2018年1月3日水曜日

【米朝開戦のXデーを考える】北東アジア情勢・回顧と展望

回顧2017・トランプと金正恩「異質」な指導者目離せぬ 
現状変更勢力から国益守れ

世界は今年(2017年)、2人の異質な指導者に翻弄された。

 米国第一主義に立ち、既存の秩序を次々と否定するトランプ大統領と、核・ミサイル開発で挑発を続ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長である。
 不当な核開発をやめない独裁者と超大国のリーダーを同列に並べるのは本来、適切ではない。しかしながら、国際社会の対応が両氏の言動に大きく左右されてきたのは事実である。
 とりわけ北朝鮮の脅威に直接、さらされる日本は、今後も2人から目を離すことができない。

 ≪分断狙う隣人に警戒を≫

 トランプ政権は北朝鮮の核武装は容認しない姿勢を鮮明にし、テロ支援国家に再指定した。日本も同じ立場から、圧力強化に向けて米国との連携を強めてきた。
 対する金正恩氏は、今年の元日に米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射準備が「最終段階にある」と宣言した。
 この時点で、世界の大方は年内に完成間近になるとは予想もしなかっただろう。またしても開発阻止に失敗したのだ。
 1月の就任直後、トランプ氏はいきなり環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱を表明し、中東・アフリカ7カ国からの入国禁止令などの大統領令に次々と署名した。
 議会調整も政府内の根回しもない“トランプ流”に各地でデモが起きたが、白人の支持者らは拍手喝采した。
 そうした内向きの米国をにらみながら、金正恩氏は「国家核武力」の完成に向けて布石を打っていたといえよう。
 マレーシアの空港で異母兄弟、正男氏の殺害を見届けると、核・ミサイル開発の速度を上げ、夏にはICBM発射や6回目の核実験に成功した。
 ICBMの配備を許せば、米国の「核の傘」は効力をそがれる。国連では初の「核兵器禁止条約」が採択された。だが、日本が唯一の被爆国だと唱えても、現実的な備えを講じたことにならない。
 安倍晋三首相が「国難」への覚悟を問い、衆院解散に出た背景にも、そうした危機感があった。


 対北包囲網の強化に欠かせないのは、日米韓の結束である。しかし、韓国の文在寅大統領は最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐり、これに反対する中国に妥協を強いられている。
 一方、歴史問題では抗日で中国と協働し、北朝鮮への融和的な姿勢も捨てない。異なる相手に口裏を合わせる“カメレオン”ぶりには当惑する。米韓の寸断をもくろむ隣人の思うつぼではないか。
 対北圧力のカギを握る中国の習近平国家主席は、原油の禁輸には腰が重い。米国の視線を朝鮮半島に向けさせつつ、南シナ海の軍事拠点化を公然と続けている。

 ≪拉致置き去り許されぬ≫

 2期目に入った習体制は、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」で囲い込み、独自の秩序形成を急ぐだろう。それを阻むための開かれた地域構想は、日本が提唱し、米国が賛同したインド太平洋戦略であるはずだ。
 良好な安倍-トランプ関係が奏功した例だが、日米の同床異夢に終わらせてはなるまい。強固な日米同盟をさらに肉付けしていく努力を止めてはならない。
 トランプ氏への不安がぬぐえないのは、独善的な思考によるところが大きい。ロシアによる大統領選介入疑惑の追及はまだ続く。
 自らの弱点から支持者の目をそらそうとするためだろうか。強硬的な対外政策をツイートするのが習いとなっている。
 米国に求めたいのは、自由と民主主義、法の支配という価値を国際協調を通じて守り抜く意思である。それに対抗する現状変更勢力は巧みに戦いを仕掛ける。
 スターリンの粛清時代を肯定するプーチン露政権は、軍事力とサイバー攻撃、世論操作などを併せた「ハイブリッド戦争」で西側の分断をもくろんでいる。
 日本の主権と国民の安全が踏みにじられた屈辱を、置き去りにしてはならない。
 「善良な13歳の少女」である横田めぐみさんが北工作員に拉致された事件を、トランプ氏は国連演説で取り上げた。
 国際世論が高まりをみせる今こそ、拉致被害者の救出に日本は能動的に動くことが必要である。

《管理人より》とにかく国家戦略を構築したら、根幹にあたる戦略はぶれないことが肝心かと思います。邦人拉致の問題は、「置き去り」にした瞬間に我が国の「完全敗北」を意味します。既に拉致問題は、個人としての問題ではなく北朝鮮が国家戦略をもって、特殊工作員により、隣国日本に実行された「国家主権の侵害」(=侵略攻撃)です。小泉政権のころに5人の拉致被害者とその家族を「取り戻した」といっても、「一時帰国」した拉致被害者が「自発的な意思」で祖国への残留を決めた、ということです。ただ北朝鮮に「日本人拉致」を認めさせた、という点においては、我が国の外交的勝利といえますが。
被害者家族の高齢化の問題は、拉致被害者の高齢化も意味します。望郷の思いに苛まれながら彼の地で亡くなられた方は少なくないはず。もう一切の妥協は許されません。そしてこの問題は金政権体制をなくさない限り完全な解決はないといえるでしょう。だから弾道ミサイルと核弾頭開発の放棄と並行して進められなければならないことと思います。


【米国家安保戦略を読み解く】米国は中露の影響力増大を防げるか 

 ドナルド・トランプ米大統領(71)は2017年12月18日に発表した国家安全保障戦略(NSS)で米国の相対的な地位低下に警鐘を鳴らした。国際秩序の現状に修正を加える勢力に位置付けた中国やロシアの世界各地への進出の動きを米国の安全保障政策の基本方針を決める文書にあえて明記したのは画期的で、地域で「好ましい勢力均衡」を維持するためには、同盟国との緊密な協力こそが米国の力や影響力を拡大させると強調した。各地域の戦略をみていく。(ワシントン 加納宏幸)

【インド太平洋】

 NSSは地域戦略の冒頭でインド太平洋を取り上げることで、この地域に関与し続けるという政権の固い意志を示した。とりわけ中国に対しては強い警戒感をあらわにしている。
 米国が協力を模索しているにも関わらず、中国はインフラ投資や貿易で地政学的な野心をむき出しにし、経済力や軍事力を使って他国を自らが進める政策の前にひざまずかせようとしていると指摘している。
 特に南シナ海で進める人工島の軍事拠点化や急速な軍近代化で「米国の地域への接近が限定され、中国により大きなフリーハンドを与える」とみている。
 核・ミサイル開発を進める北朝鮮による挑発行為を抑止することも合わせて、インド太平洋で米国は米軍の前方展開能力を引き続き重視する。NSSには日米、オーストラリア、インドを加えた4カ国の協力も強化すると明記した。


【欧州】

 中国が巨大経済圏構想「一帯一路」で勢力圏を拡大して強国の道を進むのに対し、ロシアはサイバー攻撃などで米国の民主主義を弱体化させ、同盟関係に楔を打ち込むことで米国の影響力をそぐことをたくらむとみる。NSSが前線として挙げたのが欧州だ。
 ロシアは北大西洋条約機構(NATO)を通じた米国の関与や、欧州の「機構や政府」を弱体化しようとしていると指摘した。トランプ氏が英国の欧州機構(EU)離脱を歓迎していることには触れていない。

【中東】

 イランによる核合意の順守を認めていないトランプ政権はイランやイスラム過激派の脅威をオバマ前政権以上に強調する。「地域の問題の原因はイスラエルではなくテロ組織やイラン」(NSS)だとし、「イスラエル対アラブ諸国」の構図を塗り替えるためだ。
 NSSは中東諸国が「イスラエルと共通の脅威に立ち向かうという共通の利益をますます見いだしている」と強調した。

【南・中央アジア】

 トランプ政権が17年8月に発表したアフガニスタン新戦略でも懸念が示されたパキスタンによるイスラム武装勢力への支援を、NSSも「地域を不安定化させる行動」と非難した。
 アフガンへの軍事支援でイスラム原理主義勢力タリバンとの和平条件を整えるとする一方で、パキスタン政府にも武装勢力に対する「断固とした行動」を要求した。中国が南アジアでの影響力を強める中、各国の主権を維持するため協力することも明記した。


【西半球(中南米)】

 米国の「裏庭」として国益に深く結び付く中南米が、中露にとっての草刈り場になることをトランプ政権は強く懸念している。
 NSSは、中国が国家主導の投資や貸し付けで中南米を「自らの領域」に引き入れようとしているとした。また、中国はロシアとともにベネズエラの独裁体制を支援するほか、各国への軍事協力や武器輸出を進めているとし、民主主義国家とともにその「脅威」に立ち向かうと約束した。

【アフリカ】

 ここでも中国の脅威が強調される。アフリカにとっての最大の貿易相手国になった中国の取引慣行が「各国のエリート層を腐敗させ、長期的な発展をむしばんでいる」と指摘した。
 米国としてアフリカ諸国の指導者層の腐敗や人権侵害を防ぐため、個人への独自制裁や経済援助の凍結を検討するとした。
 大統領選で国際紛争への介入に否定的だったトランプ氏は2017年、シリアのアサド政権を攻撃し、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討を加速させ、北朝鮮に「最大限の圧力」をかけた。米国を「世界の輝く模範」(NSS)とし、世界各地での中露やイランの影響力増大を食い止めることができるかが18年、トランプ氏に問われている課題だ。

どういう意味の発言だ?ちょっといいすぎだろ。


新たな危機にも目配りする防衛体制に
2017/12/24 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO25015850T21C17A2EA1000/

防衛費が急ピッチで増加している。東アジアの安保環境の悪化を考慮すれば防衛力の増強は不可欠だが、本当に効率的に使われているのかどうかはよく見極める必要がある。いまの自衛隊のまま、ただ装備を増やせばよいのか。抜本的な組織改編も視野に防衛のあり方を考えるときだ。
 2018年度予算案の防衛費は5兆1911億円となった(米軍再編経費を含む)。17年度予算比1.3%増で、6年連続の増額である。5兆円に達したのが16年度だから、近年の伸びは著しい。17年度補正予算案にも2345億円が盛り込まれた。
 しかも、今回導入が決まった
(1)陸上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」
(2)戦闘機から発射し、地上の敵や艦船を攻撃する巡航ミサイル「JSM」――などは、いずれも初期費用しか計上されていない。
 イージス・アショアは1基800億円と見込んできたが、1000億円を超えるとの報道もある。米トランプ政権の言うがままに、高値づかみすることのないようにしてもらいたい。
 JSMは2017年8月の概算要求には含まれていなかった。使い方によっては敵領土に撃ち込めるとの見方がある。歴代内閣は敵基地攻撃を「法理的には自衛の範囲」としてきたが、野党の一部は違憲と反発している。もう少し丁寧に論議してから導入を決めてもよかったのではないか。
 大きな買い物の一方で手薄な感じのするのが、新たな危機への対応である。
 サイバー攻撃に備える防衛隊の要員を110人から150人に増やすが、米国防総省のサイバー要員は数千人ともいわれる。高層大気圏で核爆発を起こして相手国のインフラを破壊する電磁パルス(EMP)攻撃などへの備えは、研究段階にとどまった。
 共通するのは、陸海空いずれの自衛隊にとっても主業務でない課題への感度が鈍いことだ。
 いまの中期防衛力整備計画は18年度で満了するため、年明けから新計画づくりが始まる。敵が上陸してきたら戦車部隊で迎え撃つ。そんな古典的な戦争はもはや想定しがたい。

 どうすれば国を守れるか。陸海空の区分けにこだわる必要はないし、防衛省と海上保安庁の連携強化も欠かせない。新たな危機に即した防衛体制が求められる。

《管理人より》自衛隊の名称から組織編成に至るまで、「国防軍」にチェンジする。そしてサイバー戦部隊は、独立した軍種にすることで民間企業との連携を密にしながら、ハッカーを養成、編成していくことでしょう。ハッカーもネット空間では、自衛官や兵士と同じです。優秀なハッカーが民間企業に多くいます。彼らを国家防衛のためのコマンダーとして編成していくべきでしょう。
また自衛隊やハッカーだけではなく、あらゆる職種、業種に国防は存在する、という観点を徹底していくこと、最大の武器はインテリジェンスですが、官邸の指揮下にヒューミントを主体とする情報セクションを設置して、各官庁の情報機関をとりまとめることは不可欠でしょう。自衛隊の装備を最新のものに更新するだけが国防ではないはずです。


アメリカはどう北朝鮮への軍事オプションを考えているのでしょう? 2018年年頭の情勢

トランプ政権の対北朝鮮戦略、先制的な選択肢の準備も進む

(Bloomberg) -- 北朝鮮による米国へのミサイル攻撃阻止に向け、トランプ政権の国家安全保障戦略はより先制的なアプローチを呼び掛けている。北朝鮮からミサイルが発射される前に無力化する、というものだ。
 だが、危機的な状況下で米国が予防的な先制攻撃を効果的に実施できるだけの技術や現地情報を持ち合わせているかは定かではない。失敗すればむごたらしい戦争を招き、犠牲者の数をいたずらに増やす結果になりかねない。

 マティス国防長官やティラーソン国務長官らは朝鮮半島の緊張を外交を通じて緩和する時間はまだあるとし、交渉再開への意思を示唆する。ティラーソン氏は今月16日、バンクーバーで各国外相と朝鮮半島情勢を議論する会合を主催する。

 ただ、トランプ政権はこうした外交努力が実を結ばなかった場合の選択肢について、2017年12月に公表した国家安全保障戦略で提示している。「米国土をミサイル攻撃から守るため、北朝鮮とイランに的を絞った」多層的なミサイル防衛のアプローチが必要だとし、「このシステムにはミサイルの脅威を発射前に打ち破る能力も含まれる」と言明した。

 発射前のミサイル破壊は、発射後のミサイル迎撃に比べ攻撃的で多くの困難が伴う。日本を拠点とする最先端のイージス艦を含む米国のシステムは、それを確実に遂行できる能力を持つに至っていないと複数のアナリストや政府関係者が指摘する。

 米メリーランドを拠点とする防衛コンサルティング会社ジオストラテジック・アナリシスのピーター・ヒューシー社長は、トランプ大統領の提案にはレーザーや特殊工作、GPS誘導型兵器による長距離攻撃、サイバー攻撃などを使った先制攻撃や無力化が含まれる可能性があるとみている。

 国防総省のトーマス・クロッソン報道官は、こうした戦略について2018年2月に公表予定の弾道ミサイルに関する報告書に詳細が盛り込まれるだろうと述べた。

原題:Trump’s Pre-Emptive Tack on North Korea Seen as Work in Progress(抜粋)
: ロンドン 鈴木克依 ksuzuki115@bloomberg.net.
翻訳記事に関するエディターへの問い合わせ先 山広恒夫 tyamahiro@bloomberg.net.
記事に関する記者への問い合わせ先: ワシントン Tony Capaccio acapaccio@bloomberg.net.
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Bill Faries wfaries@bloomberg.net, Joshua Gallu Alex Wayne

©2018 Bloomberg L.P.

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