2020年8月7日金曜日

旧陸軍中野学校の正体 ~中野学校戦士 小野田寛郎さんの思想~

大日本帝国陸軍中野学校!スパイの精鋭部隊が日本に存在していた・・・

 今日は、日本が誇っていた戦時中スパイ養成学校の大日本帝国陸軍中野学校についてです。
 中野学校については沢山の書籍が発売されていたり、ネット検索なんかでも、多くの記事が書かれているので知っている方も多いのではないのでしょうか。
1937年頃から1945年までの間、僅か7年近く日本に存在していた精鋭諜報部隊です。
戦時銃は、中野学校から輩出された優秀な諜報員が様々なところで活躍することになります。
 有名な方では小野田寛郎さんも元中野学校出身者です。
 戦後29年間も「残置諜者」としてフィリピンのルバング島で、活動し続けたことは記憶に新しいと思います。
 ユーチューブなんかでも小野田寛郎さんの動画は沢山見れますが、帰国時のその鋭い眼光は未だに目に焼き付けていると共に、戦争の厳しさ、激しさなどを物語っていました。
そして29年間もの長きに渡り、フィリピン・ルバング島のジャングルの中でサバイバルし続けて生き延びたのは驚きとともに、大日本帝国陸軍の規律と中野学校でのノウハウがどんなものであったかを物語っています。

 世界の有名諜報部隊にはアメリカのCIA、イギリスのMI6、オーストラリアのASIS(エイサス)、インドのRAW、フランスのDGSE、ロシアのFSB、ドイツのBDN、中国のMSS、イスラエルのモサド、パキスタンのISIなどがあります。
 特に、アメリカのCIAやロシアのFSB(旧KGB)、イスラエル・モサド、イギリスMI6が有名ですね。
 イギリスMI6なんかは007(ダブルオーセブン)の映画が有名で、ジェームスボンドをご存知の方も多いと思います。
 そんな世界的に有名な諜報部隊に引けをとらないスパイ部隊が日本にもあったのは驚きですね。
 中野学校の活動は多岐に渡りました。

 諜報・謀略・防諜などの秘密戦に関連する学問の講義と実践、科目のほうは、軍事学(兵器・築城・航空学など)、外国語(英語・ロシア語・中国語)、武術(剣術・柔術)、細菌学、薬物学、法医学、実習(通信・自動車など)、講義(忍術・法医学など)、その他(気象学・交通学・心理学・統計学など)などこちらも多岐にわたっています。
 また面白いところでは、甲賀流忍術なども学んでいたようです。

 古くから伝わる忍術の他に、金庫の開け方、手錠の外し方、殺人法、(人殺しの極意、暗殺)など、広範囲に渡って学習したようです。
スパイの殺人は密かに、しかも一瞬で果たさなくてはならず毒物を使用した暗殺法が主だったようです。
 また、刑務所に服役中のスリの達人を教師に招き、泥棒、スリの勉強もしたようです。
こうして徹底した学習によって、精鋭のインテリジェンス戦士が2500人以上も輩出されることになったのです。

小野田さん動画編

その故人となられましたが、小野田さんの思想からあらためて学べる動画は多いです。ちなみに旧陸軍中野学校で教えていたことは、日本人拉致の悪しき首謀者金正日も絶賛していたといいます。いわば北朝鮮の特殊工作、ひいては日本人拉致の発想に間接的に影響を与えたいるのかもしれませんね。中野学校のノウハウが悪い方へ利用されてしまったともいえそうです。

「生き抜く」最後の日本兵・小野田寛郎

「生きる-親が変われば子も変わる-」 小野田寛郎さんが講演
小野田寛郎の名言(勇気と元気が出る言葉)|何かにつまづいたり、失敗して落ち込んだり、仕事が嫌になってしまった時、きっと心を癒してくれます。
【小野田寛郎さんの遺言】戦国時代、あの時代の心掛けに成れ

リンク(ブログ画像の出典)
帝都を歩く  陸軍中野学校画像出典

陸軍中野学校とは?

「中野は黙して語らず」
 1938年開校し、第二次大戦終戦まで8年間、2500名の人材が輩出された。その功績は一般に知られることはなく、任務中に絶命することもしばしばあった。中野学校の要員は日本国の捨て駒としてその任務を全うすることを宿命づけられていた。
 こうして中野学校の任務については、謎なのであるが、戦後に卒業生が著書を刊行することにより活動の一部が明らかになってきた。

 中野学校の学生は、軍服を着用することはなく、当時奇抜な長髪が奨励されていた。これは海外で諜報活動に従事する際に、軍の関係者であることを隠蔽する必要があったためである。また「スパイ養成学校」としての中野学校では、学生が自らの立場を詳らかにできるはずもなく、両親、友人、恋人にさえも自分がどんな仕事をしているのか一切説明はしなかったといわれる。
 中野学校の「スパイ養成学校」としてのレベルは、世界の当時の諜報養成学校と比較しても全く遜色なかった。

岩畔豪雄(いわくらひでお)1897年~1970年
 陸軍少尉。戦時中は「謀略の岩畔」と呼ばれ、外国大使館の盗撮、郵便検閲、偽札製造の研究に従事した。中野学校の設立は、1937年に岩畔が参謀本部に提出した「諜報の化学化」がきっかけとなったとされる。

入学試験

 中野学校の入学試験は、面接試験の際に試験官の机の上にはインクのつぼやタバコ、本や灰皿など様々なものが置いてあった。受験生は部屋に招き入れられると名前だけ名乗ってすぐに隣の部屋に移動するように命じられる。机の上においてあったものを説明させられるのである。
 こうした口頭試験がなされることは、受験者には事前に知らされていない。しかし受験者は部屋にいた瞬間に、視覚情報を仕入れ、すべてのアイテムの名称を諳んじることができたという。さらにそこにおいてあった本のタイトル名に至るまで、まるでカメラで部屋の様子を撮影したかのように正確に答えたという。
 こうした難関の試験を突破した受験者たちは、情報戦のノウハウを徹底的に叩き込まれた情報戦においては、敵国や対象地域の懐の中に入り込み、誰にも気づかれずに情報を収集しなければならない。身元が日本人、軍関係者であることがバレてしまっては作戦にならないため徹底的に叩き込まれたわけである。

「天皇の名を聞いて直立不動の姿勢をとるのは軍人だけだ」
 中野学校の学生も「天皇」という単語が出れば、気を付けの姿勢をとってしまうが、これはしなくていい。間違いとして厳しく指摘したといわれる。

「謀略とは誠なり」
日露戦争の時の明石元二郎氏の工作を例に、ターゲットを欺くのではなく、互いに心を通わせ事にあたることが肝要であると説いた。秘密戦に携わる者の心のよりどころである。

「諜報活動のノウハウ」
飛行機のどこにどれくらい砂糖を投げ込んでおけば、離陸後何時間で爆発するのか?
列車の転覆方法、開封した手紙を完全に元通りに復元する方法。

スパイに変装は不可欠な技法である。時には女性に成りすまして女性限定のエリアに足を踏み入れなければならないこともある。美女の変装をどう完成させるのか、女形のプロに学ぶ授業もあったといわれる。

前科無数のスリのプロを招聘し、誰にも気づかれずに、どうやってスリを成功させるかを実演させた。

甲賀流忍術の名人を招聘し、竹製のシュノーケルを使って水中に潜む方法。手足の関節を外して縄から逃げ出す方法、壁や天井をはい回る秘術などを実地で訓練した。源平合戦や戦国時代の忍術資料も使い、徹底的に座学も重ねた。「塀にぴったりついて影が映らない歩行術」

学科は諜報、謀略、宣伝、防諜に大別され、情報将校として必要な技術を叩き込まれる。
「謀略」を例にとると殺傷破壊、偽騙、潜行、連絡、潜在、獲得などの項目がある。「偽騙」とは、身分・容貌を変える変装術で、物品の偽騙では「踵を切開して埋めた後に縫合する。」という物騒な秘匿法から、ビロウな話しで恐縮であるが、「ゴムのカプセルにつめて嚥下し、排泄後に取り出す」方法がテキストに書かれている。

「道端に便がしてある。男女の区別をどうやってみつけるのか?」

電話の盗聴、暗号の解読、信書の開封、秘密インクの使用法 ~特殊技術教育~

スパイ同士の会話は、「すべての息を吐きだした後、耳元で話す。」

候察の実地教育
教官と街へでかけることがある。ある工場の前を通った。煙突から黒煙と黄色い煙があがっていた。
「工場の使用燃料は何か?」「何を生産し、その数量は?」「従業員数は何人か?」と矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
 候察ではメモをとることは一切禁止されていた。敵に捕まった時に証拠を残さないためだ。

「一撃必殺の合気道&剣道」
身の安全を守るため、武道の習得は欠かせない。柔道は一撃必殺の効果が今一つということで、合気道と剣道が取り入れられた。合気道の老師範は親指1本だけで何人もの偉丈夫を簡単にねじ伏せたという。

遊撃戦(ゲリラ戦)に方程式はない。
佐渡おけさにはいわゆる正調というものはない。節も振りも各人の好みによって、いくらくずしてもいいといわれている。中野の教育も同じである。各自がその時、状況に応じて最も適切と思われる行動をとることを最上とする。

「たとえ国賊の汚名を着ても、どんな生き恥をさらしてでも生き延びよ。できる限り生きて任務を遂行するのが中野魂である」
陸軍中野学校の教育方針である。「天皇のために死なず」、自分たちが命を捧げる対象は、天皇ではなく、政府や軍部でもなく、日本民族である。民族を愛し、民族の捨て石となって喜んで死ぬことができるか?が問われた。

「死ぬなら捕虜になれ」
捕虜になって敵に偽情報をつかませよ。そのために「偽装投降」という戦術まであった。功績を認めてくれるのは組織の上層部だけであり、世間的には汚名を着せられ、人知れず朽ち果てていくことが秘密戦士の宿命であった。


第二次大戦で活躍した中野学校出身者

 軍事、政治、経済、心理学、思想学、ゲリラ戦術、射撃、格闘技に至るまで学びつくした中野学校の人材は戦時中、アジア各地へ赴いていった。
 アジアにおいて日本軍はとりわけ中国の激しい抵抗にあっていた。ソ連、アメリカ、イギリス、フランスは各国ルートを通じて中国に援助物資を送り込んでいた。
 戦況打開を図るために、中野学校出身者はイギリスからのビルマ独立を画策した。イギリスによる統治状態を解除できれば、ビルマを通じての軍事物資流入を防ぐことができる
。中国大陸へ渡った中野学校のメンバーは、相当に困難な任務を遂行していた。

「各地区正面の敵に対する諜報工作、寝返り工作、戦場謀略、経済工作或いは軍、師団司令部遊撃戦、情報勤務などに従事した」(『陸軍中野学校』中野校友会編 原書房)

 中野学校は、日本軍の戦況を極めて冷静に分析しており、1942年段階で既に敗戦を予想していたといわれる。その時には、暫定的な亡命政府を海外に建設した上、中野学校の動きによって本土の占領政策を混乱させる構想があったようである。

 戦時には、天皇や大本営を疎開させるために長野県松代市に巨大防空壕が建設された。戦争が終結したために松代大本営が稼働することはなかったが、もし稼働していたら中野学校出身者の精鋭が集結して長期ゲリラ戦が展開されていたかもしれない。

中野学校の諜報員はメモをとらない

 中野学校出の諜報要員というのは、万が一捕虜になったときのことを考えて、一切メモなどはしません。すべて頭に記録してしまう習慣がついているのです。そして情報を積み重ねて、次の作戦行動を組み立てる。
 これは命にかかわることですから。でも命を脅かされない生活をしていますと、やっぱり物忘れするようになりますよ。

敵に捕まって、首に縄を巻かれて、上から吊るされて殺されそうになった時の対処法
その状況で我慢して救出を待つ。現代でも一部の武道家は実施する訓練。
上あごの奥のほうに舌をキュッとくっつけると、首はしまっても、その筋力がある間は呼吸が可能である。苦しくてもずっと我慢していれば、救出してもらえる。ただし声は出ないから、どこかを叩いて知らせればいい。

素手で人を殺す訓練
敵地に行った時に調べられるから、身に寸鉄も帯びずに要人のところにいかないといけないため、そういう時の暗殺方法。


動画

中野学校 フェイクニュース心理作戦
よくわかる陸軍中野学校
映画「陸軍中野学校」と北朝鮮工作員について

残置諜者 小野田寛郎氏の思想

【チャンネル桜アーカイブス】チャンネル桜の大東亜戦士たち―田形竹尾・小野田寛郎・名越二荒之助[桜R2/5/6] 
https://www.youtube.com/watch?v=o3iePX2qVsA  
陸軍少尉 小野田 寛郎 
https://www.youtube.com/watch?v=pMCS8XQDnJY
[昭和49年3月] 中日ニュース No.1052_2「小野田さん30年目の帰還」 https://www.youtube.com/watch?v=mlHauHGlYQE

2020年6月26日金曜日

米中情報戦争の行方 北朝鮮の韓国への圧力の意味とは?

米中情報戦争の行方

 アメリカにおける警官のよる黒人殺害に端を発した人種差別暴動は、アメリカの外の第三国の情報戦の影がみえる。アジアの赤い国に都合のよろしくないアメリカのトランプ政権を倒すためにアメリカ国内の世論、リベラル系のメディアを「操作」して政権への攻撃をしかけている、ありそうな話です。  
 経済的な依存関係の深い国、軍事的に強大な国家と対峙するときには、真正面から軍事的な圧力をかけて攻め立てるのはリスクも大きいし、多大な国益を失う恐れがある。  軍事だけが戦争ではない。侵略戦争、覇権戦争が国連で禁止されている時代だからこそ、あからさまな軍事力の運用でない「戦争」を勝ち抜かなくてはならない。  
 どこも自国の国益を拡大していくのに必死な時代です。しかしそのためには国際関係のバランスもとらなければならない。  
 「みえない戦争」「みえない攻撃」が国益を左右する時代となりました。その核となる戦いが「情報」「諜報」による戦争でしょう。  
 どこの国も民間メディアは情報戦争の先兵ですし、国家の諜報戦の予算は青天井、情報を収集、分析するのにお金を惜しみません。まずはインテリジェンスの戦いを制することが勝利の鍵といえます。 


 
【西岡力】金与正体制でクーデターは起こるか 
https://www.youtube.com/watch?v=NN502shMX3Y  
 北朝鮮は世界でも有数の情報戦大国といえます。北朝鮮の通常軍事力ははっきりいってたいしたことはない状態です。「脆弱な」通常軍事力をカバーするのは核弾頭、弾道ミサイル、サイバー戦部隊、特殊工作員部隊となります。核を背景として強硬外交を行う北朝鮮内部で頭角を増してきた金与正氏とはどういう人物なのか?解説しています。  
 北朝鮮の最高指導者金正恩氏には3人は影武者がいるといわれています。金与正氏がトップにでることはないかと思います。ただ金独裁体制を絶対死守するために影武者を使いこなすのは与正氏かもしれませんね。 

政治的な手腕にたけた金与正氏の人となりがよくわかる気がします。 

【西岡力】金与正「爆破命令」のウラに金正恩「余命3年」【WiLL増刊号#217】 
https://www.youtube.com/watch?v=JOLqW0E6rNA

金正恩氏はすでにヤバイ状況なんでしょうか? 北朝鮮情勢から目を離せないですね。

2020年5月11日月曜日

ハルビン特務機関 ~ソビエト連邦の脅威を探ったシベリアの諜報機関~

戦争の行方を左右する諜報活動

現代の戦争を遂行する上で欠かせない行動の一つが諜報活動、いわゆるスパイ行為であろう。敵地から様々な手段で情報を盗み、敵国内部にスパイを送り込んで、内部工作により国力を疲弊させる。そうすれば、自国は入手した情報で戦闘を有利に進めることができるし、敵国は国内の混乱で戦争どころではなくなるというわけである。こうした諜報活動を我が国で担ったのが、陸軍省や外務省の「特務機関」と呼ばれる組織である。

1885年に朝鮮半島での影響力を強化したい清国や、アジア進出を目指すロシア帝国との開戦を危惧した我が国は、陸軍の萩野末吉をウラジオストクへ駐在官として派遣し、大陸やシベリア方面の情報を収集させた。これが日本陸軍による諜報活動の始まりであるといわれている。

日清戦争後には、陸軍の参謀本部が多数の情報将校(情報収集&謀略活動を任務とする役職)を満蒙地域とロシア国内へ派遣する。日露戦争勃発後にロシア国内で反政府勢力へ支援を行い、国力を衰退させた明石元次郎大佐の活躍は有名である。こうした諜報活動は、日露戦争後も継続され、太平洋戦争前後には専門の特務機関が活動を任されていた。その一つが満州(中国東北部)の都市ハルビンに設置された「ハルビン特務機関」である。

満州の対ソ謀略組織

日本海軍がアメリカ海軍を仮想敵国とした一方で、日本陸軍は終始一貫してロシアと革命後のソビエト連邦を警戒していた。日韓併合と満州国建国により国境は事実上地続きとなり、その脅威は日露戦争時とは比較にならないほど高まっていた。従って最も長く国境を接する満州は必然的に最重要地域となり、陸軍が最も諜報に力点をおくことになる。

諜報活動が活発化したのは、「シベリア出兵」直前の1918年初頭であった。陸軍ではシベリアでの正面戦闘以外の活動、すなわち「情報収集」や「敵地への宣伝工作」「日本に味方する勢力とのコンタクト及び育成支援」などの諜報業務を戦闘地域でどのように行うかが課題となっていた。

これらの問題を解決するために、参謀本部は司令官指揮下に専用の工作組織をおき、現地活動を可能にしようとした。この時に設立された特務機関の一つが「ハルビン特務機関」である。シベリア出兵が失敗に終わると、日ソの国交樹立でソ連国内の特務機関が閉鎖していく。一方ハルビンをはじめとする満州方面の特務機関は引き続き情報収集を続けた。

昭和となって大陸への日本軍進出が活発化すると、各機関は19404月に関東軍直属の「関東軍情報部」へと改変され、ハルビン、チチハル、奉天、アパカといった各地の特務機関は、その支部として組み込まれた。こうして巨大した諜報網は満州全域に広がり、最盛期には戦闘員が4000人にを越えたといわれている。

諜報活動と外国人部隊の設立

特務機関内部には、対ロシア人工作専門の「白系露人事務局」がおかれ、協力者の増加を狙った宣伝工作や機密情報の入手を行うと同時に手に入れた文書は「文書諜報班」が独自に分析と翻訳を実行する。これらは193611月に制定された「哈爾賓機関特別諜報」に基づく活動でソ連共産党から逃れてきた亡命ロシア人の協力を得つつ、ソ連総領事館の現役電信員もひきこみ、かなりの情報を仕入れていたといわれる。

 しかしソ連も特務機関の動きは察知していたようであり、偽情報(ディスインフォメーション)を掴まされることも多かったといわれている。さらには入手した情報も、諜報戦を軽視する関東軍上層部の理解がたりないせいで、作戦に活かされることは少なかった。

 その一方で成功をおさめた活動が存在していた。外国人部隊の設立である。

 満州には、革命後のソ連から亡命してきた白系ロシア人が多数存在した。そうした反ソ派の人員を中心に1937年に設立されたのが、約250人のロシア人兵士で構成された「浅野部隊」である。1937年には下部組織の牡丹江機関が「横道河子隊」を、1944年にもハイラル北方の警備を担当する「コサック警察隊」を編成する。最大150人と小規模ではあったが、満州国軍の正規部隊として、1945年まで配備されたのである。

 さらにロシア人だけではなく、モンゴル人による部隊も編成されていた。第868部隊、通称「磯野部隊」といわれる。19419月に約800人のモンゴル人を集めて編成された部隊であり、目的はモンゴル方面の防衛と敵地での謀略活動である。

 当時のモンゴルは、ソ連の影響下にあったため日ソ開戦時の活躍を期待されていた。しかし対ソ戦の可能性は日ソ不可侵条約締結によって事実上なくなり、2年以上外蒙古で飼い殺し状態となっていた。1943年に移動が命じられたが、行先は中国東北部の興安であり、部隊名は「第53部隊」に変更となる。翌年1944年には関東軍へ転属され、「第2遊撃隊」として満州西方の防衛につかされた。ただ状況に振り回されはしても我が国を裏切ることはなく、19458月のソ連侵攻においても松浦友好少佐に指揮され、果敢に戦っている。

 特務機関が考案した中で最大規模の作戦が、「K号工作」である。日ソが開戦すれば偽のソ連軍警備艇を使用し、工作員をソ連兵に変装させて、アムール川の鉄橋や川沿いの施設を爆破するという壮大な作戦計画である。この作戦計画は中止となったが、実行されていればソ連との戦いの推移は変わっていたかもしれない。

ハルビン機関の終焉

 ハルビン特務機関は、数ある特務機関の中でも活動期間の長い組織である。そのため戦史で名を残した名将にはこの機関の出身者が少なくない。東条英機の後任として総理大臣となった小磯国昭、満州事変の立役者の一人である土肥原賢二、ポツダム宣言受諾後に千島列島を攻撃したソ連軍から千島を防衛した樋口季一郎など全員ハルビン特務機関の構成員kじゃ機関長を経験していた。

 194589日のソ連軍参戦とその後の満州制圧でその歴史に幕を閉じることとなった。モンゴル人部隊はソ連軍の数に敗れ、戦線離脱を余儀なくされ、白系ロシア人部隊も再結集したものの、関東軍にソ連軍と間違えられて、誤爆により全滅するという結末をたどっている。

動画編


※戦前の我が国の仮想敵国として陸海軍ともに北のソビエト連邦を意識することができていたら、アメリカとの戦争になっただろうか?
北からのソ連軍の脅威ということに国家防衛の主眼をおいていたら、ソ連コミンテルンやソ連軍の諜報戦略に惑わされることもなかったかもしれない。第二次大戦の歴史的総括が進んでいますが、ある意味ソ連の諜報戦に敗れたという側面もあるのではないでしょうか?



2020年5月10日日曜日

満州第502部隊 ~旧日本陸軍幻の特殊部隊~

日本初の特殊部隊の卵

1941年(昭和16年)11月に対ソ連開戦を危惧する旧日本陸軍は、関東軍に対して敵地工作を主任務とする新部隊編成を指示していた。この指示に従って新設されたのが、満州第502部隊である。

 数千人単位で編成される通常の連隊に対して、精鋭による遊撃戦を想定した第502部隊の隊員数は、約300人のみ。隊員は他の部隊から引き抜いたベテランだけで構成されていた。部隊の本部がおかれたのは、
満州の吉林である。対ソ連開戦時には、敵地での破壊工作を行う、ことになり、橋梁や後方陣地の爆破を実現するべく、隊員への訓練は苛烈を極めていたといわれている。

 夜間、寒中の行軍訓練から軽装備での山岳踏破、時には30km以上の装備を背負って1日約80kmの行軍を強いることもあったといわれる。中でも爆発物の取り扱いや目標施設の破壊法などは徹底的に叩き込まれる。
橋を模した施設と模擬弾を使用した実戦演習もよく行われていた。
 その一方でユニークな戦術訓練も取り入れていた。それが、気球を使って敵陣に侵入する訓練である。航空機よりも静かであり、隠密行動に適するとして研究が始められ、1944年5月には隊員に搭乗飛行させる「
き号演習」が実施されている。しかし気球は、気流の影響を受けやすく,重りや排気弁を操作しても思い通りに操縦するのは極めて困難であった。演習においても隊員の1人が危うく遭難しかけており、結局1945年8月
のソビエト連邦侵攻においても気球が使われることはなかった。

発揮できなかった実力

 1944年3月に第502部隊に転機が訪れることになった。部隊の拡充再編が決まり、遊撃戦の専門家である鶴田国衛少佐が着任したのである。鶴田少佐は、陸軍中野学校の元教育主任であり、日中戦争初期の経験をベースに「遊撃戦経典」と呼ばれる遊撃戦の基礎を構築
した実績を持つ。
 1944年4月の会議では、鶴田少佐を含む関東軍の幕僚の多くが、日ソ戦は、ソビエト連邦の先制先制で始まると予想して、橋や線路の破壊で進軍を遅らせ、主力部隊が準備を整えるための時間を稼ぐ部隊が必要であるとの結論が下された。

 対ソ連戦にむけて「機動第一旅団」が創設されると第502部隊も編入が決定する。総兵力は旅団全体で約6850人を数え、初期の300人体制と比べて約20倍以上の規模となった。しかしやはり対ソビエト連邦部隊ということで、対米対英を中心とする戦闘に出撃する機会は巡ってこなかった。
 1944年6月に第502部隊へ釜山港からの出撃命令が下ったことはあったが、港への到着後に中止となって吉林へ帰還している。中止の理由は未だに不明であるが、アメリカ軍が攻撃中のマリアナ諸島への援軍として派遣されるところを、関東軍が虎の子部隊の引き抜きを嫌って猛反対し、やむなく中止したとの見方が有力である。

 1945年になるとナチスドイツが敗色濃厚になって満州沿い国境のソ連軍が日々増員され続け、関東軍では、ソ連参戦の時期に関する議論が白熱していた。ソビエト連邦が1945年4月に日ソ不可侵条約を破棄したため、8月中にも戦闘が始まるとする者もいたといわれるが、大半は
部隊の集中と補給にかかる時間に鑑み、ソ連参戦は9月~11月の間と結論づけられてしまう。
 ソ連軍の8月の満州侵攻に対して、第502部隊を含む「機動第一旅団」は有効な手段を講じることができなかった。ソ連による攻撃が奇襲攻撃であったことで、特殊作戦をしかける余裕がなく、通常部隊としての戦闘を余儀なくされ、8月12日には小規模な橋梁爆破が行われたが、敵の侵攻を遅らせることは敵わなかった。夜間強襲で対抗したが、圧倒的な物量のソ連軍には太刀打ちできず、多数の戦死者を出しつつ、9月3日に本土からの武装解除命令に従い投降する。旧陸軍初の特殊部隊となるはずであった部隊は、訓練の成果を十分に発揮することもなく、
その歴史を終えたのである。

動画でみる満州第502部隊

今の陸上自衛隊の特殊作戦群のご先祖さまにあたるわけですね。特殊部隊構想は既に旧軍のころからあったということです。しかしソ連軍の侵攻が速すぎたというより、情報部隊とリンクしながら、戦略を実行し、ソ連軍の満州侵攻を阻止してほしかったな、と思ってしまうのは私だけでしょうか?



2020年5月7日木曜日

満州の化学戦研究部隊 日本陸軍516部隊

禁止された非人道兵器
 第一次世界大戦では、枢軸国側も連合国側も両陣営が使用した「化学兵器」であったが、人間を必要以上に苦しめる残酷な兵器であるという観点から1925年のジュネーブ議定書において規制対象となった。そして第二次世界大戦と時には実戦に投入されることはなかったといわれている。
 しかしジュネーブ議定書には、化学兵器の使用について「研究行為については使用を禁止しない。」という法的な抜け道が存在した。世界各国が密かに化学兵器の開発を継続していたのはこのためであり、ジュネーブ議定書を批准しない我が国についてもそうした国々の一つであった。そして我が国で「化学戦」分野で役割を担った組織が「516部隊(関東軍化学部)」であった。731部隊との違いは、731部隊は毒素の強い細菌を利用した生物兵器の研究を重視していた。(バイオ兵器)
 毒ガスなどの化学兵器(ケミカル兵器)は516部隊の担当であったといわれる。ただ731部隊と516部隊は、共同研究を行うこともあったとされているため、両隊ともとても近しい関係であったことは間違いないであろう。さらに組織の存在が極秘扱いされた点も731部隊との共通点である。
 516部隊は、1939年に関東軍技術部化学兵器班を再編する形で誕生した組織である。本部は満州のチチハル。兵器研究と毒ガスの有効的な使用法の確立などを行っていた。研究の方法論は、確かに現代人の感覚からみれば非人道的な行為ではあるものの、方法はどうであれ、研究そのものは合法であった。しかし516部隊が開発した化学兵器は実際に使用されたことがわかったのである。

 戦後の研究結果によると、日中戦争時に山東省を中心に毒ガスが使われたことが判明したのである。使用回数も1度や2度ではなく、終戦までに中国大陸全土で約1000回を超えていたといわれる。ただやはり国際条約違反なので大きな規模で使用されることはなく、部隊の単位での小規模使用がせいぜいの状態であった。ガスの種類も非殺傷の催涙系がほとんどであったといわれている。



習志野学校の真実
 陸軍習志野学校において、高度な化学的な知識を身に着けて、研究員を各隊へ供給していた。

1932年 第一次世界大戦で毒ガスの実用化の事実を知った旧日本陸軍は、化学戦に備えた研究機関をたちあげるに至った。(習志野学校の設立)※場所が千葉県習志野市
当初は防護策の研究のみを担う小規模な組織であったが、満州事変以後の軍部の権限拡大に伴い、人員は年々増加していき、最終的には約1360人を擁する毒ガス研究の中心地となるのである。

学校では、毒ガス関連の部隊に配属予定の将兵に対する基礎教育、つまりは毒ガス基礎知識と取り扱い方法、防護法の教育を行い、日米開戦後は実用訓練にまで施すようになったという。そして
卒業生が最も多く配属された部隊が「731部隊」と「516部隊」であった。さらに「瓦斯兵」として通常部隊へ派遣された兵も多かったといわれている。さらにそれ以外の配属先としては、軍の毒ガス工場があげられる。

日本軍が毒ガスを生産していたことは、今では広く知られており、かつて工場のあった広島県の大久野島は、跡地を一部だけ一般公開している。工場配属となった兵士は、島でガスの量産に携わり、またはガス砲弾を製造していた福岡県小倉南区の曽根製造所での製造作業に当たった。

1943年 海軍も神奈川の相模工廠でガス兵器を量産したとされている。まさに毒ガス研究は関東軍の独断などではなく、本土でも組織的に進められた日本軍の正規の方針であったのである。

516部隊を含めたこれらの組織と施設は、敗戦とともに廃止となったが、同時に現代まで続く問題をも残してしまった。
終戦までに生産された数万発といわれる毒ガスの行方である。

ほとんどは解散の時に処分されたといわれるが、中には海や地中に廃棄されたものも少なくはない。
2002年に習志野などの施設跡で土壌汚染が確認されている。

また共産中国でもこの問題は例外ではなく、2003年8月に516部隊がいたチチハルの建築現場にて、毒ガス入りのドラム缶を発見した作業員を含む44人の民間人が中毒症状に襲われ、うち一人が死亡する事件がおきている。大戦が残した負の遺産は、現在でも各地で息を潜めているようである。
※共産中国国内での旧日本軍の残留兵器については、当時の日本軍が処理をしなかったというよりも、兵器を接収した国民党軍がしっかり処理しなかった、とも考えられる。

旧日本軍の毒ガス砲弾を発見 愛知県田原市

2020年5月5日火曜日

旧日本陸軍細菌戦部隊 731部隊の正体

イギリス人科学者であるフィリップ・ハーバー氏によって考案された毒ガス兵器は、少人数で多大な被害を敵に与えることができる上に、敵の兵器には何ら影響を与えない。人間の殺戮だけを目的とし、残された敵の兵器を奪い取ることも可能な、目的に徹した「兵器」であった。

第一次世界大戦では、毒ガス兵器の使用、応酬によって戦場は地獄絵図と化し、ヨーロッパは荒廃するに至った。この反省から1925年6月「ジュネーブ議定書」にて毒ガスを含む化学兵器と細菌兵器の使用が禁じられる。※ただアメリカ、日本はこの議定書を批准していない。

そうした第一次大戦後の欧州の現状をみて危機感を覚えた人物が、陸軍軍医の石井四郎中将だった。石井中将は、千葉県出身で、京都帝国大学で医学を学んだ。卒業後は、陸軍の軍医として東京の第一陸軍病院に配属される。その後京都帝大大学院で細菌学、血清学、防疫学、病理学などを研究し、1928年に2年間に及ぶ海外視察旅行に出発する。

帰国した後に石井中将は、陸軍省や陸軍参謀本部に対して化学兵器、細菌兵器の有用性を主張し、新しい戦争の形を追求すべきと提唱した。

その石井中将が中心となって設立された組織が「関東軍防疫給水部本部」通称「731部隊」である。
※731部隊とは、「満州第七三一部隊」の略であり、初代部隊長である石井中将にちなんで「石井部隊」ともいわれた。その任務は、疫病の予防と浄水の提供である。

当時の我が国陸軍の重要課題として防疫と浄水の問題があった。疫病の蔓延は兵士の致命傷にかかわる。令和に入ってからの新型コロナウイルスの米軍での感染者拡大にみられるように、一人が罹患すれば周囲の者にも感染が広がり、場合によっては組織が稼働しない状況に陥ってしまう。

また清潔が確保された国内と違って、中国大陸や南方の諸島で生の水を飲むということは、最悪の場合は命に関わるのである。

1932年 関東軍防疫班が満州で組織化。
1936年 関東軍防疫部を新設。
1940年7月 関東軍防疫給水部に改編。(本部が731部隊となる。)

表向きの任務は、衛生状態が国内に比べてよくない満州において防疫、浄水の供給を行うということであったが、実はもう一つ「極秘任務」があったとされている。それが「細菌兵器」の研究と準備である。

改編の時の731部隊には軍人1235名、軍属2005名が所属した。研究予算は年間約¥200万であり、これは当時の東京帝国大学に与えられた予算額に匹敵するものである。

2年がかりで新設された広大な研究施設には、数千人を収容できる宿泊所、管理棟を含めた約150の建物のほか、鉄道引き込み線や飛行場、運動場などが設営された。そして「ロ号棟」と呼ばれる中枢施設の中で「生体実験」が行われたとされている。

関連の動画です。

戦場における防疫
 旧日本軍は、既に日露戦争当時から戦場における防疫に力を入れていた。当時病気は「静かなる敵」と呼ばれ、病死者は銃撃などによる戦死者を大きく上回っていた。
 
 例えば、1898年米西戦争では、戦死者一人に対して病死者は14人にも達していた。日清戦争においても同じ程度の比率であったとされている。その反省をいかして、旧日本軍は負傷者の治療だけではなく、予防細菌学を戦術計画に取り入れていく。そのため細菌によって腹痛や下痢などの症状が起きないよう食事の後に服用する「クレオソート」という錠剤が配布された。この独特のにおいと苦みを持つ錠剤は「征露丸」とネーミングされ、後に「正露丸」と改名されている。

徹底解説!正露丸

人間モルモット・マルタ
 731部隊の細菌研究部門は12以上の班に分かれ、それぞれが様々な細菌の軍事的可能性を研究していたとされている。その効果を実証するのに最も適していたものが、動物ではなく人間を使って行う実験であった。
 着目されたのは、関東軍の憲兵や特務機関に逮捕された囚人たちであった。
 スパイなどの容疑で逮捕された朝鮮人、中国人、モンゴル人、ロシア人、アメリカ人捕虜などが次々と研究所へ送り込まれ、実験のための「人間モルモット」として利用されたといわれる。
 中には「仕事を紹介する」という誘いをうけて女性や子供までも実験の対象となった。被験者たちは、「マルタ(丸太)」と呼ばれ、非人道的な扱いを受けたとの証言がある。

 例えば生きたまま病原菌を植えられ、絶命するまでの様子を観察された。病気に冒された対象者は、食事も与えられずにやせ衰えていく。それでも病原菌の状況を調べるために日に数回採血がなされる。枯れ枝のようになった腕に注射器が刺しこまれ、無理やり血液が抜き取られ、やがて絶命する。
 また梅毒の効果を調べるために性病を感染させられた妊婦もいて、罹患して生まれた子供は研究材料として母親から引き離された。子供が母親の手に返されることはなく、後に解剖されたといわれる。
 その他に麻酔をかけられずに手術される者、生きたまま内臓が取り出される者などもおり、マルタとされた人たちは苦しみ悶えながら絶命した、という証言が残る。
 細菌兵器開発のための実験とされた被験者の数は、終戦後にソビエト連邦と共産中国が行った調査では3000人以上とされている。

解明されない部隊の真相
 しかし一方で細菌兵器開発に関連した人体実験そのものは行われなかった、という証言もある。人体実験の実行の根拠は、元部隊員など関係者の証言であり、文書の形での証拠は発見されていないのである。近年になってアメリカの公文書が機密解除されたため調査が行われたものの、その中にも人体実験の記録はみあたらない。
 極東国際軍事裁判でも731部隊の関係者は裁かれていない。
※これについては、石井中将らの研究成果をソ連に先んじて独占しようとしたアメリカ側が、免責の方針を採用したからであるともいわれている。
※1949年に開催されたソ連による軍事裁判(ハバロフスク裁判)で訴追はされているものの、ハバロフスク裁判自体が西側諸国によって「ソ連のプロパガンダ」であるとして無視されている。

中国人人体実験現場検証 731部隊石井部隊


【731部隊】新資料から実像が浮かび上がる!

731部隊、詳細な隊員情報や組織機構が判明 
70年前の公文書を新発見
6/22() 10:15配信https://news.yahoo.co.jp/articles/45dbc079f96e9d5c8d9da05fc78047f00045486a

京都新聞

 第2次世界大戦中に細菌戦の研究をした「731部隊」を本部とする旧関東軍防疫給水部(関防給)について調査している滋賀医科大名誉教授らが19日、戦後に政府が作成した関防給に関する公文書を発見し、組織機構や支部の隊員の所属、敗戦前後の行動の一端が明らかになったと発表した。支部で細菌を生産していたことも公文書で初めて裏付けられたという。「不明な点が多い組織の隊員一人一人の情報や、元隊員の証言などの根拠となる文書で、歴史を検証する上で意義深い」としている。

 公文書は195051年に作成された「関東軍防疫給水部部隊概況」。滋賀医大名誉教授の西山勝夫さん(78)らが昨年、国立公文書館で見つけ、今年3月までに公開された計41枚を分析した。  公文書から、関防給は本部と五つの支部などから成り、それぞれの組織機構も裏付けられた。大連支部については「終戦時迄(まで)主として細菌の研究及(および)生産に住じていた」(原文ママ)と記述があった。  
 また林口、牡丹江、孫呉、海拉爾(はいらる)の4支部については「細部調査票」との文書があり、隊員の氏名や階級、本籍などが記されていた。さらに各支部の変遷を示す表のほか、敗戦前後の各支部の部隊の行動を地図上に示した「行動群経過要図」もあり、経由地や日にちのほか合流や戦闘などの記載から部隊の詳細な動きがうかがえる。  
 隊員が戦後、旧ソ連に抑留された際の収容所名を記した文書もあった。51年段階で政府が敗戦時の関防給の隊員数を計3262人としていたことも分かった。  
 一方、公文書には本部(731部隊)や大連支部の細部調査票や行動群経過要図などが含まれていなかった。西山さんは「他の支部があることから考えると不自然。文書公開まで長期間を要すると、生存者への聞き取りなど検証がしにくくなる。速やかに公開する仕組みが必要」と指摘した。今後医学や歴史学の研究者らでつくる「15年戦争と日本の医学医療研究会」(大阪市)などと協力し、調査を進めるとしている。

細菌戦「731部隊」の新資料発見 
「ないはず」の戦後公文書 細菌生産を明記
202027https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/155056?utm_source=headlines.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink

関東軍防疫給水部行動経過概況図の実寸複写と西山名誉教授


 第2次世界大戦中に細菌戦の準備を進めた旧関東軍防疫給水部(731部隊)について、戦後に日本政府が作成した公文書が6日までに、発見された。京都帝大などから派遣された医師らが人体実験を行ったとされる731部隊について、政府はこれまで国会で政府内に「活動詳細の資料は見当たらない」と答弁をしており、発見した西山勝夫滋賀医大名誉教授は「まだまだ731部隊に関係する資料が埋もれている可能性がある」と話している。
 発見された公文書は戦後5年目の1950年9月に厚生省(現・厚生労働省)復員局留守業務第三課が作成した「資料通報(B)第50号 関東軍防疫給水部」との文書。西山名誉教授が昨年11月、国立公文書館から開示決定を受けた。文書は計4ページあるが、もっと分厚い資料の一部だった可能性がある。戦後中ソに取り残された元731部隊の軍医や軍人らの状況を把握するために作成された資料で、「関東軍防疫給水部の特異性 前職に依る(サ)関係者が多い」と書かれている。
 うち1枚は「関東軍防疫給水部行動経過概況図」と題された縦約90センチ、横約60センチある大きな図面。「防給本部」について「部隊長 石井四郎中将以下約1300人内外 本部は開戦と共に全部を揚げて北鮮方面に移動すべく」などと満州(現・中国東北部)から日本に帰国するまでの経路が図説され、本部第一部が細菌研究、第四部が細菌生産などと部隊構成も記載されている。
 図は大連支部や牡丹江支部、ペスト防疫部隊など、関東軍防疫給水部の各支部がソ連参戦時にどういう部隊構成だったか、武装解除や敗走経路、ソ連に抑留された人数や指揮官の氏名、中国側に残留している人数なども記載している。731部隊はハルビン近郊にあった本部と実験施設を爆破し研究資料も廃棄処分したとされるが、撤退の経路が日本側公文書で裏付けられるのは初。731部隊の本部では日本に帰国し、戦後の医学界や製薬会社で活躍した人物が多いが、今回の資料で各支部は混乱した状況だったことも明らかになった。
 731部隊の生体実験やペスト菌散布などを示す戦時中に作成された文書や論文は国内や中国で発掘が相次ぎ、占領期に米国が石井元731部隊長や解剖した医学者らに尋問した調書も機密開示されているが、戦後に日本政府は731部隊について「調査しない」との見解を繰り返しており、公文書が存在した意義は大きい。

 日本政府は、731部隊のペスト菌散布を裏付ける金子軍医少佐論文(1943年付)が国会図書館関西館(精華町)で発見された際も、2012年の国会答弁で「政府内部に資料が見当たらないのが実態」と答弁している。




2020年4月25日土曜日

【金正恩重体情報の真偽】アメリカの北朝鮮崩壊極秘作戦計画

北朝鮮崩壊へアメリカが隠し持つ「極秘計画」 約20年間に作られていた「COPLAN 5029

ダニエル・スナイダー
2020/04/25 08:00 https://www.msn.com/ja-jp/news/world/北朝鮮崩壊へアメリカが隠し持つ%ef%bd%a2極秘計画%ef%bd%a3-20年間に作られていた%ef%bd%a2coplan-5029%ef%bd%a3/ar-BB13a7Yw?ocid=spartandhp

金正恩朝鮮労働党委員長が重病で死に瀕している可能性もあるという一報が流れたことによって、韓国、アメリカ、そして中国には小さな衝撃が走った。これら3カ国の政府はすべて、明確な後継計画も持たない核武装国家の権力崩壊に対して備える必要性に突如として直面することになったからだ。

 金の健康状態に関する状況が依然不透明な中、アメリカのドナルド・トランプ大統領、韓国の文在寅大統領、および中国の習近平国家主席が、北朝鮮内での危機に対して準備ができていないことは明らかだ。

北朝鮮に手が回らない状態

 金の重病説を軽視することを狙った彼らの急ごしらえなコメントから判断すると、3人とも金が引き続き指導者として権力を握り続けることを期待しているようだ。アメリカと韓国の同盟関係が崩れ、中国には協力するための動機がほとんどなく、全政府が新型コロナウイルスへの対処にてんてこ舞いの今、すぐに対応することはほぼ無理だろう。
 「私が知る限り、北朝鮮の崩壊に対して準備できているところはない」と、オバマ政権の元韓国政策担当国防省高官のヴァン・ジャクソンは語る。「トランプ就任以降、同盟の中で崩壊シナリオに関して高官レベルではおそらく何の取り組みもなされていないのではないか。

 文政権は北朝鮮の崩壊シナリオを『自己成就的予言』と見なし、関心を持っていない。中国は後継危機が起きても他国よりはいい立ち位置にあるだろうが、中国すら入り込む隙はあまりなく、影響力も限られている」と、現在はニュージーランド・ウェリントンのヴィクトリア大学のシニアレクチャラーであるジャクソンは付け加えた。

 しかし、北朝鮮危機への対応を避けたいという思いは、計画がないという意味ではない。アメリカと韓国には、北朝鮮の体制が崩壊した場合に、合同軍事行動を行うための秘密の作戦計画「OPLAN 5029」がある。
 詳細は極秘扱いのままだが、内容に詳しい安全保障アナリストによると、政権側近によるクーデター、対立する派閥間の内戦、自然災害、国境を越えた難民の大量流入など、さまざまな不測の事態を考慮しているという。OPLAN 5029は、軍や科学者のチームを派遣して、北朝鮮の核兵器を回収・確保する計画をもカバーしていると、安全保障の専門家は語る。

 同計画は、北朝鮮の政権崩壊に備えるために、韓国の保守系金泳三政権がその政権末期の1997年に結んだ包括的合意に基づいている。合意は、北朝鮮の建国者金日成の死に続いて起こった大規模な飢饉およびそれに伴って生じた核兵器開発をめぐる最初の危機をきっかけとする。合意は、北朝鮮での治安崩壊に対処する大枠を定めた概念計画(CONPLAN)5029となった。

噛み合わない米韓それぞれの思惑

 1998年の早期に政権をとった韓国の革新系金大中政権の関心事は、むしろ北朝鮮との和解と再統合の理想を追い求めることだった。しかしアメリカはCONPLANを、軍隊および装備の流れと、軍隊の指揮官を定める作戦計画へと転換することを要求した。
 2003年に政権をとった革新系の盧武鉉政権に対して提示されたアメリカの提案では、北朝鮮との戦争に対応するために組織された米韓連合司令部の場合と同様、軍隊はアメリカ司令官の指揮下に置かれていた。

 同政権下の韓国国家安全保障会議は例外的な公開の声明を出して、「韓国の主権を犯す」としてアメリカの計画を拒絶した。その後困難な協議が続き、李明博大統領のもと保守が政権をとる2009年まで計画は合意されなかった。韓国軍を指揮するアメリカの軍事計画者は、大韓民国国軍側と協議して、アメリカの司令官が指揮する何十万の兵士を国境に送る詳細なプランを策定した。

 現実はもっと複雑だった。ベテラン外務官僚の千英宇は201010月、2013年初頭まで務めることになる、李大統領の外交安保首席秘書官の地位に就いて間もないころOPLAN 5029について知らされた。千は、計画は国際システムも、法的状況も、北朝鮮国内の社会的力学も考慮しておらず「非現実的」であると感じた。

 千は「いずれにせよ、アメリカが北朝鮮で軍事作戦を指揮することは許されない」と話す。計画は、アメリカの支援を受けて韓国軍が治安安定作戦を受け持ち、アメリカ軍が大量破壊兵器を確保するうえで中心的役割を演じることを想定している。
 「これらの計画はアメリカ軍が想像できるあらゆる不測の事態をカバーしなければならないという永続的な信念によって掲げ続けられており、その一部は、こうしたことは実際にできないとしても、極端な状況下で迅速に実行できるということを世界の指導者に示す目的がある」と、東アジアの安全保障問題に詳しいブルッキングス研究所の上級研究員ジョナサン・ポラックは話す。

 「韓国軍がアメリカの戦略に完全に協力していないときでも、アメリカの戦略に完全に協力していた、と自らを納得させることを意図していたのだろう」

トランプ就任後も計画は維持

 OPLAN 5029は、少なくとも紙面上では、盧の元参謀長である文大統領の下で革新派が政権に復帰した後も、また、トランプが登場して対外的に「アメリカ第一主義」を掲げた後も、そのままの状態を保っている。トランプ政権の元国家安全保障顧問のH.R.マクマスター中将は、OPLAN 5029について具体的にはコメントしないものの、「われわれはすべての潜在的な不測の事態を予測し、準備しようとした」と話す。
 トランプは北朝鮮に対する「怒りと炎」が頂点に達していた2017年、北朝鮮への局部攻撃を実施するためのオプションを準備するように国防総省に働きかけた。しかし、2019年末までインド太平洋安全保障問題担当の国防次官補を務めたランダル・シュライバーによると、国防総省では北朝鮮崩壊を想定したOPLAN 5029の見直しや議論は行われなかったという。

 「一般的に、軍事計画、特にOPLAN 5029は、アメリカの大統領が何をしたいのかということも含めて、根本的に多くの仮定に依存している 」と、韓国での経験が長い元国務省高官のデビッド・ストラウブは話す。「トランプが大統領を務める限り、OPLAN 5029やこうした計画は基本的には無意味だと思う。トランプが何をするかは誰にもわからない」。
 一方、北朝鮮との関係改善に力を入れる文政権下では、「OPLAN 5029は死んでいる」と、前述の千は話す。「政権崩壊の可能性について話すことは政治的タブーになっている。北朝鮮で不安定な状況が発生した場合、文政権は金政権を救い、安定させ、支援するために全力を尽くすだろう」。

 米韓関係は、両国間の防衛費分担に関する協議の行き詰まりによっても損なわれている。トランプは双方の関係者が作成した妥協案を阻止し、アメリカ軍が韓国に圧力をかけるために撤退するかもしれないと、漠然と脅している。文も4月中旬の議会選挙で地滑り的な勝利を収めたこともあり、妥協する意欲は停滞している。
 中国はどうだろうか。中国共産党は北朝鮮と密接な関係を維持しており、中国は金政権に対する経済的および戦略的支援の主要な基盤となっている。アメリカ政府関係者は、北朝鮮の不安定な情勢に直面した中国がクーデターを引き起こし、新しいリーダーを打ち立てる可能性があることについて長い間予測してきた。

 しかし、金が死去した際に起こるかもしれない内紛に対して、はたして中国に介入する能力があるのか、または介入する意志があるのか懐疑的な人もいる。「中国は北朝鮮での後継者問題については関与しないだろう。そして、その結果がどんなものであれ、朝鮮労働党の決定を尊重する。それで中国が広く軽蔑されるかもしれないにもかかわらず、だ」と千は分析する。

難民の大量流出を懸念

 「中国はそれよりも北朝鮮からの難民の大量流出を懸念しており、難民の受け入れをできる限り避けようとするだろう。中国は人道支援を通じて、状況を安定させるためにできることはする。しかし、政治的には、中国は特定の派閥の側にはつかないよう注意している。実際、中国は北朝鮮の政治紛争の結果に直接影響を与えられるような実際的な手段を持っていない」。

 中国が北朝鮮の政権崩壊に対処するため、アメリカと協力する可能性も低い。「かつてだったらあったかもしれないが、現在ではありえない」と元アジア太平洋担当第一副次官補のエヴァンズ・リヴィア氏は話す。

 「米中関係の広がりが挫折したことや、中国がアメリカとの戦略的関係についての考え方を変えたこと、中国政府が北朝鮮政府との関係の再構築に重点を置いたこと、中国が南北朝鮮と良好で安定した関係を築けるという信念を持っていること、中国がアメリカを近隣から追い出したいという願望を抱いていること、そしてトランプ政権を追い出すための準備が明白に行われていること……これ全てから言えるのは、南北朝鮮に関する米中の協力関係の『古き良き時代』がおそらくすでに終わったということだ」。

 秘密に隠された北朝鮮からは、新しいうわさが次から次へと出てくるだろう。さらに、その一部は本当であると判明するかもしれない。そして、OPLAN 5029は依然として計画から消えてはいない。しかし、それを実行する意志があるかどうかは明確ではない。



アメリカに有利なカードは切らせないでしょう!
次の後継体制(後継者ではなく)を早々に確立してくるはず。ただ妹がトップにくるかどうかは微妙。「男尊女卑」の国ですからね。

※新型コロナウイルスの問題で、各国とも感染者対策で北朝鮮問題が後回しになっている感は否めませんね。北朝鮮も共産中国とも経済的な関りがある以上、この未知のウイルスの脅威への対処は考えざるを得ないでしょう。金正恩氏はまさかコロナウイルスに感染したわけではないでしょうが、今北朝鮮に崩れられると、さらに各国経済の足をひっぱる要因となりかねません。

北朝鮮の指導者問題、国家体制存続については今後関心をもってみていかないといけません。妹の金与正氏が政治の表に出てくる場面が多くなるかもしれません。

国家の指導者が倒れれば、次の政治体制をたてなければ、国策を進めていけません。政治課題の解決もないでしょう。北朝鮮の政権継続能力に注目したいところです。

共産中国はとりあえず様子伺いかな?
中国、北朝鮮に医師派遣か=正恩氏めぐり「助言」ロイター報道
2020/04/25 10:16 https://www.msn.com/ja-jp/news/world/中国、北朝鮮に医師派遣か%ef%bc%9d正恩氏めぐり「助言」ロイター報道/ar-BB13aj06?ocid=spartandhp

【ソウル時事】ロイター通信は2020年4月25日、中国が医師や当局者らで構成する代表団を北朝鮮に派遣したと報じた。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長をめぐって「助言」するのが目的という。正恩氏の健康不安説が取り沙汰される中、臆測を呼びそうだ。
 事情に詳しい3人の関係筋が明らかにしたという。ロイターによると、代表団は中国共産党中央対外連絡部(中連部)の幹部が率い、23日に北京を出発した。中連部は党の外交を統括し、中朝関係を取り仕切っている。


CIA元分析官「妹の金与正氏が後継者」

NNN24
2020/04/29 07:46 https://www.msn.com/ja-jp/news/video/%ef%bd%83%ef%bd%89%ef%bd%81元分析官「妹の金与正氏が後継者」/ar-BB13kP9B?ocid=spartandhp

「健康不安説」が伝えられた北朝鮮の金正恩委員長について、アメリカのCIA(=中央情報局)の元分析官らは28日、健康状態は「わからない」としながらも、仮に政権運営が困難であれば、妹の金与正氏が後継者になるとの見方を示しました。
 元CIA分析官 スー・ミー・テリー氏「北朝鮮の沈黙が続いていることは不思議だ。報道はフェイクだと言いそうなものだが、そうは言わない」

 CIAの元分析官らは、インターネット上で開かれた金委員長をテーマにしたイベントに登場しました。健康状態については「わからない」としつつ、仮に病や手術を経て回復した場合は、「強さを見せつけなくてはいけない」として、権威を維持するため、何らかの強い行動に出る可能性を指摘しました。
一方で、今後、金委員長による政権運営が困難になった場合、「金一族以外の人間がトップを継承することは考えにくい」と指摘。妹の金与正氏が後を継ぐとの見方を示しました。

 元CIA分析官 ジュン・パク氏「金正恩委員長は自分の妹以外、誰も信頼していない」

また、元分析官らは、与正氏が後継者となった場合でも、金委員長の子どもが成長するまでの間の代理人としての役割にとどまる可能性もあるとしています。 

おそらく金正恩氏に何かあった時は、妹の与正氏が指導者に選ばれるように体制が組まれていた可能性も排除できないと思います。

この氷のように冷たい視線の妹金与正氏は、平時は兄正恩氏の補佐役に徹して決して前に出ることはありませんでした。しかし金政権を実務的に采配していた可能性は考えらえれるでしょう。彼女が前面に出てくると、核問題や外国人拉致の問題はどうなるのでしょうか?

こちらの動画も参考になります。


【西岡力】金正恩「死亡」説の真偽やいかに!【WiLL増刊号 #180】 https://www.youtube.com/watch?v=dYFiZoR4WjU  
【緊急収録】金正恩「脳死」「重篤」で北朝鮮はどうなる!?【WiLL増刊号 #172】 https://www.youtube.com/watch?v=x4RYsph686k

【企業を標的としたサイバー攻撃】任天堂を狙った不正アクセス

大手ゲーム企業が今度は標的にされましたね。不正アクセスなので、愉快犯とか政治的なテロというわけではなく、個人的にゲームソフトを狙った攻撃とみていいのではないでしょうか?

しかし任天堂側からしてみれば、顧客の個人情報の大量の流失を招いてしまったことがあり、企業責任としては甚大なものがあるといえます。今どきですから三菱電機のようにセキュリティはしっかりしていた、と思われる企業に対しての攻撃は従企業側にとっては衝撃でしょうが、社内のサイバーセキュリティ全般を見直すためにはいい機会かもしれません。

個人情報が漏洩してしまったことは、はなはだ残念なことですが、同じことをまたやらかさないように対策を講じていけば問題ないでしょう。

元の記事


任天堂、個人情報16万件が流出 不正ログインで購入も
4/24() 21:37配信 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200424-00000083-asahi-soci

朝日新聞社

 任天堂は2020424日、ゲームソフトなどをインターネット上で購入する際に使う個人のアカウントに不正にログインされる被害が起きたと発表した。計16万件が被害を受け、氏名や生年月日などの個人情報が流出したほか、不正にクレジットカードが使われた可能性もあるという。

 ニンテンドースイッチのソフトやスマートフォン向けアプリを購入する際に使う「ニンテンドーアカウント」で、同社の別のアカウントと連携させる機能を使っていた人が被害を受けた。ゲームソフトなどが不正に購入された可能性もある一方、クレジットカードの情報自体の流出は確認されていないという。

 同社の調査で20日に発覚し、24日に不正ログインできないように対策をとったという。被害を受けた可能性のある人にはメールで連絡し、パスワードの変更や購入履歴の確認を求めるという。不正利用が確認された場合は「個別に対応していく」(同社広報)という。問い合わせは、お客様相談窓口(0570・011・120)まで。(森田岳穂)


動画
任天堂の個人情報流出は、「任天堂のせいではない!」
まあたいていの人の認識はこの方のような感じじゃないでしょうか?

この件に関しては、任天堂側から具体的な対策が公表されています。

お客様各位
2020424
任天堂株式会社

「ニンテンドーネットワークID」に対する不正ログイン発生のご報告と「ニンテンドーアカウント」を安全にご利用いただくためのお願い

 日頃は弊社商品をご愛顧賜りまして、誠にありがとうございます。
この度、何らかの手段で弊社サービス以外から不正に入手したログインIDとパスワード情報を用いて、4月上旬ごろから「ニンテンドーネットワークID1、以下NNID)」に、なりすましログインを行ったと思われる現象が発生していることを確認いたしました。
また、このなりすましログインを利用し、NNID経由で一部の「ニンテンドーアカウント」に不正にログインされた事象があることも確認いたしました。
そのため、本日NNIDを経由してニンテンドーアカウントにログインする機能を廃止いたしましたのでお知らせいたします。
また、不正ログインされた可能性があるNNIDやニンテンドーアカウントに対し、順次パスワードリセットを行います。

<お客様ヘのお願い>
  • パスワードリセットが行われたNNIDやニンテンドーアカウントにはメールでお知らせいたしますので、次回、使用される際はパスワードの再設定(※2)をお願いいたします。その際、すでに他のサービス等でお使いのパスワードの使いまわしは避けていただきますようお願いいたします。
  • また、これまでNNIDを経由してニンテンドーアカウントにログインされていたお客様につきましては、次回のログイン以降、ニンテンドーアカウントのメールアドレス/ログインIDでログインいただきますようお願いいたします。
  • NNIDとニンテンドーアカウントで同一のパスワードを使用されますと、マイニンテンドーストアやニンテンドーeショップにて、残高および登録済みのクレジットカード・PayPalを不正に利用されてしまう恐れがございます。NNIDとニンテンドーアカウントには異なるパスワードを設定いただきますようお願いいたします。なお、今回の不正ログインに関連して、お客様のニンテンドーアカウントに身に覚えのない購入履歴がある等の被害が確認された場合には、個別に調査を行った上で、購入の取消し等の対応を行わせていただきます。順次手続きを進めますのでお待ちください。
  • 加えて、かねてよりご案内させていただいておりますとおり、弊社サービスを安心、安全にご使用いただくため、ニンテンドーアカウントには二段階認証を設定していただきますようお願いいたします。
なお、本件の影響に関する詳細は以下の通りです。

不正ログインを受けた可能性のあるNNID
16万アカウント
第三者に閲覧された可能性のある情報
●NNIDに登録されている以下の情報
  • ニックネーム、生年月日、国/地域、メールアドレス
NNIDに不正ログインされた影響により、NNIDが連携されているニンテンドーアカウント(二段階認証を設定しているものを除く)の以下の情報についても、第三者に閲覧された可能性があります。
ニンテンドーアカウントに登録している以下の情報
  • おなまえ、生年月日、性別、国/地域、メールアドレス
閲覧された可能性のある情報の中に、クレジットカード番号はございません。
お客様や関係者の皆様には、ご迷惑とご心配をおかけすることを、深くお詫び申し上げます。今後、同様の事象が発生しないよう、より一層のセキュリティー強化と安全性の確保に努めてまいります。
お客様におかれましても、ご自身のアカウントの不正利用を防ぐため、上記の<お客様へのお願い>をご留意の上、弊社アカウントをご利用いただきますようお願いいたします。


かなり事後調査と処理は的確であるものと感じます。顧客サイドからすると自分の情報がネットに流出するだけで、かなりの不安ではあるかとは思います。いったんネットに流出した個人情報は二度と元に戻すことはできません。この機会を反面教師にして社内セキュリティの強化をはかるしかありません。

2020年4月21日火曜日

【超限戦の時代】諜報戦で共産中国をリードする台湾 ~米トランプ政権の台湾重視はこれがあるからか?~

米国が脱帽する台湾のスパイ、新型肺炎でも威力発揮

福山 隆
2020/04/20 06:00 https://www.msn.com/ja-jp/news/coronavirus/米国が脱帽する台湾のスパイ、新型肺炎でも威力発揮/ar-BB12SVnw?ocid=spartandhp


 子供の頃、庭でもいだ酸っぱい夏ミカンの果汁で、和紙に絵や文字を書いて火鉢であぶると、それが浮かび上がる「あぶり出し」をして遊んだものだ。
 似たようなことだが、新型コロナウイルス禍の中で米中の諜報・情報戦がまるで「あぶり出し」のように露見するするようになった感がある。
 それを見るに、筆者には米国の諜報能力と情報・宣伝戦能力に翳りが見受けられるような気がする。以下、最近の報道から、その一端をお示ししたい。

 台湾情報機関の優れた諜報活動

 2020411日付朝日新聞は「台湾が昨年末、WHOに警告「武漢の肺炎で隔離治療」」と題し、次のように報じている。

「新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、台湾当局は11日、世界保健機関(WHO)に対し昨年12月末、『中国・武漢で特殊な肺炎が発生し、患者が隔離治療を受けている』との情報を伝え、警戒を呼びかけていたと明らかにした」

「記者会見を開いた陳時中・衛生福利部長(大臣)によると、台湾側は昨年末から武漢の現地報道などを注視しており、1231日にWHOに伝え、入境時の検疫も強化した。陳氏は『隔離治療は、ヒトからヒトへの感染の可能性があることを意味する』と指摘し、WHOが台湾の情報を生かしていれば、感染拡大に早く対処できたと主張した」

 この報道で注目されるのは、台湾の情報機関(国防部参謀本部軍事情報局、国家安全局国防部参謀本部電訊発展室及び法務部調査局など)が武漢ウイルスの発生をいち早くキャッチしこれをモニターしていたことだ。

 台湾は、中国の武力侵攻を恐れ、その情報をキャッチするために情報源(スパイと協力者など)を中国全土に埋伏しているのは事実だろう。

 陳時中・衛生福利部長が「武漢の現地報道などを注視しており」と曖昧な言い回しをしたのは、情報源を隠蔽・偽装する狙いからだろう。

 情報を開示する際は「情報源を暴かれないことと、手の内をすべて見せずに小出しにして目的を達成すること、および余韻を残すことで次の情報戦の布石を打つこと」などが原則である。

 台湾は、後々新型コロナウイルスの発生源(出自)を特定する重要な情報を握っている可能性がある。

 そうでない場合でも、WHOに対し昨年(2019年)12月末の段階で、「中国・武漢で特殊な肺炎が発生し、患者が隔離治療を受けている」との情報を伝た事実を示せば、その中国に伝わるメッセージの中には「台湾は、もっと核心的な情報を持っているよ」というブラフになるのは当然だろう。
 台湾は目下、「テドロスWHO事務局長が台湾が人種差別攻撃をしたか否か」について、中国との情報戦を行っている。

 中台の情報戦の行方は、中台の諜報能力にかかっていると言っても過言ではなかろう。
 その意味で、「か弱い立場」のはずの台湾が情報戦で大陸に攻勢を仕かけているのはそれなりの自信があるからだろう。もちろん、ドナルド・トランプ政権を支える米国の情報機関が台湾の背後に控えていることが台湾を勢いづけているのは事実だろう。

 対中国諜報において、スパイや駐在武官などが人間から聞き取るヒューミント(HUMINTHuman intelligence)の分野においては、台湾の方が優れているのではないか。
 台湾人は言語が中国と同じであるうえ大多数が漢民族であることから、スパイとして中国に潜入して活動するうえで有利であろう。
 また、同様に新聞やテレビなど公開されている情報を情報源とするオシント(OSINTOpen-source intelligence)の分野でも、地の利と文化・社会などが近似する台湾の方が米国よりも優れた情報を得ている可能性がある。
 一方の米国は、偵察衛星や偵察機によって撮影された画像を継続的に分析することで情報を得る手法のイミント(IMINTImagery intelligence)や通信や電子信号を傍受することで情報を得る方法のシギント(SIGINTSignals intelligence)などの分野では圧倒的に優れている。

 このために、米国は、台湾にイミントやシギント情報を提供する代わりに台湾のヒューミント情報をもらうことで、相互協力しているのではないか。
 いずれにせよ、対中国情報では、次に説明するように、米国のヒューミント能力が大幅に損なわれたために、台湾に頼らざるを得ないようになっているのではないか。

 米国の対中国諜報能力が低下:台湾に頼らざるを得ない理由

 2020412日付朝日新聞は「CIAに中国スパイ、消された協力者 米国諜報網に異変」と題し、要旨次のように報じている。

「米国と中国は冷戦時代の米ソと同様に諜報戦を繰り広げている。中国は中央情報局(CIA)や国防情報局の元職員を協力者に金で抱き込んだ」

CIA元職員ジェリー・チャン・シン・リーは数十万ドルでCIA工作員や協力者の名や電話番号、特殊な暗号を使った通信方法などを売り渡した。そのため、2010年から12年の間に十数人のCIA協力者が殺され、ある者は見せしめで政府庁舎の中庭で射殺された」

 諜報の世界では、敵国内に工作員を潜り込ませ、協力者まで獲得するのは至難の業だ。
 特に、中国の防諜能力(カウンター・インテリジェンス)は、高精度のIT顔識別技術などにより支えられ、鉄壁の防護ではないだろうか。

 今回の「武漢ウイルス」事態では、米国の現地におけるヒューミント能力の低下が原因で、武漢ウイルス発生についての情報把握が遅れ、そのことが米国はもとより世界に感染拡大するのを阻止できなかった一因ではないだろうか。
 米国は、その応急的な穴埋めとして、米国メディアの記者を動員しようとしたのではないか。

 それに対して、中国外務省は、米国のウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストの3つの新聞社に所属する記者の取材証を剥奪すると発表した。

 事実上の国外追放だ。

 これに対して、トランプ政権は32日、中国国営新華社通信など中国共産党傘下の国営メディア5社の「記者」として米国内で勤務する職員の人数について、13日から計100人の上限を課すと発表した。現状では約160人が勤務している。

 このように、中国に対するヒューミント情報能力が低下した米国は、台湾のヒューミント能力の力を借りざるを得ないのではないだろうか。

 それは、第2次世界大戦直後の米国が「鉄のカーテン」に閉ざされたソ連の情報を得るために西ドイツのゲーレン機関の協力を得たのに似ている。
 ゲーレン機関は、第2次世界大戦中にヒトラー政権下の国防軍で対ソ連諜報を担当する陸軍参謀本部東方外国軍課の課長を務めた、ラインハルト・ゲーレン陸軍少将の名前にに由来する。
 ゲーレンは、戦後は米国に接近し、その諜報経験や大戦中にソ連・東欧諸国に埋伏したスパイ網を活用して諜報活動を継続し、米国に協力するのと引き換えに自身と部下たちのナチス党政権下での活動追及を免れ米国側陣営諜報機関の要員として厚遇された。
 ゲーレンは、西ドイツの情報機関で連邦情報局(BND)の初代長官を務めた。

 翻って、大日本帝国陸海軍の情報将校の中にゲーレンのような強かな策士がいなかったのは残念だった。今日、JCIAを持てない理由の一端はここにあると思われる。
 このように、諜報能力の価値は絶大で、米国は米中覇権争いにおいては台湾の諜報能力を「高値」で買わざるを得ないのではなかろうか。

 中国のが一枚上の新型肺炎宣伝戦

 2020410日付時事通信電は「VOAが『中国の宣伝に加担』 米政権、異例の批判」と題し、要旨次のように報じている。

「トランプ米政権は10日、政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)を『中国政府のプロパガンダ(政治宣伝)役』などと非難する声明をホワイトハウスのホームページに掲載した。米政府の対外宣伝を担うVOAを政権が批判するのは異例だ」

「声明は、VOAが最近の記事で、新型コロナウイルスで都市封鎖が行われた中国・武漢市を『成功例』と伝えたことを紹介。『中国の秘密主義は死のウイルスを世界中にばらまいた。ジャーナリストは事実を知らせるべきなのに、VOAは中国のプロパガンダを増幅させている。VOAは、米市民でなく敵国の代弁者となっている』と非難した」

 この報道を見て、筆者は「さもありなん」と思った。その理由はこうだ。
 バラク・オバマ大統領(当時)は2013年、テレビ演説で「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と述べ、米国の歴代政権が担ってきた世界の安全保障に責任を負う役割は担わない考えを明確にした。
 この声明は、パクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)を放棄したと受け止められても仕方がない。事実、オバマ政権ではその兆候が見られた。
 オバマ政権時代、米政府系ラジオのボイス・オブ・アメリカ(VOA)が年間800万ドルの経費節減のために、201110月から中国語のニュース放送を停止した。米国の凋落が象徴される出来事だ、と筆者は思った。

 これとは対照的なのが中国だ。

 中国は計画的・積極的に世界規模で情報・宣伝戦能力を強化しつつある。

 中国政府は70億ドルを投じる世界的な情報・宣伝戦略の一環として、2012年に米ニューヨークのタイムズスクエアに中国中央電子台(CCTV)が運営する英語ニュースチャンネル(CGTN America)を設置し、24時間放送を始めた。
 また、米国の太平洋支配を覆そうとしている中国は、フィジー、サモア、トンガなどの太平洋諸島諸国への情報・宣伝戦能力強化にも注力している。
 オーストラリアの公共放送ABCがネットの時代に時代遅れだとして太平洋諸島向けの短波放送を中止したところ、中国が素早く空いた10の周波数に滑り込み、短波放送を開始した。
 このように、中国が世界規模で行おうとしている「宣伝思想工作」攻勢を見ると、中国の世界覇権の野望を窺い知るような気がする。
 この例に見られるように、米国が各種メディアなどによる情報・宣伝能力が勢いを失いかけている一方で、中国が着々と実力をつけつつあるというのが現状だ。
 目下、新型コロナウイルスの「出自」を巡り米国と中国が激しく論争し、情報・宣伝戦を繰り広げているところだが、米国は中国を侮れないのが現状ではないだろうか。

諜報能力低下の一因はトランプ氏

 トランプ大統領は、当選の立ち上がりから、CIA、国家安全保障局(NSA)、連邦捜査局(FBI)などの諜報機関と対立せざるを得なかった。
 米国の諜報機関が「ロシア政府がネットのハッキングによって米大統領選の結果をねじ曲げ、トランプを勝たせた」とする報告書を出したからだ。
 トランプ氏は元CIA長官の機密アクセス権を剥奪したほか、20198月には、情報機関を統括するダン・コーツ国家情報長官を辞任させた。
 そもそも、国際情報はもとより個人情報までも握る米国の諜報機関は強大なパワーを持ち、時の大統領に逆らうほどだ。
 歴代大統領のスキャンダルを掴んでFBI長官に居座り続けたジョン・エドガー・フーバーの例もある。ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺もCIAが関与したとする陰謀説があるほどだ。

 トランプ氏はこのような悪弊のある諜報機関の改革を目指し、諜報界が政治的になり過ぎているのを改めさせるために、現業中心の組織に戻そうとしている。


 習近平政権になってからの共産中国は、蔡英文総統が就任してからの台湾に対して、強烈な外交戦、プロパガンダ戦を展開してきました。
 台湾と友好関係にある国々、国交のある国々に根回しを行い、台湾との国交を断絶させ、共産中国との友好関係を構築し、経済支援を約束しています。
 これは共産中国が、莫大な経済支援を撒き餌に覇権主義を拡大し、台湾を外交的に孤立させ、蔡英文総統の国際的な信用を落とさしめようとする露骨な外交・プロパガンダ戦です。共産中国と台湾は昔年の仇敵同士ですが、もうリアルな軍事武力戦争はしないと思われます。軍事攻撃、核攻撃は台湾に外交的な圧力をかけるための恫喝にすぎないと思います。
 なぜなら共産中国と台湾は経済的な関係としては、相互依存的な関係にあるからです。また台湾のバックには、常にアメリカが「台湾関係法」という法律を背景に睨みをきかせています。中台の経済的な関係は、既に一体化しているといっていいかもしれません。お互いが軍事攻撃しだすとお互いの国の人的、社会的なインフラが大きな打撃を被って、戦争の継続が難しくなるのです。
 世界は、経済的な相互依存関係にあり、軍事同盟ありで、軍事紛争がおこらないような構造背景になっています。
 だからこそ隣国や仮想敵国に対して優位にたつために「諜報戦」「情報戦」での戦い方が問われているのです。

動画

共産中国の諜報工作員が台湾・香港でのスパイ活動を暴露
台湾出身の米海軍将校、中国にスパイ容疑で逮捕