2017年7月16日日曜日

「米中戦争」の時代 ~南シナ海をめぐる覇権戦争~

米中戦争は起きるのか?
「トゥキュディデスの罠」のワナ
産経新聞

 米マイアミ大学のジューン・ドレイヤー教授が、国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)が主宰する日本研究賞の受賞講演で、「トゥキュディデスの罠(わな)」という米中戦争の可能性に言及した。北朝鮮によるミサイル発射実験の陰に隠れ、「中国との戦争」という重い命題が再び米国で議論されていることを示した。
 「トゥキュディデスの罠」とは、現行の覇権国が台頭する新興大国との間で戦争することが避けられなくなるという仮説を指している。紀元前5世紀に起きたアテネの台頭と、それに対するスパルタの恐怖が、避けることのできないペロポネソス戦争を引き起こしたとする考えだ。これを現在の米中間に当てはめて論じられている。
 ドレイヤー教授は、来日前にワシントンで出席した会議で、この「トゥキュディデスの罠」が議論になったと述べた。彼女自身は米国がスパルタのような軍事国家ではなく、まして中国がアテネのような民主国家でもないとして、その前提に疑問を呈した。米中は厳しく対峙(たいじ)しながら互いに重要な貿易相手国であると認識し、戦争にまでは至らないとの見解を述べた。
 米中戦争の蓋然性を指摘するのは、長く「トゥキュディデスの罠」の危険性を研究してきた米ハーバード大学のグラハム・アリソン教授である。
 昨年9月に米誌で発表し、この4月にも米誌「ナショナル・インタレスト」(電子版)に「米中はどう戦争に踏み込むか」との警戒感で論議を巻き起こしている。5月末には、新著『運命づけられた戦争-米中はトゥキュディデスの罠を回避できるか』を改めて世に問うた。アリソン教授は過去500年間の欧州とアジアの覇権争いを研究し、16件が「台頭する国家」が「支配する国家」に取って代わる可能性があり、うち12件が実際に戦争に突入している。
 米中は互いに望まなくても戦争を起こしかねず、数年後に

(1)南シナ海で米中軍艦の衝突
(2)台湾で独立機運から緊張
(3)尖閣諸島をめぐる日中の争奪戦

 などが引き金となり、米中が激突する事態に至ると見通している。昨年のランド研究所の試算では、米中衝突によって米国の国内総生産が10%下落し、中国は35%まで急落すると予測する。
 アリソン教授によれば、新興大国には尊厳を勝ち取りたいとの「台頭国家症候群」があり、既存の大国には衰退を意識する「支配国家症候群」が、国際会議などで表面化する。さきにドイツで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議では、中国の習近平主席が「高まるうぬぼれから影響力の増大をはかった」し、トランプ大統領は台頭する中国を「恩知らずで危険な存在とすら見なす」傾向がみられた。
 トランプ大統領は4月の米中首脳会談以来、中国に対して北の核開発停止への圧力を期待したが、必ずしも思わしくない。トランプ政権はまもなく、南シナ海の人工島近くで「航行の自由」作戦を再開し、台湾に大型武器を売却、北と取引のある中国企業2社と人物に制裁を発動した。

 アリソン教授の提起に対して、米誌で賛否が巻き起こった。こうした論議も含めて、米国には中国の台頭によって生じた「構造的なストレス」から、偶発戦争を引き起こしかねないとの懸念がある。日本は米中衝突の最前線にあり、「トゥキュディデスの罠」がもつワナに落ち込まぬよう万全の備えを怠るべきではない。(東京特派員)

《維新嵐》単なるリップサービスなのか?仮想敵の手の内を出させようとしてるのか?
確実にいえるのは、リムパック参加国同士のつながりを把握できること、参加国で共産中国シンパが発生しやすくできること、日米など海洋軍事国の海軍力を堂々とモニターできることでしょうか?



中国海軍の参加で意味不明となりつつあるリムパック

対中融和派の主導権で、あの“非常識”な部隊をまたもや招待

北村淳
2016630日~84日に開催された「リムパック2016」の様子(出所:米海軍)

 G20首脳会合に付随して行われた米中首脳会談で、習近平国家主席は、アメリカ側から招待されていた2018年夏の「リムパック」(RIMPAC:環太平洋合同演習)に中国海軍が参加することをトランプ大統領に正式に伝えた。
中国海軍参加を巡る米海軍内部の対立
 リムパックとは、アメリカ海軍太平洋艦隊が主催し、アメリカ海軍や海兵隊を中心に、アジア太平洋諸国を中心とした多数の国々の海軍や海兵隊(水陸両用戦担当組織)が参加して行われる多国籍合同訓練である。ホノルルを本拠地としてハワイ周辺海域を中心に2年ごとに実施されている。
 1970年代にはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが参加して毎年開催され、1980年からは日本も参加し、2年ごとに開催されるようになった。その後、参加国(アメリカ政府が決定して招待する)が増大して、前回の「リムパック2016」には26カ国が参加し、まさに「質・量ともに世界最大規模」の多国籍合同海洋軍事訓練とみなされている。
 そのリムパックに、かつてはリムパック参加国にとっては仮想敵の1つであった中国海軍が2014年から参加した(厳密には、オバマ政権により招待された中国海軍オブザーバーがリムパック2012に参加している。軍艦をはじめとする海軍部隊の参加はリムパック2014からである)。
 リムパック2014に中国海軍を招待するに当たっては、主催者であるアメリカ太平洋艦隊はもとより、アメリカ海軍上層部やペンタゴン、ホワイトハウスや連邦議会、それにシンクタンクなどを幅広く巻き込んで激論が交わされた。
 そもそもアメリカ海軍にとって中国海軍は主たる仮想敵の1つである。中国海軍そして中国共産党政府に対して強い警戒心を抱く海軍関係者の中の「対中強硬派」が、中国海軍のリムパックへの参加に反対するのは当然であった。
 それに対して、「軍事力を前面に押し出して中国と対決するよりは、中国側との対話交流を質的に進化させ中国を取り込む方が現実的である」とする「関与戦略」に立脚する対中融和派の人々も少なくなかった。むしろ、「封じ込め戦略」を主張する対中強硬派よりも、対中融和派の勢力のほうが大きかった。
 対中融和派は、「世界最大の多国籍海軍演習に中国海軍を参加させることは、まさに中国側との相互理解を伸展させるための絶好の機会となる」として、中国海軍のリムパックへの参加を強く支持した。そして、何よりもオバマ大統領が中国に対して「極めて融和的」であったため、中国海軍に対するリムパック2014への招待が決定されたのである。


これまでの参加国とリムパック2018の参加予定国


リムパック2014──スパイ船派遣事件
 2014年のリムパックに参加した中国海軍は、4隻の軍艦(駆逐艦、フリゲート、補給艦、病院船)を派遣した。
 ちなみに、海上自衛隊は米海軍の空母と強襲揚陸艦に次ぐ巨艦のヘリコプター空母「いせ」を派遣し、その威容は中国海軍を圧倒していた。だが、初の中国海軍参加ということで、米国メディアの関心は中国海軍の動向に集中した。
 そのような状況の中で、中国海軍のある非常識な行動によってホノルルは大騒ぎになった。中国海軍の情報収集艦がリムパックを実施している海域に姿を現し、アメリカ空母などにピッタリ寄り添って情報収集活動を実施したのである。
多国籍合同訓練が実施されているといっても、中国スパイ艦が活動していたのは公海上である以上、国際海洋法上違法というわけではない。しかし、リムパック参加国が、公式参加艦艇以外の情報収集艦を訓練海域に展開させるなどということは、リムパック史上初の出来事であった。
 たしかに多数の参加国の艦艇や航空機が一堂に会するリムパックは、効率よく各国海軍の様々な信号や電波などの電子情報を収集できる絶好の機会だ。とはいえ、そのためにスパイ艦を派遣するなどというのは、まさに参加国に対する背信行為以外の何物でもない。
 主催者である太平洋艦隊はじめ、米海軍やペンタゴンの首脳たちが怒り心頭に達したのは当然である。連邦議会でもとりわけ対中強硬派の議員たちがこの問題を取り上げ、「リムパックへの中国の参加は今回が最初であったが、同時に今回が最後となるだろう」と二度と招待しない方針を打ち出した(本コラム2014724日参照)。
 しかしながら、リムパック2014が終了してしばらくすると、オバマ政権は再び中国海軍をリムパック2016へ招待した。そして当然、中国は招待に応えて参加した。
リムパック2016──日本侮辱事件
 リムパック2016では、中国海軍は前回よりも1隻多い5隻の艦艇を参加させた(もっとも2014年もスパイ艦を入れれば5隻だったが)。
 海上自衛隊は今回も巨艦「ひゅうが」を参加させ、威容を誇った。だが、相変わらず米国メディアの関心は中国海軍に向けられていた。
 中国海軍は前回のようにメディアに取り上げられるようなトラブルを起こすことはなかった。しかしながら、メディアの目にはとまらなかったものの、海軍間の慣行儀礼に著しく背く非礼を、海上自衛隊、すなわち日本に対して繰り返した。
 多数の参加国があるリムパックでは、それぞれの参加国が他のすべての参加国の代表団を艦艇などに招待してレセプションが行われる。各種訓練のみならず、このような機会を設けて相互理解や交流を図るのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50446?page=4

 ところが、中国代表団は海上自衛隊から招待を受けたにもかかわらずレセプションを欠席した。他国のレセプションへ参加しなかったのは、リムパック史上、中国海軍が初めてであった。
 それだけではない。中国艦上でのレセプションに、中国海軍は自衛隊代表を招待しようとしなかった。その情報をキャッチしたアメリカ海軍が中国側に警告を発して、結局、自衛隊が招待されることになったが、このような出来事も初めてであり、主催者である太平洋艦隊、そしてアメリカ海軍は再び怒り心頭に達していた。
 そして、対中強硬派の人々は、「二度も続けて問題を引き起こした中国海軍は、二度と招待されないだろう」と考えた(本コラム201684日参照)。
結局、トランプも招待した
 リムパック2014でもリムパック2016でも問題を引き起こした中国海軍であったが、そのようなトラブルに比べるとはるかに大きい問題を、2014年から2016年の期間に南シナ海で引き起こしていた。すなわち、本コラムでも繰り返して取り上げている南沙諸島での人工島建設である。
 中国のリムパックへの招待に反対する対中強硬派の米海軍関係者たちによれば、「そもそも、中国をリムパックに参加させているのは、多国籍訓練という場を通して、中国海軍との相互理解を深め、中国海軍に勝手な動きをさせない、という目的のためであった。しかし、その間にも、中国は南沙諸島に7つもの人工島を建設したり、それらの人工島や西沙諸島の軍事基地化を進めたりしている。なんのために参加させているのだ」と憤っていた。
 ただし、中国に対してオバマ政権とは一線を画する態度で接することを標榜しているトランプ政権が誕生したため、「リムパック2018への中国の招待は、まさかあるまい」と対中強硬派の人々は期待した。
 太平洋艦隊側は、陸上自衛隊に日本が誇る地対艦ミサイル部隊をリムパック2018に参加するよう要請した。すなわち、日本の優秀な地対艦ミサイルによって日本沿岸域や南シナ海沿岸域に接近する中国艦艇を打ち払うデモンストレーションを世界中の海軍が注目するリムパックで行おうというわけだ。これは「戦力強化が著しい中国海洋戦力から東シナ海や南シナ海を防衛するには、海軍艦艇や各種航空機に加えて、島嶼線に陣取る地対艦ミサイル戦力を活用すべきである」というアメリカ軍の新ドクトリンに則る動きである。(本コラム201458日、20141113日など参照)。このような流れは、対中強硬派の人々の「まさか中国がリムパック2018に招待されることはあるまい」といった期待を後押しした。
 しかしながら、トランプ政権はリムパック2018へ中国を招待し、習近平国家主席がトランプ大統領に、リムパックへ参加する旨回答したのである。

 中国海軍艦艇が東シナ海沿岸域などに接近するのを阻む抑止戦力としての自衛隊地対艦ミサイル部隊と、中国艦隊が、相互理解と協働関係を促進するためのリムパック2018に肩を並べて参加するのであるから、いよいよリムパックもブラックユーモアの体をなしてきた。



 海南島は、南シナ海の共産中国の軍事的覇権を維持拡大するうえにおいて、重要な海空の拠点といえるでしょう。重要な軍事拠点は、たいてい「観光地」開発していくことが多いですね。

中国、最前線基地に愛国クルーズ
進む軍事拠点化、米国の逆襲始まる

パラセル諸島に向かう定期クルーズ船の埠頭で記念撮影する乗客ら=9日、中国海南省三亜

 中国の南シナ海への“最前線基地”、海南島の三亜湾に「鳳凰島」は浮かんでいる。東京ドーム約8個分にあたる約36万平方メートルの人工島には、高級ホテルやコンドミニアムが立ち並ぶ。2017年7月上旬の日曜日、島のふ頭でキャリーバッグを引いた中国人観光客が歓声を上げていた。
 「西沙(英語名・パラセル)へようこそ」と書かれた看板の前で記念撮影を済ませた観光客が、次々と3月に就航したばかりの豪華客船「長楽公主」号(排水量1万2000トン)に乗り込んでいった。南シナ海をめぐるクルーズに出発するのだ。
 中国は2013年、実効支配するパラセル諸島への定期クルーズ船を就航させた。旅行会社によると、ツアーには永楽群島への上陸体験や国旗掲揚や国家斉唱などの「愛国主義活動」が盛り込まれている。3月までに乗客はのべ数万人に上った。海南省当局は20年までに、約1000キロ離れたスプラトリー(中国名・南沙)諸島への定期船も就航させる計画だ。

http://www.sankei.com/world/news/170716/wor1707160001-n2.html

 広東省から夫とツアーに参加した女性(40)は「行ったことがなかったから。すごく景色がきれいだって聞いたし」と浮かれていた。これから向かう海で、中国が何をしているのかなどまったく意に介していない様子だった。

 「中国が南シナ海問題での平和的対話を唱える裏で、軍事拠点化はますます進んでいる」と米政府関係者が指摘する。
 米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が6月29日に公表した衛星写真で、中国がスプラトリー諸島のファイアリークロス(同・永暑)礁に造成した人工島に、新たに4つのミサイル格納施設が建設されているのが確認された。同島では2月、8つのミサイル格納施設が確認されていた。
 中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と進めている「南シナ海行動規範」をめぐる協議はやはり、南シナ海の「重武装化」に向けた時間稼ぎに過ぎなかった。
 米国にとって南シナ海の軍事拠点化が脅威なのは、中国がこれらの人工島に対艦・対空ミサイルを配備し、一帯に「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)の強固な防衛網を構築するのが必至なためだ。


 米国の有識者らの間では、中国が南シナ海の軍事拠点化をほぼ完成させつつあることを受け、「南シナ海が中国の手に落ちた」「ゲームオーバーだ」などとする悲観的な意見も一部で広がりつつある。
 しかし、米国の中国海洋戦略研究の第一人者、米政策研究機関「戦略予算評価センター」のトシ・ヨシハラ上級研究員は「むしろ、ゲームは始まったばかりだ」と述べ、巻き返しの必要性を強調する。
     ◇
 中国としても、決して楽観できる状況ではない。北朝鮮の核・ミサイル開発問題の解決に向けて、中国に配慮してきたトランプ米政権との関係に暗雲が垂れ込めている。
 中国による北朝鮮への制裁に目立った効果が表れないことに業を煮やしたトランプ大統領は、台湾への武器売却決定や北朝鮮の核開発を支援した中国の銀行への独自制裁、立て続けの「航行の自由作戦」など目に見える圧力を加え始めた。
 米中という「2強」が世界的な覇権争いを展開する中で、南シナ海での両国の角逐がいよいよ「発火点」に近づいている。

 この企画は吉村英輝、西見由章、田中靖人、黒瀬悦成、矢板明夫が担当しました。

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