2017年8月20日日曜日

オスプレイの兵器装備としての信頼性は回復できるのか!?

オスプレイ墜落、米軍で重大事故多発の真因とは

「こうなることは予測されていた」の声も

北村淳
オーストラリア・シドニー沖の太平洋上を3機で編隊飛行する米海兵隊の輸送機オスプレイ。米海兵隊提供(2017629日撮影、資料写真)。(c)AFP/US MARINE CORPS/Lance Cpl. Amy PHANAFPBB News

 201785日、オーストラリア沖でオーストラリア軍と合同演習中のアメリカ海兵隊中型ティルトローター輸送機MV-22オスプレイが墜落した。搭乗していた26人中23人は救助されたが3名が死亡し、機体も失われた。
関連記事:普天間基地のMV-22B VMM-265)、豪クィーンズランド州で定期任務中に事故
配信日:2017/08/06 08:51http://flyteam.jp/airline/united-states-marine-corps/news/article/82678
VMM-265MV-22BLHD-6を発艦する様子
 アメリカ海兵隊第3海兵師団は201785()、オーストラリア・クィーンズランド州東部のショールウォーターベイの訓練エリアで16時ごろにMV-22Bオスプレイで事故が発生、搭乗していた隊員26名のうち3名の捜索、救助活動を展開していると発表しました。事故機は第31海兵遠征隊(31MEU)として派遣されていた第265海兵中型ティルトローター飛行隊(VMM-265)所属のMV-22Bで、沖縄の普天間基地に配備されている機材です。事故機は強襲揚陸艦USSボノム・リシャール(LHD-6)を発艦し、事故発生時は定期的な運用での任務中に発生し、着水したと説明されています。LHD-6に装備する小型ボートや航空機を使った捜索救助活動が直ちに行われています。31MEUは現在、ボノムリシャール遠征打撃群(BHRESG)と共にインド・アジア太平洋地域での定期的な展開任務の一環として活動、20177月は実動訓練「タリスマンセーバー17」に参加していました。
 この事故のおよそ1カ月前の2017710日(米国時間)には、米国ミシシッピ州でアメリカ海兵隊の空中給油・輸送機KC-130Tハーキュリーズが墜落し、搭乗していた16名全員が死亡した。
 連続して発生した航空機墜落死亡事故を受けてアメリカ海兵隊総司令官ネラー大将は、2017811日(米国時間)、全ての海兵隊航空部隊に対して、2週間以内に24時間の飛行停止・安全性再確認を行うよう命令を発した。
大規模な安全性の再確認作業を指示
 ネラー総司令官が発した24時間飛行停止命令は、海兵隊の航空部隊に一斉に飛行を停止させる命令ではない。2週間以内に海兵隊の全ての飛行部隊が、作戦任務(アメリカ海兵隊のドクトリンでは、海兵隊は36524時間常に戦闘に備えている)に影響が生じないよう、それぞれの航空部隊で調整して、交代で24時間の飛行停止を実施し、その間に徹底した安全性の再確認作業を実施せよ、という趣旨である。
 この種の安全性再確認のための飛行停止措置は、決して特殊な出来事ではない。ただし、特定の機種あるいは特定の部隊に対して発せられた飛行停止命令ではなく、海兵隊が運用する全ての航空機と全ての部隊に対して発せられた、極めて大規模な安全性再確認措置であるという点では異例と言えよう。
連発している「クラスAミスハップ」
 ネラー大将がこのような命令を発したのは、オーストラリア沖で3名の海兵隊員を失い、ミシシッピ州では16名もの海兵隊員を失うという死亡事故が連発したことももちろんあるが、それだけが理由ではない。ここのところ、様々な機種での「クラスAミスハップ」(いわゆる重大事故:Class A mishap)に分類される航空機事故が頻発している状況に鑑みてである。
 ちなみに、アメリカ海軍安全センターの定義によると、アメリカ海軍ならびにアメリカ海兵隊の航空機事故において、
1)死者が発生
2)永久全身障害が発生
3)航空機が全壊
4)機体に200万ドル以上の損失が発生
という4項目のうち1つ以上が生じた場合には、「クラスAミスハップ」に分類される。
 アメリカ海兵隊では、2016年と2017年だけでも18件の「クラスAミスハップ」が発生している。そのうち死者を出したのは6件に上っており、34名の海兵隊員の命が失われている。
 2016年度の海兵隊の「クラスAミスハップ」発生率は3.4210万回の飛行あたり3.42件発生)であり、2017年度の発生率はこれまでのところ4.56と跳ね上がっている。
 問題は海兵隊だけではない。アメリカ海軍安全センターによると、過去1年間(20168月から2017812日まで)の間に発生した「クラスAミスハップ」は、海軍機で13件(飛行中8件、地上5件、死者なし)、海兵隊機で11件(飛行中9件、地上2件、死者21名)となっている。アメリカ空軍でも陸軍航空部隊でも重大事故、あるいは重大事故につながりかねない深刻な故障などが多発しているのだ。(本稿執筆中にも、バーレーンでアメリカ海兵隊戦闘機が不時着し、搭乗員が緊急脱出をする事故が発生した。事故クラス分類はまだなされていない。)
強制財政削減により整備点検が不十分に
 アメリカ連邦議会下院軍事委員長のマック・ソーンベリー議員は、海兵隊をはじめとする米軍でこのような航空機事故が頻発している事態はかねてより予測されていたと指摘する。
 その元凶は、オバマ政権による国防予算の大幅削減策の目玉であった「強制財政削減」にあるという。2012会計年度から2021会計年度の10年間で、連邦支出は12000億ドル削減された。そのうちのおよそ半分は国防費であった(本コラム2013926日参照)。ソーンベリー氏は強制財政削減の即時撤廃を主張し続けている。
 ソーンベリー氏をはじめとする強制財政削減の即時撤廃派の人々によると、軍事費が強制財政削減によって逼迫したために、
1)新型航空機の調達が滞り、長年にわたって使い込み、安全性が(新鋭機に比べて)低い航空機を使用せざるを得ない
2)軍用機の整備点検費用が不十分となり、航空機に故障が生じやすくなる
3)十分な訓練費用を確保できなくなり、パイロットの錬成度も低下する
といった深刻な悪影響があると指摘している。
 そして、国防予算の大削減以降、「クラスAミスハップ」が多発しているだけではなく、「クラスB」や「クラスC」に分類される航空機事故に至っては発生件数が倍増している。実はその状況も、すでにトランプ政権が発足する以前から指摘されていた。
 ソーンベリー議員、そして強制財政削減を撤廃し国防費を“正常”な状態に戻すように主張している人々は、強制財政削減がアメリカ軍の航空機運用だけでなく、アメリカ軍の戦力そのものを弱体化させている原因であるとして改めて強く非難している。

 このようにオーストラリア沖でのオスプレイ墜落事故は、日本とは違った論点において、アメリカ国内でも国防に関する議論を高めるきっかけとなっている。
《維新嵐》国防に関する予算、軍事費は特に大きく削減されるとそれまで執行されていたところの項目をきりつめないといけなくなりますから、部品供給であったり、整備費用であったりといったところの質の低下を招くのでしょうか。オスプレイの事故多発の原因が、オバマ政権時代の予算削減により本来必要な予算執行まで削減してしまって、いくつかのところで質的低下を招き、大きな事故につながっているとしたら十分是正される問題でしょう。
 オスプレイは今やコマンダーの輸送だけではなく、災害救助にも不可欠な装備になっていますね。安全性確保は大きな課題でしょう。
陸自と米海兵隊の訓練「ノーザンヴァイパー」、MV-22も参加
配信日:2017/08/17 20:24  http://flyteam.jp/airline/japan-ground-self-defense-force/news/article/83085 VMM-262MV-22B、三沢基地でノーザンヴァイパーで実施した降下訓練
 防衛省は2017818()から、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の部隊が810()から828()に実施している実動訓練「ノーザンヴァイパー」にMV-22Bオスプレイが参加すると発表しています。オーストラリア・クイーンズランド州ショールウォーター・ベイ訓練場の沖合で飛行中に発生したMV-22Bの事故を受け、自治体からも安全性について懸念が示され、防衛省、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊で調整が続けられてきました。「ノーザンヴァイパー」には、航空機の運用として、陸自からUH-1CH-47など、アメリカ海兵隊から第36海兵航空群第265海兵隊のMV-22Bをはじめ、CH-53UH-1AH-1などを使用する予定でした。
オスプレイの解説


性能比較 CH-46E MV-22B
最高巡航速度 267㎞/h 446㎞/h
最大航続距離 1110㎞ 3590㎞
武装行動半径 139㎞ 602㎞
安全上昇高度 3050m 7620m
上昇最高速度 8.71m/sec 11.80m/sec
機内最大積載重量 2270㎏ 9070㎏
機外最大積載重量 2270㎏ 6800㎏
武装行動半径: 完全武装した海兵隊員を積載した状態での作戦行動半径
CH-46E:最大定員12名 MV-22B:最大定員24名

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