2017年4月29日土曜日

「米朝戦争」の可能性はあるのか? ~弾道ミサイルに備える我が国の実際~

あきれるほど心許ない国会の弾道ミサイル防衛論議

「迎撃は可能」とは言えない日本のミサイル防衛の現状
北村淳
北朝鮮の首都・平壌で行われた軍事パレードで披露された種類不明のミサイルとその移動式発射機(2017415日撮影)。(c)AFP/ED JONESAFPBB News

2017418日、北朝鮮の弾道ミサイルに関して国会で以下のような質疑応答がなされたことがテレビの報道で伝えられた。
 民進党・本村議員「北朝鮮からミサイルが飛んできた場合、本当に撃ち落とすことが可能なのか、イエスかノーで答えて下さい」
 稲田防衛大臣「可能です」
 このやり取りはあまりにもレベルが低く、国防におけるシビリアンコントロールの責務を負う国会での質疑応答とはとても思えない。
日本に対する報復攻撃の規模は?
 北朝鮮が日本に対して弾道ミサイルを発射するには前提条件が必要だ。つまり、アメリカ軍による北朝鮮に対する何らかの軍事攻撃である。
 アメリカに攻撃された場合、アメリカ領域に直接報復攻撃を加えることができない北朝鮮が、アメリカの“追従勢力”であり、米軍出撃拠点も設置されている韓国と日本に対して報復攻撃を実施する可能性は極めて高い。
 日本に対する報復攻撃は弾道ミサイルにより実施される。いまのところ北朝鮮軍が手にしている対日攻撃用の弾道ミサイルはスカッドER(スカッド-D)とノドンである。これらよりも長距離の目標を攻撃するための弾道ミサイル(IRBM)でも、発射角度を調整することで対日攻撃は可能だが、貴重なIRBMを日本への報復攻撃に使用してしまう可能性は低い。よって、日本への報復攻撃は、高い確率でスカッドER(スカッド-D)とノドンが用いられるとみてよい。
日本にとっての最大の問題は、北朝鮮が何発のスカッドERとノドン、そしてそれらを発射するために必要な地上移動式発射装置(TEL)を保有しているのか、ということだ。それによって、日本に対する報復攻撃の規模が推定できるからだ。
 数年前までは、スカッドERとノドンを合わせると400発とも言われていた。だが、最近の米軍などの情報筋の分析によると、100発ほどに落ち込んだものと考えられている。そして、それらの弾道ミサイル用のTEL50両を超えないのではないかと言われている。
 もしTELがミサイルの数に対応して100両存在した場合には、100発のスカッドERとノドンを連射することが可能である。したがって、北朝鮮による報復攻撃としての対日弾道ミサイル連射は、おそらくは50発、日本にとり最悪のシナリオとしては100発、と見積もらざるを得ない(もちろん北朝鮮軍にしか実数は分からない)。
「イエスかノーか」を聞くレベルの低さ
北朝鮮による対日弾道ミサイル攻撃は50発なのか、はたまた100発に達するのか? アメリカ軍関係者などの間などでは、様々な可能性を前提とした議論がなされている。
 だが、報復攻撃を受けるかもしれない危険な状況が迫りつつある日本で、それも国会で、「北朝鮮からミサイルが飛んできた場合、本当に撃ち落とすことが可能なのか、イエスかノーで答えて下さい」などという質問がなされているのは噴飯ものと言うしかない。
 そもそもこの質問者は、北朝鮮による対日報復攻撃がこれまで繰り返されている試射とは全く違う戦闘行為であるとの認識があるのだろうか? また、報復攻撃には50発あるいは100発といった大量の弾道ミサイルが連射されるという認識があるのだろうか? また、弾道ミサイル防衛という極めてトリッキーな防空戦闘に「イエスかノーか」で答えられる道理がない。単に稲田大臣に対する嫌がらせをしているのか、あるいは弾道ミサイル防衛を「イエスかノーか」で答えられる程度にしか考えていないのかもしれない。
このような愚劣な質問に対して「可能です」と答えてしまった稲田大臣も迂闊と言える(ただし、筆者が耳にしているのは冒頭の報道のみなので、実際の答弁はこのように単純なものではなかったのかもしれない)。北朝鮮が発射する弾道ミサイルの数量に応じて迎撃可能性を論じなければならないのである以上、稲田大臣は「『イエスかノーか』で答えられるような単純な問題ではない」と突っぱねるべきであった。
 そして、大臣はテクニカルな詳細まで熟知していなくとも問題ではないのだから(もちろん知っているに越したことはないが)、迎撃シミュレーションに関しては防衛省自衛隊のミサイル防衛担当者に説明させれば良かったのだ。
2段構えとは言えない日本の弾道ミサイル防衛
質問者がおそらくはイメージしていたように、北朝鮮による対日攻撃が12発程度であった場合には、大臣答弁のように「迎撃可能」でも間違いとは言えない。ただし、この場合も条件がある。
 すなわち、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した時点で、男鹿半島沖、隠岐の島沖、五島沖の3地点にイージス弾道ミサイル防衛システム(BMD)を搭載した海自駆逐艦がスタンバイしていた場合には、95%に近い確率で打ち落とすことが期待できる(下の地図を参照:最大射程距離1200キロメートルというカタログデータに則れば1隻配備態勢でも打ち落とせる可能性はあることになるが、射程距離500キロメートルという実戦的配備を考えると3隻態勢が必要)。

北朝鮮の弾道ミサイルに対する理想的なイージスBMD艦の配置イメージ

 この条件に加えて、もしも北朝鮮の攻撃目標地点から20キロメートル以内に空自PAC-3防空ミサイルが展開していた場合には、それら12発の弾道ミサイルはほぼ間違いなく撃墜することが可能だ。
 このような期待は、4発までは可能だ。しかし、5発以上になると迎撃確率は減少し、(現在のところ)9発以上になると、イージスBMD駆逐艦の防衛網は突破されることになる。
 北朝鮮の攻撃目標地点から20キロメートル以内にPAC-3がスタンバイしていれば、海自の防衛網を突破した数発の弾道ミサイルを撃墜することは期待できる。ところが、北朝鮮(あるいは、日本に弾道ミサイルを撃ち込もうとする敵勢力)は、PAC-3が待ち構えている周辺20キロメートルを攻撃目標にはするとは限らない。北朝鮮から発射された弾道ミサイルは710分で日本領内に到達するため、発射を探知し捕捉(通常3分程度)してからPAC-3を移動させることなど、もちろん不可能である。
 しばしば「日本の弾道ミサイル防衛態勢はイージスBMDPAC-32段構えになっている」と言われているが、それはあくまでPAC-3が配備されスタンバイしている地点から20キロメートル以内の地域に関してである。それ以外の日本領域は、イージス駆逐艦に搭載されたイージスBMD(もちろんスタンバイしていた場合に限るが)の一発勝負(1発の弾道ミサイルに対して迎撃ミサイルは通常2発発射する)と考えなければならない。
BMDだけでは抑止はできない
いくら弾道ミサイル防衛に莫大な予算を投入し、かつ、海上自衛隊本来の戦闘能力を削って弾道ミサイル部隊に転換したとしても、北朝鮮の報復攻撃(50発あるいはそれ以上の弾道ミサイル攻撃)に対しては、いまだに「迎撃は可能です」と安易に答えるような防衛レベルには達していないのが現状だ。

 まして、北朝鮮とは比べものにならないほど強力な中国弾道ミサイル戦力に対しては、いまだに脆弱の域に留まっている。そのことを肝に銘じて対抗策の構築(現在のところ、報復攻撃力の構築)に取りかからねばならない。
〈北村淳氏参考文献〉
拙著 『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(2015年3月23日講談社α新書687-1cも参照していただきたい)。

《維新嵐》北朝鮮の仮想敵、常に自分たちの存在を認知させたい国はアメリカですから、我が国よりもアメリカへの攻撃意図の研究に時間も労力も多くさいているでしょうから、ましてや実際にミサイル攻撃する意図となるとかなり薄いとみています。北朝鮮にとっては、安倍政権の対北朝鮮経済制裁をなくし、昔日のようにストローでジュースを吸うように、我が国に「寄生」してその経済にあやかりたいというのが本音でしょうね。ですがそれと有事のミサイル防衛とは別問題ですね。
ちなみに周辺国に「脅威」をふりまいている北朝鮮の弾道ミサイルの現状は以下の論文に詳しいです。

北朝鮮の弾道ミサイルの種類とその能力

【解説】北朝鮮のミサイル実験、成果は上がっているのか
BBC News

 北朝鮮は先日の盛大な軍事パレードで、大型も含め多数のミサイルを披露した。だが北朝鮮のミサイル能力について、私たちには実際どれだけのことが分かっているのか。米カリフォルニア州のミドルベリー国際大学院モントレー校ジェイムズ・マーティン不拡散研究センターの軍事専門家、メリッサ・ハンナム上級研究員が解説する。


 金正恩・朝鮮労働党委員長は北朝鮮を建国した祖父、故金日成主席の生誕105周年を記念して大々的なパレードを実施した。公開された新兵器の数は過去最多で、その中には大陸間弾道ミサイル(ICBM)も含まれていた。
正恩氏はパレードで国内に技術の力と発展を見せつけ、国外に対しては「近くにいようと遠くにいようと、いずれ射程に収めてやる」と脅しをかけた。
北朝鮮は正恩体制の下、国連制裁決議に違反するミサイル実験を加速させてきた。だが実験の結果、北朝鮮のミサイル能力に何か変化は起きているのだろうか。
北朝鮮によるミサイル開発の始まり
北朝鮮の弾道ミサイル計画は、史上最も広く拡散したミサイルのひとつ、旧ソ連製の「スカッド」から始まった。
1979年にエジプトのサダト大統領(当時)が北朝鮮と交わしたミサイル技術提携合意の一環として、少数のスカッドを供与。北朝鮮はそれを分解して研究し、これをもとに国産ミサイル「火星(ファソン)5」「火星6」の製造と実験を始めた。やがてスカッドの射程を伸ばし、大型化したミサイル「ノドン」の開発に成功した。
さらにはノドンのエンジンを束ねる「クラスター化」に着手し、大気圏外まで積載物を運べる多段式のロケット「銀河3」を開発した。
スカッド系は先進的なミサイルではないが、信頼性が高く製造コストも比較的低い。ノドンには核搭載能力があり、パキスタンとイランに輸出までされている。だが北朝鮮が進展をめざした技術はこのほかにもあった。
隠しやすいミサイルを開発
北朝鮮は近年、旧ソ連の潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)「R27」を複製して改造し、グアム島の米軍基地を射程に収める車載移動式の中距離弾道ミサイル「ムスダン」を開発した。ムスダンは何年か前から軍事パレードに登場していたが、発射実験は2016年に始まったばかりだ。6回重ねた実験のうち、目ぼしい成功を収めたのは同年6月の1回だけだった。
しかし実験のたびに改良が加えられたてきた変化の過程は、振り返ると興味深い。例えば、実験の失敗で移動式発射台(TEL)のトラックが大きく破損すると、次の実験にはタイヤや車台を保護したTELが登場した。そしておそらく、ムスダンには核弾頭を搭載する能力がある。
北朝鮮のミサイルはほとんどが車載移動式だ。つまりミサイルをTELに載せ、国内各地を絶えず移動させておくことができる。TELのトラックはトンネルや倉庫、ざんごうや洞くつに隠しておける。常に移動させ、隠し続けることによって、ミサイルは探知されにくくなる。
水中から発射できるミサイル
2016年はもうひとつ、SLBMの分野でも重要な年だった。「北極星」と呼ばれるSLBMの発射実験は2015年に大失敗を繰り返した後、いくらか前進し始めたのだ。
水中の発射台からミサイルを打ち上げたが、当初は発射に成功してもエンジンが点火しなかったり、短い距離しか飛ばなかったりした。しかし20164月に液体燃料でなく固体燃料を使ったエンジンで実験を行ってからは、成功率が上がっている。
北朝鮮のSLBMは、米国やロシア、中国が保有するSLBMに比べると脅威ははるかに小さい。実験をさらに重ねない限り、信頼性は低いままにとどまるだろう。そのうえ北朝鮮の潜水艦は音が大きく、探知されやすい。北朝鮮のSLBMはさまざまな意味で、実戦用というより国内向けの「威信」が目的といえる。
とはいうものの、北朝鮮が東部・新浦(シンポ)にある潜水艦造船所の整備に相当の投資をしていることが、衛星画像からうかがえる。つまり、SLBM計画はまだ始まったばかりなのだ。
新浦近郊では、先日のパレードに登場し、米国が「KN17」と呼ぶ地上配備型対艦弾道ミサイルの実験も行われている。これまで2回の実験は失敗したものの、その存在は米国や韓国、日本の艦艇に警告を促すものだ。
固体燃料を使うミサイル
北朝鮮は2017年2、固体燃料を使うSLBMの地上配備版「北極星2」をTEL上の発射筒から打ち上げる実験を行った。
北朝鮮のミサイルには従来、スカッドと同じ液体燃料が使われていた。液体燃料は信頼性が高く安価だが腐食性があり、ミサイルに注入したままの保存ができない。つまり、ミサイルの移動には燃料と酸化剤を載せた複数のトラックを同行させる必要があり、大規模な車列になるため偵察衛星から発見されやすくなる。またミサイルに燃料が入った状態で移動したり保管したりできないため、打ち上げの準備に時間がかかる。
例えばトラックがトンネルから出てミサイルを立ち上げたら、そこへ燃料を注入し、狙いを定めてから打ち上げることになる。だが固体燃料なら通常はミサイルの中に入れておけるため、実戦での打ち上げで貴重な時間を節約することができる。
北朝鮮は先日のパレードで固体燃料方式のICBMが入っているとみられる発射筒を披露し、固体燃料への熱意をうかがわせた。
発射筒の中身は空だった可能性もある(だれにも見えないのなら、ミサイルを入れておく意味はない)。だがこれを設計コンセプトとして、今後さらにパレードや部品の実験を重ねながら開発が進む可能性は高い。
また2016年初め以降の経緯をたどると、北朝鮮はミサイル技術の開発だけでなく、実際の配備にも力を注いでいることが分かる。
20169月には弾道ミサイル3発、20173月にはさらに4発を連射した。複数のミサイルを同時に発射すれば、追跡や迎撃は難しくなる。韓国への配備で論議を呼んでいる最新鋭の弾道ミサイル防衛システム「THAAD(サード)」にとっても、これは難題だ。
では北朝鮮に長距離ミサイルはあるのか
北朝鮮のミサイルは米国に届くのか。米国人はこの点に最も強い関心を持っているようだ。
ICBMを保有する主な理由は核攻撃だ。このようなミサイルに通常弾頭を搭載してもほとんど意味がない。
北朝鮮のパレードにICBMが初めて登場したのは2012年。「KN08」と呼ばれるミサイルに加え、中国から密輸したトラックをTELとして披露した。このミサイルは当初「偽物」と批判されたが、後に改良が加えられ、本物としての信ぴょう性が高まった。先日のパレードでは大幅に改良されたKN08とともに、固体燃料方式のICBM2種類が登場したとみられる。
北朝鮮のミサイル能力はこれまで何十年も否定されてきたが、注意すべき重要な展開がいくつかある。
北朝鮮は2015年、「KN14」と呼ばれるICBMを公開してみせた。2016年のプロパガンダ(政治宣伝)に使われた画像や映像には、ICBMに必要とされる要素が事実上全て紹介されていた。
まず正恩氏がKN08と、同ミサイルへの搭載用とされる核弾頭の間に立つ写真が公開された。そして同じ月のうちに、大気圏へ再突入する飛翔体に使う耐熱シールドの模擬実験が実施された。再突入は、宇宙への打ち上げロケットとICBMを区別する重要な部分だ。
ICBMはロケットと同じように大気圏の外へ出るが、その後再び大気圏内まで弾頭を持ち帰る必要がある。再突入の熱と圧力に耐えられることを確認するのが模擬実験だ。
また北朝鮮の技術者たちは20164月、旧ソ連製R27エンジンの改造版を2基束ねた新型エンジンの実験を行い、高エネルギーの推進剤を使う技術を獲得したとみられる。この実験ではスカッド系のエンジンで通常みられる黄色の煙ではなく、ピンクがかった紫色の半透明な煙が排出された。
煙の色の変化が高エネルギー推進剤を使ったためだとすると、これを使ったICBMの射程にはアラスカ半島やハワイだけでなく、ロンドンやワシントンまで入る恐れがある。より良い燃料を使えば、より重い物をより遠くまで運ぶことが可能になるからだ。
では北朝鮮はいつICBMの発射実験に踏み切るのだろう。準備万端が整ったら、というのがその答えだ。
パレードに登場した固形燃料方式の新型ICBM2種類は、実験するまでにまだ何年もかかる。しかし昨年亡命した北朝鮮の元駐英公使、テ・ヨンホ氏によると、2017年末か2018年初めまでにICBMをひとつ完成させるのが北朝鮮の目標だという。実験と完成は全く別の話だ。
北朝鮮がこの日程で実験を目指すのはおそらく、液体燃料方式のICBMKN08だろうと思われる。このタイプが最も完成に近そうだからだ。
しかし配備が可能になるまでには、何度か失敗を繰り返す可能性も高そうだ。
日本政府は、弾道ミサイイル防衛には強気です。この「自信」はどこからくるのでしょうか?

ミサイルのサリン「迎撃で無力化も」政府答弁書
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