2017年7月16日日曜日

「米中戦争」の時代 ~南シナ海をめぐる覇権戦争~

米中戦争は起きるのか?
「トゥキュディデスの罠」のワナ
産経新聞

 米マイアミ大学のジューン・ドレイヤー教授が、国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)が主宰する日本研究賞の受賞講演で、「トゥキュディデスの罠(わな)」という米中戦争の可能性に言及した。北朝鮮によるミサイル発射実験の陰に隠れ、「中国との戦争」という重い命題が再び米国で議論されていることを示した。
 「トゥキュディデスの罠」とは、現行の覇権国が台頭する新興大国との間で戦争することが避けられなくなるという仮説を指している。紀元前5世紀に起きたアテネの台頭と、それに対するスパルタの恐怖が、避けることのできないペロポネソス戦争を引き起こしたとする考えだ。これを現在の米中間に当てはめて論じられている。
 ドレイヤー教授は、来日前にワシントンで出席した会議で、この「トゥキュディデスの罠」が議論になったと述べた。彼女自身は米国がスパルタのような軍事国家ではなく、まして中国がアテネのような民主国家でもないとして、その前提に疑問を呈した。米中は厳しく対峙(たいじ)しながら互いに重要な貿易相手国であると認識し、戦争にまでは至らないとの見解を述べた。
 米中戦争の蓋然性を指摘するのは、長く「トゥキュディデスの罠」の危険性を研究してきた米ハーバード大学のグラハム・アリソン教授である。
 昨年9月に米誌で発表し、この4月にも米誌「ナショナル・インタレスト」(電子版)に「米中はどう戦争に踏み込むか」との警戒感で論議を巻き起こしている。5月末には、新著『運命づけられた戦争-米中はトゥキュディデスの罠を回避できるか』を改めて世に問うた。アリソン教授は過去500年間の欧州とアジアの覇権争いを研究し、16件が「台頭する国家」が「支配する国家」に取って代わる可能性があり、うち12件が実際に戦争に突入している。
 米中は互いに望まなくても戦争を起こしかねず、数年後に

(1)南シナ海で米中軍艦の衝突

(2)台湾で独立機運から緊張
(3)尖閣諸島をめぐる日中の争奪戦

 などが引き金となり、米中が激突する事態に至ると見通している。昨年のランド研究所の試算では、米中衝突によって米国の国内総生産が10%下落し、中国は35%まで急落すると予測する。

 アリソン教授によれば、新興大国には尊厳を勝ち取りたいとの「台頭国家症候群」があり、既存の大国には衰退を意識する「支配国家症候群」が、国際会議などで表面化する。さきにドイツで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議では、中国の習近平主席が「高まるうぬぼれから影響力の増大をはかった」し、トランプ大統領は台頭する中国を「恩知らずで危険な存在とすら見なす」傾向がみられた。
 トランプ大統領は4月の米中首脳会談以来、中国に対して北の核開発停止への圧力を期待したが、必ずしも思わしくない。トランプ政権はまもなく、南シナ海の人工島近くで「航行の自由」作戦を再開し、台湾に大型武器を売却、北と取引のある中国企業2社と人物に制裁を発動した。

 アリソン教授の提起に対して、米誌で賛否が巻き起こった。こうした論議も含めて、米国には中国の台頭によって生じた「構造的なストレス」から、偶発戦争を引き起こしかねないとの懸念がある。日本は米中衝突の最前線にあり、「トゥキュディデスの罠」がもつワナに落ち込まぬよう万全の備えを怠るべきではない。(東京特派員)

《維新嵐》単なるリップサービスなのか?仮想敵の手の内を出させようとしてるのか?

確実にいえるのは、リムパック参加国同士のつながりを把握できること、参加国で共産中国シンパが発生しやすくできること、日米など海洋軍事国の海軍力を堂々とモニターできることでしょうか?





中国海軍の参加で意味不明となりつつあるリムパック

対中融和派の主導権で、あの“非常識”な部隊をまたもや招待

北村淳
2016630日~84日に開催された「リムパック2016」の様子(出所:米海軍)

 G20首脳会合に付随して行われた米中首脳会談で、習近平国家主席は、アメリカ側から招待されていた2018年夏の「リムパック」(RIMPAC:環太平洋合同演習)に中国海軍が参加することをトランプ大統領に正式に伝えた。
中国海軍参加を巡る米海軍内部の対立
 リムパックとは、アメリカ海軍太平洋艦隊が主催し、アメリカ海軍や海兵隊を中心に、アジア太平洋諸国を中心とした多数の国々の海軍や海兵隊(水陸両用戦担当組織)が参加して行われる多国籍合同訓練である。ホノルルを本拠地としてハワイ周辺海域を中心に2年ごとに実施されている。
 1970年代にはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが参加して毎年開催され、1980年からは日本も参加し、2年ごとに開催されるようになった。その後、参加国(アメリカ政府が決定して招待する)が増大して、前回の「リムパック2016」には26カ国が参加し、まさに「質・量ともに世界最大規模」の多国籍合同海洋軍事訓練とみなされている。
 そのリムパックに、かつてはリムパック参加国にとっては仮想敵の1つであった中国海軍が2014年から参加した(厳密には、オバマ政権により招待された中国海軍オブザーバーがリムパック2012に参加している。軍艦をはじめとする海軍部隊の参加はリムパック2014からである)。
 リムパック2014に中国海軍を招待するに当たっては、主催者であるアメリカ太平洋艦隊はもとより、アメリカ海軍上層部やペンタゴン、ホワイトハウスや連邦議会、それにシンクタンクなどを幅広く巻き込んで激論が交わされた。
 そもそもアメリカ海軍にとって中国海軍は主たる仮想敵の1つである。中国海軍そして中国共産党政府に対して強い警戒心を抱く海軍関係者の中の「対中強硬派」が、中国海軍のリムパックへの参加に反対するのは当然であった。
 それに対して、「軍事力を前面に押し出して中国と対決するよりは、中国側との対話交流を質的に進化させ中国を取り込む方が現実的である」とする「関与戦略」に立脚する対中融和派の人々も少なくなかった。むしろ、「封じ込め戦略」を主張する対中強硬派よりも、対中融和派の勢力のほうが大きかった。
 対中融和派は、「世界最大の多国籍海軍演習に中国海軍を参加させることは、まさに中国側との相互理解を伸展させるための絶好の機会となる」として、中国海軍のリムパックへの参加を強く支持した。そして、何よりもオバマ大統領が中国に対して「極めて融和的」であったため、中国海軍に対するリムパック2014への招待が決定されたのである。


これまでの参加国とリムパック2018の参加予定国


リムパック2014──スパイ船派遣事件
 2014年のリムパックに参加した中国海軍は、4隻の軍艦(駆逐艦、フリゲート、補給艦、病院船)を派遣した。
 ちなみに、海上自衛隊は米海軍の空母と強襲揚陸艦に次ぐ巨艦のヘリコプター空母「いせ」を派遣し、その威容は中国海軍を圧倒していた。だが、初の中国海軍参加ということで、米国メディアの関心は中国海軍の動向に集中した。
 そのような状況の中で、中国海軍のある非常識な行動によってホノルルは大騒ぎになった。中国海軍の情報収集艦がリムパックを実施している海域に姿を現し、アメリカ空母などにピッタリ寄り添って情報収集活動を実施したのである。
多国籍合同訓練が実施されているといっても、中国スパイ艦が活動していたのは公海上である以上、国際海洋法上違法というわけではない。しかし、リムパック参加国が、公式参加艦艇以外の情報収集艦を訓練海域に展開させるなどということは、リムパック史上初の出来事であった。
 たしかに多数の参加国の艦艇や航空機が一堂に会するリムパックは、効率よく各国海軍の様々な信号や電波などの電子情報を収集できる絶好の機会だ。とはいえ、そのためにスパイ艦を派遣するなどというのは、まさに参加国に対する背信行為以外の何物でもない。
 主催者である太平洋艦隊はじめ、米海軍やペンタゴンの首脳たちが怒り心頭に達したのは当然である。連邦議会でもとりわけ対中強硬派の議員たちがこの問題を取り上げ、「リムパックへの中国の参加は今回が最初であったが、同時に今回が最後となるだろう」と二度と招待しない方針を打ち出した(本コラム2014724日参照)。
 しかしながら、リムパック2014が終了してしばらくすると、オバマ政権は再び中国海軍をリムパック2016へ招待した。そして当然、中国は招待に応えて参加した。
リムパック2016──日本侮辱事件
 リムパック2016では、中国海軍は前回よりも1隻多い5隻の艦艇を参加させた(もっとも2014年もスパイ艦を入れれば5隻だったが)。
 海上自衛隊は今回も巨艦「ひゅうが」を参加させ、威容を誇った。だが、相変わらず米国メディアの関心は中国海軍に向けられていた。
 中国海軍は前回のようにメディアに取り上げられるようなトラブルを起こすことはなかった。しかしながら、メディアの目にはとまらなかったものの、海軍間の慣行儀礼に著しく背く非礼を、海上自衛隊、すなわち日本に対して繰り返した。
 多数の参加国があるリムパックでは、それぞれの参加国が他のすべての参加国の代表団を艦艇などに招待してレセプションが行われる。各種訓練のみならず、このような機会を設けて相互理解や交流を図るのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50446?page=4


 ところが、中国代表団は海上自衛隊から招待を受けたにもかかわらずレセプションを欠席した。他国のレセプションへ参加しなかったのは、リムパック史上、中国海軍が初めてであった。
 それだけではない。中国艦上でのレセプションに、中国海軍は自衛隊代表を招待しようとしなかった。その情報をキャッチしたアメリカ海軍が中国側に警告を発して、結局、自衛隊が招待されることになったが、このような出来事も初めてであり、主催者である太平洋艦隊、そしてアメリカ海軍は再び怒り心頭に達していた。
 そして、対中強硬派の人々は、「二度も続けて問題を引き起こした中国海軍は、二度と招待されないだろう」と考えた(本コラム201684日参照)。
結局、トランプも招待した
 リムパック2014でもリムパック2016でも問題を引き起こした中国海軍であったが、そのようなトラブルに比べるとはるかに大きい問題を、2014年から2016年の期間に南シナ海で引き起こしていた。すなわち、本コラムでも繰り返して取り上げている南沙諸島での人工島建設である。
 中国のリムパックへの招待に反対する対中強硬派の米海軍関係者たちによれば、「そもそも、中国をリムパックに参加させているのは、多国籍訓練という場を通して、中国海軍との相互理解を深め、中国海軍に勝手な動きをさせない、という目的のためであった。しかし、その間にも、中国は南沙諸島に7つもの人工島を建設したり、それらの人工島や西沙諸島の軍事基地化を進めたりしている。なんのために参加させているのだ」と憤っていた。
 ただし、中国に対してオバマ政権とは一線を画する態度で接することを標榜しているトランプ政権が誕生したため、「リムパック2018への中国の招待は、まさかあるまい」と対中強硬派の人々は期待した。
 太平洋艦隊側は、陸上自衛隊に日本が誇る地対艦ミサイル部隊をリムパック2018に参加するよう要請した。すなわち、日本の優秀な地対艦ミサイルによって日本沿岸域や南シナ海沿岸域に接近する中国艦艇を打ち払うデモンストレーションを世界中の海軍が注目するリムパックで行おうというわけだ。これは「戦力強化が著しい中国海洋戦力から東シナ海や南シナ海を防衛するには、海軍艦艇や各種航空機に加えて、島嶼線に陣取る地対艦ミサイル戦力を活用すべきである」というアメリカ軍の新ドクトリンに則る動きである。(本コラム201458日、20141113日など参照)。このような流れは、対中強硬派の人々の「まさか中国がリムパック2018に招待されることはあるまい」といった期待を後押しした。
 しかしながら、トランプ政権はリムパック2018へ中国を招待し、習近平国家主席がトランプ大統領に、リムパックへ参加する旨回答したのである。

 中国海軍艦艇が東シナ海沿岸域などに接近するのを阻む抑止戦力としての自衛隊地対艦ミサイル部隊と、中国艦隊が、相互理解と協働関係を促進するためのリムパック2018に肩を並べて参加するのであるから、いよいよリムパックもブラックユーモアの体をなしてきた。




 海南島は、南シナ海の共産中国の軍事的覇権を維持拡大するうえにおいて、重要な海空の拠点といえるでしょう。重要な軍事拠点は、たいてい「観光地」開発していくことが多いですね。

中国、最前線基地に愛国クルーズ
進む軍事拠点化、米国の逆襲始まる

パラセル諸島に向かう定期クルーズ船の埠頭で記念撮影する乗客ら=9日、中国海南省三亜

 中国の南シナ海への“最前線基地”、海南島の三亜湾に「鳳凰島」は浮かんでいる。東京ドーム約8個分にあたる約36万平方メートルの人工島には、高級ホテルやコンドミニアムが立ち並ぶ。2017年7月上旬の日曜日、島のふ頭でキャリーバッグを引いた中国人観光客が歓声を上げていた。
 「西沙(英語名・パラセル)へようこそ」と書かれた看板の前で記念撮影を済ませた観光客が、次々と3月に就航したばかりの豪華客船「長楽公主」号(排水量1万2000トン)に乗り込んでいった。南シナ海をめぐるクルーズに出発するのだ。
 中国は2013年、実効支配するパラセル諸島への定期クルーズ船を就航させた。旅行会社によると、ツアーには永楽群島への上陸体験や国旗掲揚や国家斉唱などの「愛国主義活動」が盛り込まれている。3月までに乗客はのべ数万人に上った。海南省当局は20年までに、約1000キロ離れたスプラトリー(中国名・南沙)諸島への定期船も就航させる計画だ。

http://www.sankei.com/world/news/170716/wor1707160001-n2.html

 広東省から夫とツアーに参加した女性(40)は「行ったことがなかったから。すごく景色がきれいだって聞いたし」と浮かれていた。これから向かう海で、中国が何をしているのかなどまったく意に介していない様子だった。

 「中国が南シナ海問題での平和的対話を唱える裏で、軍事拠点化はますます進んでいる」と米政府関係者が指摘する。
 米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が6月29日に公表した衛星写真で、中国がスプラトリー諸島のファイアリークロス(同・永暑)礁に造成した人工島に、新たに4つのミサイル格納施設が建設されているのが確認された。同島では2月、8つのミサイル格納施設が確認されていた。
 中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と進めている「南シナ海行動規範」をめぐる協議はやはり、南シナ海の「重武装化」に向けた時間稼ぎに過ぎなかった。
 米国にとって南シナ海の軍事拠点化が脅威なのは、中国がこれらの人工島に対艦・対空ミサイルを配備し、一帯に「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)の強固な防衛網を構築するのが必至なためだ。


 米国の有識者らの間では、中国が南シナ海の軍事拠点化をほぼ完成させつつあることを受け、「南シナ海が中国の手に落ちた」「ゲームオーバーだ」などとする悲観的な意見も一部で広がりつつある。
 しかし、米国の中国海洋戦略研究の第一人者、米政策研究機関「戦略予算評価センター」のトシ・ヨシハラ上級研究員は「むしろ、ゲームは始まったばかりだ」と述べ、巻き返しの必要性を強調する。
     ◇
 中国としても、決して楽観できる状況ではない。北朝鮮の核・ミサイル開発問題の解決に向けて、中国に配慮してきたトランプ米政権との関係に暗雲が垂れ込めている。
 中国による北朝鮮への制裁に目立った効果が表れないことに業を煮やしたトランプ大統領は、台湾への武器売却決定や北朝鮮の核開発を支援した中国の銀行への独自制裁、立て続けの「航行の自由作戦」など目に見える圧力を加え始めた。
 米中という「2強」が世界的な覇権争いを展開する中で、南シナ海での両国の角逐がいよいよ「発火点」に近づいている。

 この企画は吉村英輝、西見由章、田中靖人、黒瀬悦成、矢板明夫が担当しました。

2017年7月12日水曜日

尖閣諸島に中国大陸の漁民が減らない理由 ~21世紀の領土侵略~

中国:漁民「判決は紙くず」 南シナ海「敗訴」1年

毎日新聞

南シナ海を巡る仲裁判決


 南シナ海ほぼ全域に権益が及ぶと主張し、スカボロー礁などフィリピン近海で実効支配を拡大する中国に対し、フィリピンは2013年、国際法に違反するとして仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)に提訴した。仲裁裁判所は2016712日、中国の権益主張を否定する判決を出したが、中国は受け入れを拒否している。

※〈維新嵐〉共産中国は、日本政府による尖閣諸島の所有権購入後に、大量の漁船と漁船監視を名目に「中国海警」の巡視船も同時に送り込んできました。尖閣諸島の島々の前に、周辺海域で漁民に操業させることにより、「中国の海」であるという「既成事実」を作ろうとしていたわけです。共産中国の側から軍事力を使用すれば、尖閣諸島への「武力侵略」だとして国際社会で批判を受け、中国共産党の信用が失われます。国連の常任理事国の共産中国がそんな愚かなことをするわけがありません。だからまずは歴史的な領有権の主張から漁民の操業を常態化することにより、領有権を具体化していくわけですね。
 自衛隊を尖閣に駐屯させろ、という主張があります。一見正当な意見に聞こえますが、そんなことをすれば、中国共産党に「尖閣を日本軍に不法に侵略された」として人民解放軍が出動するきっかけを与えかねません。
 尖閣諸島にはもう石垣漁協の漁師でさえ、近づくことすらできません。悔しいですが完全に共産中国の戦術にはまって、こちらの漁師が追い出されてしまったのです。今や「尖閣諸島の実効支配は日本にある」というだけです。周辺海域は共産中国の漁民の海になってしまい。定期的にパトロールする海上保安庁だけが実効支配の根拠という状況です。

 打開策はあるのでしょうか?
 尖閣諸島には自衛隊の部隊などおけません。ではどうするかといえば、できれば魚釣島が理想なんですが、海上保安庁のヘリポートと港を「海難救助」を目的として建設するのです。そしてそこを拠点に定期的に海上保安官を常駐させ、漁の安全を保障するのです。救助の対象は、もちろん日本の漁船ですが、大陸の漁民を救助してあげれば、最大の主権の主張になることでしょう。これが「平和国家」ブランドを確立した我が国らしい領土保全の一つの形態となることでしょう。

地元政府から補助・着々と進む「実効支配」

 中国による南シナ海支配の根拠をことごとく退けた仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判決から2017712日で1年となる。窮地に追い込まれた中国は判決の受け入れを拒否し、紛争相手のフィリピンとの2国間交渉に持ち込んで判決の有名無実化に成功した。国際法上の「法的拘束力」を無視するかのように、南シナ海の島で今、大国の「実効支配」が静かに積み重ねられている。【海南島(中国南部)で林哲平】
 南シナ海に面した中国・海南島の瓊海(けいかい)市潭門(たんもん)鎮。機械油と魚の生臭さの漂う港に近い飲食店には、漁の合間をぬってマージャン卓を囲む漁師たちが集まる。

 仲裁判決の影響はあるのかと記者が問いかけると、1人の男が挑発するように答えた。
 「日本には“紙くず”を気にして海に出ない漁師がいるのか?ここにはそんなやつはいないよ」
 男がこう話すと、周囲から笑い声が上がった。

「南沙には高く売れる魚が多い。祖先から受け継いだ宝の海だ」
 漁師らによると、判決後には漁民組織を通じて、こんな指示が伝えられた。

「いつも通りの仕事を続けるように。それが国民の務めだ」
約1000キロ離れた南沙(英語名スプラトリー)諸島まで出漁する船には、地元政府から15万元(約250万円)を超える燃料費補助が、仲裁判決の前と同じように支給されるというのだ。

 既成事実化の動きは漁業にとどまらない。
 中国有数の観光地、海南島三亜市から西沙(英語名パラセル)諸島に向かうクルーズ--。
 ある旅行社のプランをみる。「3泊4日で4780元(約8万円)~」。決して安くはないが、人気のツアーになっているという。その大きな理由が、島での国旗掲揚などの「愛国主義活動」なのだ。「中国人としての誇りを感じた」。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には、旅行客の声が集まる。参加した広州市の会社員の女性(28)は「判決の影響を心配したが、まったくの杞憂(きゆう)だった」と声を弾ませた。
 海南省は南沙、西沙諸島のリゾート化を進める。中国紙によると、両諸島を含む三沙市の市長は、島の将来像をこう描いているという。
「結婚式場やダイビング施設を整える。世界的に人気のインド洋の島国、モルディブに匹敵するリゾートを目指す」

© 毎日新聞 中国国旗「五星紅旗」を掲げた漁船が並ぶ漁港=中国海南島瓊海市潭門鎮で2017年7月7日、林哲平撮影

 軍事手段に頼らない「実効支配」が着々と進む。


〈維新嵐〉お金がいただけて、漁ができるのなら命の危険があろうが、漁にいくでしょう。当然尖閣諸島周辺で獲れた魚は、漁民の収益になるとなれば、こんなおいしいビジネスはないでしょうね。
 尖閣諸島に海保の施設を建設してから、石垣漁協に補助金をだしてもいいかもしれません。燃料費や船の修理代、必要ならば新規で漁船を購入できるようにしてあげるのもいいやり方ではないでしょうか?
 こうしたことを全くやらずにいる我が国政府は、尖閣諸島の防衛を海保に丸投げする事なかれ主義ですよ。

弾道ミサイルの前に北朝鮮の「広報戦」に騙されることなかれ! ~政治的に恫喝されない国家戦略を~

日本人のみなさん、北朝鮮を恐れるな!
北朝鮮への制裁は国連の方針です。
「JSRしおかぜ」北朝鮮むけ短波放送 ~我が国の「広報戦」~

 度重なる弾道ミサイルや核弾頭の実験として、日米韓に圧力を加え続ける北朝鮮。
多くの方々の中には、今にミサイルが飛んできてたくさんの方々が犠牲になってしまうのではないか、北朝鮮は邦人を少なからず拉致するような国だから何をするかわからない、と不安を募らせてみえる方々も少なくないかと思います。
 しかし日本国民が弾道ミサイルや核弾頭に不安を募らせ、メディアなどがあおるように報道を繰り返すこと自体が、北朝鮮が自国のミサイル実験などの映像を公開することによる「広報戦」の効果を再確認し、国としての自信を深め、政治的恫喝をさらにエスカレートしてくるということになぜ気が付かないのでしょうか?

 北朝鮮は、我が国に「政治的恫喝」を繰り返し、経済制裁のとりやめを要求しています。そうでなければ、アメリカと開戦した時にまずは日本がミサイルの標的になるといいます。確かに「もしかしたらやるかもしれない。」と気持ちがおこってくるかと思いますが、そこで考え直してほしいのです。
 これは彼らお得意の「広報戦」であり、「プロパガンダ戦」なのではないか?と。

 我が国は、何も理由もなく経済制裁を実行しているわけではありません。特定失踪者も含めると100人以上は存在するとされる北朝鮮による邦人拉致という国家侵略を受けたことに対する日本国としての「反撃」なのです。効いているかいないか、ということよりも前に、まずは非道な侵略である邦人拉致に対して、我が国の姿勢を示さないとならないわけです。ですから、拉致について何の進展もないのに、北朝鮮に譲歩する必要は全くないのです。
 また日本国内には、総員200名ともいわれますが実数が定かでない北朝鮮の工作員が潜伏しています。往時の勢いはないとはいえ朝鮮総連も存在します。
 我が国へ攻撃をしかけるのであれば、当然こうした我が国国内にいるコマンダーがまず作戦に基づいて動いてくるでしょう。何も日本列島、南西諸島において利害を一にするアメリカによる軍事攻撃によるリスクを払拭しないまま、あからさまに弾道ミサイルで攻撃しなくてもいいのです。
 さらにともすれば日本人は忘れがちになりますが、北朝鮮は先代の金正日が肝いりで組織したサイバー戦部隊が存在します。彼らは共産中国内に拠点があるようですが、その気になれば我が国の「弱点丸裸」の原発や都市の過密インフラを狙って「攻撃」することもできます。
 我が国は「知的財産大国」です。世界がうらやむような知識やノウハウの蓄積があるのです。これをいくら弾道ミサイルや核弾頭が強力だからといっても、標的以外もすべて破壊してしまう性質のものである以上、ステルス支配できれば有効な社会インフラを簡単に「灰燼」に帰すようなことはできないはずです。

 北朝鮮の弾道ミサイルや核弾頭は、外交的に北朝鮮が優位にたち、政治的な譲歩をひきだすための兵器であり、実際に使うものではありません。正規軍の兵士に満足に食わせられない状況になっても予算も、技術者も、資源もミサイル開発に、核開発に回すのはそういうことなのです。
 日本政府は、こうした点をふまえながら、どうしたら北朝鮮という厄介な脅威にむきあっていくか、自問自答し効果的な戦略を練り上げないといけません。多くの民間人が北朝鮮の特殊工作員に拉致され、無為無策であった失態を繰り返してはならないのです。要はまず外交的に北朝鮮に対して「優位性」を担保するにはどうすべきでしょうか?
 国政選挙でも適当に政策をごまかそうとする候補者がいたら、この点を質問し、追及してやりましょう。まずは朝鮮半島や国防に詳しいお二方のお考えにふれてみましょう。

専門家に聞く

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 北朝鮮が平成297月4日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の「火星14」。北朝鮮は「核戦力完成のための最終関門」に成功したと発表したが、専門家らは核ミサイル開発が今後も引き続き進められると声をそろえる。北朝鮮問題に詳しい武貞秀士・拓殖大大学院特任教授と香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官に話を聞いた。(聞き手 時吉達也)

「トランプ氏は北と直接取引へ」
 
武貞秀士・拓殖大特任教授

 北朝鮮は韓国と国家成立の理念が違う。韓国は日本統治下で独立を目指した「三・一運動」を朝鮮総督府の官憲に阻止された悔しさが根本にある。だから国家としてあらゆる面で日本に勝つことを求める。一方で北朝鮮は「金日成が抗日闘争で祖国を解放した」経験を建国理念にしており、憲法が強調するのは「抗日」ではなく「統一」だ。


 北は現在も、韓国という国家は存在せず「米国の植民地下にある」と考えている。南北統一を実現すれば北朝鮮の究極目標を実現したことになり、正統性を証明することになる。
 それを米国に「邪魔」されたのが、朝鮮戦争だった。以降、北朝鮮は米国の介入を阻止して統一を果たすことを最終目標として、核ミサイルの開発に着手した。中露も核拡散を警戒していたが、ソ連崩壊後に技術が流出してしまった。
 核兵器を持てば統一できるのだろうか。三代にわたる金王朝は、それが可能だと考えてきた。米首都に届くミサイルを開発すれば、米国は朝鮮半島への軍事介入を回避する。米朝不可侵協定を締結して在韓米軍を撤退させ、核保有国として有利な立場で韓国との統一交渉に臨むことができる、というのが北朝鮮の計算だ。


 開発目標は、ICBMにとどまらない。大西洋に潜ませた潜水艦からワシントンを狙う弾道ミサイル「SLBM」についても、開発を急ぐだろう。
 国際社会が核廃棄を前提とした協議開始を求めるのは難しい段階に入った。対北圧力強化の見返りに中国の「為替操作国」認定を棚上げにしたように、トランプ米大統領は早晩、北朝鮮と直接の「ディール(取引)」を始めるだろう。日本が取り残される前に、具体的な北へのアプローチを模索するべきではないか。

「弾頭小型化はめどついた」
 
香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官

 火星14は距離を通常より高い角度にして、飛行距離を短くする「ロフテッド軌道」で打ち上げられた。ロフテッドについて、北朝鮮は「周辺諸国の安全を考慮した」と説明し、日本でも「米国を刺激しない目的だった」などと報じられている。しかし、実際には核ミサイルの開発進展に必要な再突入技術のデータ採取を狙ったものだ。


 ICBMは宇宙空間に上がった後、マッハ24の高速で大気圏内に再突入するため、弾頭が7000度超の高熱にさらされる。ICBMの最後の難関ともされる再突入技術を確立するため、実験を繰り返し詳しいデータを記録する必要がある。
 しかし、地球は丸いため、一定以上の距離に落ちると、北朝鮮から落下状況の確認が難しくなる。例えば2500キロ先に発射した場合、大気圏内に再突入する高度100キロ以下の状況が確認できない。微妙に条件を変えながらロフテッドの実験が繰り返されるのは、政治的な配慮からではなく、あくまでもデータの積み重ねを目指すものだ。
 北朝鮮は、2016年からロフテッドによる実験を開始した。これは、もう一つの技術的な課題である「弾頭の小型化」に一定のメドがついたということを意味している。15年まではミサイルの距離を伸ばし、脅威を強調するだけでよかったが、核弾頭の搭載を考慮する段階に入ったために大気圏再突入に必要なデータを取り始めた。


 今回のミサイルは試作1号機であり、今後3~5発程度は同型の発射が予想される。軍の立場では、金正恩(キム・ジョンウン)氏に命じられてICBMを発射し、失敗すれば懲罰を受けるため、ミサイルの精度を高めることが必要だ。ロフテッドと、飛行距離を伸ばしたものを交ぜて実験が繰り返されるだろう。

米、THAAD迎撃実験に成功
中距離弾道ミサイル想定し探知、追跡…「防衛能力は強化」

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【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省ミサイル防衛局(MDA)は2017711日、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の迎撃実験を同日実施し、成功したと発表した。
 実験はハワイ北方の上空で米空軍のC17輸送機から発射された中距離弾道ミサイルに見立てた標的を、アラスカ州コディアック打ち上げ基地のTHAADシステムが「探知し、追跡し、迎撃した」としている。
 迎撃実験は今回で14回目で、現在までの成功率は100%。MDAは「北朝鮮などからのミサイルの脅威に対する防衛能力は強化された」と強調した。

※少なくとも北朝鮮からミサイル攻撃をうけてもアメリカ本土は大丈夫!というアピールですね。




2017年7月8日土曜日

トランプ政権の南シナ海戦略&北朝鮮との向き合い方

トランプ政権の南シナ海問題への対応

岡崎研究所

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の201766日付け社説は、トランプ政権が南シナ海で「航行の自由作戦」を実施したことを歓迎しつつも、米国には更なる行動が求められる、と主張しています。社説の要旨は次の通りです。
トランプ政権は南シナ海で少し骨のあるところを見せ始めている。しかし、フィリピンやベトナムが中国に立ち向かうには米国が地域の安定にコミットしていることを示す更なる行動が必要である。
 2017年5月初めに国防総省はアジア・太平洋における軍事プレゼンスを強化するための追加支出を承認した。524日にはミスチーフ礁(海洋法裁判所の仲裁裁判の裁定によれば低潮高地)の12海里内の水域で駆逐艦デューイが「航行の自由作戦」を実施した。
 オバマ政権も「航行の自由作戦」を行ったが、中国の管轄権を承認するものと解釈されかねない「無害通航」の態様によるものであった。今回は、デューイは海域にとどまって転落救助訓練を行い、米国がその海域を公海と考えていることを明確にした。中国はこの行動を挑発的と非難したが、これは国際法に基づく航海の自由を守るための象徴的な行動である。中国が更に人工島の軍事化を進めれば、「航行の自由作戦」はより危険を伴うものとなる。
 517日には、中国の戦闘機(Su-302機が東シナ海の上空で米空軍の大気収集機WC-135に異常接近した。その後、駆逐艦デューイがミスチーフ礁の近傍にあった際には、中国の戦闘機(J-102機が南シナ海の上空でP-3オライオン偵察機に対していやがらせの行動に出た。
 63日、シンガポールでのシャングリラ・ダイアローグ(アジア安全保障会議)において、マティス国防長官は中国の忍び寄る侵略について述べた。同長官は「人工島の建設と公海の地形上の施設の争いようのない軍事化は地域の安定を損なう」と述べ、中国の「国際法の露骨な無視」と「他国の利益に対する侮蔑」を激しく非難した。当然のことながら、中国はこの発言は「無責任だ」などと述べて激しく反発した。
 トランプ政権は5月まで「航行の自由作戦」を控えていたが、恐らくは中国が核とミサイルを放棄するよう北朝鮮に圧力をかけることを期待してのことである。この間、東南アジアの諸国は、米国は南シナ海の安定と航行の自由は守るべき原則だと依然考えているのかと怪しんでいた。TPPからの離脱が米国の信頼性を損ねたこともあった。
 「すべての可能な選択肢をやってみた後、アメリカ人は正しいことを行う。我々は依然としてここにある。皆様と共にあり続ける」とマティス長官が述べた時、同長官は守勢に立たされていることを認識していたに違いない。聴衆の中には、2012年に中国がフィリピンからスカボロー礁を奪取した時、米国が何もしなかったことを思い出した人がいたであろう。問題は中国の膨張を抑止するために、米国は次に何をするかである。
出典:‘U.S. Markers in the South China Sea’(Wall Street Journal, June 6, 2017
https://www.wsj.com/articles/u-s-markers-in-the-south-china-sea-1496746701
 トランプ政権が「航行の自由作戦」に遅まきながら踏み切ったことは歓迎すべきことです。作戦が行われたのはミスチーフ礁の海域ですが、国際法上、ミスチーフ礁は低潮高地(満潮時に水没する地形)とされ、領海を持ちません。したがって、駆逐艦デューイがその12カイリ内で転落救助訓練を行い、明確に「無害通航」でない態様で航行したことは、その海域が公海であるとの認識を表示する効果を持つことになります。
 オバマ政権も何回か「航行の自由作戦」を実施しましたが、どういう法的効果を狙ったものか定かでない印象がありました。今回の作戦はその目的とする法的効果は明確であり評価出来ますが、作戦のルート、態様、法的効果を公に説明しないことについてはオバマ政権の方針を踏襲しているようです。どうしてきちんと説明しないのか、判然としません。
 この社説は「更にやるべきことがある」と言いますが、他に良い知恵もありません。したがって「航行の自由作戦」は是非とも継続されなければなりません。スカボロー礁の軍事化に中国が乗り出す兆候があれば、これを阻止する必要があります。
 なお、社説の末段に紹介されているマティスの発言は、シャングリラ・ダイアローグにおける「70年前、アチソン国務長官は米国が主導する秩序の創造に立ち会ったと書いたが、NATOTPP、パリ協定を巡る出来事を見ると、今や我々はその秩序の破壊に立ち会っているのではないか」という聴衆の質問に答えたもので、「アメリカ人は常に正しいことを行う――全ての選択肢をやってみた後であるが(The Americans will always do the right thing... after they've exhausted all the alternatives.)」というチャーチルの言葉に基づくものです。南シナ海でも「最後は米国に頼れる」ということであってほしいものです。

米海軍、5月に続き2回目の南シナ海で「航行の自由作戦」を実施 

BBC News

 米海軍は201772日、南シナ海で中国とベトナム、台湾が領有権をめぐって対立する島々の付近の海域を通過する「航行の自由作戦」を実施した。
米海軍の駆逐艦「ステザム」は西沙(英語名パラセル)諸島のトリトン島から12カイリ以内の海域に入った。
中国はこれを受け、「深刻な政治的かつ軍事的挑発」だと批判し、「国家主権と安全を守るためにあらゆる手段」を取ると述べた。
作戦が実施された数時間後には、事前から準備されていたドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との電話会談が行われた。
トランプ大統領が就任した今年1月以降で、「航行の自由作戦」が実施されるのは2回目。5月には駆逐艦「デューイ」が南沙諸島(英語名スプラトリー)で中国が建設した人工島から12カイリ以内の海域を通過した。
ジェームズ・マティス国防長官は数日後、中国が人工島を軍事化するのを米国は容認しないと述べた。
南シナ海にある島々は歴史的にも周辺国の対立の種となってきたが、近年は徐々に緊張が高まってきている。
南シナ海の全域または一部の領有権を争うのは中国、ベトナム、台湾のほか、フィリピン、マレーシア、ブルネイ。
中国政府は岩礁の周囲に人工島を建設し、海軍が紛争海域を巡回している。

米国艦をついに凌駕か、中国の新鋭駆逐艦の戦闘力

「アジア最強の駆逐艦」進水、米国の新たな危惧が現実に

北村淳
今回FONOPを実施した米海軍のアーレイバーク級駆逐艦「ステザム」(出所:米海軍)

 アメリカ海軍ミサイル駆逐艦「ステザム」(横須賀を本拠地とする第7艦隊所属)が、201772日、西沙諸島のトリトン島沿岸12海里内海域を通航した模様である(アメリカ当局は公式には発表していないが中国当局は抗議と警告を発している)。2017526日に引き続いて、トランプ政権下で2度目の南シナ海における「FONOP」(公海での航行自由原則維持のための作戦)ということになる。
 南シナ海でのFONOP2015年に始められてから6度目になるが、わずか1カ月の間を置いて実施されたのは今回が初めてである。
 北朝鮮情勢を巡って中国に対して“気を使わざるを得なくなった”トランプ政権に苛立ちを隠せなかった対中強硬派の米海軍関係者たちは、今回のFONOP実施によって、「より頻繁なFONOPの実施」が定着することを期待している。
 しかしながら、いくら中国の覇権主義的海洋進出政策を米海軍や米外交当局が牽制しようとしても、「せいぜいFONOPを南シナ海で実施するのが関の山」といった状況であるのもまた事実である。
 そして、対中国戦略家たちにとって、新たな危惧が現実のものとして突きつけられた。それは、2016628日に中国海軍が進水させた最新鋭の駆逐艦である。

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055型ミサイル駆逐艦」1番艦の進水式の様子(YouTubeより)
中国メディアは「アジア最強の駆逐艦」と喧伝
 中国当局側の発表によると、進水した「055型ミサイル駆逐艦」は、全て“国内技術”によって建造されたという。基本排水量1万トン、満載排水量14000トン、全長180メートルの055型駆逐艦は、これまで中国海軍が建造してきた水上戦闘艦(航空母艦、揚陸艦を除く駆逐艦やフリゲートなど)のうちで最大であるだけでなく、第2次大戦後にアジアで建造された最大の水上戦闘艦である。
 大きさだけではなく、様々な充実した装備も積載しており、「アジア最強の駆逐艦」あるいは「アメリカの最新鋭ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に迫る世界最強の駆逐艦の1つ」と中国当局系のメディアなどは喧伝している。
 055型駆逐艦は(もちろん実戦に投入されたわけではないので真の戦闘能力に対する評価は誰にも分からないが)中国当局系メディアなどによる自画自賛だけではなく、アメリカ海軍関係者の間でも評価が高く、強く危惧している人々は少なくない。すなわち、「055型駆逐艦の海上戦闘における攻撃能力はアメリカ海軍のいかなる水上戦闘艦より勝っている」として、警戒を強めているのだ。
敵を侮ってはいけない
 日本では、中国の軍艦をはじめとする兵器などに対して「見かけ倒しに過ぎない」とか「張り子の虎のようなものだ」といった見方が少なくない。しかしアメリカ海軍関係機関やシンクタンクなどの軍事専門家(兵器や武器マニアの親玉といった人々ではなく、軍事戦略や安全保障政策のエキスパートたち)の多くは、「少なくとも確実なデータが入手できていない段階では、敵側の戦力などに関しての楽観的な判断は避ける」という習性を身につけている。
 1941年の日米開戦以前、当然のことながら、アメリカ軍、そしてアメリカ政府は、日本海軍が巨大な戦艦や航空母艦を建造し、ゼロ戦をはじめとする多数の航空機を手にしていることを認識していた。しかし、日本の場所さえ知らないアメリカ国民はもとより多くの軍人さえも「いくら立派な戦艦やゼロ戦を持っていても、日本人ごときにとっては宝の持ち腐れで、虚仮威(こけおど)しに過ぎない」とみくびっていた。
 そのため、太平洋方面(すなわち対日本)の最前線であるハワイ(太平洋艦隊)や、前進軍事拠点であるフィリピン(米フィリピン駐屯軍、とりわけフィリピンの米軍司令官マッカーサーは日本軍の“強さ”を過小評価していた)での対日防備は隙だらけで、結果として日本軍の先制攻撃を受けて大痛撃を被ることとなった。
 アメリカ海軍戦略家の多くはこの種の教訓を生かし、「決して敵対する勢力の戦力を『どうせ・・・ちがいない』といった具合に自分たちにとって都合が良いように見くびってはならない」と考えている。「とりわけ、敵の人的資源に対して『士気が低いようだ』『訓練が行き届いていない』『作戦立案能力が劣る』といった評価をなすことは控えるべきであり、少なくともわが軍と同等かそれ以上の存在であると考えておけば、実戦になって『こんなはずではなかった』という事態に陥ることはない」として、敵の資源を決して過少評価せず、むしろ自軍を上回っていると想定するのである。
 そのため、055型駆逐艦を論ずる米海軍関係者たちの間には、「ついに、中国海軍駆逐艦がアメリカ海軍のそれを凌駕する日がやってきてしまった」という評価が広がっているのだ。
055型」駆逐艦の海上戦闘能力
 米海軍がとくに脅威に感じているのは、055型駆逐艦が備えている海上戦闘能力である。
 現在、アメリカ海軍最強と言われている水上戦闘艦は「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」である。2016年に就役したこの新鋭駆逐艦は、最新型の多機能レーダーシステム(AN/SY-3)、全ての艦内システムのネットワーク化、最新型のミサイル垂直発射装置(MK57-VLS: 発射管合計80セル)などを装備している。

米海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦「ズムウォルト」(出所:米海軍、以下同)
 MK57-VLSからは、地上攻撃用トマホーク巡航ミサイル、各種対空ミサイル、弾道ミサイル防衛用ミサイル、対潜水艦用ミサイルなどを発射することができる。このほかズムウォルト級駆逐艦は、最新推進システム、最新情報処理システム、それに高度なステルス形状を備えているため「最強の駆逐艦」と言われている。
 だが、当初は32隻の建造計画があったものの、現時点では1隻が就役しているのみで、あと2隻で建造は打ち切られることになっている。
 そのため航空母艦を除くアメリカ海軍の主力水上戦闘艦は、「アーレイバーク級ミサイル駆逐艦」(合計76隻を保有する予定、現在62隻が就役中、2018年中までに6隻が就役予定)と、「タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦」(現在22隻が就役中)ということになる。いずれの軍艦にも、ズムウォルト級駆逐艦よりも発射管数(アーレイバーク級駆逐艦は90セルあるいは96セル、タイコンデロガ級巡洋艦は122セル)の多いミサイル垂直発射装置(MK41-VLS)が装着されているが、情報処理システムやステルス形状などはズムウォルト級駆逐艦とは比べようもないレベルである

タイコンデロガ級巡洋艦「シャイロー」
 一方、中国の055型駆逐艦は、ズムウォルト級駆逐艦に迫るステルス形状をしており、中国が独自に開発したミサイル垂直発射装置(発射管は128セル)はMK41-VLSMK56-VLSよりも大型のミサイルを発射することが可能である。そして、潜水艦を探知するソナー類も、米海軍や海上自衛隊の装備に勝るとも劣らない強力なシステムを搭載しており、「中華神盾」と称する対空レーダー戦闘システムもアメリカが誇るイージスシステムを凌駕するとされている。
米海軍が恐れる「YJ-18
 このような強力な防衛手段に加え、米海軍関係者たちが大きな危惧を抱いているのは、この新型駆逐艦の128セル垂直発射管からは“超強力”な「鷹撃18型超音速巡航ミサイル」(YJ-18)が発射されることである。
 YJ-18は、地上目標も敵艦も攻撃することができる巡航ミサイルであり、最大射程距離は540キロメートル程度とされている。軍艦と軍艦による海上戦闘では500キロメートル以上も離れた敵艦を攻撃することはほとんど考えられないものの、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦や一部のアーレイバーク級駆逐艦が装備しているハープーン対艦ミサイルの射程距離が124キロメートルとされているため、055型駆逐艦は米巡洋艦や駆逐艦の脅威圏外から米艦艇を攻撃することが可能となる。
 さらに、YJ-18は攻撃目標に接近すると最終段階の40キロメートルはマッハ3以上で飛翔する「ロシア譲りの性能」を有していると推定されており、米海軍にとっては極めて深刻な脅威となる。
 このような脅威に対して、アメリカ海軍は空母打撃群を繰り出し、空母から発進する攻撃機によって敵艦艇を撃破するという基本方針に頼ってきた。そのため、巡洋艦や駆逐艦自身が搭載する対艦ミサイルを強力化する必要性は生じなかった。それよりも、防空ミサイルシステムをはじめとする防御能力に莫大な資金と最先端技術をつぎ込んできたのである。
 ところが、中国海軍との戦闘が予想されるのは南シナ海あるいは東シナ海であり、中国との有事の際に、それらの海域に空母打撃群を出動させるという米海軍の大前提そのものが怪しくなってきてしまった。というのは、中国人民解放軍ロケット軍が東風21-D型対艦弾道ミサイル(DF-21D)ならびに東風26型対艦弾道ミサイル(DF-26)の運用を開始したからである。
 まず、東シナ海は中国沿岸域から最大でも1000キロメートル程度の広がりしかない。また、南シナ海での予想戦域でも1500キロメートル程度の距離しか離れていない。そのため、東シナ海や南シナ海に進攻した米海軍空母はDF-21DDF-26の餌食となりかねず、米海軍の伝統的な空母艦隊による作戦は極めて危険となる。したがって、中国との海上戦闘は、艦艇対艦艇の戦闘を想定すべきであるという考えが持ち上がってきている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50402?page=6

 すると、ハープーン対艦ミサイル程度の敵艦攻撃力しか備えていない米海軍の戦闘艦は、055型駆逐艦にはとうてい太刀打ちできないということになる(中でも、新鋭のアーレイバーク級駆逐艦とズムウォルト級ミサイル駆逐艦には、ハープーン対艦ミサイル程度の攻撃力すら備わっていないため、増設が必要となる)。
「今後5年間は隠忍自重するしかない」
 以前よりこのような状況になりかねないことを危惧していた一部の海軍戦略家たちは、「YJ-18」に匹敵する強力な対艦超音速巡航ミサイルの開発を提唱していた。しかし、その開発はようやくスタートしたばかりであり、誕生するのは早くても5年後と考えられている。
 一方、先日一番艦が進水した055型駆逐艦は3番艦までが引き続き誕生し、アメリカの新型対艦ミサイルが誕生する5年後までには、少なくとも8隻前後の055型駆逐艦が就役しているかもしれない。また、問題のYJ-18055型駆逐艦より小型の052D型ミサイル駆逐艦(1番艦が2014年に就役し、間もなく6番艦と7番艦が就役する)にも搭載されるため、すでに2020年には20隻以上の中国海軍駆逐艦がアメリカ海軍艦艇をアウトレンジ攻撃する能力(敵の射程圏外から敵艦を攻撃する能力)を身につけることになる。
 このため、米海軍関係者からは「少なくとも今後5年間は、(中国近海域すなわち東シナ海や南シナ海における海上戦闘では)どうあがいても中国海軍優位の状況を突き崩すことが困難になってしまった」との声も上がっている。アメリカ海軍の弟分である海上自衛隊にとっても、このような“米海軍の嘆き”は、残念ながら共通する。
 このような状況に立ち至った原因は、アメリカ海軍艦艇(海自艦艇も同様)が、強力な敵艦攻撃能力を犠牲にしてまでも、超高額な予算と最高度の技術が要求される対空防御能力の充実に努力と予算を傾注しすぎたからである。この事例は、我が国の弾道ミサイル防衛態勢や、専守防衛という国防の基本方針そのものにとっても、大きな教訓とすべきである。

《維新嵐先に完成進水した空母遼寧、2隻目の空母をみても今後共産中国が、空母を中心に海軍戦略、戦力をあらためて構築してくることは明らかです。
 南シナ海と東シナ海の防衛は、日米共通の国益を守ることにつながります。空軍レベルの演習ではありますが、ついに東シナ海においても日米共同演習が実施されるに至りました。逆に事態が「深刻化」しているともいえます。

【航空自衛隊F15と米爆撃機が東シナ海で初の夜間共同訓練】米機は南シナ海上空も・中国や北朝鮮を牽制

【ワシントン=加納宏幸】米太平洋空軍はB1B戦略爆撃機2機が平成2976日、東シナ海上空で航空自衛隊のF15戦闘機2機と共同で初めてとなる夜間訓練を実施したと発表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で領海侵入を繰り返す中国や、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮を牽制(けんせい)したとみられる。
 B1Bはグアム・アンダーセン空軍基地から東シナ海に飛来し、自衛隊機と訓練を実施した。米軍機と自衛隊機の相互運用性を高める狙いだという。B1Bはその後、中国が領有権を主張する南シナ海の上空を飛行して、グアムに戻った。
 米太平洋空軍は声明で「今回の任務は、国際法で許された場所であればどこでも米国が航行の自由の権利を行使することを示した」と強調。また、訓練は日本など同盟国との「継ぎ目のない作戦実施」を可能にするものだと指摘した。

航空自衛隊F-15とアメリカ空軍B-1B、東シナ海で夜間共同訓練を実施

http://flyteam.jp/airline/japan-air-self-defense-force/news/article/81439
 離陸するB-1Bランサー
 B-1Bは南シナ海上空も飛行しました。

航空自衛隊は201776()、アメリカ空軍と共同訓練を実施したと発表しました。東シナ海上空の訓練空域で行ったもので、参加部隊は空自は第9航空団のF-152機、アメリカ空軍は第9遠征爆撃飛行隊のB-1Bランサー2機でした。訓練は、編隊航法訓練を行い、アメリカとの共同対処能力と部隊の戦術技量の向上を図るものでした。
アメリカ太平洋空軍はこの訓練について発表しており、初めての夜間に実施した空自戦闘機との共同訓練になったと発表しています。アメリカ空軍は安全、かつ効果的な方法を夜間に飛行訓練を実施することは、重要な能力としており、この訓練の意義を述べています。
アメリカ空軍は、訓練は国際法の下でアメリカが航行の自由を行使する活動に資するもので、アジア太平洋地域において不安定な行動を防ぎ、日米間の連携を示すことに繋がるとしています。


北朝鮮の弾道ミサイル実験は何のために実施されているのでしょうか?

アメリカに対して二国間外交できるような外交環境構築のため?
我が国への政治的優位性を確保するため?
共産中国の南シナ海、東シナ海への覇権拡大を「支援」するため?
みなさんはどう考えますか?
ただはっきりしていることは、私たちの国の国益伸長のためには全く迷惑で邪魔な存在であるということでしょう。

北朝鮮が弾道ミサイル、排他的経済水域内に落下か

BBC News

 日韓両政府によると、北朝鮮が201774日午前940分ごろ、弾道ミサイルを発射した。
聯合通信が伝えた韓国軍合同参謀本部の発表によると、西部・平安北道のバンヒョン飛行場から発射された。
NHKによると防衛省は、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した可能性があると話している。
菅義偉官房長官は記者会見で、弾道ミサイルが約40分間にわたり飛翔(ひしょう)し、日本海の日本のEEZ内に落下したとみられると発表した。
安倍晋三首相は3日はドナルド・トランプ米大統領と電話協議を行い、政策をすり合わせたばかりだった。トランプ氏は同日、中国の習近平・国家主席とも電話会談している。
3首脳は、北朝鮮のミサイル・核開発終了に向けて努力を続けると合意している。

米政府、北朝鮮のICBM発射実験を確認

BBC News
 北朝鮮が201774日に発射した弾道ミサイルについて、米政府は同日、北朝鮮が主張しているとおり、大陸間弾道ミサイル(ICBM)だったと確認した。
レックス・ティラーソン国務長官は、米国や世界に対する「脅威がさらに深刻化した」とし、米国は「核武装した北朝鮮を絶対に容認しない」と述べた。
北朝鮮は4ICBMの発射実験に成功したと国営メディアを通じて発表していた。
米政府関係者は、北朝鮮のミサイルがアラスカ州まで到達できるようになった可能性があるとみている。
しかし専門家たちは、標的に正確に当てる技術は北朝鮮にないと考えている。
日本海に着弾した今回のミサイル発射を受け、米国防総省のダナ・ホワイト報道官は、「我々の精密な攻撃能力を見せるため」、米国と韓国が「合同(軍事)演習を実施した」と述べた。
米国はまた、北朝鮮問題を話し合うため国連安全保障理事会の緊急会合を要請した。安保理は5日に非公開の会合を開く予定。
ティラーソン長官は4日の声明で、「米国は北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射を強く非難する。ICBM発射実験は、米国と同盟・パートナー国、地域、そして世界に対する脅威がさらに深刻化したのを示している」と述べた。同長官はさらに、「世界的な脅威を止めるには世界的な行動が必要だ」と強調した。
ティラーソン長官は、北朝鮮に対して経済的、軍事的な支援をしたり、国連安保理の決議を完全に守らなかったりした国があったとすれば、「危険な政権を助け、けしかけている」とくぎを刺した。
北朝鮮の発表
国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、金正恩・朝鮮労働党委員長の立ち会いのもと、ICBM「火星14」を発射したと伝えた。ミサイルの飛行距離は933キロで、高度は2802キロに達したという。39分間飛行して海上の標的に命中させたと、同テレビは説明している。
KCNAは、金正恩委員長が「米国人たちへの独立記念日の贈り物だ」と述べたと伝えた。
ミサイルの射程
韓国のソウルで取材するスティーブン・エバンズ記者は、注目されるのはミサイルの射程距離だと指摘。米国本土に到達できるのかという点だ。
米団体の「憂慮する科学者同盟(UCS)」の物理学者、デイビッド・ライト氏は、もし報道内容が正確であれば、標準的な軌道で最大射程距離は約6700キロだという。この場合、アラスカ州が射程に入るものの、ハワイ州を含むほかの49州には到達できない。
エバンズ記者はさらに、ミサイルが大気圏に再突入する際の弾頭の耐熱性などの技術を北朝鮮が得ているかどうかは不明だと指摘している。
各国の反応
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、国連安保理に対し、北朝鮮問題で行動を起こすよう求めた。
日本の菅義偉官房長官は、「北朝鮮による度重なる挑発行為は断じて容認することはできない」と述べた。安倍晋三首相は、78日にドイツのハンブルクで開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20)に合わせて日米韓首脳会談を行い、3カ国が連携して北朝鮮に圧力をかけていくと語った。
米国のドナルド・トランプ大統領もミサイル発射から時間を置かずに反応した。トランプ氏は4日、金正恩氏についてとみられるイートで、「こいつはもっとほかにまともなやることはないのか」と書いた。
「韓国と日本がこれ以上我慢するとは思えない。もしかしたら中国が北朝鮮にすごい事をして、このナンセンスに一気に終わらせるかもしれない」
トランプ大統領は、北朝鮮が経済的に最も依存する中国が圧力をかけることで、北朝鮮の核・ミサイル開発を止めるべきだと、中国に繰り返し要請してきた。
トランプ氏は今年1月、北朝鮮が米国を攻撃する能力を持つ可能性について「そんなことは起きない」とツイッターで述べた。専門家らは、時間の猶予は5年かそれよりも短いかもしれないと指摘している。
一方、英国のボリス・ジョンソン外相は、「北朝鮮の人々が飢餓と貧困に耐えるなかでも、核兵器を作り、不法なミサイルを発射しようと全力を挙げる政権に代償を払わせるため」、国際社会が「あらためて努力する必要がある」と述べた。(英語記事 North Korea missile test was ICBM - US)提供元:http://www.bbc.com/japanese/40502838

「やむを得なければ軍事力行使する」 北朝鮮問題でヘイリー米国連大使

BBC News

 ニッキー・ヘイリー米国連大使は201775日、北朝鮮が前日に実施した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験への対応を協議する国連安全保障理事会の緊急会合で、やむを得なければ米国は「相当の軍事力」を行使すると述べた。
4日のICBM発射実験についてヘイリー大使は、「外交的解決の可能性を急速に閉ざそうとしている」とし、「米国は我々と我々の同盟国を守るため、保有する多様な能力のすべてを使う準備がある」と述べた。
同大使は緊急会合で、「我々の能力の一つには相当規模の軍事力がある。やむを得なければ、それを使うが、その方向に進みたくはない」と発言した。
ICBM発射実験によって急激に軍事的緊張が高まったとするヘイリー氏は、北朝鮮への新たな安保理決議案を提出すると表明した。
フランスも北朝鮮への制裁を強化する新たな国連決議を支持した。
ロシアはICBM発射実験を強く非難するとしたものの、軍事力行使という選択肢は「除外されるべき」だと述べた。
中国の劉結一国連大使は、北朝鮮の行動を容認できないとしたが、米国が韓国で配備を進める地上配備型迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)」を引き揚げるべきとの意見を、ロシアと歩調を合わせる形で表明した。また、米国と韓国が北朝鮮国境近くで実施している合同軍事訓練の停止を求めた。
ヘイリー大使は、国連決議に違反する形で北朝鮮と貿易を続ける国々との貿易を停止することも可能だと述べた。同大使は、「どんな国であろうと、この不法な独裁政権との取引を選ぶ国は(禁輸制裁の)検討対象になる」と語った。
一方、ドナルド・トランプ米大統領は、78日にドイツのハンブルクで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に先立ち、ポーランドのワルシャワに到着している。
トランプ大統領はG20に合わせて中国の習近平国家主席と会談する予定。両首脳が直接会うのは今年4月にフロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で行われた会談に続いて2回目。
4月の首脳会談の後、トランプ氏は中国との協議に「ものすごい進展があった」と述べていたが、5日にはツイッターで、「第1四半期の中国と北朝鮮の貿易は4割近く伸びた。中国が我々に協力するって言っても、こんなものか。でもやるだけやってみなきゃならなかったから!」とコメントした。

【寄稿】北朝鮮のICBM実験 「ゲーム・チェンジャー」か

BBC News

ジョン・ニルソン=ライト博士、英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)
 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に成功した、米国攻撃が可能だと、自信たっぷりに発表した。北朝鮮はどうやら、掛け金の高い国際ポーカーが非常に得意で、今回の発表はその駆け引きの新たな一手だ。
74日の米独立記念日にきっちりタイミングを合わせた堂々たるミサイル発射によって、北朝鮮を独裁支配する金正恩氏は、軍の近代化という国民への約束を実現した。そして同時に、北朝鮮のICBM発射は「あり得ない」と書いたドナルド・トランプ米大統領の自信過剰なツイートがいかに空虚なものかを暴いて見せた。
「火星14」ロケットの発射は、実際的な意味では単に、5月の発射実験からごくわずかな進展を意味するに過ぎない。5月には類似のロケットが30分間飛行し、約2111キロの高度に達し、約787キロの距離を飛んだ。
今回のミサイルは、前回より飛行時間を79分伸ばし、高度を約640キロ、飛距離を約140キロあまり伸ばした。
表面的にはこれは単に、北朝鮮が何十年も繰り広げてきた挑発と戦術的な武力誇示の繰り返しに過ぎない。北朝鮮は(1960年代から)長年にわたり核兵器保有を追及してきたし、昨年から今年にかけてはミサイル実験を加速化させてきた。
とはいえ、アラスカを射程圏内に収める今回の実験は、象徴的な意味でも実際的な意味でも、紛れもない「ゲーム・チェンジャー」(試合の流れを一気に変える要因)だ。
大半の米国本土からは地理的に離れているとはいえ、アラスカという米国領土がついに北朝鮮政府の標的内に入った。そして、北朝鮮が単に北東アジア地域や米国の主要同盟各国への「本物で現在の」危険だというだけでなく、米国そのものにとっての「本物で現在の」危険なのだと、米国大統領が初めて受け入れざるを得なくなった。
トランプ大統領は自分の「手」を、あまりにあけっぴろげに、かつ大声で、過剰に振りかざした。それが弱点だ。
空母カール・ビンソンを中心とする打撃群を「アルマダ(大艦隊)」と呼び、これを朝鮮半島へ派遣するという当初の戦法は、歴史用語の使い方がまずかったというだけでなく(16世紀スペインの「無敵艦隊」は結局は大敗したため、同じ言及するにしてもこれほど縁起の良くない表現はそうそうなかった)、北朝鮮の威圧に著しく失敗した。
同様に、中国に圧力をかけるトランプ政権の戦術も失敗したようだ。中国を為替操作国に指定しないという抑制的な経済措置と引き換えに、北朝鮮に懲罰的制裁を科すよう、トランプ政権はあからさまに中国に圧力をかけたのだが。
中国の習近平・国家主席は、4月のマール・ア・ラーゴ首脳会談で流れた友好的なムード音楽もさることながら、トランプ氏の追及をするりとかわしたようだ。そして北朝鮮による最新の挑発行為への中国の反応は、おそらくおなじみのもの、北朝鮮を言葉の上では非難しつつ全当事者に平静を呼びかけるという対応に留まるのだろう。
米政府がすぐに実行できる選択肢は限られている。
軍事行動は、ジョン・マケインやリンジー・グレアムといった共和党上院議員たちのタカ派的な提案はともかくとして、実際にはほとんど不可能だ。ソウルへの報復攻撃のリスクもそうだし、北朝鮮の戦略拠点や政治指導部を取り除くという意味での成功の可能性が、きわめて低いからだ。
おそらく国連安全保障理事会を再招集して追加制裁が検討されるのだろう。しかし、この政治プロセスは冗長で、制裁の実行力は良くて部分的、つまりは効果のない対応なのだ。
外交交渉は前に進む方法の一つだ。文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の最近の訪米と、米韓両政府の方針すり合わせから、北朝鮮との部分的交渉再開が何らかの形であり得るのかとうかがわせる。もっともこれはあくまでも、核抑止強化の枠組みの中での話だが。
とはいえ今のところ、勢いがあるのは北朝鮮のみだ。北朝鮮にしてみれば、米国との交渉に応じるインセンティブ(動機)はほとんどない。北朝鮮としては、国際社会の分断を自国利益に変えながら、軍の近代化を加速化させるための時間稼ぎをする方が得策だ。
その一方で、ドイツで今週開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議では米国、韓国、日本の首脳たちは一致して、強硬策を求めるだろうが、結局は中国とロシアの賛成が得られず、当たり障りのない非難声明以上のものを確保するのに苦労するはずだ。
現在の危機は二重に危険だ。
今回の実験成功に自信を得た金正恩氏は、今まで以上にリスクを恐れず、通常の軍事瀬戸際政策に携わるようになるかもしれない。すると、近隣諸国への先制攻撃とまではいかないものの、意図してというより偶発的な誤算から衝突に至りかねない。
あるいは、交渉の余地がないはずの「赤い線(超えてはならない一線)」を北朝鮮がまたしても超えてしまった場合、その不快な現実に直面した米国が現実から目をそらすだけで終わってしまう可能性もある。
自己流の「偽ニュース」に固執する大統領にとっては、たとえ不都合な真実が出現したとしても、真実の定義を変えてしまうか、あるいは当初の「超えてはならない一線」を単に無視するのが、一番簡単な取り組み方だ。
しかしこれは対応方法としては大間違いだ。北朝鮮を抑制する効果は何もなく、かつ周辺諸国に対しては、もはや独自に軍事力を刷新した方がいいというメッセージになってしまう。これは将来へ向けて、問題をいっそう山積させるだけだ。
トランプ氏が自分は本当に「取引の名人」なのだと知らしめたいのならば、米大統領は結局のところ、ツイッターという演台からのメガホン外交を諦めて、より賢明なアプローチをとる必要がある。
これにはたとえば、北朝鮮の若い指導者のエゴと自己愛を満足させるような、高名な米国政界の重鎮を交渉役に派遣するという、発想力豊かな手もあり得る。
あるいは、韓国をはじめとする米国の同盟各国との調整をより緊密にし、北朝鮮に目立つ政治的譲歩を提供することも、ひとつの手だ。たとえば、平壌に米政府の連絡使節事務所を設けたり、あるいは朝鮮半島の通常兵力を一方的かつ連続的に削減するなどが考えらえる。
今の米政府は(地域と世界全般のため)、目玉と目玉をこすり合わせるように虚勢を張りあう以上の、より長期的かつ持続的で調整された対北朝鮮交渉戦略を、喫緊に必要としている。
衝動的で注意力散漫で落ち着きのないトランプ大統領は、ポーカーをやめてチェスに切り替えた方がいい。
ジョン・ニルソン=ライト博士は、英シンクタンク「チャタムハウス」(王立国際問題研究所)北東アジア担当上級研究員、およびケンブリッジ大学日本政治東アジア国際関係講師

日米韓三国による外交的圧力の強化を確認しています。
北朝鮮を抑えるには韓国の協力も欠かせません。そこにロシアも鍵を握っているともいえますが。共産中国をあてにすると南シナ海がやばくなる、といえるでしょうから、全面的に北朝鮮問題であてにできないでしょう。


【日米韓共同声明を発表】対北「最大限の圧力」で協力
トランプ氏、核含む防衛義務を再確認
2017.7.8 00:58http://www.sankei.com/politics/news/170708/plt1707080006-n1.html

【ハンブルク=原川貴郎】安倍晋三首相は平成2976日夜(日本時間7日未明)、ドイツ・ハンブルク市内の米国総領事館でトランプ米大統領、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と首脳会談を行った。安倍首相は「北朝鮮は真剣に対話する意思などない。今は圧力をかけていくことが必要だ」と述べ、南北対話に意欲を示す文氏を牽制(けんせい)した。3首脳は会談後に共同声明を発表し、北朝鮮に「最大限の圧力をかけるため協力する」と強調した。
 トランプ、文両氏の大統領就任後、日米韓の首脳が一堂に会するのは初めて。
 共同声明ではトランプ氏が日韓両国に対し、核兵器の使用も含めた防衛義務を果たすことを再確認したと明記した。中国とロシアを念頭に「北朝鮮と国境を接する国々」に北朝鮮を説得するための努力も求めた。
 会談では、安倍首相が国連安全保障理事会での新たな対北制裁決議採択に向けた連携を呼びかけ、米韓両首脳は賛意を示した。日韓両首脳は中国の丹東銀行(遼寧省)を対象とした米国の新たな対北措置を評価し、米国と連携する考えを示した。
 3首脳はまた、北朝鮮に影響力を持つ中国に対し、対北圧力を強めるよう日米韓が働きかける方針も改めて確認した。
 日米韓3カ国の安全保障協力についても協議し、安倍首相は両大統領に「協力分野をさらに拡大していきたい」と呼びかけた。拉致問題解決に向けた取り組みにも協力を求めた。

「作戦計画5030」情報戦をしかけながら、軍事攻撃オプションも辞さないアメリカ

日米韓による外交的圧力を加えるのにあわせて、軍事的な圧力も同時に北朝鮮に対して行われている。「作戦計画5030」。斬首作戦を匂わせるアメリカが北朝鮮にしかける情報戦、これに対してなんとか抗している金正恩という形を考えることができるように思う。


北朝鮮に先制攻撃か?金正恩氏の斬首作戦から変更
統帥権者・トランプ氏からの命令待つ米韓軍
2017.7.8 01:00更新http://www.sankei.com/premium/news/170708/prm1707080027-n1.html

(編集委員久保田るり子)

韓国で実施された米韓合同ミサイル演習「フォール・イーグル2017」

米韓合同軍事演習「マックス・サンダー2017」

 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)試射で緊張が高まった平成2975日朝、米韓両軍は韓国東海岸で「斬首作戦」の一環のミサイル発射合同訓練を実施した。訓練では斬首作戦に使う長距離空対地ミサイル「タウルス」のPR動画も公開、仮想の北朝鮮人民武力部を撃破する刺激的な映像で北朝鮮を牽制している。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は斬首作戦を極度に恐れているという。そのため公開行動を縮小したとされるが、朝鮮半島は“挑発には挑発で”の危険なサイクルの様相となってきた。

北は情報収集に血眼・気が気でない斬首作戦

 韓国軍合同参謀本部の発表によると、7月5日の訓練で動員されたのは在韓米軍の地対地ミサイル「ATACMS」と韓国軍の「玄武2A」だった。標的が「敵の指導部」だと明らかにし、斬首作戦であることを明言した。
 「玄武2A」は韓国開発の射程300キロの弾道ミサイル、「ATACMS」は1発でサッカー場が粉砕できる能力を持つ。この米韓ミサイルの同時発射訓練を行った。韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相は国会で「北朝鮮の弾道ミサイル挑発に対し米韓が弾道ミサイル訓練を行ったのは今回が始めて」と述べている。
 金正恩氏は「斬首作戦」に神経をとがらせているという。韓国の情報機関、国家情報院が国会に報告したところでは、金正恩氏は今春から斬首作戦を恐れて公開活動を約3割減らしたという。金正恩氏は「米軍が偵察しているときは、活動も明け方に行い、地方視察も専用車のベンツに乗らず、幹部用のレクサスに乗っている」といい、「北朝鮮は斬首作戦の情報収集に血眼だ」としている。


最近、北朝鮮は無人機で韓国を偵察しており、6月初旬に韓国中部で発見された無人機の日本製カメラには、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備予定基地をはじめ、斬首作戦関連の500枚以上の写真が写っていた。

ニセ情報も流す米心理戦

 韓国軍と在韓米軍が斬首作戦を共同軍事訓練などで本格化させたのは昨年からだが、在韓米軍は斬首作戦に合わせ兵器配備も変更させている。
 最近、配備されたのは韓国中部から北朝鮮平壌の重要施設を狙える長距離空対地ミサイル「JASSM」だ。韓国の有力紙、朝鮮日報によると、中西部の米空軍第8戦闘航空団に配備されたJASSMはF16に搭載、平壌を狙えば着弾誤差はわずか2メートル前後という。また同紙によると、米韓の情報当局は平壌出身の脱北者から北朝鮮の支配層や高官の住居となっている平壌のマンション団地などについての位置情報なども収集しているという。
 米軍は世界の紛争地での戦闘で敵の撹乱や戦意喪失を狙った情報戦を仕掛けている。そのなかでも朝鮮半島の心理戦は「作戦計画5030」と呼ばれる。この作戦では北朝鮮指導者の恐怖心をあおるニセ情報も流し、金正恩氏への心理圧迫も狙うという。今春の米韓軍事合同演習では「斬首作戦」に米特殊部隊を参加させたことを米軍はわざわざ発表し、金正恩氏の不安をあおった。


トランプVS金正恩の舌戦

 ICBM発射直後、トランプ大統領はツイッターで「この男は人生でほかにやることがないのか」とつぶやいた。これに金正恩氏が応酬した。
 「われわれの戦略的選択に米国は非常に不愉快だろう」
 「独立節(記念日)のプレゼントは気に入らないだろう」
 「今後も大小のプレゼントを贈ろう」

 こう言って金正恩委員長は豪快に笑った-と朝鮮中央通信が肉声として伝えた。
 米朝トップの応酬は前代未聞のこと。さらに2人は直情的な性格では共通しているだけに“口撃”のエスカレートは情勢を悪化させかねない。
 金正恩氏の挑発にハラを立てたからでもないだろうが、トランプ大統領は7月6日、「われわれはかなり重大な措置をいくつか考えている」(ワルシャワでの記者会見)と、軍事オプションを強く示唆している。
 CNNなど米報道によるとトランプ大統領は近く、ICBM発射にともなう対北措置を承認する予定で、そのなかには有事対応の戦力増援が含まれるという。韓国軍消息筋は今回の訓練について「北朝鮮ミサイルを先制攻撃する演習と考えて構わない」と述べており、挑発のサイクルが始まっている。


 在韓米軍のブルックス司令官は、同訓練後の韓国軍合同参謀本部議長との共同声明のなかで、「われわれの選択である自制が平時と戦時を区別しているが、米韓同盟の統帥権者の命令があればわれわれはその選択を直ちに変更する」と述べた。事態が戦時と判断された場合、統帥権者はトランプ大統領ということになる。