球部を経て米インディアナ大の大学院でスポーツマネジメント専攻。米大リーグ・ジャイアンツ傘下1Aでのインターンやマネジメント会社、データ分析・配信会社を経て、2019年にソフトバンク球団入り。

城所収二(きどころ・しゅうじ)19851220日生まれ。愛知県新城市出身。新城東高から中京大に進んでバイオメカニクスを学び、早大大学院でスポーツ科学博士に。国立スポーツ科学センターを経て、20201月からソフトバンク球団RD担当。

動画



打倒ソフトバンクホークスの鍵は、やはりホークスの弱点を洗い出し、解析して戦略を構築していくことに限るかな。




2021年2月1日月曜日

〈北朝鮮〉経済制裁包囲網を破る諜報戦 ~サイバー攻撃とハッカー養成~

  かつて我が国は、朝鮮戦争後に北朝鮮が朝鮮半島統一という国家戦略実現のために駆使してきた「対南工作」遂行によって、何の罪もない邦人が北朝鮮工作員により、拉致され、連れ去られる、という戦争を経験してきました。

 北朝鮮工作員による日本人拉致は、実弾が飛び交うわけではありませんが、非人道的な我が国に対する「国家主権の侵害」行為であり、北朝鮮からいわれもない「侵略戦争」をしかけられていたのです。

 そして北朝鮮による日本人拉致の問題は、今日に至るまで一部の解決をみてはいますが、全面的な解決には至っていません。それは日本人拉致が、北朝鮮政府機関により行われた国家的な侵略戦争、宣戦布告のない戦争という新しい形態の戦争であるため、この事実を「侵略戦争」と認識することが私たちの側で認識することが遅すぎたということは否めないでしょう。

 北朝鮮は、世界でも類を見ない「諜報戦国家」であると同時に、非人道的な「侵略戦争」を平気でしかける国家であるといえます。そういう国と対峙するときは、絶対にこちらが一方的に譲歩してはならないのです。相手の戦術、出方をよく見極めて、効果的な反撃をしなければなりません。

 日本人の拉致問題にしても、拉致などしても何のメリットもないことを相手に十二分に認識させると共に、北朝鮮の工作員が国内で自由に活動できる状況に密に渡って制限をもうけ、活動を封じ込めなければならないのです。

 こうした効果的な国防政策を怠ってきたツケが、今頃になって弾道ミサイルや核弾頭、北の同盟国である共産中国による尖閣諸島の魚釣島への侵略という形になって顕著になっています。

 韓国による竹島の不法占領も戦後に我が国が、素早く動いて竹島を確保し、海保を配置しておけば、今日のような状態は回避できたかもしれません。

 2020年共産中国の武漢でおこった新型コロナウイルスは、今や世界中でパンデミック化しました。ワクチン接種は既に各国で始まっていますが、北朝鮮ではこうした新型ウイルスの感染拡大をとめられず、ワクチンを買う予算も国連からの経済制裁により枯渇しているのかもしれません。

 かつての北朝鮮ならば、世界中に工作員を送り込み、現地エージェントと共に新型ワクチンを窃取することも辞さないかもしれません。

 しかし今やインターネットの普及により、膨大な工作員を養成して、他国に船舶で送り込む必要はかなり薄れてきました。世界中どこにいてもアクセス環境とデバイスがあれば誰でもハッキングできる時代となりました。あとは適切なスキルを持った人間を養成しなければなりませんが、北朝鮮はこうした人材養成システムも金正恩氏によって整備拡充されているきらいがあります。つまり、スパイ行為を行うことがヒューミントを得る行為よりも、電子情報や暗号情報をお値打ちな形で得られる時代になってきたのです。

 昨年以来から頻発している北朝鮮によるサイバー戦争の実態について記事がありましたので、とりあげてみます。こうした記事をみながら一人でも多くの方々が「戦争の進化」を実感していただき、身近なところに「戦争」があることを認識し、対応できるだけのスキルを身に着けてほしいのです。サイバー戦争もまた「国家総力戦」なんですよ。


【独自】北朝鮮、サイバー攻撃1日150万件…韓国標的に急増

2/1() 5:01配信https://news.yahoo.co.jp/articles/337503c75600f47068a6ab758be82b087f280963

 【ソウル=建石剛】北朝鮮が昨年(2020)、韓国の金融やインフラ(社会基盤)などの公共分野で1日平均約150万件のサイバー攻撃を仕掛けた疑いがあることが、韓国政府関係者への取材でわかった。4年前に比べて急増し、金銭窃取を目的とする攻撃が目立った。韓国では、北朝鮮が新型コロナウイルス対策の国境封鎖や長引く経済制裁で外貨不足が深刻化し、サイバー攻撃で補おうとしているとの見方が出ている。

 韓国の情報機関「国家情報院」の2020年11月の国会報告では、韓国の公共分野が受けたサイバー攻撃は16年の1日平均41万件から急増し、20年は約4倍の162万件に達した。手口の約4割はハッキングで、金融機関を狙ったものや暗号資産(仮想通貨)を窃取する攻撃があった。

 韓国政府関係者によると、20年に受けた攻撃のうち90~95%は北朝鮮によるものと分析されており、1日平均約150万件に相当する。大部分は他国を経由して攻撃してきたという。

 北朝鮮のサイバー攻撃は近年、情報窃取やインフラをダウンさせるものから、金銭窃取に軸足を移している。16年にバングラデシュの中央銀行が約8000万ドル(約84億円)を奪われた事件や、17年に日米を含む世界の企業や銀行に身代金を要求した「WannaCry(ワナクライ)」と呼ばれるウイルスを使った攻撃に、北朝鮮は関与したとされている。

【独自】コロナ禍は「最高の環境」北、17歳選抜してサイバー戦争強化

2/1() 7:24配信https://news.yahoo.co.jp/articles/784c7fa915b6ad6f6a4b092b20e86a43c4d672ad

北朝鮮サイバー部隊養成のイメージ(記事)

北朝鮮サイバー部隊養成のイメージ

全国各地から優秀な高校生を選抜。17歳でIT教育を詰め込む。

平壌のIT重点大学で数年間教育を受ける。数%の「秀才」を部隊に選抜、海外留学も行う。

軍偵察総局傘下の部隊へ配属。

金銭窃取はインフラ破壊などのサイバー攻撃を行う。

NK知識人連帯などへの取材による)

【ソウル=建石剛】新型コロナウイルスの感染拡大を機に、外貨獲得目的でハッキングなどのサイバー攻撃を活発化させているとみられる北朝鮮では、サイバー部隊の養成システムが確立している。平壌(ピョンヤン)首都圏の理系大学に通っていた脱北者が読売新聞の取材に応じ、その実態を明かした。

ハッキング急増

 「1000人中10~15人の秀才のうち、数人がサイバー部隊に引き抜かれる」。2017年7月に脱北した30歳代の男性は、大学の学友のごく一部が、サイバー部隊要員として絞り込まれていく様子を振り返った。

 この男性や北朝鮮のサイバー部隊の養成に詳しい関係者によると、北朝鮮では、各地域で最も優秀な高校に通う知能指数(IQ)の高い子どもを17歳で選抜し、IT教育を詰め込む。その中でも優秀な学生を平壌近郊のIT重点大学に入学させる。大学で2~3年学ばせた後にサイバー部隊に引き抜くという。中国などに留学させてサイバー攻撃を学ばせるケースもある。

 男性が同じクラスで学んでいた友人の一人がその秀才だった。北朝鮮では海外のインターネットサイトへの接続が禁じられているが、友人は自分で研究して3日間で不正接続に成功した。海外映画やドラマは思想教育に影響するため、閲覧すると処罰対象だが、ゲームは黙認されていたという。友人は1週間でゲームのプログラムも解読した。このような人材が部隊に引き抜かれるという。

 大学では数学やプログラミングなど基礎をたたき込まれ、ハッキングなどの攻撃手法は部隊に引き抜かれてから学ぶ。男性はサイバー部隊に入った知人から「目的は知らされず、ひたすらプログラミングを習い、行き着いたのがビットコインのハッキングだった」と聞いた。ハッキングに成功すると、家族に報奨や米などの食糧の配給も行われた。部隊では自由な生活はなく、ひたすら指示されたことを行ったという。

 北朝鮮当局は家庭環境などで思想的に問題がないかも調べてサイバー部隊を選抜する。男性は「忠誠心が強い秀才たちで組織されている」と話す。

https://news.yahoo.co.jp/articles/784c7fa915b6ad6f6a4b092b20e86a43c4d672ad?page=2

コロナ禍「攻撃に最適」脱北の元大学教授指摘

 北朝鮮は軍偵察総局傘下に複数のサイバー部隊を組織しているとみられている。

 脱北者団体「NK知識人連帯」代表で、北朝鮮で大学教授を務めた経歴を持つ金興光(キムフングァン)氏によると、北朝鮮では1990年代に金正日総書記(当時)の指示で部隊が組織された。資源や資金がない北朝鮮にとって、サイバー戦争は戦力差を挽回できるためだ。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は更に強化しているという。

 2009年頃までは偵察総局傘下に一つの部隊が置かれていただけだったが、現在は金銭窃取やインフラ(社会基盤)破壊など目的ごとに部隊が細分化された模様だ。金興光氏は要員は計5000人程度とみる。17年に世界中の銀行や企業に身代金を要求したサイバー攻撃への関与が指摘される「ラザルス」や、最近活発化している「ビーグルボーイズ」などのハッカー集団は各部隊の指揮下で活動している。

 金興光氏は世界的なコロナ禍が「北朝鮮ハッカーにとって最高の環境となった」と話す。コロナ関連の「緊急情報」などを装うことでハッキングすることが容易なためだ。米国の経済制裁などの打撃も重なり、北朝鮮はサイバー攻撃を活発化させ続けるとみられる。

ウイルスの制作に日本製のPC98が使われていた

 米国と韓国で20以上の政府機関系サイトに攻撃をしかけられた2009年7月のDOS攻撃の際に、使用されたウイルスを専門家が調査した結果、ウイルスの攻撃対象の中に韓国軍の特注ワープロで作成したファイルが含まれていたのですが、これは既に10年ほど前から使われていないもので、韓国の関係者でも存在すら知らない人がほとんどという機種でした。作成元の人間が、韓国の内部の事情について詳しい人物とはいえるものの、機種が古いため最新の情報を知らないということが推察されていました。

 さらに興味深いことにこの時のウイルスにはシフトジス(Shift_JIS)という文字コードの痕跡があったとのことです。シフトジスとは、PC上で日本語を表示するためのコードの一つであり、NECが開発した「PC98シリーズ」の初期の機種でも使われていました。この機種も受注生産は2003年に終了しており、市場に出回っていません。

 我が国捜査当局が入手した情報によると、秋葉原の某工場の倉庫に、売り物にならず山積みになっていたPC98シリーズのPCを朝鮮総連の職員たちが安値でまとめ買いしていった、という事実があります。PC98シリーズは旧式の機種でしたが、十分にウイルスのプログラムは作れましたし、そのための訓練にも使えたといわれます。

 つまり資金不足で最新機種が買えなかった北朝鮮当局が、朝鮮総連経由でPC98シリーズを入手し、そこで作成されたウイルスを攻撃に使用したと考えられます。2009年7月のサイバー攻撃の翌月8月に北朝鮮人民軍の偵察局121部隊が金正日氏から表彰されたという報道が北朝鮮から発表されています。


進化するサイバー攻撃

北朝鮮のサイバー攻撃はアメリカも警戒する。

 お金がなくなったら、弾道ミサイルをイランに売って外貨を稼ぐ、というやり方が北朝鮮の手口でした。それはなくなったわけではないでしょうが、国連から経済制裁をうける国家である以上、武器輸出は得策でない、となると手早く外貨を稼ぐ手法として「ハッキング」をしてくることは論をまたないでしょう。
 北朝鮮は、まともな国家経営をできない国であることは、もはや衆知のことでしょう。この無法国家に対峙して、日本人の全ての拉致被害者の帰国を果たすために私たちは心を一つにしなければなりません。
 サイバー攻撃で身ぐるみはがされるか、拉致されて北で望まない労働を強いられるか、などということは他人ごとではないのです。
 戦略目標は、北朝鮮をしきる金王朝の打倒と本当の意味での「民主主義国家」の実現です。拉致問題の全面解決で、金王朝打倒をめざしましょう。

アメリカはなぜ北朝鮮と戦争しないのか 抑止か自制か【日本軍事情報】
https://www.youtube.com/watch?v=F2A_0IrJlNw 
北朝鮮は、共産中国も同じですが、「勝てない戦争」はしかけません。北朝鮮が超大国であるアメリカに通常兵器で対抗するのは話になりませんが、核兵器とサイバー攻撃ならアメリカのような超大国と互角に渡り合えると思っているのでしょう。

2020年12月23日水曜日

日本外交官の情報戦 ~冷戦末期のソビエト連邦分析~

  令和二年(2020年)1月に外務省は、前年末に在ソ連日本大使館の外交官が書いた冷戦末期のソ連に関する分析報告書を公開した。執筆者の一人で大使館でソ連政治の情報収集を担う政務班長だった角崎利夫さん(71)と当時大使館員だった作家の佐藤優さん(59)に現地での情報収集活動について聞いた。

元大使館政務班長 角崎利夫さん編

 活動の内容は、ソ連人の研究者やジャーナリスト、他国の駐ソ外交官らと週に数日会いました。レストランなどでは、隣の客や店員が会話を聞いていたら当局に情報が抜けるかもしれない。「例の件で」とか「Aさんが」「Bさんが」と言っていました。

 もっと大事な話をするときは、必ず歩きながら「箱」と呼んでいた日本大使館内にある特別な盗聴防止設備が施された部屋の中で話すこともありました。

 常に盗聴や監視の危険がつきまとう。

 ある西側陣営の国の在ソ連大使館で職員の手が壁に当たった時、音の響きが違うので壁をはがしてみると、中から盗聴器が出てきた。館員が電話していると、音声に聞きなれない言葉が混じることもありました。盗聴側の声が誤って混じったとうわさされていました。

 ある日本大使館員は、ウクライナのホテルでのレセプションで女性から社交ダンスに誘われた。続いて日本語を話す男が、「彼女とこれから別荘にいこう。別の女友達もくる。」と声をかけてきました。断って帰った部屋にも何度も男から電話がきたそうです。ハニートラップの一種でしょう。

 1987年の帰国後に「ソ連在勤を終えて」と題した報告書でゴルバチョフ書記長が進めたペレストロイカが「空回りしている」と記しましたね。

 インテリ層に見られたペレストロイカへのやる気が、一般市民になかった。ゴルバチョフ氏が進めた節酒政策への反感が強かったと思います。

 当時のソ連人からはこんなジョークを聞きました。酒を買う行列に並んでいた男が「もう我慢できないゴルバチョフを殺してやる」とクレムリンに出かけていく。ところがすぐに戻ってきて男は「だめだ、あっちも行列だった。」

元大使館員・作家 佐藤優さん

 1988年~1995年にモスクワの日本大使館に勤め、1989年ごろから政務班員としてソ連高官の家を夜に訪ねる「夜回り」でソ連政治の情報収集をしていた。

 新聞記者から教わって始めた方法です。-20℃にもなる厳寒の中、高官宅前で帰りをじっと待つ。帰宅した高官が「寒いのによく待っていたな」と家に入れてくれ、一緒にお酒を飲みながら「ここだけの話だぞ。」と教えてくれるんです。

 経済危機が続き、物不足だったので、ペットの餌が買えず困っている高官が多かった。ストックホルムからペットフードを大量に買い、プレゼントしていました。栄養ドリンクも喜ばれました。ソ連の官僚も夜遅くまで仕事をしているのですが、コーヒーや紅茶以外にカフェインをとれるものがなかった。日本から大量に取り寄せ、情報交換をするときに手渡していました。

 あとはカップ麺。シーフード味が非常に受けましたね。向こうは代わりにキャビアをくれました。エビでタイを釣るような感じでしたね。私の家はいつもキャビアがあふれていました。

 高官たちが話してくれたこと。

 北方領土は戦争でソ連がとったもので日本に返してもいいが、返し方が問題だと話していました。領土問題で日本にいったん譲ってしまうと、他の国との領土問題が再燃しかねない危険があると言っていました。

(令和二年1月9日付朝日新聞より)

関連動画

「戦争は情報戦からはじまる」確かにそうですね。至言でしょう。特に各国の経済での相互依存関係がズブズブになっている現代ではなおさらでしょう。
確かに「国際情報」「国際軍事・安全保障」という専攻学科があってもいいですよね。

※外交官のみなさんは国益のために日夜技を磨いてがんばっておられることがよくわかります。「北方領土問題」は、ロシア側の事情も考慮しながら案を提示しなければ解決するものではないでしょう。外交は「win-win」が原則とすれば、ロシア側のメンツがたつように解決しなければなりません。安倍前首相の「新しいアプローチ」である北方領土での共同経済活動は、粛々と確実に進めていくべきでしょう。

2020年12月11日金曜日

「諜報の神様」と呼ばれた男。

 「諜報の神様」と呼ばれた男

ヤルタ密約をつかんだ日本の軍人がいた。

 

小野寺 信(おのでら まこと)明治30年(1897年)919日生 昭和63817日逝去)は、旧陸軍少将。翻訳家。

 明治30年(1897年)、岩手県胆沢郡前沢町(現在の奥州市)出身。町役場助役小野寺熊彦の長男として生まれる。12歳の時に熊彦が病死し、本家筋の農家・小野寺三治の養子となる。遠野中学校、仙台地方陸軍幼年学校、陸軍中央幼年学校を経て、大正8年(1919年)5月、陸軍士官学校(31期、歩兵)を卒業し見習士官(陸軍歩兵曹長)。同年12月、陸軍歩兵少尉に任官し、歩兵第29連隊附となる。翌大正11年(1920年)に発生した尼港事件を受けてニコラエフスクを保障占領し、大正10年(1921年)、第29連隊はアムール河口地帯守備のために尼港に派遣される。小野寺も最初で最後の戦場での勤務を行い、現地でロシア語を習得する。昭和3年(1928年)12月、陸軍大学校(40期)を卒業し歩兵第29連隊中隊長となり、会津若松へ赴任する。

 当初はドイツ駐在を希望して外国駐在試験を受けていたが、ロシア語の能力を見込まれて翌昭和5年(1930年)3月、陸軍歩兵学校教官として千葉に転任。上官の小畑敏四郎大佐に目をかけられ、赤軍研究を集中的に行い、ロシア専門家としての道を歩み始める。昭和7年(1932年)3月、小畑の人事異動に従って陸大教官に転身。ここでも本来の講義と別に個人で赤軍研究を継続する。研究を経て、ロシア革命後に機械化を進めた赤軍に対する脅威を主張するようになる。陸大在任半年で参謀本部第2部ロシア班に引き抜かれた。作戦課長として参謀本部に配属されていた小畑の手引きで、昭和8年(1933年))5月、ハルビンへ赴任。語学研修の傍らで国境視察なども行い、赤軍の作戦などについてレポートをまとめている。帰国後の昭和9年(1934年)8月、陸軍歩兵少佐に進級する。

 昭和10年(1935年)12月、ラトビア公使館附武官に発令され、翌昭和11年(1936年)1月、首都リガに着任。ラトビアを含むバルト三国は西欧の対ソ最前線であり、各国の諜報活動が盛んであった。小野寺が赴任した当時の日本公使館は補佐官もいない小所帯であったが、バルト三国の重要性を認識した小野寺は本国にかけ合い、隣国のエストニア・リトアニア公使館附武官を兼務するようになる。三国の参謀当局は地の利はあったが資金面から諜報範囲が限られていたため、日本側が必要な諜報活動費を援助した。また、当時ベルリンの駐独大使館には参謀本部直属の諜報工作組織(馬奈木敬信機関)があり、対ソ工作員を養成していた。工作員はエストニアからペイプシ湖を通してソ連に送り込んでいたため、エストニアにかけ合って送り込むための高速船の手配も行った。昭和12年(1937年)11月、陸軍歩兵中佐に昇進。

 昭和13年(1938年)6月、参謀本部ロシア課に復帰、直後に発生した張鼓峰事件の対処にあたったのち、同年10月、中支那派遣軍司令部附として上海に派遣される。当時中国大陸で進行中であった日華事変の収束策として、参謀本部の支那課は汪兆銘政権の樹立による和平交渉を検討していたが、ロシア課は対ソ防衛のためには事変を早期終結させるべきと考えており、小野寺は武漢に籠る蒋介石との直接の交渉を企図する。小野寺は市内のアスターハウスホテルに事務所を置き、自前の特務機関を構えた。メンバーには軍人は一人も含まれず、共産党転向者を中心に20人ほど採用した。1939年(昭和14年)5月、香港において板垣征四郎陸相と国民党の呉開先組織部副部長との直接会談を行う根回しを行うが、汪兆銘工作を進めていた影佐禎昭の巻き返しにあい、通らなかった。6月には本国へ戻された上で陸大教官に就任、事実上の左遷となった。同年8月、陸軍歩兵大佐に進級した。

 昭和15年(194011月、スウェーデン公使館附武官に発令され、翌411月、ストックホルムに着任、12月に太平洋戦争を迎えた。諜報活動の他に、クリプトテクニク社(現・クリプトA.G.)から最新の暗号機械を買いつけたり、ピアノd戦とボールベアリングを調達しドイツ経由で本国に送っている。昭和18年(1943年)8月、陸軍少将に進む。この頃からSD国外諜報局長であるヴォルター・シュレンベルグと共に和平工作に従事する。

 小野寺の送った機密情報は「ブ情報」と呼ばれ、海外からの貴重な情報源となった。「ブ情報」の「ブ」は、ミハウ・リビコフスキ(Michał Rybikowski)の上官ブジェスクフィンスキの頭文字である。大戦最末期にはヤルタ会談での密約につき、ドイツ降伏から約3ヶ月後にはソ連が日ソ中立条約を破棄、対日参戦するとの最高機密情報を日本に打電している。陸軍中枢はその情報を信じずアメリカとの和平の仲介をソ連に期待し続けた。

敗戦後の昭和21年(1946年)3月に日本に帰国復員したが、同年7月まで戦争犯罪人として巣鴨プリズンに拘留された。

 

戦後は妻百合子と共に、主にスウェーデン語の翻訳業に従事する傍ら、スウェーデンの文化普及活動に努めた。最晩年に『NHK特集 日米開戦不可ナリ 〜ストックホルム・小野寺大佐発至急電〜』で取材インタビューが行われ、昭和60年(1980年)12月に放映された。この番組は第12回放送文化基金賞を受賞し、小野寺の大戦中の活動に照明が当てられた。


エピソード


  • 陸軍士官学校では、同期の成績上位5名に軍刀が下賜されていた。小野寺は卒業試験はトップだったがその前の成績が10番以下であったのが響いて総合で6番となり、拝受を逃した。代わりに、旧主の南部利淳から刀を拝領しており、この軍刀は後にストックホルム引き揚げの際に政府に寄贈した。
  • 著述の才能に恵まれていて、対赤軍戦術をまとめた参考書は「赤本」と呼ばれていた。参謀本部ロシア班に配属後、ロシア班として中華民国や米国も含めた研究書『隣邦軍事研究』を偕行社から出版すると青年将校の間でベストセラーになる。収益でロシア班はタイピスト2人雇うことができたが、直属の上司(第二部長)であった永田鉄山大佐から「儲けすぎだ」と叱責を受けたという

動画
小野寺信氏とは?

 いわゆる「北方領土問題」は、確実なことは確かにあります。それは外務省の方針でいう「北方4島一括返還」をいえばいうほど、ロシアの態度は硬直化し、返還は絶望的になっていくということです。それともう一つ、「北方4島一括返還」をいうほど南樺太の不法占領は忘れられていくということです。
 大事なことは、二度とオホーツク海を血に染めないこと、ロシアと「平和友好条約」を締結し、経済パートナーとして、良好な隣国関係を構築すること、です。平和友好条約を締結した時に色丹島と歯舞群島の返還を実現するのです。そして経済投資を促進し、ロシアとwinwinの関係構築に努めることです。

2020年10月17日土曜日

南西諸島の防衛の実態。

 与那国島

陸上自衛隊 沿岸監視部隊約150名

石垣島

陸上自衛隊 警備・地対艦ミサイル部隊約500~600名

宮古島

陸上自衛隊 警備・地対艦ミサイル部隊約700~800名

沖縄本島

海上自衛隊 潜水艦増強 P-1哨戒機を配備

航空自衛隊 1個飛行隊 → 2個飛行隊へ増強

奄美大島

警備・地対艦ミサイル部隊約550名

 国防の南の最前線である与那国島に沿岸監視隊をおくことにより、侵略軍の動きを早期確認する狙いがあるのであろう。

 地対艦ミサイル部隊配備は、アメリカのグレートバリア戦略に沿った戦略配置であると考えられるが石垣、宮古、奄美と配備されたのなら、沖縄本島にもできれば奄美の半数は配備して地対艦ミサイルの切れ目をなくした方が、侵攻軍の航行をより阻害することになるのではないだろうか?

 南西諸島は広大なエリアに島嶼が切れ目なく配置しているのでこの広大なエリアを防衛するのは、艦艇だけでは足りない。地対艦誘導ミサイルと攻撃型潜水艦の運用が欠かせない。

 尖閣諸島は国有化されているが、これが逆に共産中国の地雷をふんだようである。彼らは漁船と漁業監視船として大船団を送り込んでくるおかげで、尖閣諸島周辺近海は「中国の海」状態で占拠されているようなものである。

 漁船員は元人民解放軍兵士なのだろうが、退役して民間人だとしたら、自衛隊は防衛出動ができない。漁業監視船も中国海警の船だとしたら、正規軍はでられない。この周辺海域は日中の海洋法規の戦いとなっている様相である。仮に自衛隊を出動させると向こうは人民解放軍の精鋭部隊である陸戦隊を送り込んでくる口実を与えてしまうから、軽挙妄動は慎まなければならない。

 南西諸島防衛は沖縄本島、石垣、宮古を中心に戦力をおいて、実動戦力として海上保安庁の巡視船による監視行動を強化するという「海上警察力」の戦いが主戦となっているように感じる。法律戦である。


南西諸島防衛の現状・動画でみる

指揮権と補給の問題




2020年10月12日月曜日

THE COCKPIT  ~第二次世界大戦の記憶~

 第二次世界大戦は人種偏見、大量殺戮、核兵器など人類にとって迷惑なだけの多くの負の遺産ばかり残してきました。

 戦後に旧植民地の多くが民族自決の精神に目覚めて、欧米の宗主国から独立を果たし、人種偏見が解決に向かい、戦略爆撃論に裏打ちされた大量殺戮はその意味付けを喪失し、象徴たる原子爆弾そのものの維持コストや高レベル放射性物質の被害への恐怖から、核兵器本来の使用が変質し、電磁パルス攻撃という新たな核兵器の運用により、大量殺戮ではない新たな兵器としての価値を見だしつつあります。

 時代は進化し、戦略は変化し、戦争の在り方も変化していきます。

いつまでも核兵器が地上の最恐兵器ではありません。現在世界の国々の首脳クラスで核兵器を積極的に国際紛争解決に使用しようという国はなく、核兵器は今後は電磁パルス兵器や宇宙開発への使用にシフトしていくのではないでしょうか?

 核兵器の持つ巨大かつ非人道的な破壊力は昭和20年の広島と長崎への原爆の投下により、悲しいくらい実証され、人類の大きなトラウマになったことも間違いないのではないでしょうか?

 政治的なイデオロギー、国家の利益抜きで我々は世界平和を語ることなどできません。なぜなら人類はそれぞれが固有の言語、文化を持つ民族に分かれ、国家という共同体にわかれて世界は成り立っているからです。そして国家こそが世界を構成する単位であるからであり、国家を運営するために政治があるからです。

松本零士氏(故人)の作品には独特の深みが感じられます。戦争に対しても単純に「反戦」ということではなく、肯定する中で理不尽さを認めていません。だからこそ視聴者の側で作品の意味付けを考えてしまうのでしょう。


動画

音速雷撃隊 

※つくづく思うのですが、当時にアクティブホーミングの空対空ミサイルが開発されていれば、人間が戦闘機を操縦して体当たり攻撃をしなくてもすんだのに。
 そう思ってもどうしようもないことですが、ただいえることは第二次大戦後に戦争の在り方も大きく変化しています。サイバー攻撃やプロパガンダによる情報戦、ハイブリッド戦争と人が直接死なない戦争は進化しました。今後ロボットが戦場に投入され、AIにより戦場で自律的に運用されるように進化していくのでしょう。
 その時に「特攻」による戦争の在り方はどうとらえられていくのでしょうね。
成層圏気流 
鉄の竜騎兵 


特攻とは関係ないように思えますが、当時の日本人の子供たちを守るために兵隊さんは戦地で戦ったわけです。その子供たちがアメリカの潜水艦の攻撃で大勢亡くなりました・・。戦争は子供でさえ容赦のないものだということを後世に伝えるべきです。

ミャンマーでもウクライナでも21世紀になってもまだ子供たちが亡くなる戦争の悲劇は止まっていません。人類はいつになったら次世代を担う子供たちが理不尽な目に合わないような世の中を実現できるんでしょうか?

【鎮魂、8月22日沈没】ドキュメンタリーアニメ『対馬丸ーさようなら沖縄ー』 (1982) 






 管理人は戦中は日本軍の本土防衛の最前線に立たされ、戦後は頼みもしないアメリカによる軍政統治を受け入れ、女性や子供への暴行という米兵の傍若無人さに耐えながら本土復帰をはたした沖縄の人たちに大きな敬意をもっています。

本来ならば「ノーベル平和賞」を沖縄県がいただいてもいいくらいであると思います。

現在は、共産中国の尖閣諸島への侵攻や政治的な不手際である沖縄米軍基地問題という課題を抱えて苦しんでいるようにもみえます。

対馬丸は児童疎開船として本土へ沖縄の子供たちを連れて航行する途中で、米海軍バイフィン号潜水艦の放った魚雷で子供たちもろとも海の底に消えました。戦争に名を借りた理不尽な虐殺の起こらない時代にしていくために、人類は今後たゆまぬ進化を続けることになるのでしょう。

ちなみに児童疎開船対馬丸を沈めてくれた潜水艦バウフィン号は現在、ハワイ・オアフ島のアリゾナメモリアル隣の記念館に展示されています。潜水艦内部と展示館を有料で見学できます。日本人にとっては複雑な心境の場所ですね。


2020年10月11日日曜日

呉鎮守府101特別陸戦隊 ~B29の出撃拠点マリアナ諸島を攻撃せよ!~

 大日本帝国を壊滅させた爆撃機

 1944年6月に日本の敗戦を決定づける爆撃機が本土上空に飛来する。「超空の要塞」の異名をとるアメリカ陸軍の新型爆撃機B29である。最大航続距離約9700km、最大約9tの爆弾搭載量を持ち、当時の迎撃戦闘機では迎撃困難な高度(10000m)を飛行可能な爆撃機である。

 B29の完成により、アメリカ軍は日本本土の直接攻撃が可能になったが、中国大陸からの基地から攻撃していた当初は、爆撃の被害は九州の一部に留まっていた。しかし1944年9月に占領が完了したマリアナ諸島へ爆撃部隊が展開すると、本土の主要都市のほぼ全てが爆撃の射程レンジ内に収まることになった。

 日本軍も新型の防空を目的とした局地戦闘機や高射砲での迎撃を行うが、高高度から無限に出現するB29爆撃隊に対しては効果は薄かった。その結果、国民の生命・財産は奪われインフラ施設は焼失し、我が国の生産力は着実に喪失していった。

 そうした状況の中でB29爆撃機を打撃する秘密作戦が実行されつつあった事実はあまり知られてはいない。作戦目標は、爆撃隊ではなく、爆撃機の出撃基地であるマリアナ諸島そのものである。そして作戦の主力とされていたのが、海軍特殊工作部隊「呉鎮守府第101特別陸戦隊」であった。

海軍の陸上用部隊

 陸戦隊とは、海軍内に設けられた陸上での戦闘を想定した歩兵部隊である。創始は明治の海軍創設時まで遡る。既に陸戦部隊は創設されていたのだが、陸軍の規模の拡大に伴い、1876年に一旦廃止されていた。しかし上陸戦や海岸沿いの地域などで陸上兵力が必要となるたびに随時編成されていた。日中戦争当時は「上海海軍特別陸戦隊」が組織され、中国大陸沿岸部や海南島で戦った。

 海軍陸戦隊は、状況に応じて艦船乗員や非番の兵員を招集して編成される臨時部隊でしかなく、アメリカ海兵隊のような常備兵力ではない。日米開戦前年に上陸戦用の常備戦力整備を求める意見が出されたといわれるが、結論的には、艦隊決戦用の艦船拡充が優先されたといわれている。

 呉鎮守府第101陸戦隊は、こうした中でも異様な部隊であり、体格のいい海兵が集められ、隊員の外見や訓練内容がアメリカナイズされていたのである。

 隊員は必ず英語や英会話の授業を受講しなければならず、服装も米軍の軍服に酷似していた。頭髪も当時禁止されていた長髪も許可されていた。この規格外の意味は、隊員が米軍陣地での活動を目的としていたことによる。

 隊長の山田大二少佐の名前から「山岡部隊」とも呼ばれたこの部隊は、潜水艦などで敵地へ進入し、日系人に偽装して各地へ潜伏し、遊撃戦(ゲリラ戦)によって米軍を疲弊させることになっていた。遊撃戦術を身に着けるために、戦闘訓練は夜間の山岳地帯で実施されたといわれる。しかし既に戦局は劣勢となり、進入作戦に使用できる潜水艦はほとんどなく、制海権も米軍にとられていた。米本土への進入も計画されたといわれるが、結局実行されることはなかった。そうした折に101陸戦隊にB29の壊滅を目指す機密作戦への参加が命じられることになる。

マリアナ諸島への特攻作戦

 半年以上の本土防空戦によって軍部は防空戦でのB29の撃退は不可能であると判断する。そして決死の反撃作戦を1945年春に承認する。それはB29の出撃基地であるマリアナ諸島を攻撃して、B29の出撃を阻止しようという作戦であった。

 ところが当時の日本軍には、日本本土とマリアナ諸島の間を往復できる航空機はなかった。往復できたとしても護衛機をつけられないので爆撃による基地の無力化は不可能とされていた。そこで作戦ソリューションとしての案が、航空機で夜間にマリアナ諸島へ強行着陸を行い、工作部隊の破壊活動にて基地能力を無力化する、という作戦だった。

 この作戦は「剣作戦」と名付けられた。工作部隊は101陸戦隊が選ばれた。しかしいかに夜間とはいえ、かなりの迎撃が予想される作戦である。仮に工作部隊を送り込めたとしても回収できる可能性は極めて低い。作戦終了後は玉砕するしかないだろう。

 一応は通常作戦となっていたが、「剣作戦」の実態は特攻作戦であった。

未遂に終わったマリアナ諸島攻撃

 「剣作戦」の実行は1945年7月末を予定されていた。101陸戦隊は、青森県三沢基地への移動を命じれらた。作戦決行日には30機の一式陸上攻撃機に分乗して出撃することになっていた。ところが7月14日に三沢基地が米機動部隊の空襲をうけてしまい、作戦用の機体を多数破壊されてしまった。そのため機体の不足で作戦は延期を余儀なくされ、決行日は8月20日前後とされた。

 作戦延期に伴い、海軍は機体をかき集めると同時に投射兵力を拡充する。陸軍の空挺部隊約300名、「銀河」爆撃機約70機で編成された。支援用爆撃隊の参加も決定した。

 さらに1945年8月6日9日の原子爆弾投下を考慮して、米軍の核貯蔵施設の捜索と破壊も任務に加えられた。既にマリアナ諸島周辺の状況は捕虜からのヒアリング調査により把握されていた。懸念された基地への再空襲もなく、後は作戦決行を待つだけであった。

 1945年8月15日に日本政府がポツダム宣言を受諾し、終戦の大詔が下った。これにより101陸戦隊がマリアナ諸島で実戦を戦うことはなくなった。その後部隊は解散となったわけである。

一式陸上攻撃機

銀河爆撃機

上海海軍特別陸戦隊の戦闘記録


一式陸上攻撃機のある風景 / Scenery with G4M「Betty」 https://www.youtube.com/watch?v=1peV2Yqazrg

2020年10月8日木曜日

モサド ~世界最強といわれる諜報機関~

 イスラエル総理府諜報特務局(通称モサド)

「モサドこそが最強の諜報機関だ。」

「モサドほど極悪非道な工作を仕掛ける組織はない。」

 世間の評価は辛辣、正直ともいえる。

最強諜報機関モサドの成立

  個々の諜報部員の工作スキルにおいて秀でた存在である。モサドの諜報員たちは、他国の諜報部員を凌ぐ「鉄の意思」と「国家への無条件の忠誠」を持ち合わせているからである。

  1917年にイギリス政府がパレスチナでのユダヤ人国家建設に賛成を示した意見書である「バルフォア宣言」を受けて、ユダヤ人たちはパレスチナの地に集まり、定住を始めた。

 しかしイギリス政府は一方で、オスマントルコの支配下にあったアラブ人の独立を支援する約束を結んでいた。

 このイギリスのダブルスタンダードが、現在のパレスチナ問題の一因であるのだが、このようにしてユダヤ人とアラブ人の長期にわたる対立が始まることとなった。

 ユダヤ人たちは、事あるごとにアラブ人やパレスチナ人から襲撃をうけた。そこでユダヤ人共同体である「イシュヴ」のリーダーたちは、秘密組織を結成し、自衛のための手段とすることを決定した。秘密組織のメンバーたちは、アラブ人、パレスチナ人の穏健派を探し出し、金を渡して襲撃の予定をはじめとする様々な情報を聞き出すことに成功した。

 さらにユダヤ人たちは「ハガナ」という義勇軍を結成し、武力による自衛も開始する。秘密組織イシュヴと義勇軍ハガナこそが、後世に最強と恐れられた「モサド」の原型である。

 やがて義勇軍ハガナ内部に「情報部」が誕生する。イシュヴとハガナは凄まじい諜報戦に暗躍したが、そのターゲットには、アラブやパレスチナだけではなく、イギリスも含まれていた。


最強諜報機関モサドの発展期

 1948514日にイギリスのパレスチナ委任統治が終了する。ユダヤ人たちは、「パレスチナ分割決議」(パレスチナをおよそ半分に分割し、半分をユダヤ人が、あとの半分をアラブ人が統治し、両者にとって聖地であるエルサレムは国際管理とする)を根拠にしてユダヤ人の国家であるイスラエルを建国した。

 義勇軍ハガナは、イスラエル国防軍となり、アマン(国防軍作戦部情報課)、シンベット(国防省保安局)、外務省政治局という3つの情報機関が創設された。

 このうち外務省政治局の諜報活動の評判は芳しくなく、強固な中央集権的諜報機関の創設が叫ばれるようになり、1949年にモサドがこれに代わる形で発足した。

 やがてモサドはイスラエルを代表する諜報機関に成長する。現在のイスラエルには複数の諜報機関が存在しており、各機関はインテリジェンスコミュニティーと呼ばれる定例会議で交流を図っており、議長はモサド長官が務める。

  モサドを世界に冠たる諜報集団へと整備したのが、「伝説のスパイマスター」と呼ばれたイッサー・ハレル氏だった。1953年に2代目モサド長官に就任したハレル氏は、身長150㎝足らず、何も聞き逃さない大きな耳が特徴であり、長官就任の最初の挨拶は「仲間以外と口を聞くな!」だった。ハレル氏は短気な反面、部下思いであり、アラブ諸国での工作活動に対しても自ら最前線に赴くことを好んだといわれる。ハレル氏は、モサドの協力者に仕立てる者を一人一人面接し、アラブ諸国、欧州、アフリカに巨大なモサドネットワークを築いた。

 ハレル氏の功績において無視できないことは、CIAとの連携に成功したことである。ハレル氏は1954年に渡米し、「CIA中興の祖」とされるアレン・ダラス氏と密談する。

 「CIA・モサド」のホットラインを作ることに成功した。モサドはこの連携によって、最新の盗聴部、探知機、カメラを入手した。


モサド関連動画


北芝健氏「モサド」
池上彰「モサド」

モサドの組織構成

  イスラエルは、周囲を敵に囲まれている。そのためモサドの諜報活動の成否は国家の存亡に直結する死活的な問題であった。その活動は主にアラブ諸国の監視、反イスラエルを標榜するテロ組織の監視及び主要メンバーの暗殺、国外に居住するユダヤ人を秘密裏にイスラエルに帰国させることであった。

 モサドが抱える諜報員の数は2000人程度(2008年当時)と推定されているが、黎明期のモサドは、人員、資金、装備には恵まれてはいなかった。そのため「少数精鋭のモットー」が導き出されたのである。ただモサドには大きな強みがあった。それは海外に居住するユダヤ人協力者たちの存在であった。彼らは「サヤン」と呼ばれ、モサドが世界中の国々で秘密工作を行う時の大きな助けとなった。

 モサドでは工作員を「カッツァ」と呼ぶ。これはCIAにおける「ケースオフィサー」と考えていいだろう。暗殺を専門とする工作員は、「キドン」と呼ばれ、あらゆる暗殺術をマスターしている。作戦が決行される時は、対象国のイスラエル大使館に駐在するモサドの指揮官の下、現地のカッツァ、場合によってはキドンのチームが召集される。

 モサドは、好戦性の高い組織である。敵対者には容赦なく死を与え、時にはMI6CIAKGBといった大国の諜報機関をも相手に回し、出し抜いてきた。

 モサドの世界に知らしめることになった事件としては、「ミグ21奪取作戦」「A・アイヒマン誘拐作戦」「ミュンヘンオリンピック事件への報復作戦」など数知れない。


モサドを支える秘密チーム

 サヤン・・・海外に暮らすユダヤ人のモサド協力者。中国共産党に協力している華僑に似ている。

カッツァ・・・モサドの工作員。様々な秘密活動を実行する現場のスパイ。

キドン・・・モサドが秘匿する暗殺チーム。殺人のパターンは様々で各国の諜報機関に恐れられている。

 

モサドのリクルート活動

  モサドは「一本釣り」によるスパイ獲得を行っている。リクルーターと呼ばれる採用担当者は、採用候補者をみつけたら、数年かけて対象の身辺調査を行うのである。

 社交性、思想、マナーに加え、友人の評価、運動神経、性癖なども徹底的に調査される。これらの調査をクリアすると正式に勧誘し、仲間として迎えられるといわれる。


『アイヒマンを追え!ナチスが最も恐れた男』映画予告編 





2020年10月4日日曜日

サイバー戦争を想起させる映画。

 1981年に公開された映画で、『ウォーゲーム』という作品です。

 米ソ核戦争ゲームを子供同士で遊ぶという内容ですが、それだけならわざわざ映画化されることはないでしょう。子供たちのゲームがアメリカ国防総省?のシステムとリンクしてしまい、子供たちの核シュミレーションゲームの画面が実際のシステム画面として国防総省に映し出されてしまいました。

 およそありえない内容ですが、だからこそおもしろい。

 まだまだハッキングが一般的に知られていない時代ですが、サイバー攻撃を予知するような作品だったかな?とは思えます。

 子供のテレビゲームだとあなどるなかれ。今や格闘技やサッカーのゲームは「eスポーツ」という反応速度を競うスポーツになり、スポンサーがついて賞金をかけて争うような時代になっています。

 ストリートファイターというゲームセンターのゲームが世界大会で競われるようになるなんて、1980年代には予想だにできないことでしょう。

 時代の価値観、思想は変化します。仕事も時代によって変わります。鎌倉時代の白拍子が今やアイドルとして地位が確立しています。1960年代のエレベーターボーイという職業は今や完全に過去の遺産。

 核戦争のゲームも過去の戦争のゲームとしてリアルに進化するかもしれません。

では、戦争シュミレーション映画の草分けともなる映画をみてみましょう。

ウォーゲーム WarGames 1983 

https://www.youtube.com/watch?v=yhrz2BGy77M&t=39s  
WarGames (1/11) Movie CLIP - Asexual Reproduction (1983) HD https://www.youtube.com/watch?v=LwDbgE54QYE&list=PLZbXA4lyCtqpGOS2KC1mAAKaGwbup-DQt

使われているPCの機種も明らかに時代を感じさせるのに十分なものですが、しかし当初はハッキングという行為は、この映画にみられるように「遊び」の延長から始まったように思います。

意図的に国防総省のコンピューターに侵入して、核ミサイルをシュミレーションとはいえ、操作しているわけですから、制御コンピューターをハッキングすることにより、核兵器さえも意のままにできるのかもしれません。

このような事態が進展してくると、核保有国にとって自国の核兵器が「脅威」となる時代が到来するのかもしれませんね。核保有が国家のクライシスとなる時代、どうなんでしょうね?

WAR GAMES オープニング 
https://www.youtube.com/watch?v=WuipiBKRl04

SNS上でのいさかい、喧嘩が凶悪な殺人事件に発展したというケースがあります。現代における「虐殺」ですが、個人がSNSで友人や身内に攻撃的な言動を繰り返すことも「サイバー攻撃」としていいのではないでしょうか?

SNSが発端となり発生した怖い話(LINE事件) 
https://www.youtube.com/watch?v=cHm7xuUWLmE

ささいなことから人間仲良くなったり、ののしりあったりするのは常のことでしょうが、これを顔がみえないSNS上でやられると、どういう感情になるのでしょう。疑心暗鬼の相乗効果になるのではないでしょうか?

21世紀の侵略戦争の一例 ~「ハイブリッド戦争」の実態~

  2016年のアメリカ議会で明らかになったことであるが、2014年にウラジミール・プーチン大統領率いるロシア連邦が、黒海北部に突き出したウクライナ領であるクリミア自治共和国に侵攻しました。

 マレーシア航空の旅客機がウクライナ上空でロシア軍の地対空ミサイルブークに撃墜され、多くの乗客がなくなり、その犠牲者の中には幼い子供たちが多くいたことから、未だ記憶に新しい事件であろうと思います。このマレーシア航空機の撃墜事件もウクライナという国の政治的信用を貶めるためのロシア側の自作自演といえるでしょうが、ロシアの論理からすれば、みえすいた戦略を使ってまでほしいエリアがクリミア自治共和国であったということでしょう。

 このロシア連邦が隣国ウクライナに対してしかけて領土の一部をかすめとった侵略戦の顛末をみながら、核兵器が兵器として使えない時代の対外戦の在り方、現代における侵略戦争がどういう形であるのか、について考えていければ幸いと考えております。

① ロシア軍が「電子戦」において、ウクライナ軍のレーダーを使用不能にする。

② ハッキングで発電所、メディアの機器、を乗っ取る。

GPSが使えなくなった偵察用のドローンは自分の位置を評定できなくなり、地上へ降下したまま動かせない状態にされてしまった。

③ ロシア軍がウクライナ軍の砲弾の電子信管を作動できなくする。また携帯電話を一時的に使用不能にして、機能が回復した時には、数多くのフェイクニュースをメールなどで大量に配信する。 ~これによりウクライナの住民は混乱へ陥ることになった。

④ 錯綜した情報を与えられた市民によるデモ隊がインフラ設備に押し寄せ、占拠することによって、電源が落ちてしまう事態も発生する。停電状態の中で、ラジオ局もデモ隊に占拠された状態となり、ラジオからはフェイクニュースが流し続けられました。

 後にラジオ局などインフラ設備を占拠したデモ隊は、実はロシア軍であることが判明している。かくしてロシア軍はウクライナから「クリミア自治共和国」の主権を奪うという戦争目的を達成したのである。

ハイブリッド戦争の本質

 「ハイブリッド戦争」を簡潔に表現すれば、サイバー攻撃により国家機能を麻痺させ、その間に特殊部隊などによって、政治経済の中枢部、都市部でのインフラ設備などの重要施設を迅速に占領してしまう戦争形態であるといえる。

 従来的な情報と火力の優越によって敵を撃破する、という段階から発展し、敵の情報と火力を機能させず、相手国民を混乱させ、正常な判断ができない状態にして戦争目的をはたす新たな戦争形態が出現したのである。

 この「ハイブリッド戦争」という戦争形態は、大量の人的犠牲を伴うことはありません。例えば、化学兵器工場の破壊、テロ組織主要幹部の殺害、一部の地域のみを占領するといった限定的な戦争目的ならば多くの損害を出さずとも迅速に達成できるはずです。

 そのため今までよりも戦争をおこすハードルが低くなる可能性がある。「ハイブリッド戦争」に対応するためには、宇宙からの攻撃やサイバー攻撃への対応機能を整備するとともに、相手国に狙われやすいインフラ設備などの重要施設を防護することもこれまで以上に重要になってきています。


ウクライナ危機で凄惨を極めた戦場の真実/映画『ウクライナ・クライシス』予告編 https://www.youtube.com/watch?v=wKjLg92h7Yo

ついにロシアのウクライナ侵攻が映画化されました。新しい戦争の形がどういうものなのか、自衛隊の装備を最新にしておけばよし、と考えている方は認識を改めるべきでしょうな。

他動画編

ロシアのクリミア併合から3年。


マレーシア航空機撃墜事件 ~オランダ安全委員会調査~

ウクライナ出身でロシアの侵攻を体験した方の講演

















2020年9月24日木曜日

日本が「ファイブアイズ」に加盟する日。 米英諜報ネットワークの一端を担える存在足り得るか?

 【スパイ天国】日本は「ファイブ・アイズ」に入れるか【WiLL増刊号#281

https://www.youtube.com/watch?v=iQ_V5t1vJuE


 イギリスのジョンソン首相が先ごろ我が国に重要なご提案をされたこと。米国&英国連邦で構成される「ファイブアイズ」諜報ネットワークに日本も加盟してはどうか?

 巷でもさまざまな論議が沸騰してきています。かつては北朝鮮による日本人拉致、朝鮮総連のような組織による拉致支援を許してしまった悔やみきれない経験、昨今では世界中からのサイバー攻撃による国内インテリジェンスの窃取ですね。ビッグデータが原油と同じくらいの価値を持つことになった時代背景の中、世界レベルとなった諜報戦への戦争に対処して、私たちはこのイギリスからの提案をどう受け止め、考えて新たな方向付けを目指していくべきなのか?

日本のファイブアイズ加入に対して懸念する深田萌絵氏の主張はこちらです。深田氏は慎重ですね。

日本のファイブ・アイズ加盟が危険な理由

https://www.youtube.com/watch?v=lGFsvaiBg94

上念司氏のファイブアイズ加入についての思想。国内法規など整備されることをあげ肯定的な考え。スパイ防止法の制定がしやすくなるのではないか。防諜後進国の脱却をはかる打開策。なるほど確かに国内に潜伏する諜報工作員をあぶりだすきっかけにはなるかもな。

国内のスパイが丸裸?日本のファイブアイズ加入でアジア情勢に大激震 超速!上念司チャンネル ニュースの裏虎

https://www.youtube.com/watch?v=8wTCf6T77wM


政府の見解はわかりませんが、与党政治家の一部は前向きな発言がみられます。

そもそも「ファイブアイズ」とはどういうものなのでしょうか?

河野太郎氏が防衛大臣のころに示した「日本が世界の諜報戦国家として脱皮する」ための思想。

日本もスパイ協定に?河野防衛相が接近するファイブ・アイズとは

8/21() 9:32配信https://news.yahoo.co.jp/articles/bc558299540a501e30ab4a49cd43b0a183536c79

黒井文太郎1963年、福島県いわき市生まれ。週刊誌編集者、月刊「軍事研究」特約記者、「ワールド・インテリジェンス」編集長などを経て軍事ジャーナリスト。ニューヨーク、モスクワ、カイロを拠点に紛争地を取材多数、雑誌、テレビなど各メディアで活躍中。著書・編著に「北朝鮮に備える軍事学」「日本の情報機関」「イスラムのテロリスト」(以上、講談社)「紛争勃発」「日本の防衛7つの論点」「自衛隊戦略白書」(以上、宝島社)、漫画原作に「満洲特務機関」「陸軍中野学校」(以上、扶桑社)など

 日本は、主要国ではおそらく突出してインテリジェンス(情報収集・分析)能力が弱い。なにせ専門の「対外情報機関」もない。そんな日本が中国や北朝鮮の脅威に備えなければならない厳しい状況のなか、814日付「日本経済新聞」電子版が、河野太郎・防衛相の興味深いインタビュー記事を掲載した。 河野防衛相は、米英が主導する機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」との連携に意欲を示し、「日本も近づいて『シックス・アイズ』と言われるようになってもいい」と語ったのである。

 ◆ファイブ・アイズとは何か?

米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国が共同で、安全保障にかかわる情報を共同で収集しようという協定がある。UKUSA協定という。 このUKUSA協定加盟5か国は、日本や他のNATO加盟国などとは一線を引いた深い情報共有を行っている。なにせ米英主体だから、その情報力は圧倒的だ。その5か国の情報共有の連携ぶりが、各国当局内やメディアなどでは通称で「ファイブ・アイズ」と呼ばれているのだ。 しかし、ファイブ・アイズという名称の協定はない。正式にはUKUSA協定だが、UKUSAよりはファイブ・アイズのほうが通りがいい。ちなみにこのファイブ・アイズは「5つの目で監視する」という意味ではなく、彼らがやり取りする機密情報が「5か国でのみ閲覧可」つまり5つの目にしか見せない「5アイズ・オンリー」だったことから来ているという。

◆5か国の意味するもの では、なぜこの5か国なのか。

これらの国々は、国際政治のなかできわめて強固な同盟関係にあるからだ。5か国はいずれも英語圏、すなわちアングロサクソン系という「近さ」がまずあるが、とくに米英の同盟は、単にNATOで結びついているだけでなく、両国同士が「特別の関係」とみなすほど深い。 UKUSA協定は、もともと第2次世界大戦中の米英の対ドイツ通信傍受作戦の枠組みを、終戦後に対ソ連・東欧に振り替えたものだった。UKUSAUKUSA、すなわち「英米」協定という意味だが、その後、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。東西冷戦が地球規模に広がり、通信傍受も地球規模で行う必要性が高まったからである。 衛星通信が発達すると、ますます地球規模の通信傍受が重要になった。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはそれぞれ地理的に傍受に役立つ場所にあったため、冷戦期を通じて徐々に役割が増した。 ちなみにこの「UKUSA」、日本では専門家含めて「ウクサ」と読む人が多いが、米国情報機関の2010年の公式文書に「読み方はユークーサ」と明記されている。ただ、海外の報道機関や専門家は「ユーケーユーエスエー」協定と呼ぶことが多い。 もっとも、ファイブ・アイズ5か国は「平等」ではない。情報の世界は、同盟国といえどもギブ&テイクの世界である。貢献度に応じて上下関係が生じる。ファイブ・アイズでは米国が圧倒的に上位にあり、次に英国となる。他の3か国はその下になり、必ずしも米英レベルの機密情報を共有させてもらえるわけではない。 とくに、グローバルな通信が衛星通信から光ファイバー通信に移行してくると、海底ケーブルの陸揚げ拠点の重要性が増してきた。今でも電波傍受は重要ではあるが、それ以上に有線ケーブルの盗聴が重要になった。そこで基幹ケーブルが集まる米国の東西の海岸と、英国南西部が、地球規模の通信傍受工作でますます存在感を増している。 さらに通信傍受機関は、現在、かつてのアナログ電波の傍受だけではなく、デジタル情報の収集・分析に軸足を移している。電子メールや暗号化されたメッセージの盗聴、あるいは標的を絞ったハッキング工作、さらにはメタ・データの解析などだが、これはもう圧倒的に米国の技術が高い。 したがって、ファイブ・アイズといっても、加盟国内での情報格差はかなり大きくなっているのが現状なのだ。 UKUSA協定はもともと通信傍受工作の協定だから、参加するのは各国の通信傍受機関だった。前述したように、現在はますます米国の立場が突出しているが、その米国の担当部局は国防総省の通信傍受機関「国家安全保障局」(NSA)になる。 ファイブ・アイズは元来、NSAを司令塔に計5か国が情報共有して連携する枠組みだが、NSAはそれ以外にも同盟国の情報インフラを取り込むべく、ファイブ・アイズよりも連携レベルの低い多国間の協力の仕組みをいくつも作っている。

◆情報共有する多国間協定はいくつもある

たとえばファイブ・アイズにフランスやオランダなど欧州4か国を加えた「9アイズ」。その9アイズにさらにドイツやイタリアら5か国を加えた「14アイズ」などがある。また、ファイブ・アイズに韓国、タイ、シンガポール、インド、フランスが加わった「10アイズ」もある。 さらにそれ以外にも、NSAは個別にイスラエルや日本とも深く連携している。 機密情報のやりとりをめぐる組織は、各国が複雑に入り乱れているのだ。 日本で通信傍受を行っているのは防衛省情報本部だが、日本の情報活動としては例外的にその傍受能力は高く、ロシア、中国、北朝鮮などの電波信号を傍受し、分析し、データを蓄積している。通信傍受による情報は日本が持つ数少ない独自情報だが、これは情報のギブ&テイクで、米国とやり取りされている。日本はファイブ・アイズなどの多国間協定には参加していないが、日米間の情報協力は緊密に行われているのだ。 そんな日本が、ファイブ・アイズを中心とする多国間協力の枠組みに参加するアイデアは、主に3つの観点から出てきた。ひとつは、近年、ロシアや中国のサイバー・スパイ活動が強化されていることに対し、いわゆる西側の主要国が連携して対抗しようという話。2つめは、ファイブ・アイズの5か国を中心に、中国産の資源に頼らない経済的な多国間協力を進めていこうという話。そして3つめは、中国の勢力拡大を受けて、多国間で中国包囲網を作ろうという話だ。

◆対中国情報戦の連携を模索

中国包囲網にはすでに日米台だけでなく、オーストラリア、カナダ、東南アジア諸国、インド、英国、フランスなどが参画している。とくに英国は空母をアジアに常駐させる計画があるとも報じられており、今後、中国海軍と直接対峙する可能性がある。 こうした国々は、日本が持つ中国軍の情報が欲しい。日本は米国とは深い部分まで情報の連携を行っているが、それ以外の国々とは限定的だ。 ただし、ファイブ・アイズは強固な5か国だけの排他的枠組みなので、日本がその正式メンバーになることはまず難しい。協力は可能であるし、おそらく今後はその方向に向かうと思われるが、日本が持つ有効な情報で、他国に提供しても構わないものは、すでに米国と共有されているので、日本はそれほど強い立場に立てるわけでもない。 逆に、日本が対中国軍の局面で、情報分野での大きな利益が見込めるかというと、それもあまり期待できない。日本周辺の軍事情報であれば、やはり米国からの情報が圧倒的であり、ファイブ・アイズの他の国々はそれほど独自情報を持っていないからだ。

◆日本にとって、得なのか、損なのか

結局、日本が提供する情報と受け取る情報の損得バランスは、持ち出し過多になる可能性が高い。ただ、目的は中国軍の封じ込めなので、いずれにせよ中国包囲網の強化になれば、日本の安全保障にとってプラスとはいえるだろう。 それともう一点、大切なことがある。情報の世界での多国間協力の経験が乏しい日本にとって、ファイブ・アイズの「お友達」になること自体は、悪いことではない。 ファイブ・アイズ5か国は、扱う情報の機密度は限定的ではあるものの、今では通信傍受情報だけでなく、もっと全体的な情報共有を行っている。そこにオブザーバー的に参加できれば、こうした情報の世界と接する機会をより多く持つことになる。 ファイブ・アイズの末席に非公式に「参加させてもらった」としても、第一級の機密情報が簡単に手に入るとか、日本の情報能力が一気に高まるなどというほど、インテリジェンスの世界は甘くない。しかしそれでもいくらかは、通信傍受以外の情報活動のノウハウを吸収できるかもしれない。日本は、この分野ではまだ初級者だ。一歩ずつ進んでいくしかないだろう。

ファイブ・アイズとは 英語圏5カ国で機密情報共有
2020/8/15https://www.nikkei.com/article/DGXKZO62677940U0A810C2EA2000/

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▼ファイブ・アイズ 米英などアングロサクソン系の英語圏5カ国によるUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組みの呼称。米英が立ち上げ、1950年代までにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。米国以外は英連邦の構成国である。

米国を中心に「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集、分析しているとされる。参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同活用する。長らく公式に存在を認めていなかったが、2010年の関連文書の公開で活動の一端が明らかになった。

日本は5カ国と安全保障面で協力を進めている。米国は日米安全保障条約に基づく同盟関係に基づいて連携する。英豪などとの関係は「準同盟国」とも呼ばれ、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)などを結んでいる。


ファイブ・アイズ調査報告

疾病調査


研究員調査

※管理人としては、エシュロンという国際監視ネットワークを有するファイブ・アイズへの加盟への提言がイギリスからまずあった、という点が重要であろうと思えます。イギリスからしてみれば、日本というよりもその背後に同盟国として存在するアメリカとの連携強化という側面もあるように思えます。元々アメリカ、イギリス、日本は同じ「海洋国家」ということを考えると、大陸国家から権益を守ろうという点で考えると自然な成り行きという見方もできるのではないでしょうか?


【ぼくらの国会・第37回】ニュースの尻尾「日本がファイブアイズに加盟?」

2020年9月14日月曜日

世界が認めたスパイ映画。

黒沢清監督、映画『スパイの妻』でベネチア国際映画祭銀獅子賞蒼井優&高橋一生が祝福

 ORICON NEWS
© 2020 NHK, NEP, Incline, C&I 黒沢清監督の映画『スパイの妻』がベネチア国際映画祭銀獅子賞

 女優の蒼井優が主演で、黒沢清氏が監督を務めた映画『スパイの妻』が、92日(現地時間)よりイタリアで開催されている第77回ベネチア国際映画祭で、銀獅子賞(監督賞)を受賞。これを受け、蒼井、高橋一生、黒沢監督から喜びのコメントを寄せた。
 同作の舞台は1940年、満州で恐ろしい国家機密を知ってしまった優作(高橋)は、正義のために、この秘密を世に知らしめようとする。妻の聡子(蒼井)は、反逆者と疑われる夫を信じスパイの妻とののしられようとも、ただ愛する夫と生きることを心に誓う。しかし、太平洋戦争開戦間近の日本で、夫婦の運命は時代の荒波に飲まれていく
 2018年のジャック・オーディアール(『ゴールデン・リバー』)、19年のロイ・アンダーソン(『ホモ・サピエンスの涙』)に続いて、ベネチア国際映画祭の最優秀監督賞にあたる銀獅子賞の受賞は、日本映画としては2003年の北野武監督『座頭市』以来、17年ぶりの快挙。溝口健二監督が『雨月物語(53)と『山椒大夫』(54)で2度、黒澤明監督が『七人の侍』(54)、熊井啓監督が『千利休 本覺坊遺文』で受賞、と日本では5人目の受賞者となった。
 今回の快挙を受け、黒沢監督は「スタッフと俳優の力が最高のかたちで組み合わさった結果だと思っています。映画の可能性は無限なのだと、この歳になって実感しました」とコメント。蒼井も「黒沢監督、銀獅子賞受賞おめでとうございます。ケイト・ブランシェットさんから監督のお名前が呼ばれた瞬間、現場の片隅で、モニターを静かに並んで見つめられていた、監督と奥様の後ろ姿を思い出しました。たくさんの映画仲間から連絡が入り、みんなとても興奮し、感動し、喜んでいます。黒沢監督、本当におめでとうございます。これからも監督の映画を楽しみにしています」と呼びかけた。
 高橋は「ベネチア国際映画祭監督賞受賞、心からお祝い申し上げます。この作品が世界で評価されることをうれしく思います。黒沢監督のもと、あの空間、あのスタッフ、キャストとともに作品を作り上げていく時間は、最高の体験でした。これからも素晴らしい作品を楽しみにしております。おめでとうございます」と祝福した。
 審査員のひとりである、クリスティアン・ペッツォルト監督(『未来を乗り換えた男』)は「大好きな作品です。オペラ的なリズムと画作りで政治ドラマを描く。このような作品には久しく出会っていませんでした。3040年代の伝統的な世界を現代のスタイルで表現しています」と本作を絶賛している。

映画『スパイの妻』予告編

映画公開スペシャルトークセッション


※どうも単にスパイが活躍するという映画ではなく、知りえた重大な国家機密に違和感を感じてこれにむきあっていくという内容のような気がします。
 国家機密を知りえたときに人間はどう考え、どう動くのか。興味は深いです。

スパイとは何か?

CIA(猫諜報機関)深田より視聴者の皆様へ(^▽^)/スパイ解説 
https://www.youtube.com/watch?v=MVVlE_KikTM
  
【スパイの分類】 
国家スパイ~国家機関に雇われて工作活動を行う。パスポートを複数持つ。 
産業スパイ~民間人が多いが、国に雇われている人もいる。ハニートラップを行う。 
民間諜報機関によるスパイ~メディア、省庁、検察、警察OBで構成されていることが多い。ハニトラ、罪、不祥事の捏造、小さなことを大きく煽り警察を動かす。汚れ仕事を行う。

髙橋洋一チャンネル 第64回 スパイ防止法がないのはやっぱりマスコミのせい&ハニートラップの真実 
https://www.youtube.com/watch?v=uJH7gMKoOOE
 「特定秘密保護法」は、スパイ防止法よりも罰則が軽い。これがないとアメリカが重要な機密をくれないから成立させたもの。この法律に反対する野党とマスメディアは、外国のスパイ組織とつながりがあるため反対している?
 スパイ防止法は80年代に自民党が国会に法案を提出しているが、野党の反対により不成立となった。そして第二次安倍内閣のころに「特定秘密保護法」という不完全な形で成立、施行されるに至る。
 ハニートラップは一番コストの安いスパイ戦術!?
海外に政治家が訪問するときに、ファーストレディを同伴するのは、ハニートラップ防止のため。女性を近づけるのはやめてくれ、という意思表示。
 つまり国際外交は、それだけで情報戦だということですかね。