2017年9月6日水曜日

「Jアラート」戦略爆撃の恐怖再び ~日米戦争戦時下での空襲警報の再現か?~ 

Jアラートが鳴ったらどうすれば?
発射から着弾まで10分、北朝鮮ミサイルを「正しく恐れる」
20179/5() 7:00配信 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170904-00000002-withnews-soci

 北朝鮮の弾道ミサイル発射が止まりません。2017829日早朝には事前通告なしに日本上空を通過させ、東日本を中心に日本政府による「Jアラート(全国瞬時警報システム)」が鳴りました。201793日には6度目の核実験を実施。いったいどうなるのかと不安な方も多いのではないでしょうか。またミサイルが飛んでJアラートが鳴ったら、万が一日本に落ちてきたら、私たちはどうすればいいのでしょう。整理してみました。(朝日新聞政治部専門記者・藤田直央)

落下の可能性不明 心構えは必要
 まずお伝えしたいのは、北朝鮮のミサイルが実際に日本に落ちるのか、落ちた場合にどのぐらいの被害が出るのかを考えるのは、とても難しいということです。
 北朝鮮がミサイルで本気で日本を狙ったり、狙わなくても誤って落ちたりすることがあるのか。日本に落ちそうなら自衛隊は迎撃できるのか。着弾してしまった時、その弾頭はどんな種類と威力の爆弾なのか。そうしたこと次第で、状況は大きく変わります。
 あらゆる災害や事件・事故と同じで、北朝鮮のミサイル落下についても、そんなことは起きるはずがない、起きても自分が巻き込まれることはない、と考える人もいるでしょう。
 ただ、日本の方へミサイルが撃たれ、その情報がJアラートで日本にいる人々に間を置かずに伝わり、一人一人が判断を迫られるというのは、すでに起きていることです。発射後、落ちてくるかもしれないとわかってから短時間でどう身を守るか。技術的にそれを考えることができるようになった現状への心構えの一助として、ご一読下さい。
Jアラートで発射情報と避難指示

 北朝鮮のミサイルが日本に落ちる場合、発射から着弾までの時間は、撃ち方や方向にもよりますが、早くて10分前後と考えられます。まず、発射されて日本の方へ飛んでくるという情報は、私たちにどのように伝わるのでしょうか。
 Jアラートは、ミサイルの飛来や、津波警報、緊急地震速報など、日本にいる人々が身の安全を守るために素早い対応を迫られる情報を、全国の自治体の防災行政無線や電子メールで伝える仕組みです。
 北朝鮮がミサイルを撃った時、テレビのニュース速報など報道が先行することもありますが、Jアラートが情報を伝えるのは日本の方向へ撃たれた場合です。
 ミサイルが日本の方向に来ると政府が判断した場合、総務省消防庁を通じ、第一報として「ミサイル発射。避難して下さい」というメッセージが流れます。ただこの情報が届くのは、予測される軌道の周辺地域に限られます。軌道に関係なく日本全国に伝えられるわけではありません。
 こうした情報が私たちに伝わるルートは、大きく二通りあります。一つは自治体経由です。各市区町村の庁舎などにJアラートの受信機があり、情報を受信すると防災行政無線が自動的に起動し、特別のサイレンに続いてメッセージが流れます。同じメッセージを登録制メールでも流す自治体もあるので、お住まいの市区町村に確認されるといいかもしれません。
 もう一つは個人の携帯電話です。消防庁は携帯電話の大手事業者と提携しており、Jアラートのメッセージを「エリアメール」や「緊急速報メール」で配信します。ただ、消防庁は、一部の事業者や機種の携帯電話・スマートフォンでは受信できないとしており、ユーザーに事業者への確認を勧めています。

「避難を」の第一報でどうする

 さて、ミサイル発射からこの第一報「避難して下さい」までは数分、避難に残された時間も数分です。どうすればいいのか。政府は内閣官房の国民保護ポータルサイト(http://www.kokuminhogo.go.jp/)の「弾道ミサイル落下時の行動について」で、このように求めています。

【屋外にいる場合】
○近くのできるだけ頑丈な建物や地下街に避難する
○適当な建物がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守る
【屋内にいる場合】
○できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動する
(国民保護ポータルサイトより)

 こうした対応が必要なのは、近くにミサイルが落ちた場合、爆発にできるだけ身をさらさないようにするためです。爆弾の中身や破壊された物が爆風で飛び散れば、物陰にいるかどうかが生死を分けることもありえます。
 今年から全国各地でミサイル落下に備えた避難訓練が行われていますが、学校ではグラウンドにいる子どもたちが校舎や体育館へ逃げます。地震の避難訓練では校舎からグラウンドへ逃げますが、それとは逆の動きになります。
 「避難して下さい」の第一報を車の中で知ることもあるでしょう。内閣官房は、ミサイルの爆発でガソリンに引火する恐れがあるため、車から離れたうえで【屋外にいる場合】の対応をとるよう求めています。ただ、高速道路などで車外に出ると危険な場合は安全な所に車を止め、中で姿勢を低くするようにとしています。
落ちたのか 第二報以降も注意

 Jアラートの第一報の時点では、ミサイルが日本に落ちるかどうかはまだわかりません。飛んでいるミサイルの動きを政府が追い続け、領土や領海に落ちるかもしれないと判断すれば、「直ちに避難。ミサイルが落下する可能性があります」という第二報が流れます。そして実際に落ちたと推定されれば、「ミサイルが○○地方に落下した可能性があります。引き続き屋内に避難して下さい」という第三報が続きます。第二報、第三報は、ミサイルの軌道予測をふまえ第一報が流れたのと同じ地域に伝わります。
 ミサイルが領土や領海ではなく、手前の日本海や東シナ海、または日本列島を越えて太平洋に落ちるかもしれません。日本上空を通過した、あるいは領海外に落ちたと推定される場合は、第二報でその旨を伝え、「不審物を発見した場合は近寄らず警察や消防へ連絡して下さい」と流れます。領土や領海にミサイルの本体が落ちなくても、分離した一部が落ちるかもしれないので、「不審物」に注意をというわけです。
 このように、Jアラートは命に関わると言える情報です。829日にミサイルが東へ飛び太平洋に落ちた時は、北海道、東北、北関東など12道県で避難を呼びかけましたが、16市町村で防災行政無線や登録制メールが作動しませんでした。あってはあらないことで、菅義偉官房長官は翌30日の記者会見で「消防庁で原因特定と再発防止を徹底し、同種の問題が他の自治体で生じないよう情報提供していく」と述べました。

もし落ちてしまったら――


 領土や領海には落ちなかったとわかれば一安心ですが、落ちてしまったらどうするか。その場合は、第二報で流れた「○○地方」を中心に対処が必要です。最初に述べたように、ミサイルの弾頭に何が積まれているかで被害は大きく変わります。実験なら空洞ということもあるでしょう。ただ、もし通常の火薬や、さらには核兵器や生物化学兵器といった大量破壊兵器だったら――。
 内閣官房では「テレビ、ラジオ、インターネットなどを通じて情報収集に努めて下さい。また、行政からの指示があれば従って、落ち着いて行動して下さい」としています。「行政からの指示」は、政府が引き続きJアラートを使ったり、着弾点付近の市区町村が独自の情報を防災行政無線で流したりすることが考えられます。
 かつてない事態に直面しても、できるだけ混乱や不安が広がらないよう、私たちは情報の把握に努めないといけません。行政機関には、互いに連携、調整して速やかに被害に対処しつつ、地域に応じて適切に情報を発信することが求められます。
 最後に一言。ミサイル落下と地震や津波への対応は、もしもの時に備えるという面で似ていても、性質はかなり違います。ミサイル落下は日本への攻撃とみなされかねない話です。そこからもし戦争になれば、二発目、三発目が落ちてくるかもしれません。
 私たち自身の努力でその攻撃による被害をいかに小さくするかは、堅く言えば「民間防衛」という活動になります。太平洋戦争中に米軍の空襲に備えて家で夜に明かりを消したり、防空壕に逃げたり、バケツリレーの消火訓練をしたりといったことがありましたが、それと同じ考え方です。
 戦後70年以上経った今、日本がどうしてまた「民間防衛」への備えを迫られる事態になっているのか。外交と安全保障政策を駆使して東アジアの平和をどう確保するのかという、自然災害とは別の重い課題が突きつけられているのです。


【最新版】もし北朝鮮の核ミサイルで攻撃されたら?【被害想定】 2016/07/05 に公開 要望多数だったため、以下の二つで最新版を作りました もし、北朝鮮の核ミサイルが日本に落ちたら? https://youtu.be/xsxGRZxH5kg https://www.youtube.com/watch?v=xsxGRZxH5kg
日常の生活が、一瞬で廃墟となる、日米戦争の都市の戦略爆撃と忌まわしい原爆投下により、日本人は嫌というほど学んだはずです。戦後の小中学校での戦争教育のすべてが正しいとはいいませんが、戦略爆撃の恐怖と悲惨さについてリアルに伝えるということについてはうまくいったかと思います。焼夷弾や原爆が弾道ミサイルに「進化」したわけです。これにどう対処するのか?日本人すべてに課せられた大きな課題といえます。

ミサイル発射、Jアラートで嘘八百を垂れ流したテレビ

日本に求められる普通の安全保障リテラシー
織田邦男
元・空将1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年、米国の空軍大学へ留学。90年、第301飛行隊長、92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2005年空将、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)、2009年に航空自衛隊退職。


北朝鮮・平壌近郊の非公開の場所で行われた中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長(中央)。朝鮮中央通信(KCNA)公開(2017829日撮影)。(c)AFP/KCNA VIA KNS 

 北朝鮮は2017829日、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射を実施した。朝鮮中央通信は「金正恩朝鮮労働党委員長は『恥辱的な韓国併合条約』が発効した1910829日から107年に当たる29日に『日本人を驚がくさせる大胆な作戦計画』を立て、発射を承認した」とし、「発射は成功した」と報じた。
 報道によると順安空港(平壌国際空港)から弾道ミサイルは発射され、ミサイルは北海道の渡島半島上空を通過し、襟裳岬東方約1180キロの太平洋上に落下したという。
 201789日、北朝鮮軍の金絡謙戦略軍司令官が火星124発同時発射して島根、広島、高知各県の上空を飛行させ、グアム島周辺3040キロの水域に撃ち込む計画を公表していた。米国の激しい反発を受け、急遽、方向を変えたものと思われる。今回の発射は異例ずくめである。
日本上空を通過したのは今回で5回目
 従来のように山岳部から発射するのではなく、平壌近郊の国際空港から発射したのも異例だが、日本列島を超えて飛行したというのも日本国民にとっては大きな衝撃であった。
 だが北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本列島上空を通過したのは初めてではない。今回が5度目となる。
 1998831日、長距離弾道ミサイル「テポドン1号」が初めて日本列島上空を通過し、三陸沖の太平洋に落下した。後日、「人工衛星の打ち上げ」と発表している。この時も今回と同様、一切の事前通告はなかった。
 このほか、「人工衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型が3回発射されたが、いずれも北朝鮮が事前通告しており、部品の落下位置なども事前公表していた。201212月、20162月には南方向に発射し、沖縄県上空を通過して一部がフィリピンの東方沖や太平洋上に落下している。
 今回、ミサイルの上空通過は北朝鮮が予告した中国、四国地方であるとし、不測の事態に備えて「PAC3」を展開させていた。
 ところが全く予想外の津軽海峡方向にミサイルが飛翔し、しかも全国瞬時警報システム「Jアラート」が初めて作動したということで国民の衝撃は倍加した。「Jアラート」が流れた12の道と県は、文字通り右往左往の感があった。
メディア、特にテレビでは連日「ミサイル発射」一色となり、お茶の間には虚実相混ざった情報が垂れ流されていた。安全保障の議論が盛り上がるのは決して悪いことではない。
 だが、2017818日付の拙稿「グアムを狙ったミサイルより日本向けを真剣議論せよ~北朝鮮の核の脅威に『虚空に吠える』議論は有害無益」でも指摘したように、誤った知識に基づいた議論は「有害無益」である。週刊誌でもない有力な御意見雑誌までがこの体たらくで、日本の安全保障リテラシーが問われていると指摘した。細部は省略する。
 今回のミサイル発射を伝えるテレビのワイドショーはこれに輪をかけ、国民をミスリードする酷い内容が多かった。そもそも基礎的知識に欠けており、「ピント外れ」を通り越し、誤った知識をお茶の間に垂れ流していた。
 例えばこうだ。高名なコリア・ウオッチャー曰く、「破壊措置命令が出ていないのに、Jアラートを出すというのは納得いきません」と。
テレビの嘘コメントが“真実”に
 これに対し、スタジオの雰囲気は「そうですよね・・・」と一挙に政府批判の様相に転じた。政府批判は自由だが、正しい事実に基づいてなければ、ただのアジテーションに過ぎない。恐ろしいのはこれが"真実"となって国内に蔓延してしまうことだ。
 「破壊措置命令」は稲田朋美防衛大臣の時からとっくに出されていた。だからこそ、イージス艦も日本海で警戒監視を続けており、PAC3も中国、四国地方に展開しているのだ。加えて「破壊措置命令」と「Jアラート」は全く関連性がない。
 次のようなことを真顔で述べるコメンテーターもいた。「今回、自衛隊は『破壊措置』が実施できなかった。だから日本のミサイル防衛システムは役に立たない」と。
 「破壊措置命令」が出ているからと言って、「破壊措置」をするとは限らない。
 平時の場合、法律上「我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認める」ミサイル等に対して「破壊措置」が実施できる。
 ミサイルの着弾地が不明な場合や、明らかに着弾地点が太平洋と分っているミサイルは現行法制上も破壊措置は取れない(能力的な観点もあるが、省略する)。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50956?page=3
 今回初めて出された「Jアラート」についても、随分いい加減なコメントが流されていた。本質的な理解が深まるどころか誤認識が広がったのではないだろうか。
 代表的なコメントがこうだ。「警報が出されてから、ミサイルが飛んでくるまでに数分しかないから意味がない」
「地下や頑丈な建物の中に避難しろといっても、近くにない場合はどうするのか」
「避難できるような場所なんて、ほとんどないし、Jアラートなんて意味はない」・・・。
 「Jアラート」は全国瞬時警報システムであり、対処に時間的余裕がない大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃などについての情報を、国から住民まで直接瞬時に伝達するシステムである。
 住民に早期の避難や予防措置などを促し、被害の軽減に貢献することを目的としており、危機管理能力を高めようとするものである。
Jアラート後の数分間に何をすべきか
 なるほど、「Jアラート」警報が鳴っても、ミサイルが頭上に到達するまで数分しかないのは事実である。また田舎では、近くに「地下や頑丈な建物」などない方が普通だろう。だからと言って「Jアラート」など意味はないかと言うとそうではない。
 今、自分が置かれた環境の中で、数分間という時間があれば何ができるか。ミサイル脅威に対しては、数分間という時間内で、自らを守るための最適の行動を取ることが求められる。まさに危機管理そのものである。その行動を促すスターターが「Jアラート」なのである。
 危機管理にベストはない。あれもない、これもないという環境下で、最悪事態(核ミサイルの着弾など)を想定し、工夫をしながら被害の最小限化を図る。自分を守るのは自分であり、誰にも頼ることはできない。
 スターターとしての「Jアラート」が鳴ったら、現在の場所に最もふさわしく、数分の間でできることをやって自分自身を守れということであり、個人の危機管理そのものなのである。
 何でも国頼みの「お上依存症」は戦後日本人の宿痾とも言える。まずは自助、そして共助、公助と続くのが世界の常識であり、危機管理の鉄則なのだ。
 知ったかぶりして、こういうことをまことしやかに語っていたコメンテーターもいた。
「なぜ、12の道と県にわたって『Jアラート』が流されたのか。なぜ、場所を特定できないのだ。政府は危機を不必要に煽っているのではないか」
 「日本に落下する可能性があるのかないのかを瞬時に探知できなければ、そもそもミサイルディフェンスなんて成り立たない」
 誰が訂正するわけでもなく、誰も正確に解説できないため、テレビでのこのコメントがあたかも真実のように定着しかねない。テレビしか情報源を持たない主婦や老人などは、「そうだな」と信じても不思議ではない。
 そもそも、ミサイルのブースト・フェーズ(ブースターが燃えている状態)では着弾地点は分からない。ブースト・フェーズが終わった時点で、ミサイルは弾道軌道に入り着弾地点が特定される。
着弾点が分からないのは米軍も同じ
 ブースト・フェーズで分かるとしたら、方向だけであり、着弾点が「瞬時に探知できない」のは米軍の最新システムでも同じである。だからと言って「ミサイルディフェンスなんて成り立たない」わけではない。「成り立たたない」ならこの世にミサイル防衛システムは存在しないことになる。
 ブースト・フェーズが終了すれば正確に着弾地点が判明するが、それまで「Jアラート」発出を待つわけにはいかない。ただでさえ「数分間」しか余裕がないのに、手遅れになってしまうからだ。
 ミサイル発射を探知し、概ねの方向性が分かった時点で、とりあえず関連地域に「Jアラート」を流すというのは、危機管理上も合理的であり正しい。
 こういった基礎的知識もなく、民進党の有力幹部がツイッターで次のように堂々と主張していたのには驚いた。
 「ミサイルの追跡が完璧だったなら日本を狙ったものでもなく、ブースターの落下も100キロ以内というなら日本にはないということも分かっていたのでは? 警戒警報乱発は『狼少年現象』を起こし却って危険では」と。いかにもまことしやかだが、誤認識の誹りは免れない。
 繰り返すが日本を狙ったものだと分かる時点は、ブースト・フェーズ終了後である。その時点で「警戒警報」を流しても、また「ブースターの落下」が日本国内と分かった時点で「警戒警報」を流しても、国民はもはや対処行動を取る時間的余裕はない。
 これが分かったうえであえて言う「ためにする非難」ならまだいい。だがそうでないなら国会議員の安全保障リテラシーがこの程度であることに背筋が寒くなる思いだ。
この政治家は某ジャーナリストのツイートに応えて次のように述べているが、どうやらご本人の無知から発しているようだ。
 「首相が言う『北朝鮮のミサイルを完璧に・・・』と言う意味は発射の兆候も探知も追跡も・・・完璧にできたと言う意味なのだろう。もしそうならどうしてこのミサイルが『日本に向けて』などと言ったのだろう? こんなにも広範囲に警戒を呼びかけたのだろう? 電車を止めたりテレビがミサイル報道ばかりになったり」
危機管理の基本は銭形平次の八五郎
 発射時点で「日本に向けて」という方向性は分かっても、着弾点は分からないのは前述の通りだ。はっきり分からないうちは、とりあえず広範囲に警戒を呼びかけるのは合理的である。また鉄道会社は万が一のため、安全をとって電車を止めるのは正常な業務行為である。
 「狼少年現象」を恐れているようだが、これもおかしい。今回は「狼」が来なかったのではない。頭上をミサイルが通過したのは事実であり、「狼」は来たのだ。
 何か落下物が落ちてくる可能性は事実あったのだから、これを「狼少年現象」と言うこと自体間違っている。
 危機管理で最も大切なことは危機の到来を、できるだけ早く関係者に周知徹底することだ。特に時間的余裕が制約されるミサイル防衛ではそうだ。
 危機管理では「銭形平次」の「八五郎」の態度が大切だと言われる。つまり、八五郎が『てぇーへんだ、てぇーへんだ、てぇーへんだァッ!!』と叫びながら、銭形平次の家に飛び込んでくる。これが、危機管理と第一歩として重要なのだ。「Jアラート」というのはまさに「八五郎」なのである。
 朝鮮中央通信は2017830日、「今後も太平洋を目標にした弾道ミサイル発射訓練を多く行う」と述べた。多分、今後も同様な日本上空通過のミサイル発射が数多く生起するはずだ。
 今回の火星12の発射は飛距離が2700キロしかなく、筆者は試験発射に失敗したとみている。2017830日の労働新聞には、火星12の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長の写真が出ているが、背景にある地図をよく見れば、津軽海峡方向に飛行距離3500キロの軌跡が書いてある。
 韓国情報筋によると搭載燃料を減らしたと言われているが、わざわざ2700キロに減らす合理的理由もない。また距離を短くするディプレスト軌道発射をする理由も見当たらない。
 何より、グアム方向の射撃は米国の反発でやめたが、2700キロではグアムをいつでも攻撃できるというメッセージにはなり得ない。
 今回の火星12514日にロフテッド軌道で成功して以降2回目の発射であった。初のミニマム・エナジー軌道(射程を最も稼げる軌道)で、何らかの不具合が出たのであろう。
これからも次々と飛来するミサイル
 北朝鮮の最終目的は米国全土をカバーする核搭載ICBM(「火星13」)を完成させることだろう。それには技術的基盤として火星12、そして火星14をまず完成させねばならない。
 この20175月、韓国の韓民求国防相(当時)も「火星12からICBM級に進化させることが目標ではないか」と指摘している。今後も成功するまで火星12のミニマム・エナジー軌道発射試験は続くと思われる。
 火星12にせよ火星14にせよ、中長射程ICBMをミニマム・エナジー軌道発射を検証するには、必ず日本列島上空を超えなければならない。
 今回のコースは、2012年、2016年に南方に向けて発射したように、不具合が生じても比較的被害が少ないと思われる津軽海峡上空を選択したと筆者は考えている。朝鮮中央通信が発射後「周辺諸国の安全に何の影響も与えなかった」と強弁していることからもその意図は伺える。
 今後も同じコースと決めつけることは危険かもしれない。しかしながら今後とも日本列島のどこかを通過するミサイル発射を続けることは間違いないだろう。「Jアラート」による迅速かつ正確な伝達、そして個人個人の被害局限の動作がますます重要になる。
 そのたびごとに、メディアが荒唐無稽な解説を垂れ流すことは百害あって一利もない。政治家も生半可な知識でコメントするべきではない。政治家の片言隻句が国民の生命・財産に重要な影響を及ぼすことを忘れてはならない。

 また最低限正しい知識を伝えるのがメディアの最も重要な責務である。そのためにも政治家、そしてメディア自身が安全保障リテラシーのレベルを上げることが求められている。


【北朝鮮の問題は国民共通の国家的な問題です!】

 日米戦争において都市への空襲が激しさを増したのは、昭和19年にマリアナ諸島のサイパン島を占領されてからでした。また迎撃する我が国の戦闘機も防空に回せる戦闘機が少なくなって、襲来する米軍の高高度爆撃機の数に対応できなくなったということもあります。
 今の北朝鮮の弾道ミサイルの恐怖についても同じことがいえるかと思います。迎撃する手段は、アメリカから買ったBMDシステムがありますが未知数。慌てて政府がイージスアショアやブースト段階でのABL(エアボーンレーザー)の活用の検討と対処手段を増やしていますから、問題はないように思えますが、かつてのアメリカ軍の高高度爆撃になすすべがなかった我が国の状況とだぶります。
つまり付け焼刃、その場での対処療法的だと思います。国民レベルであれば、北朝鮮が弾道ミサイル開発している情報を察知した時点で、一戸建てやマンションに対して地下シェルター設置を義務づけるなどの法律を成立させなかったのでしょうか? 
地下シェルターさえ各家庭にあれば、ミサイル発射があってもより短時間で退避することができます。戦時中の「防空壕」の発想です。核弾頭を搭載する危険があるなら高レベル放射線に対応したシェルターということになりますね。実費でやるもよし、政府や自治体が補助金をだしても何もおかしくありません。
 我が国の建物はミサイル攻撃を想定している建物がどれだけあるというのでしょうか?
 こういう側面を完備しない限り、Jアラートの効果は薄いでしょう。
また根本的な批判をするなら、そもそもミサイルを撃たせるような外交に問題があります。戦時中のサイパン島のようなもの。北朝鮮が弾道ミサイルを完成させて配備させていたとしても、撃たせない外交が不可欠です。軍事的な措置も不可欠でしょう。我が国の邦人拉致に対する経済制裁は北朝鮮が無力化しています。
 これに加えての制裁措置が必要です。
北朝鮮に対する国際包囲体制の構築と相互確証破壊に基づく軍事的圧力の確立ですね。北朝鮮に対する集団安全保障体制を確立するためには、共産中国とロシアを戦略的にとりこむ必要があります。軍事的圧力を増大させるためには、様々考えられますが、軍事アナリストの北村淳氏がいわれるように巡航ミサイルを配備することも手段としては有効でしょう。ただ核兵器保有は、世界の我が国へのイメージを損なうところの方が大きいため適当な手段ではありません。
 「平和ボケ」は、自国の破滅を意味します。我が国のような重要な戦略的地勢にある国は、まず国の独立を守るために軍事と外交を充実させておかなければならないということです。

平和ボケの日本国民よこれを見よ!「宣戦布告」 
https://www.youtube.com/watch?v=xDb6gRxpYo8
平和ボケの日本国民よ これを見よ!「北朝鮮が日本を攻撃する日」 https://www.youtube.com/watch?v=JISdfSEIZ44

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