2018年5月24日木曜日

国家主導型サイバー攻撃論 

日本人が知らない、国家主導型サイバー攻撃

15000万人が被害に! エキファックスの情報漏えい事件

[2018/05/16 07:30]  https://news.mynavi.jp/itsearch/article/security/3715

周藤瞳美

 近年、国家主導型サイバー攻撃の被害が世界各国で増え始めている。本連載では、国家主導型サイバー攻撃のねらいと手口について、世界のサイバー事件に詳しいマカフィー サイバー戦略室 シニアセキュリティアドバイザー CISSPのスコット・ジャーカフ氏に事例を交えながら解説していただく。
2017年、米国の大手信用情報企業であるエキファックスは、サイバー攻撃によって大量の個人情報が流出したことを明らかにした。同社は主に個人のクレジットカードやローン、支払い履歴、債務不履行の有無に関する情報などを調査する企業で、個人を特定可能な財務データを多数所有している。これらのデータが盗まれるということは、個人としても企業としても非常に深刻な問題であることは言うに及ばない。今回は、大規模な情報漏えい事故へと繋がったエキファックスに対するサイバー攻撃について、お話を伺った。
Apache Struts2の脆弱性を突いた国家ぐるみの攻撃

エキファックスがサイバー攻撃を受けて流出を許してしまった情報は、米国の顧客約15000万人の社会保障番号や生年月日、住所などといった個人情報。また米国だけでなく、英国やカナダの市民も被害に遭っている。
攻撃者は、ジョージア州・アトランタにあるサーバをターゲットに、Apache Struts2の脆弱性を悪用し、20175月から7月にかけて不正アクセスを行っていたものとみられる。
このApache Struts2の脆弱性が公表されたのは20173月だった。同様の脆弱性を突いた攻撃により、日本のいくつかの企業や組織も情報漏えいによる被害を受けていることを公表している。エキファックスの発表によると、3月にこの脆弱性情報が公開された後にパッチ適用を進めたものの、いくつかのシステムで適用が抜けていたため、7月までこの情報漏えいに対応できなかったとしている。
ジャーカフ氏によると、この攻撃は国家ぐるみで実行された痕跡があるという。
「その手口から、私は中国によるものである可能性が非常に高いとみています。中国による国家主導型サイバー攻撃の特徴は、ロッキード・マーティンが提唱する『サイバー・キルチェーン』の各プロセスに対して、複数のチームがそれぞれ対応していることです」(ジャーカフ氏)
例えば、サイバー・キルチェーンの「偵察」プロセスに対応する部隊が、企業サイトやSNSなどの情報からターゲットの情報を収集するなどして侵入口を探し、別のチームがこれらの情報を用いて実際にネットワークへの侵入を試みるといった具合に、複数のチームがサイバー・キルチェーンの各ステージでそれぞれ活動し、次のプロセスを担当するチームと連携していく流れで攻撃が行われるのだという。
国家主導型サイバー攻撃は検知しづらい?

情報漏えい自体は5月に発生するも、発見されたのは7月。
発覚までにかなりの日数を要しているように思われるが、ジャーカフ氏は「我々の調査によると、組織における情報漏えいが発生してから発覚するまでの平均は243日です。この数字をみると、エキファックスのケースは比較的早い段階で発見できたという見方もできます。国家主導型の場合は特に、通常のサイバー防御で想定される攻撃のパターンと大きく異なるため、検知が非常に難しいのです」と説明する。
第一に、外部の悪意ある攻撃者に侵入されないようにすることが一般的な防御の考え方であるため、インバウンドでトラフィックが発生するようなサイバー攻撃は、一見して怪しいものであることがわかり、比較的検知しやすいと言える。
一方で、国家主導型のサイバー攻撃は通常、いわゆるスピアフィッシングの手法を用いることが特徴だ。今回のApache Struts2の脆弱性を利用したエキファックスへの攻撃とは別の話になるが、一般的には、内部に何らかの手段を使って侵入し、そこで悪意のあるファイルやソフトウェアを開き、アウトバウンドのトラフィックを発生させ、そこからコマンド&コントロール(C&C)サーバに接続して外部からさらに攻撃を仕掛けてくるようなパターンを取るため、インバウンドでトラフィックを発生させるようなサイバー攻撃とはそもそも攻撃のパターンが異なる。
「一旦C&Cサーバとの接続が確立してしまえば、C&Cサーバに対してトラフィックを発生させたとしても、FacebookTwitterへの投稿などのトラフィックと同じようなものに見えてしまいます。トラフィック自体が怪しいものだとしても、アウトバウンドのトラフィックは他のものに紛れてしまうため、異常を検知することは藁の山のなかから針を一本探すような難しい状況になってしまいます」(ジャーカフ氏)
経営陣のセキュリティ意識の甘さが招いた事故

とはいえ、今回のエキファックスの情報漏えいは、前述したとおりApache Struts2の脆弱性への攻撃が元になっている。
ジャーカフ氏はこの事故について「エキファックスの経営層がセキュリティに対する投資について真剣に考えていなかったことの表れと言えるかもしれません」と指摘する。Apache Struts 2の脆弱性は、攻撃者にとっては攻撃しやすく、これまでにも甚大な被害が多数報告されてきている。
さらに、エキファックスは、個人を特定できる価値の高いデータを扱っているため、攻撃者からしてみれば格好の攻撃対象であった。強固なセキュリティ対策が必要なのは明白だが、少なくとも当時のエキファックスの体制では不十分であったというわけだ。

システムの脆弱性には予見できない部分が多く、100%の安全はない。セキュリティはコストではなく投資として考える必要があるということを、ぜひこの事故から学んでほしい。
なぜ情報漏洩は繰り返されるのか?

【誰が何のために?】金融機関を狙うのは窃盗?それとも国家的な経済的損失を狙う攻撃?

メキシコ中銀でサイバー攻撃か、複数の銀行から大規模な資金引き出し

Michelle F. Davis

メキシコの中央銀行は、一部の金融機関にハッカーが不正侵入し無断送金した可能性があり、複数の同国の銀行がここ数週間に大規模な資金引き出しに見舞われていることを明らかにした。
  メキシコ中銀の事業責任者ロレンツァ・マルティネス氏はブルームバーグとのインタビューで、同中銀の電子決済システムへの外部接続が不正アクセスされた金融機関5社に中銀は焦点を絞っているとコメント。脆弱(ぜいじゃく)性を背景にこれらの金融機関の「偽の口座」から不正に資金が吸い上げられ他の銀行からの複数の大規模な資金引き出しにつながったと説明した。
  マルティネス氏によると、5つの銀行と証券会社は組織犯罪集団がサイバー攻撃を画策したかどうかを究明するためメキシコの検察当局と協力しているが、中銀はこの捜査に関与していない。同氏は対象の金融機関名には言及せず、事件の背後に何人いるのか判断するのは時期尚早だとした。検察当局の報道官に取材を試みたが業務時間外で返答は得られていない。原題:Mexico Says Possible Bank Hack Led to Large Cash Withdrawals (1)(抜粋)

メキシコの銀行システムにサイバー攻撃 16億円以上盗まれる

2018517 21:55 発信地:メキシコ市/メキシコ
http://www.afpbb.com/articles/-/3175033

2018517AFP】メキシコの中央銀行は16日、国内の銀行間送金システムにハッカーによるサイバー攻撃が複数回あり、数週間で約3億メキシコペソ(約168000万円)が盗まれたと明らかにした。
 中央銀行のアレハンドロ・ディアス・デ・レオン(Alejandro Diaz de Leon)総裁は記者団に、この不正行為による被害額は「およそ3億ペソ」と明かした上で、商業銀行の顧客口座が同様の危険にさらされることは決してないと述べた。
 同総裁は、現在捜査が行われていると述べたが、ハッキングの容疑者が国内または海外の人物なのかなどについては明かさなかった。
 同銀のロレンツァ・マルティネス(Lorenza Martinez)氏は、少なくとも5回のサイバー攻撃があったことを明らかにしたが、攻撃の回数についてはまだ分析中だと述べた。(c)AFP

JR東日本にサイバー攻撃
環境省にサイバー攻撃




先週のサイバー事件簿
日本を狙うサイバー攻撃キャンペーン
2018/04/24 09:50:36  https://news.mynavi.jp/article/20180424-security/

2018416日週にかけて発生したセキュリティに関する出来事や、サイバー事件をダイジェストでお届け。日本を狙ったサイバー攻撃キャンペーン、「ChessMaster」が新たな活動を開始。標的型メール攻撃で始まるため、メールの添付ファイルを開くときは入念な確認と注意を怠らないようにしたい。
マルウェアが仕込まれたマインクラフトのスキンが拡散
2018420日の時点で、人気ゲーム「マインクラフト」のユーザーを狙ったマルウェアが拡散されている。拡散件数は30日間で約5万件におよぶという。
対象となっているのは「Minecraft:Java Edition」で、キャラクターの外見を変更するスキン(PNGファイル形式)に不正なスクリプトが仕込まれている。スキンデータは正規サイトにアップデートが可能なため、拡散件数が増大した。このスキンを読み込むと、最悪の場合HDDがフォーマットされたり、システムプログラムが削除される可能性があるという。すでにこの問題は対策済みで、アップロードされているスキンファイルから、イメージデータ以外のデータを除去するアップデートも導入されている。被害の多くはロシア、ウクライナ、米国などだが、注意しておくに越したことはない。
日本を狙う標的型サイバー攻撃キャンペーン「ChessMaster
 日本を狙う標的型サイバー攻撃キャンペーン「ChessMaster」の新たな活動が確認された。ChessMaster20177月にも明らかになった攻撃キャンペーンで、学術界、メディア、政府機関のような日本の組織を標的に攻撃を行っていた。
20179月以降は、バックドア型マルウェア「ANEL」の亜種を利用したものを確認。ANELは、ブラウザの情報やメールクライアントの情報を窃取する。
ChessMasterの攻撃は、不正なファイルが添付されたメールから開始。メールの件名と添付ファイル名は日本語で書かれており、時事的な文言や仕事関係で使われる言葉を使い、ユーザーの興味を惹くように仕向けている。
PCChessMasterが侵入すると、オープンソースのRATKoadic」をダウンロードし、PCから情報を窃取。この情報を判別して攻撃対象にできると認識すると、コマンド&コントロール(C&C)サーバからANELをダウンロードし、感染PCの環境情報をC&Cサーバに送信する。
対策としては、セオリー的な行動が有効。OSやセキュリティソフトを最新の状態にしておくのは大前提で、メールに添付してあるOffice文書などを開くときは、それが正規なものか確認してから行う。
既存ランサムウェアのコードを再利用したファイル感染型コインマイナー
 419日の時点で、ファイル感染型コインマイナー「PE_XIAOBAMINER」が確認された。XIAOBAMINERは不正なマイニング活動だけでなく、ファイルへの感染活動やUSBワーム活動といった機能も備えるランサムウェア。201710月に確認されたランサムウェア「XiaoBa」に酷似しており、XiaoBaのコードを再利用してマイニング機能やワーム拡散機能を追加したものとみられている。
XIAOBAMINERに感染したファイルは、本来の機能を失い、コインマイナーの機能が実行される。また、すべてのディレクトリを検索してシステム上の重要なファイルにも感染するため、結果として感染PCの動作は不安定になる。ファイルに対してコードが追加されてしまい、取り除くことは困難。
有効な対策は、システム上の脆弱性を突く攻撃をブロック可能な、ファイルレピュテーション(FRS)対応のセキュリティソフトを導入することなど。
プレミアム・アウトレット、会員約24万件のアカウント情報が流出
 三菱地所・サイモンは414日、同社が運営する通販サイト「プレミアム・アウトレット」のメールマガジン会員組織「ショッパークラブ」から、情報の一部が流出したことを明らかにした。流出したのはメールアドレス、ログインパスワード。
流出した情報のうち、24万件分はメールアドレスとログインパスワードが合致しており、3万件分はメールアドレスのみが合致していた。そのほかの情報は外部データには含まれていないとしている。流出の原因は不明で、現在調査中とのこと。
すでに会員には個別に告知し、会員情報データベースをネットワークから切り離した。2018424日現在、新規会員登録の受け付け、既存会員のログインが停止されている。
〈管理人より〉今や未曽有の世界的な「情報戦争」の時代といえます。他国と差別化できる技術力、開発力をもった先進国同士で「リアルに軍事力で」の戦争はおきないです。相手国、仮想敵国に対して、対象国の知らないうちに機密情報、重要情報を盗んでいく、そしてあたかも自国で開発した技術であるかのように開発につなげる、しかしそれが対象国の国際的な信用を貶めたり、国力の低下につながります。まさに世界的な情報戦、サイバー戦こそが「第三次世界大戦」といえるでしょう。
何だこりゃ!?

2018年5月20日日曜日

【共産中国軍がアメリカ軍機を先制攻撃!】くすぶる米中戦争の火種

リムパック参加の中国軍、次は何をしでかすのか?

国際ルールを無視して米軍機に高出力レーザー照射

北村淳
ジブチにある米軍基地キャンプ・レモニエで軍用機に乗り込む海兵隊や水兵ら。米国防総省提供(20131224日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / US DEPARTMENT OF DEFENSE / US Marine Corps Staff Sgt. Robert L. Fisher IIIAFPBB News

 紅海とアデン湾を結ぶ海上交通の要衝に位置するジブチの首都ジブチ市周辺には、かつて宗主国であったフランス軍の基地をはじめ、大規模なアメリカ軍基地、ドイツ軍、イタリア軍、スペイン軍の施設、それに自衛隊初の海外基地などが存在している。それらに加えて昨年(2017年)夏には、中国軍初の海外基地も開設された。ちなみに、フランス、アメリカ、日本、ドイツ、イタリア、スペインの軍事施設はいずれもジブチ国際空港に位置している。その中で最大の施設はアメリカ軍のキャンプ・レモニエであり(滑走路はジブチ国際空港と共用)、それと隣接してフランス軍と自衛隊の基地が設置されている。中国軍基地はキャンプ・レモニエからジブチ市街を挟んで10キロメートルほどの海岸にある。
ジブチは紅海とアデン湾を結ぶ海上交通の要衝に位置する(出所:Googleマップ)
ジブチで、中国軍事基地の開設式に参加した中国人民解放軍の軍人ら(201781日撮影)。(c)AFP PHOTO / STRAFPBB News
米軍機へのレーザー照射で搭乗員が負傷
 そのジブチで、2018年4月下旬から5月上旬にかけて、キャンプ・レモニエから発着するアメリカ軍航空機に対して強力なレーザーが照射される事件が連続して発生した。そして52日には、米空軍C-130輸送機の搭乗員2名が、レーザーの照射を受けて負傷するという事態にまで至った。
 幸いにも失明するような重傷ではなかったものの、ペンタゴン広報官によると「ジブチで頻発している米軍機に対するレーザー照射事件で用いられているレーザーは、極めて高出力であり、市販のレーザー装置から発せられたものではなく軍用レーザーと考えざるをえない・・・場合によっては失明の恐れもあり、極めて危険な行為である」ということである。
 米軍機に対する一連の軍用レーザーによる“照射攻撃”は、いずれも中国軍基地付近から発せられていた。そのため、連邦航空局(FAA)は「中国軍ジブチ基地周辺750メートル付近から高出力レーザーが照射された事案が数回発生している。この地域周辺を通過する際には、最大限の注意を払うように」といった警告を航空関係者に対して発した。

各国のジブチ基地エリア


中国政府は米政府の抗議を一蹴
 照射事件が起き始めてから数件に関しては、搭乗員たちに直接的被害が発生しなかったこともあり、米側が中国側に抗議することはなかった。しかし、負傷者が生ずるに至って、アメリカ政府は中国政府に対して公式な外交的抗議を申し渡した。
 ところが中国側の反応は、米軍当局が予想していたとおり「米軍機に対して故意にレーザーを照射した覚えはない」「基地周辺でのレーザー照射は、鳥を追い払うためと、基地上空に接近する可能性があるドローンを撃退するためである」といった声が聞こえてくるのみであった。中国外交当局も「厳正に事態を調査したが、アメリカの主張は全く根拠のないものである」と米側の公式抗議を一蹴している。
 中国によるレーザー照射に米軍が激怒しているのは、失明の恐れすらあるような危険な攻撃を受けたことに対する直接的な怒りだけではなく、中国がジブチおいても国際的取り決めを守らないことに対してである。中国は高出力レーザーの使用に関する国際的取り決めに参加している。それにもかかわらず、数回にわたって軍用レーザーを米軍機に向けて照射し、そのうえ中国国防当局は「中国は、地域の安全保障と平和維持のために、国際ルールそして現地の法令などに厳正に従って行動している。言われなき外交的抗議は受け付けない」と米国側の抗議を無視する姿勢を崩さない。
「関与政策」のなれのはて
 米軍関係者からは、「百歩譲って、米軍機に対する軍用レーザー照射事件が、上部からの命令に従ったのではなく個人が勝手に行ったものであったとしても、海外に駐屯する部隊の統制すらまともに行えない無責任な国際協力部隊の存在は、迷惑なだけでなく危険極まりない」と危惧の念も聞こえている。そして、今回の高出力レーザー照射事件や、南シナ海での人工島建設のように、中国が国際ルールを踏みにじる行為を繰り返しているのは、アメリカ側にも責任の一端があるという指摘がある。つまり、アメリカ側が「なんとかして中国を国際社会の枠組みに組み込んでまおう」という、いわゆる「関与政策」をとり続けて来たことの結果だというわけだ。今年になってトランプ政権は、国際安全保障環境を「大国間の角逐」状況にあると明言するに至った。すなわち、中国との関係は、これまでの協調関係の維持を目指す「関与政策」から一転して、対決に打ち勝つことを前提とした「封じ込め」、あるいはそこまでいかなくとも「封じ込め的政策」へと大きく舵を切ったのである。
RIMPAC-2018から中国を閉め出せ」
 そこで対中強硬派の米海軍関係者たちの間に、レーザー照射事件を機に、またまた浮上してきたのが「RIMPAC-2018から中国海軍を閉め出せ」という声である。
 RIMPAC(リムパック)とは、2年に一度アメリカ太平洋艦隊が主催して行われる多国籍海軍合同演習だ。各国の海軍(海兵隊を含む)が参加し、ホノルルを中心に実施される。2014年からは中国も参加するようになり、今年の夏に開催されるRIMPACにも参加することになっている。なぜ、米海軍を中心とする同盟海軍にとって仮想敵である中国が、合同演習に参加し始めたのか? それは、中国に対する弱腰ともいえるほどの「関与政策」を取っていたオバマ政権が、多くの米海軍関係者たちの反対を押し切って招待したからであった。
 しかしながら、1回目の参加(RIMPAC-2014)では、中国海軍は公式に参加した艦艇以外にも電子情報収集艦(スパイ艦)を訓練海域に派遣して情報収集活動を展開するという国際ルール違反を犯した。そして2回目のRIMPAC-2016では、参加国の“仲間”である海上自衛隊に対して公然と非礼を行うという国際的な海軍信義則を踏みにじる行為を繰り返して、主催者である米海軍を困惑させるとともに激怒させた(参考「中国海軍の参加で意味不明となりつつあるリムパック」2017.7.13)。このため、今回のジブチでのレーザー照射事件を受けて、これまで何度も中国海軍をRIMPACから排除せよと主張してきた米海軍対中強硬派の人々の間から、「これまでRIMPACに参加させることによって、中国軍が国際ルールを尊重するよう促してきたものの、全く効果はない。アメリカの安全保障戦略の基本的スタンスが『大国間角逐』へと方針転換したのであるから、この際RIMPAC-2018から中国を閉め出すべきだ」との声が上がっている。とはいっても、RIMPAC-2018への中国海軍の参加を間近に迫った現時点で拒絶するのは外交的には困難と考えざるを得ない。そのため、対中強硬派は「中国海軍は今度はなにをしでかすのか?」と身構えるしかないというのが現状である。
USNavy RIMPAC2016

【米中レーザー照射事件の関連記事】

中国がジブチで米軍機にレーザー照射 外交ルートで抗議
【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省は201853日、アフリカ東部ジブチで中国人民解放軍基地付近の上空を飛行していた米軍のC130輸送機に軍事用高出力レーザーが照射され、操縦士2人が軽傷を負ったとして、中国政府に外交ルートを通じて抗議したことを明らかにした。
 ジブチでは、中国軍が2017年8月、初の本格的な外国基地を開設。中国軍基地の近くには、米軍がイエメンなど周辺地域での対テロ掃討作戦の重要拠点としているアフリカ大陸最大の基地「キャンプ・レモニア」が存在し、米軍は中国軍の動向に警戒を強めていた。
 国防総省のホワイト報道官は3日の記者会見で「レーザーを照射したのは中国だと確信している。深刻な事態だ」と強調。この数週間で複数回のレーザー照射が確認されたことも明らかにした。
 米軍機への妨害行為の理由について、ホワイト氏は「分からない」と述べるにとどめたが、航空機へのレーザー照射は通常、操縦士らの顔面を狙って行われ、光線によって一時的に目を見えなくし事故を誘発させることが目的とされる。
 米軍機へのレーザー照射は、東西冷戦時代に旧ソ連軍が行ったことが確認されている。また、ネラー海兵隊総司令官が2日の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)周辺の反対派住民が米軍機に対して同様の妨害行為を行ったことがあると指摘し、「安全上、やらないでもらえると助かる」と要請した。

〈管理人〉高出力レーザーの照射は、アメリカにとっては旧ソビエト連邦以来の事件であったわけです。あからさまなアメリカに対する「攻撃」事案ですな。海南島での米中の航空機衝突以来でしょうか。また共産中国がやらかしてしまいました。照射をされた米輸送機のカメラ映像があれば、報復としてネットに公開してやることもできますね。


【実はあるあるアメリカ軍による高出力レーザーの開発】

米軍、対空レーザー出力を2022年までに10倍化の開発計画。航空機撃墜にも有効に
複数配備でミサイルの迎撃も自動化可能


レーザー兵器は過去数年間、パッケージサイズの縮小とともに高出力化を果たし、ドローンなどを撃ち落とすには十分な性能を得てきました。そして米軍は現在、出力を50100kWにまで高め、航空機を撃墜することもできる対空レーザーの開発を進めています。
 50kW
レーザーの初試験は、大型トラックに搭載する高出力レーザー試験用トラック「HEL-MTT(High Energy Laser - Mobile Test Truck)」の装備をアップグレードして2018年に実施する予定。さらに2022年には兵員輸送用装甲車ほどの車両に100kW級のレーザーを搭載する計画をしています。
 
レーザー兵器は、基本的に照準を合わせ続けるだけで命中状態を持続でき、飛んでくるミサイルやロケット弾をレーザーで迎撃するのに適しています。レーザーは光の速度で飛ぶため、照準とトリガーを完全に自動化しあらゆる飛翔体の接近を感知撃墜するようプログラミングされるようになるはずです。また基本的に電力さえあれば使えるため、弾薬のコストがかからないメリットもあります(発電用燃料は必要)
 
ただ、100kW程度ではまだ出力は十分ではないとのこと。その理由はミサイルの弾頭をレーザーで貫通させるには十分な時間が確保できない可能性があるから。この問題には複数のレーザートラックを同時に使うなどの用意が必要になりそうです。
 
また、雨や霧、砂塵舞う環境下ではレーザーの威力が半減してしまいます。もちろん、それでも無人機のセンサーを破壊するぐらいは可能なので、一定の効果は得られます。
 
レーザー兵器の本格的な実用化はこれからです。しかし(音もなく目にも見えない)レーザー光線での攻撃が可能になるのなら、互いに戦闘行為そのものを回避することのほうが多くなるかもしれません。
〈記事出典〉
2017719, 午後02:00   https://japanese.engadget.com/2017/07/19/10/



【関連動画】


【RIMPAC 2018】参加予定の中国軍、米軍機への高出力レーザー照射、次は何をしでかすのか?
https://www.youtube.com/watch?v=Ixm5uHQzMUw
CHILE - LISTO para RIMPAC 2018 - SACANDO LA CARA POR SUDAMERICA https://www.youtube.com/watch?v=29wdPolTv9Q


とうとうリムパックから閉め出された中国海軍

対中融和派の理想は空想に過ぎなかった

北村淳

2014年のリムパックの様子。この年に初めて中国海軍が参加した。米海軍が公開(資料写真、201478日撮影)。(c)AFP PHOTO /US NAVY/ Amanda R. Gray/ HANDOUTAFPBB News

 南シナ海への軍事的拡張をますます加速させると同時に、アフリカのジブチではアメリカ軍機に対してレーザー照射を行うなど、中国の国際ルールを無視する行動に、米海軍の対中強硬派は堪忍袋の緒が切れる寸前である。
 先々週の本コラム(「リムパック参加の中国軍、次は何をしでかすのか?」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53102)では、そうした対中強硬派の人々が、「RIMPAC(リムパック)-2018から中国を閉め出せ」という声を再び強めているものの、中国海軍を閉め出すことはさすがのトランプ政権でも無理であろうと歯ぎしりしている、といった状況を報告した。
 しかし、対中強硬派の歯ぎしりは驚き(喜びの驚き)に変わった。「闘う修道士」と呼ばれた元海兵隊総司令官マティス国防長官が率いるペンタゴン(米国防総省)は、オバマ政権が中国に発していたRIMPAC-2018への招待を“ドタキャン”したのである。
中国の覇権主義的行動はRIMPACにそぐわない
 RIMPACは、2年に一度、ハワイの真珠湾を拠点として開催される多国籍海軍合同演習であり、20カ国近くの海軍が参加する。今年(2018年)はRIMPAC-2018627日から82日にかけて開催されることになっている。

RIMPACに参加してきた国および2018年の参加予定国
中国海軍は2014年、2016年とRIMPACに参加しているが、523日、ペンタゴンは「RIMPAC-2018への中国の招待を取り消す」と発表した。
「中国は多国間の領域紛争が継続している南シナ海において、一方的に『軍事化』を推し進めており、南シナ海での軍事的緊張状態を悪化させている。このような、中国による軍事化、すなわち軍事力を背景にして周辺諸国を威嚇する覇権主義的行動は、RIMPACの原則や目的とは相容れないものである」というのが取り消しの理由だ。そしてペンタゴンは、中国による直近の軍事化の事例として以下のような動きを指摘した。
 2018年の4月から5月にかけて、中国は南沙諸島に建設した7つの人工島のうちの3つ、ファイアリークロス礁、スービー礁、ミスチーフ礁に地対艦ミサイルシステムと地対空ミサイルシステムを設置した。それらの人工島にはいずれも3000メートル級滑走路が設置されているため、中国本土から1200キロメートル以上も離れた南沙諸島に強力な前進航空基地が3つも誕生することになる。

ウッディー島、南沙人工島、海南島からの地対艦・地対空ミサイルの射程圏

 引き続いて、中国空軍は、南沙諸島や西沙諸島の航空拠点に爆撃機数機を派遣する訓練を実施し、中国による南シナ海の行政支配拠点である三沙市政庁が設置されているウッディー島(永興島)には、核爆弾や長距離巡航ミサイルを搭載することが可能なH-6K(戦神)爆撃機を展開している状況が確認された。
 そして、そのウッディー島に、HQ-9(紅旗9型)地対空ミサイルシステムをはじめとするカムフラージュされた各種兵器が展開している模様が、アメリカの商業衛星によって映し出された。このように、西沙諸島の軍事化がますます伸展している状況が明らかになっている。
対中融和派と対中強硬派のせめぎ合い
「中国をRIMPACに参加させるな」という主張は、オバマ政権が中国艦隊を初めてRIMPAC-2014に参加させる決定を下したときから、絶えず唱えられてきた。
 中国をRIMPACに参加させるか否かは、中国に対する関与政策を支持するのか、あるいは封じ込め政策を支持するのか、という対中政策に関する基本的立場のせめぎ合いの具体的事案であった。中国に対する関与政策を支持する陣営、すなわち中国をアメリカを盟主とする西側陣営にできるだけ取り込み、西側陣営と協調的行動を取る存在に変化させるために、中国とのある程度の妥協も容認せざるを得ないという対中融和派の人々は、RIMPACに中国を参加させることは絶好の機会であると考えた。
 なぜならば、多国籍海軍による合同演習に中国海軍を参加させることにより、国際的な海軍のルールや国際海洋法秩序を理解させて、海洋での予期せぬ衝突を防ぎ、軍事力を振りかざしての海洋侵出を抑制できるものと信じていたからである。
 一方、中国による覇権主義的海洋進出政策への対決姿勢を強化して封じ込めなければならないという方針を堅持する対中強硬論者たちにとって、仮想敵である中国海軍を、米海軍とその同盟国や友好国の海軍の集まりであるRIMPACに参加させることなど論外の企てであり、断固として容認できないアイデアであった。
ことごとく踏みにじられた対中融和派の期待
 対中強硬派の人々は、中国海軍がRIMPACに参加しても、対中融和派の人々が考えるような啓蒙効果は起こりえないと考えていた。それどころか、多国籍海軍演習に参加する中国海軍の真意は、米海軍や同盟海軍などの情報を収集することにあり、国際協調を学ぼうなどという意思はない、と確信していた。実際に、RIMPAC-2014において、中国海軍はRIMPACに参加する艦艇以外に情報収集艦を派遣し、アメリカ海軍をはじめとする各国海軍の電子情報の収集に勤しんだ。また、引き続いて参加したRIMPAC-2016では、海上自衛隊に対して国際儀礼を踏みにじる非礼を働き主催者であるアメリカ海軍は困惑した。
 それだけではない、中国がRIMPACに参加した2014年に開始された南シナ海での人工島建設はその後アメリカ海軍などの予想を上回るスピードで推進され、本格的な滑走路まで建設されるに至り、現在は7つの“立派な”人工島全てにレーダー施設が設置され、それらの3つは3000メートル級滑走路や大型艦艇が着岸可能な港湾施設を有する本格的な海洋基地としての体裁を整えつつある有様である。このような事実は、対中融和派の理想は全く空想に近いものであり、現実は対中強硬派が呈していた疑惑の通りであったことを証明している。
 しかしながら、「RIMPACに中国海軍を参加させるな」という対中強硬派の抗議は、オバマ政権下では無視され続ける結果となった。そして、トランプ政権下でもなかなか中国に発せられたRIMPACへの招待が取り消されることはなかった。
ようやく日の目を見た対中強硬派
 政権発足後1年を経て公表された国防方針において、トランプ政権は「大国間角逐」すなわち「中国・ロシアとの対決」に打ち勝たねばならないという基本方針を打ち出した。その状況に至って、これまで4年間にわたって押さえ込まれてきた対中強硬派の主張がようやく日の目を見ることになったのである。

 RIMPACからの中国海軍の締め出しを第一歩に、いよいよ米海軍を中心とする対中強硬派による“反撃”が開始されることになる。だが、中国に与えてしまった4年間によって、中国海洋戦力による南シナ海での軍事的優勢は大幅に進展してしまった。したがって、米軍側の“反撃”は4年前に比べれば数段困難なものになってしまったこともまた事実である。

中国をRIMPACに招待しない理由


岡崎研究所
 米国防総省は2018523日、夏に開催されるRIMPAC(環太平洋合同演習)への中国の招待を取り消したことを発表した。RIMPACは、2年毎に米海軍の主催で行われる世界最大規模の海上演習である。中国海軍は、オバマ政権時代の2014年に初めてRIMPACに正式メンバーとして招待され、2016年にも参加している。この件に関する国防総省のChristopher Logan報道官の声明は次の通りである。

米国は、自由で開かれたインド太平洋にコミットしている。中国による、南シナ海における係争地の継続的な軍事化は、地域の緊張と不安定を助長する一方である。中国のそうした行為への最初の対応として、我々は、中国海軍を2018年のRIMPACに招待しないことにした。中国の振る舞いは、RIMPACの原則と目的に反する。
 我々は、中国がスプラトリー諸島の係争地に対艦ミサイル、地対空ミサイル、電波妨害器を配備している、強い証拠を持っている。ウッディ島への中国の爆撃機の着陸も緊張を高めている。
 中国は、人工島の建設は、海上の安全、航行の支援、捜索・救援、漁業保護、その他、非軍事的目的のためとしているが、武器の配備は軍事的用途以外の何物でもない。
 我々は中国に、これらの軍事システムを直ちに撤去し、南シナ海の軍事化をやめるよう、求めてきた。
 係争地への最近の武器の配備と継続的な軍事化が、スプラトリー諸島を軍事化しないとの習近平国家主席の米国と世界に対する約束を破るものである。

 中国は、YJ-12B 対艦巡航ミサイル(射程545km)、 HQ-9B 地対空ミサイル(射程295km)をスプラトリー諸島のファイアリー・クロス、スービ、ミスチーフの3つの礁に配備し、パラセル諸島のウッディ島において戦略爆撃機H6Kの離着陸訓練を行うなど、南シナ海の軍事化を急速に進めている。上記3礁には、3000メートル級の滑走路も設置されている。こうした行動について中国側は、防衛目的であり軍事化ではない、と言っているが、そんな詭弁は通らない。上記声明も指摘する通り、中国の行動は、南シナ海を軍事化する意図はないとの2015年の習近平の約束に明らかに違背している。
 今回、トランプ政権は、2017年に自らが発した招待を取り消すことで、こうした中国の行動は認められないというメッセージを送った。もちろん、RIMPACへの招待を取り消したからといって、中国が南シナ海の軍事化を止めるとは到底思われない。しかし、効果の有無にかかわらず、絶えず問題提起をしていくことに意味がある。南シナ海における航行の自由作戦の実施も同様である。

 中国を今年のRIMPACに招待することを取り消した直接の理由は南シナ海の軍事化であるが、過去のRIMPACで中国が問題行動をとったことからも、中国を招待しないことは適切な判断と言える。2014年には、中国海軍は情報収集艦を送り込み、他の参加国の艦船に対してスパイ活動を行ったとして、厳しく非難された。2016年には、中国艦船を海上自衛隊幹部が見学することを拒否している。軍事演習にライバル国を招待する場合、その目的は、軍同士の交流により、透明性と信頼性を高め、不測の衝突を避けるという点にある。他の参加国にスパイ行為を働いたり、他の参加国の軍人による見学を拒否するなど、信頼醸成に真っ向から反する行動である。オバマ政権が中国をRIMPACに招待した当時から、中国を招待すべきでないとする反対論も根強かった。オバマ政権は、中国に対し宥和的に接することが、中国を協調的姿勢に導くと考えたのであろうが、全く甘い判断であったと言うべきである。

《管理人》共産中国をRINPACへの参加を認めることは、彼らによる実地の諜報活動を認める、ということですね。敵に塩以上の機会を与えるということになる、共産中国にとっての仮想敵国の長所短所(=弱点)をさらしていくことになるため、今回の共産中国の参加の見合わせは次へつなげる1歩であろうと考えたいものです。

2018年5月16日水曜日

サイバー攻撃は超大国と渡り合うための攻撃手段 ~アメリカのイラン核合意離脱~ 国家主導型サイバー攻撃の脅威

焦点:核合意離脱で孤立する米国、今後の対イラン行動困難に
20180512 09:13 http://blogos.com/article/296527/

[ワシントン 20185月9日 ロイター] - トランプ米大統領が、欧州諸国や共和党関係者らからの警告にもかかわらずイラン核合意からの離脱を選んだことで、米国の反イラン運動が孤立し、予測不能の事態に陥る可能性が強まったと専門家は指摘する。トランプ大統領は8日、欧米とイランが結んだ核合意からの離脱を表明。合意はイランの核開発や邪悪な行為に厳しい制限を掛けず、気前よく経済制裁を解除したと主張した。
米国の合意離脱は、核問題だけでなく、イランの影響が及ぶイエメンやシリア、イラク、アフガニスタンの脅威に対する今後の行動について、欧州や他の諸国との結束を難しくするかもしれないとアナリストは分析。
また、中東地域で予測できない状況を生み出し、イランが同地域で米国の国益に公然と歯向かって影響力を強めようとするかもしれない。マーチン・デンプシー元統合参謀本部議長はツイッターに「われわれは、より危険な道で孤立し、選択肢も少ない」と投稿した。
イスラエル軍は8日、イランの友好国である隣国シリアと衝突する恐れから、警戒態勢に入り、地域の緊張が高まっていることを裏付けた。ブッシュ政権時代に国務省高官だったニコラス・バーンズ氏は「離脱は米国の力を弱めることになる」と話す。イランの強硬派を勢いづけ、対イラン政策でロシアや中国からさらに遠ざかり、欧州諸国を困らせるという。「長い間協力してくれた欧州諸国の意欲に深いマイナスの影響を及ぼすだろう」
米政府当局者は、米国とイランの関係悪化が隣接するイラクに悪影響を与えると指摘する。
イラクでは12日に国会選挙があるが、米国が支援した過激派組織「イスラム国」掃討後の選挙で、アバディ首相が続投を目指している。マティス国防長官は選挙を巡りイランが邪魔していると非難した。マティス氏はかつてイラン核合意の順守が必要だと公言していたが、その後見解を和らげ、議会に対して、修正が必要な不完全な軍縮合意だったと述べた。
ただ関係者によると、内々でマティス氏はイランの脅威を考えると同盟国と協力すべきだと強調してきたという。4月26日の議会証言でマティス氏は「中東の安定に何が重要かという点とイランによる脅威に集中すべきだ」と語った。脅威は核開発を超えてテロ支援やサイバー攻撃にまで広がっていると述べた。西側のある外交官は、イランがシリアやイラクで米国に対し報復することには疑念を呈す。イスラエルの反撃が考えられるためだ。
「米国を懲らしめるため、イスラエルと戦争する危険は冒さない」と話す。イスラエルは2月からシリアでイラン軍と競り合っており、戦線拡大が懸念されている。イスラエル軍は8日、シリアでイラン軍の不規則な動きを察知したとして、ゴラン高原で防空体制を取るよう指示した。
米国はイランがイエメンで反政府組織「フーシ」にミサイルを供給し、内戦を地域紛争に拡大させているとして、イランを非難している。米当局者は、イランのライバルであるサウジアラビアを標的にするフーシへの支援をイランが強めるとの懸念があると認めた。イエメンからのミサイル攻撃でサウジ側に多数の死者を出せば、広範な地域戦争の恐れが高まると専門家は指摘する。イラン核合意の崩壊はまた、イランがひそかに核開発を再開するリスクを高める恐れがある。イランは核兵器の開発を否定し、平和目的の核利用だと主張している。 (Phil Stewart記者)

米、核合意脱退でイランからのサイバー攻撃を危惧 NYタイムズ

© REUTERS / Kacper Pempel/Files
 米国のサイバーセキュリティ専門家は、トランプ米大統領が核合意離脱を発表したあと、イランからのサイバー攻撃が増加すると危惧している。ニューヨーク・タイムズが政府と民間企業のサイバーセキュリティ専門家の話として伝えた。
 離脱表明の翌日、米クラウドストライク社はイランのハッカーのサイバー活動の「顕著な上昇」を報告した。同社によると、米外交官やTV局関係者にマルウェアファイルが送りつけられている。さらに、イランのハッカーは欧州にある米軍機構のインターネットアドレスを2ヶ月に渡り調査した。現在調査が行われており、攻撃の詳細は明らかにされていない。
先に、トランプ米大統領は、ホワイトハウスでの記者会見で、米国がイランの核問題に関する包括的共同作業計画(JCPOA)から離脱し、核合意に伴って解除した全ての対イラン制裁を再開し、追加制裁を発動すると発表した。

トランプ大統領はイランとの合意を批判し、同合意はイランが核兵器を製造する可能性を防いだのではなく、延期させただけだと主張した。
アメリカ、イラン核合意離脱 藤井厳喜


【国家主導型サイバー攻撃の脅威】

日本人が知らない、国家主導型サイバー攻撃

人々の生活を脅かす、重要インフラへの攻撃

[2018/05/14 11:00]  https://news.mynavi.jp/itsearch/article/security/3711

周藤瞳美

 近年、国家主導型サイバー攻撃の被害が世界各国で増え始めている。本連載では、国家主導型サイバー攻撃のねらいと手口について、世界のサイバー事件に詳しいマカフィー サイバー戦略室 シニアセキュリティアドバイザー CISSPのスコット・ジャーカフ氏に事例を交えながら解説していただく。世界のさまざまな地域で報告されている電力網や発電所など重要インフラ設備へのサイバー攻撃は、私たちの生活や生命を脅かす非常に深刻なものである。今回は、特にロシアによるものと見られるインフラ設備へのサイバー攻撃について話を伺った。
ウクライナの電力網にロシアが2度ハッキング

 日本から約8,000km離れた東欧の国、ウクライナ。隣接するロシアと長期にわたって対立が続いており、近年ではクリミア半島を巡って緊張関係にある。こうした状況の中、ウクライナでは、201512月および201612月に、2年連続でサイバー攻撃による停電が発生した。
 2015年の1度目の攻撃では、電力供給会社3社が攻撃対象となった。30拠点の変電所がシャットダウンする事態に陥り、ウクライナ西部のイヴァーノ=フランキーウシク周辺で16時間に及ぶ停電が発生。およそ23万人の住人が影響を受けた。ウクライナ保安庁は、この停電がロシアのサイバー攻撃によるものであると発表している。
 また、2016年の2回目の攻撃では、ウクライナの首都キエフ北部で約1時間にわたる停電が発生し、数万人の住人が影響を受けた。2回目の攻撃で対象となった変電所は1拠点のみで、停電時間も1時間と、前年の攻撃に比べると規模は小さいものであった。ジャーカフ氏によると、1回目と2回目の攻撃の違いは規模の大きさだけではないという。
1回目では、攻撃者はRTU(Remote Terminal Unit:遠隔端末装置)のファームウェアにログインし、手動でこれを書き換えて変電所をシャットダウンしていたのに対し、2回目の攻撃においては、マルウェア自体が自動で動作することで変電所のシャットダウンに至ったのが大きな違いです」(ジャーカフ氏)
インフラ設備に対する物理的な妨害活動を目的として作られたマルウェアとしては、2009年に米国がイランの原子力施設を破壊する目的で開発した「Stuxnet」が有名だが、2回目のウクライナ停電の原因となったマルウェアは、「Industroyer/CrashOverRide」と呼ばれるものだ。
このマルウェアの目的は、電力会社のコントロールセンターにある制御端末に感染し、特定の日時に起動して、コントロールセンター配下の変電所のブレーカーが落ちるようなコマンドを送信することで、停電を引き起こすこと。
StuxnetまたはIndustroyer/CrashOverRideが侵入してきたとわかった時点で、インフラ設備を物理的に破壊することが攻撃者の最終的な目的であることは明確です」とジャーカフ氏は説明する。
これまでに、ロシアが仕掛けたとみられる重要インフラへの攻撃は、米国やEU諸国でも報告されており、ウクライナ電力網への攻撃は試験的に行われたものである可能性があるという。
「重要インフラのなかでも特に、電力網に関する設備は人々の生活に密接に関わるものです。対外諜報機関としての役割を果たしていた旧ソ連・国家保安委員会(KGB)出身のプーチン大統領は、国の安定を揺さぶる戦略についてはお手のものです。市民の社会生活が根本から脅かされるような攻撃の背後にロシアがいるであろうことは、容易に想像がつきます」(ジャーカフ氏)
米国の国土安全保障省と連邦捜査局が共同でテクニカルアラートを発表

 ロシアが標的にしたとみられる米国のインフラは、浄水システムや化学物質処理プラント、原子力関連施設、航空システム、水処理設備、政府関連施設など広範に渡っている。
 米国の国土安全保障省(DHS)と連邦捜査局(FBI)2018315日、共同でテクニカルアラートを発表した。同報告書では、20163月以降に発生したロシアによるものとみられるインフラへの攻撃についてまとめられているが、ジャーカフ氏によると、従来の報告書では見られなかった特徴のある内容が盛り込まれているという。
「サイバー攻撃においては通常、最終的な標的となる”intended target”への攻撃の前段階として、攻撃起点となる”staging target”を置きます。一般的なテクニカルレポートでは、staging targetについてはあまり触れられませんが、今回はintended targetとあわせてstaging targetについても詳しく解説されているのが特徴です」(ジャーカフ氏)
staging targetは大きく分けて、踏み台としての役割と、マルウェアの置き場としての役割という2つの目的で設定されるもので、intended targetとなる組織の取引先や関連機関など、比較的セキュリティの弱いネットワークを持つ第三者組織が狙われる。
例えば、商用施設をintended targetとした過去の事例では、staging targetとして同施設の空調設備に関連する業者のネットワークが狙われ、最終的にはintended targetの財務関連情報が盗難された。
セキュリティの基本は、”if”ではなく”When

これまで見てきたように、重要インフラを対象とした攻撃は米国やEU諸国を中心に行われている。したがって、日本にはあまり関係のないことであると考えている人もいるかもしれない。
しかし、ジャーカフ氏は「先進国であるのならば、十分に攻撃の対象となりえることを肝に銘じる必要があります。こうした状況だからこそ、しっかりと準備をしておかなければなりません」と念を押す。
セキュリティの攻撃に関しては、”if”ではなく”When”で考えなければならない。つまり、「もし攻撃を受けたら」ではなく、「攻撃を受けたときには」という考えを持ち、対処法を検討する必要があるわけだ。特に日本は「グローバルでみると、インフラ自体の防御網は比較的弱い」とジャーカフ氏は指摘する。
「日本のインフラ設備は、IT部門と制御部門のコミュニケーションが取れておらず、お互いがまったく違う言語を使っているような状態です。これがインフラ設備全体としての脆弱性を高めています。侵入された際にいかに検知をするか、また、侵入を検知した場合にいかに適切に対応していくか、双方ともしっかり準備していれば被害を抑えることができますが、私からみると十分ではないと思います」(ジャーカフ氏)
米国やEU諸国で実際に被害が出ているということは、日本においても実際に攻撃があった場合、何らかの被害が発生することは十分に想定される。日本には関係ないなどという認識を捨て、「いかに攻撃されないかではなく、攻撃を受けた後いかに早く復旧するか」という観点から、組織体制や教育等も含めて包括的に備えておく必要があるだろう。
南北朝鮮サイバー攻撃合戦をどうみるか?