2017年1月28日土曜日

ドナルド・トランプ新大統領のアジア戦略①

トランプの「防衛費増額」要求はこうして突っぱねよ

アメリカ軍も日本駐留で莫大な利益を得ている

沖縄県の米軍嘉手納基地から大地震に見舞われたネパールに向かうため米軍の小型ジェット機セスナ・サイテーションウルトラに乗り込む米海兵隊員たち。米海兵隊提供(資料写真、201554日撮影・提供)。(c)AFP/HANDOUT/US MARINE CORPS/Lance Cpl. Makenzie FallonAFPBB News

 トランプ新大統領は就任演説で「私たちは古くからの同盟を強化し、新たな同盟を構築する」と述べた。そして、安倍首相はトランプ大統領への祝辞メッセージの中で、「日本とアメリカの同盟の絆をいっそう強化していきたい」と伝えた。
 トランプ大統領も安倍首相も「同盟を強化する」と述べている。だが、両者が口にした「同盟を強化する」という表現の内容が果たして似通ったものなのか、それとも似て非なるものなのかは大きな問題である。
同盟はギブ・アンド・テイクの契約
いかなる国家間の軍事同盟においても、当事国は同盟を結ぶことが自国の国益、とりわけ国防戦略上の利益になることを期待して同盟関係を構築する。
 それぞれの同盟国は、自国の国防戦略に必要な国防システムの弱点あるいは強化したい点を補強するために、同盟相手国が提供する条件を期待するのである。この事情は相手国にとっても変わらない。その意味で、それぞれの同盟国は相手国とギブ・アンド・テイクの関係に立脚しているわけである。
 日米同盟に即していうならば、日本は世界最大の軍事大国であるアメリカから核抑止力の提供を受けるとともに、有事の際には、敵地を攻撃したり遠洋でのシーレーンを防衛したり水陸両用作戦を実施したりするといった自衛隊に不足している各種戦闘力を提供してもらう権利を有している。そして、その対価として在日米軍に土地やインフラサービスそれに諸必要経費などを提供する義務を負う。
 反対にアメリカは、日本から在日米軍に対する土地やインフラサービスそれに諸必要経費などの提供を受ける権利を有し、その対価として核抑止力ならびに各種戦闘力を提供する義務を負っている。
 日本もアメリカも、そのような同盟条約という契約上のギブ・アンド・テイクから互いになんらかの国益を手にしているのである。
日米同盟の構造

水陸両用戦力の配備、日米にとってのメリットは
具体的な例を挙げよう。
 日本にアメリカの水陸両用戦力(アメリカ海兵隊第3海兵遠征軍ならびにアメリカ海軍第11水陸両用戦隊)が配備されていることによって、日本は自衛隊が保持していない本格的な水陸両用戦能力を有事の際には提供してもらえることを期待できる。その見返りとして、日本は沖縄や岩国の基地や沖縄や富士山麓の演習場などを海兵隊に提供し、佐世保軍港や沖縄ホワイトビーチなどを米海軍に提供している。
 一方のアメリカは、有事の際にそれらの戦力を日本に展開し、各種防衛作戦に従事したり、大規模災害の際にはトモダチ作戦に見られるように水陸両用戦力を展開して日本を支援する。その見返りとして、アメリカ側は水陸両用戦力をアメリカ本土から太平洋を隔てた日本各地に安心して前方展開させておくことができるのである。
 アメリカはこうして水陸両用戦力の前方展開態勢を確保することにより、東北アジア、東南アジア、南アジアから中東地域での戦闘から人道支援・災害救援活動まで、幅広い各種軍事行動に迅速に対応することができる。ひいてはこれらの地域に対するアメリカの国益の維持・伸長を図ることができるというわけだ。
損得勘定を弾くビジネスマンのトランプ氏
 ここで問題となるのが、「アメリカが水陸両用戦力を日本に常駐させていることは日米どちらにとってメリットが大きいのか?」という条約上の損得勘定である。
(もちろん、日米安保条約によって日本に展開しているのは水陸両用戦力だけではなく、空母打撃群やその他の艦艇それに空軍戦闘機部隊や各種補給航空部隊など枚挙にいとまがない。したがって、水陸両用戦力だけで条約上の損得勘定はできず、以下はきわめて部分的な比較に過ぎない。)
 大統領選挙期間中、トランプ大統領は「日本は米軍駐留費を全額負担すべきだ」と口にした。その論理は、アメリカが提供している水陸両用戦力の評価額に比べると、日本が提供している基地・訓練場をはじめとする土地、電気ガスなどのインフラ設備やその費用、基地内の従業員の人件費をはじめとする各種経費などを総合した評価額のほうが安い、という判断に基づいている。
 日米同盟における基地問題に関して、ビジネスマンのトランプ大統領にペンタゴン側がブリーフィングする際、最も説得力があるのはこの種の同盟上のバランスシートの論法であろう。
莫大な金銭的利益を得ているアメリカ
アメリカから「我々(アメリカ側)の負担の方がはるかに大きい」という主張が飛び出してくるのも、うなずけなくはない。
 少なからぬ米海軍や海兵隊関係者たちから、「もし日本が自分たちで第3海兵遠征軍ならびに第11水陸両用戦隊に相当する水陸両用戦力を自ら保持することになった場合、どれほどの国防予算が必要になるのか日本側は認識しているのだろうか?」という声をしばしば聞くことがある。
 確かにその場合、主要な装備だけを考えても、自衛隊は最低でも強襲揚陸艦1隻、揚陸輸送艦2隻、揚陸指揮艦1隻、強襲揚陸艦に搭載する各種戦闘攻撃機60機以上、オスプレイ20機以上、重輸送ヘリコプター20機以上、攻撃ヘリコプター20機以上、水陸両用強襲車60輛以上、軽装甲車両60輛以上・・・と莫大な国防予算を投じる必要が生じる。それらの維持修理にも、やはり巨額の国防予算が必要になる。加えて、2万名以上にのぼる海兵隊員と海軍将兵も必要になる。このように、アメリカは水陸両用戦力の構築と維持に莫大な費用をかけているのだ。
ただし、アメリカにとってのメリットも巨大と言ってよい。水陸両用戦力(海軍・海兵隊)に限らず、空母打撃群(海軍)や戦略輸送軍(空軍)などにとっては、アメリカ西海岸から800010000キロメートルも隔たった日本各地に前方展開拠点を確保できる戦略価値は莫大である。

 また、多くの海兵隊や海軍将校たちが「文化水準が高い日本への駐留は、軍人にとっても家族にとっても最高」と語っているように、アメリカ軍が日本駐留によって得られる恩恵を金銭価値に評価すると、極めて巨額にのぼるものと考えられる。
 軍事戦略面からみても、アメリカは日本に各種基地を確保することで莫大な金銭的利益を得ている。もし、日本に海兵隊基地、空軍基地、軍港を確保できない場合、アメリカ軍が東アジアから南アジアに前方展開態勢を維持するには、空母打撃群を少なくとも2セットは増加させなければならない。強襲揚陸艦を中心とする水陸両用即応部隊も2セットは増加させる必要がある。また、大型輸送機や爆撃機の運用にも深刻な支障が生ずることになる。日米同盟のおかげで、アメリカは空母打撃群や水陸両用即応部隊の建造費・維持費を節約することができているのだ。
日本からもバランスシートを提示せよ
トランプ政権は「日米同盟強化」の施策として、上記の強襲揚陸艦や戦闘攻撃機など金銭価値で評価しやすいアメリカ軍の戦力が日本の提供している“負担”よりも高額であると言い立てて、日本側にさらなる資金提供を迫るであろう。

 日本政府は、そのような要求に唯々諾々と従う必要はない。アメリカ側が日本駐留から得ている戦略的価値を金銭的に見積もり、双方のバランスシートをトランプ大統領に示すところから、日米同盟強化に関する交渉をスタートさせるべきである。そうでないと、「日米同盟の強化」の名の下に日本国民の血税をアメリカに吸い上げられてしまうことになりかねない。

マティス国防長官は、米軍の駐留経費増額は示さず!
米国防総省のデービス報道部長は20171月26日、2月1~4日のマティス国防長官の日本、韓国訪問について、「関係強化が狙いで、要求リストを突きつけることはない」と記者団に語り、米軍駐留経費の増額を求める考えはないとの認識を示した。
(出典:「日本と2国間貿易協定」米、首脳会談で模索へ

日米同盟が困難を好機に変える 在日米軍司令官ドーラン氏


トランプを最も恐れる必要がない同盟国は日韓

岡崎研究所


 トランプと彼の発言に揺さぶられている日韓や欧州の同盟国の今後の動きについて、エコノミスト誌が20161217日号掲載の記事で解説を試みています。要旨、次の通り。

 トランプ政権の今後の動きについて、ある程度の推測はできる。優先課題はジハード・テロの阻止で、マティス国防長官とフリン国家安全保障担当補佐官を擁することから、おそらくIS打倒の動きが強化されよう。その後どうなるかは謎だが。アフガニスタンにもタリバン封じ込めのために米軍が増派される可能性がある。オバマが求めたイランとの関係改善は棚上げにされよう。
 また、トランプが同盟国に対し、防衛費の拡大と駐留米軍の経費負担増を求めるのは間違いない。他方、米国防省の予算は拡大、海軍の増強と核兵器の近代化が図られよう。これは米国の抑止力を高め、同盟国にとっても利益になる。
 これまでのトランプの発言にもかかわらず、一番恐れる必要がない同盟国は日韓かもしれない。(1)両国が防衛面でかなり努力してきた、(2)北朝鮮の脅威が増大している、(3)米国民の日韓防衛への支持がある、ためだ。一方、北朝鮮は2020年頃には首都ワシントンを核攻撃できる能力を獲得すると予想されている。駐留米軍の縮小を検討するには微妙な状況と言えよう。さらに、世論調査によれば、米国民の70%が米国による日韓の防衛を支持、日韓の企業が米国内で数十万の雇用を生んでいることもよく知られている。
 他方、米国民のNATO支持率は53%、共和党支持者に限れば43%でしかない。欧州同盟国の「ただ乗り」は、2008年の金融危機後の緊縮財政でさらに悪化、余裕のあるドイツでさえ国防費はGDP1.2%だ。しかし、ここに来て欧州も、ロシアによるクリミア併合や欧州周辺での度重なる大規模軍事演習、プーチンの核の脅し等に衝撃を受けており、NATOの防衛費は今年3%増加する。それに、国境を越えたテロ、サイバー攻撃、大規模な難民流入等の新たな脅威に対しては、米国と欧州が協力して当る必要がある。ただ、トランプにはNATOについて、価値を共有する国々の「運命共同体」という観念はないだろう。トランプがプーチンと図ってウクライナ問題に早々に決着をつける恐れもある。
 中東の同盟国はイランを嫌うトランプをオバマより良いと思っている。また、トランプはパレスチナ和平にも関心を示していない。しかし、もしトランプが本当にロシアと組んでISを打倒すれば、結果的にアサドとアサド支持のイランが勝利することになる。また、イラクの秩序回復には、イラクをシーア派支配の国にしようとするイランの戦略を米国が阻止する必要がある。つまり、米国はISを叩くだけではだめで、結局、トランプも中東には関与せざるを得なくなるだろう。さらに、トランプは、米国はもはや中東の石油を必要とせず、従ってサウジ支援の必要はないと示唆、サウジが米軍の維持を望むのなら、少なくとも経費負担増を求めるだろう。
 早ければ5月に開かれるNATO首脳会談や夏のG7首脳会談でのトランプの言動が判断材料を提供するはずだが、今後については2つの展開があり得る。一つは、外交はマティスやティラーソン、そして議会の保守派指導者に委ねられる。もう一つは、何らかのトランプ・ドクトリンが出現、同盟諸国を混乱に陥れるというものだ。しかし、現実がどちらにころぶか、誰にも、おそらくトランプ自身にもわからないだろう。
出典:‘Americas allies are preparing for a bumpy ride’(Economist, December 17, 2016
http://www.economist.com/news/international/21711881-donald-trumps-victory-has-shaken-countries-depend-america-security-and

米国の同盟諸国は、トランプの発言の趣旨を測りかねていますが、トランプは多くの発言を軌道修正しています。
 日本と韓国については、米軍の駐留費をもっと負担すべきで、さもなければ核武装も含めもっと自主防衛に努めるべきであるとの趣旨を述べましたが、その後核武装発言は否定し、安倍総理との会談では日米同盟の重要性を確認しています。
 時代遅れであり、米国の支援を求めるならもっと軍事費を増大させるべきである、と言っていたNATOについてすら、その後NATOのストルテンベルグ事務局長との会談で、NATOの永続的重要性に言及しています。
トランプに確固たる理念はあるのか?
 したがって、トランプがどのような同盟政策をとるかは、今後の具体策を見るしかありません。ただ、世界における米国の役割について、トランプが確固たる理念を持っているとは思えません。
 トランプは、米国はもう世界の警察官の役割は果たさないとの趣旨の発言をしていますが、これは単に経済的負担の話をしているのではなく、自由と民主主義を守り、広めるという理念は掲げないということのようです。米国のこの理念のもとに、戦後世界は「パックス・アメリカーナ」の世界といわれました。中国の台頭と、それに国力が伴うかの問題は抱えながらもプーチンのロシアの挑戦によって、もはや世界は「パックス・アメリカーナ」とは言えなくなっていますが、トランプは理念の面からも「パックス・アメリカーナ」を過去のものとしようとしています。
 戦後の米国の同盟政策は、自由と民主主義を守るという理念と戦略の基礎の上に立っていましたが、トランプの外交政策にはこれが欠けています。したがって、たとえ同盟政策が継続されるとしても、米国の世界戦略の上に立ったこれまでの同盟政策と同質と言えるかどうかの問題をはらむこととなるでしょう。
日米同盟は世界で一番重要な同盟 トランプ新大統領

トランプの核戦力強化宣言

岡崎研究所

トランプの「米国の核戦力を強化すべし」とのツイートに対し、20161223日付ワシントン・ポスト紙社説が、思慮に欠けた発言であると非難し、核兵器がテロリストの手に渡らないようにするなど核兵器の危険を軽減することに焦点を当てるべきである、と言っています。要旨、次の通り。

iStock

核兵器の責任ある管理、指揮命令系統の頂点としての注意深い任務は、大統領の厳粛な義務である。それゆえ、トランプの核兵器についての20161223日の向こう見ずなツイートは災厄である。
 大統領候補として、トランプの核兵器についての発言は、様々な異なった考えが混在していた。一方で、日韓からの米国の核の傘引き上げを示唆し、他方では、「唯一最大の脅威」である核兵器への懸念を示しつつ、自らが予測不可能であることを誇った。大統領たるもの、このセンシティブな問題では言葉を注意深く選ぶべきであるが、トランプはそうしているようには見えない。20161222日、トランプは、「世界が核について正しく認識する時が来るまで、米国は核の能力を大いに強化、拡大しなければならない」と述べ、「軍拡競争は放っておけばよい。我々はあらゆるやり方で優位に立ち、勝ち抜くであろう」とも言った。
 核抑止も核兵器もすぐに無くなることはないだろう。しかし、米国とロシア(世界中の核爆弾の93%を保有)は、30年近く着実に核兵器を減らしてきた。米露間の新START条約は、こうした低い保有数を義務付ける条約である。他の軍備管理協定(特に1987年のINF条約)は歪んできてはいるが有効である。冷戦時代から引き継いだ大量の核弾頭を減らすには、長年にわたる努力が必要であった。トランプの新しい提案は、このコースを逆転させることになるのか。他国を制止することになるのか、それとも、刺激することになるのか。
 トランプのツイートは、プーチンがロシアの核戦力強化についていささか威勢のいい発表をした後になされた。ロシアと米国は、核兵器と運搬手段(爆撃機、潜水艦、ミサイル)の近代化について、それぞれのやり方をしている。近代化は米国の抑止力の信頼を維持するための重要な要素ではあるが、費用はどうするのか。12隻の弾道ミサイル潜水艦を建造するという海軍の計画は、他の艦船や潜水艦の計画により圧迫されている。トランプはどういう任務のために核をさらに拡大させたいのか。トランプは就任後、緊急時に用いるべき核戦争計画などを示されるだろう。これらは、最高司令官にとって考え込まざるを得ない事柄である。核兵器が現実のものである限り、トランプは、核兵器がテロリストの手に渡ることを阻止するなど、核兵器がもたらす危険を如何に軽減するかに焦点を当てるべきである。それ以上のことは、必ずしも我々を安全にはしない。
出典:‘Trumps distressing chest-thumping on nuclear weapons’(Washington Post, December 23, 2016
https://www.washingtonpost.com/opinions/trumps-distressing-chest-thumping-on-nuclear-weapons/2016/12/23/6a528540-c88b-11e6-bf4b-2c064d32a4bf_story.html
 トランプの他の発言同様、「米国の核戦力を強化すべし」の発言の真意は明らかではありません。トランプがしっかりした核戦略を持っているとは考えられません。しかし、核についての最近のプーチンの動きを考えると、「米国の核戦力を強化すべし」とのトランプの発言は的外れとは言えません。
核戦力を強化するプーチン
 すなわち、プーチンは、近年核戦力の強化に努めています。まず1987年に米ソ間で締結された中距離核戦力全廃条約(いわゆるINF条約)に違反して、地上発射型の中距離巡航ミサイルを実験し、すでにエストニア国境付近のルガに配備されたとも言われています。さらに注目されるのが、一発でフランスやテキサス州に匹敵する領域を焦土と化せる超大型ミサイル「RS-28サルマト」の発射実験に成功したと報じられたことです。このミサイルは米国が開発を進めている弾道ミサイル防衛で迎撃が困難と言われ、ロシアによる米国に対する核攻撃が可能になるといいます。
 そのうえプーチンは近年核の脅しを繰り返し、核の使用をほのめかしています。プーチンは20153月、クリミア危機の時に核の使用の準備をしていたことを公に認めたといいます。また、2014年から15年にかけて、ウクライナへの侵攻時に合わせるように、核の使用も想定した演習を何回か実施しています。いざとなれば核の使用も辞さないことを明らかにすることで、核の脅しの効果を高めようとしているのでしょう。
 これらのプーチンの動きは、核の基本的意義は抑止で、核を軍備管理の対象とするというこれまで米ロ間の了解に挑戦するものです。特に核の脅しを繰り返し、核の使用をほのめかしていることは、核の使用についての従来の敷居を下げる危険な兆候です。
 欧米は、プーチンのこのような危険な核戦略を座視できません。何らかの対抗措置を講じるべきであり、「米国の核戦力を強化すべし」とのトランプの発言はこの文脈で考えると意味を持ってきます。
 社説は、「核兵器がテロリストの手に渡ることを阻止するなど、核兵器がもたらす危険を如何に軽減するかに焦点を当てるべきである」と言っていますが、これは核兵器を従来の米ロ間の了解の延長線上でとらえているもので、最近のプーチンの核戦略に照らして考えれば、適切な提言とは思われません。

《これからのアメリカのアジアでの戦略》

「一つの中国原則」タブーに挑戦するトランプ

岡崎研究所


 台湾問題専門家のスティーブン・ゴールドスタイン(米スミス大学名誉教授、ハーバード大学フェアバンクセンター台湾研究プログラム座長)が、20161212日付ワシントン・ポスト紙において、「一つの中国」を取引材料にしようとのトランプの考えを、米中関係を不安定化させ、戦争のリスクすらもたらすものである、と批判しています。要旨、次の通り。

 トランプは、米国の「一つの中国政策」は米国が中国から引き出したい他の事柄(通商、人民元安、南シナ海、北朝鮮など)と交換する取引材料である、と言ったが、トランプは正しくない。
 中国にとり「一つの中国」は原則であり、中国の指導者は、台湾を取り戻すことを、中華国家の回復、共産党の最終的勝利、19世紀以来の外国勢力による搾取の終了を達成するための使命のようなものと見ている。
 中国は「一つの中国」の原則を「世界に中国は一つしか存在しない。大陸と台湾はともに一つの中国に属する。中国の主権と領域は不可分」と定式化している。中国の法律は、台湾が独立を目指したり統一を妨害したりすることに対し、武力を用いることができるとしている。過去20年間の中国の軍拡は、台湾の分離を抑止し、必要とあらば武力で台湾を併合したいという強い願望が原動力となっている。
 米国の「一つの中国」政策は、全く異なっている。1950年代、米国は敗北した在台湾国民党政府を中国の唯一の合法的政府と認め、次いで、二つの中国を認めてはどうかと提案したが共産党政府に激しく拒否された。1979年の米中国交正常化に際しては、台湾の中華民国との外交関係を断ち、共産党政府を中国の唯一の合法政府と認め、台湾から米軍を引き揚げ、台湾との相互防衛条約を終了させた。米国の台湾に関する立場は定義されないまま残された。
 台湾の政治的実体を国際社会において国家と看做さないという点では、米中は一致している。しかし、米国は、台湾が中国の一部であるとの中国の主張は受け入れていない。米国の公式の立場は、台湾の地位は「定義されない」というものである。米国は1979年以来、地位未定の島にある、存在を認めないはずの政府との関係を続けていることになる。
 この複雑な外交的ダンスは、現実世界に重要な結果をもたらしている。すなわち、米国の台湾政策は、内政干渉であるとの中国による批判を受けずに、台湾、中国、アジア全体に対する米国の国益により導かれてきた。1979年以来、米国の「一つの中国」政策の下、広範で多様な関係を、国家として承認していないはずの台湾との間で築いてきた。
 米国は「一つの中国」政策に反する米台関係を維持するのみならず、自らを紛争の解決の条件を設定する者と位置付けている。これは中国の立場に抵触するが、明確な敵対関係に至らなかったのは、全当事者が極めて脆い平和を維持すべく抑制的に振る舞ってきたからである。
 トランプの提案は、米国の「一つの中国政策」と中国の「一つの中国の原則」の微妙だが極めて重要な違いを閑却し、米国の地域における中心的原則である現状維持を危うくする。トランプは、蔡英文を「台湾総統」と呼び、台湾の地位を交渉の材料にすることで、この危険な戦略の賭けを倍にしようとしている。中国の核心的利益は米国の政策と衝突しており、全当事者が現状に満足していないので、安定的な関係は脆弱である。トランプ政権が不注意に些事にこだわるならば、米中関係全体を不安定化させ、戦争のリスクさえ冒すことになろう。
出典:Steven Goldstein,Trump risks war by turning the One China question into a bargaining chip’(Washington Post, December 12, 2016
https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2016/12/12/trump-is-risking-war-by-turning-the-one-china-question-into-a-bargaining-chip/

 トランプの発言や行動がどこまで実態を把握したうえでのものなのか、憶測の域を出ないものが多いですが、依然として取引のための一つの材料に使っているのではないかとの見方も強くあります。
 中国政府はこれまでのトランプの中国に関係する部分が好ましいものではないとして、トランプに対し不快感や警戒心を強めつつあります。これまでのトランプの言動のなかで、中国にとって容認しがたいのは、トランプ・蔡英文が電話連絡をとったこと、トランプがツイッターのなかで、南シナ海における中国の巨大な軍事施設の設置や行動に言及したこと、さらには「一つの中国」をめぐる中国の対応を批判したことなどでしょう。
 特に、中国として衝撃を受けたのは、自らが核心的利益の最右翼に位置付けてきた台湾問題(「一つの中国」を巡る問題)について、トランプが「中国の主張に縛られたくない」との趣旨の発言を行ったことです。
 本件論評は、トランプの「一つの中国」への言及が米中関係を不安定化させ、戦争へのリスクを伴うものと非難しています。これは、いわば中国の立場に立ったトランプ批判であり、バランスを欠いたものと言わねばなりません。
 米国はこれまで「台湾は中国の不可分の一部」という中国の主張については、これを「承認」したり、「合意」したりすることを避けてきました。そして中国の主張を’acknowledge’すると述べてきました。この用語は中国の主張を「承っておく」、「聞いておく」、というニュアンスに近いのです。
 もし、米国が1979年の中華民国(台湾)との断交時、あるいは1972年のニクソン訪中時に「台湾は中国の不可分の一部」という中国の主張について承認したり、合意したりしていたのなら、’acknowledge’という言葉を使用しなかったはずです。ちなみに、この用語は1972年の日中国交正常化の際のコミュニケにおいて、日本側が中国の主張を「理解し尊重する…」と述べた文言の意味に近いものです。これらの用語は、いずれも中ソ対立下の冷戦期において考案されました。
 オバマ政権下においては、米国は中国の台湾についての主張にあえてことさら異議を申し立て、米国の立場が単なる’acknowledge’ にすぎないことを主張して、中国を刺激・挑発するようなことを避けてきました。
タブーに挑戦
 今回、トランプがこの「タブー」ともいうべき「一つの中国の原則」にあえて挑戦したことにより、中国が衝撃を受けたのは当然でしょう。
 本件論評は「トランプ政権が不注意に些事にこだわるならば、米中関係全体を不安定化させ、戦争のリスクさえもたらすだろう」と述べます。これは、今日の中国の主張を代弁するものと見られてもやむを得ないでしょう。
 中国を刺激したり、怒りを買わないため、沈黙を守っていれば、オバマ政権下で見られたように、中国はそれにつけこんで南シナ海のさらなる軍事拠点化を進め、東シナ海への拡張を続け、台湾の国際的孤立化をさらに強化するに相違ありません。トランプが意表をついて「一つの中国の原則」を批判したことにより、東アジアにおける台湾問題の存在とその重要性が一挙に浮上したというのが実態であると思われます。

アジアで進む危険な軍拡競争

岡崎研究所
 フィナンシャル・タイムズ紙の20161229日付社説が、アジアの将来はトランプが平和と安定の保証者としての米国の役割を維持するかどうかにかかっており、まずはフィリピンと巧くやる必要があると指摘しています。要旨、次の通り。
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アジアで危険な軍拡競争が進行している。米国の次期大統領がアジアの同盟国とどう付き合うかが軍拡競争の帰趨を決する。フィリピンは周辺における緊張の高まりに対応して武器調達を進めているが、最も明瞭な脅威は南シナ海に広大な領有権を主張する中国であり、軍備が劣るために、フィリピンは中国との妥協に走り、果ては中国から武器を購入することを約束するに至っている。こういう状況をトランプ次期政権は警戒して然るべきである。
 アジアにおける米国のプレゼンスは安定のための力として機能して来たが、フィリピンの如き堅固な同盟国が米国に最早頼ることが出来ないと感じていることは、いかに米国の威信と力がむしばまれて来たかを示している。トランプ次期大統領は海外における米国の義務を削減することを明言し、更には韓国と日本に対する核の傘を取り除くことすら示唆した。しかし、アジアが今後も平和と安定を享受し続けるためには、米国は伝統的な同盟国を当然視しているわけでなく、また米国は地域のバランス・オブ・パワーの維持にコミットしていることをトランプが明確にせねばならない。トランプ政権が対処すべき最初の「ぐらつくドミノ」はフィリピンである。
 この点では若干の楽観論が可能である。大統領選挙以降、ドゥテルテ大統領はその米国批判を抑制し、トランプと巧くやりたい意向を示している。トランプの方は麻薬犯の超法規的殺害に対するオバマ政権の懸念を脇に置く様子である。ドゥテルテからすると、人権侵害批判が対米関係の最大の摩擦要因である。トランプはドゥテルテのやり口を承認する必要はないが、上手く付き合う方法を見つけねばならない。
 オバマの「リバランス」政策は、同盟国を安心させ、米国の相対的後退を押しとどめ、中国の台頭の速度を弱めるという目標を達成出来なかった。フィリピンの軍備強化とドゥテルテの中国とロシアへの接近はその証左である。
 トランプにはアジアでの米国のプレゼンスを強化し、安定と平和の保証者としての役割を確認する真のチャンスがある。しかし、彼にはその逆をやり、取り引き本能からバランスをひっくり返す可能性がある。その結果として、アジアは大火災に陥りかねない遥かに危険な地域となる。
出典:‘A perilous moment for Asias peace and stability’(Financial Times, December 29, 2016
https://www.ft.com/content/8f2cf6ae-c86b-11e6-9043-7e34c07b46ef
 この社説が末段で結論的に言っていることは正しいと思います。トランプにはアジアにおける米国の役割を強化するチャンスがありますが、逆に、平和と安定を犠牲にした取り引きに走る危険もあります。
ぐらつくドミノ
 フィリピンが「ぐらつくドミノ」であり、トランプはフィリピンと巧くやることが重要というのも、その通りです。但し、フィリピンが中国やロシアとの関係をもてあそぶ状況、あるいは韓国やインドネシアから戦闘機や艦船を調達し始めた状況をもって、米国に最早頼ることが出来ないと感じ始めている証拠だというのは、言い過ぎだと思います。
 一方、アジアで危険な軍拡競争が進行しているという認識は間違っていると思われます。オバマ政権の「リバランス」政策は何もかも不成功というわけではありません。米国がアジアに安定のための力としてとどまることを明確にし、ベトナム、フィリピン、インドなどとの関係に安全保障上の展開が見られたことは事実です。現在進行していることは、「リバランス」政策を支えとして、中国の挑発的な行動を前にして、アジア諸国が安全保障上の関心を高め、安全保障を強化するささやかで健全な努力を行っていると見るべきものです。
 トランプ政権の出方いかんにかかわらず、この努力は継続されなければなりません。トランプ政権は恐らくはアジア諸国の自助努力の強化を求めることになるのでしょう。トランプがアジアにおける米軍のプレゼンスを強化するとしても、そのことが前提となるでしょう。

《維新嵐》 米大統領にドナルド・トランプという財界出身の人物が就任したことによって、特に軍事面では、「ほんとにわかってるの?」と素人でも思うことが続きましたが、軍事に精通した人物を抜擢することによって、奇策?ではなくあるべき形に落ち着いてきたな、という感じはあります。
ただ歴代大統領のある意味紋切型のアジア戦略にとらわれることなく、最初に「トランプ流」を前面にだしたことにより、共産中国の出鼻をくじくという意味では、うまく牽制できたかもしれません。
体制は固めてあるので、今後の出方が注目されます。
ちなみに対中国戦略でこんな注目発言も出ています。

【トランプ大統領始動】「新しい潜水艦を建造する」
中国牽制へ海軍力増強、メーカーに値下げ要求
2017.1.27 14:51更新http://www.sankei.com/world/news/170127/wor1701270043-n1.html


トランプ米大統領は、20171月26日放送のFOXニュースのインタビューで海軍の潜水艦を増やす方針を示した上で、メーカーに値下げを求める考えを強調した。ロイター通信が報じた。
 トランプ氏は「米軍の再建」を施政方針に掲げている。南シナ海で海洋進出を強める中国に対抗するため海軍力を増強する構え。
 インタビューで「潜水艦が不足している。新しい潜水艦を建造するつもりだが、価格が高すぎる」と述べた。
 トランプ氏は大統領就任前、最新鋭ステルス戦闘機F35や大統領専用機「エアフォースワン」についても値下げを航空機メーカーに要求。ロッキード・マーチンやボーイングはコスト削減に取り組む姿勢を示した。(共同)

《維新嵐》中国海軍を牽制する攻撃型潜水艦か、核戦力の要となる戦略型潜水艦か、トランプの思惑は見えにくいですね。

アメリカ海軍最新式原子力潜水艦








2017年1月24日火曜日

ドナルド・トランプ新大統領就任の余波か!?南シナ海で米海軍と新大統領を試す共産中国

もはや際限なし!中国の南シナ海の軍事化

岡崎研究所

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の20161215日付社説が、中国は南シナ海のすべての人工島で大々的な軍事化を行っており、これはA2/AD能力を更に高めるものであり極めて重大である、と警告しています。要旨、次の通り。

20159月、習近平はホワイトハウスで南シナ海を軍事化することはないと約束したが、それにしては大規模な軍事化だ。20161215日公表の衛星写真によると中国は南沙諸島の7つのすべての人工島に強力な高射砲とミサイル迎撃システムを配備している。
 3年前、これらの所は高潮時には水没する小さな点だったが、中国は3000エーカーに及ぶ土地を造成した(空母フォードはたったの4.5エーカー)。これは小さな隣国との関係で必要とされる軍事力をはるかに超えている。シュガート中佐は「中国は恐らくもっと大きな敵を念頭に置いているのだろう」と述べている。
 同中佐は、ウェブサイトWar on the Rocksの記事の中で、三大人工島の軍事施設は本土の典型的な戦闘機基地(17000人の戦闘機部隊)に匹敵する規模であると述べている。スビ礁は今やハワイの真珠湾より大きい港湾を保有し、ミスチーフ礁の外縁は首都ワシントンの外縁に匹敵する。
 これらの空間はフィリピン、マレーシア、シンガポール等南シナ海全域を攻撃できる移動式ミサイルを展開するに十分な広さを持つ。中国は既に強力な接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力を持っているがその能力が更に増大する。これに計画中とされる浮遊式原発施設を配備すれば永続的な基地になる。
 米国のシンクタンクCSISは、これらの人工島に高射砲、ミサイル誘導のための目標攻撃レーダー、巡航ミサイル迎撃システム、近接防衛システムが展開されていることを明らかにした。これは重大である。
 20161215日、フィリピンは「深刻な懸念」を表明したが、ドゥテルテ大統領は中国宥和の姿勢を変えていない。インドネシアは今週初めてインドとともに中国に対して国際法順守を求めた。ベトナムは管轄下にある南沙諸島の島の防衛強化に乗り出した。8月には移動式ロケット発射装置を配備した。
 トランプは南シナ海のリスクに日々直面することになる。20161214日、ハリス米太平洋軍司令官は、「如何に多くの軍事基地が南シナ海の人工島に作られようとも、国際空間を一方的に閉鎖することは決して許さない」と述べた。2年前にハリス司令官は、中国は海に砂の万里の長城を築いていると述べた。20171月になればトランプがハリス司令官の賢明な助言を求めることを望みたい。
出典:‘China Arms Its Great Wall of Sand’(Wall Street Journal, December 15, 2016
http://www.wsj.com/articles/china-arms-its-great-wall-of-sand-1481848109

中国は国際社会に対する挑戦を続けるつもりのようです。中国の「飽くなき執拗さ」に驚愕させられます。7つの人工島すべてでの予想以上の大規模な軍事化を通じて、中国は2年という短期間に東アジアの現実を一方的に大きく変えようとしています。経済発展は国際協調を高めるどころか、その増大する国力は益々強圧的、一方的になっています。状況は益々難しくなっていると言わざるを得ません。国際社会は一致して、今まで以上に強い決意を以て中国に対応していかねばならないことが益々明白になっています。
 20161215日に中国は、さらに大胆な行動に出ました。フィリピンの沖合で米海軍調査船ボウディッチの無人潜水機が中国軍によって奪取され、1217日、米国防省は米中折衝の結果、無人潜水機返還で合意したと発表しました。
極めて挑発的、危険な行為です。事件はスービックの西方50マイル(スカボロー礁の東)の公海(比のEEZ内。国際法違反とされた中国の九段線の外側)で起きました。中国は米軍の目の前400メートル位のところでこれを奪取、持ち逃げたといいます。中国は新大統領をテストしようとしています。ブッシュ大統領就任の20014月には海南島偵察機事件が起きました(米中軍用機が空中衝突、米偵察機が海南島に不時着、中国側に拘束された)。オバマ大統領就任の20093月には海南島沖で中国が米音響測定艦インペカブルの航行を妨害しました。トランプの台湾総統との電話会談に対する対抗措置だとの見方もあります。
無人潜水機奪取はルールに違反する大事件
 米国の対応はなぜか抑制的であったように見えます。米国はなぜ非合法な奪取を阻止しなかったのでしょうか。強い対応はできなかったのでしょうか。米関係者は返還合意ができたことを喜んでおり、緊張激化を望まなかった、と伝えられています。仮に軍事機密に絡むものではないとしても、無人潜水機奪取はルールに違反する大事件です。米国の力の信頼性が下がっていると指摘する向きもあります。他方ハリス米太平洋軍司令官は、1215日の豪州ローウィ研究所での演説で、「能力×決意×信号=抑止力」だと述べ、米の姿勢を強調しました。トランプは「中国には盗んだ無人機を返す必要はないというべきだ。中国にやれ」とツイッターに書きました。この意味は分かりませんが、トランプ外交の予測は困難です。
 中国による南シナ海の軍事化と無人潜水機奪取が周辺国に与える影響が懸念されます。東南アジア諸国との連携を一層強めることが必要となっています。同時に、欧州との連携もますます重要です。そのようにして国際コアリッションを作って中国に強く対処していくことが緊急に必要となっています。
《維新嵐》 共産中国側からすれば、新たなトランプ政権のアジア防衛のスタンスを大まかにもつかんで、外交的な対策を講じたいでしょうね。

南シナ海・人工島付近をアメリカ爆撃機が飛行

米潜水機奪取、中国海軍の意図的な挑発

岡崎研究所

 20161218日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は、「中国が米国の決意を試している」と題する社説を掲載し、中国による米国の無人潜水機奪取を非難しています。社説の論旨は次の通りです。
 米海軍艦艇ボウディッチ号の見ている中で行われた米海軍の無人潜水機の中国による窃取は、多くのことを教えてくれる。中国は米国がこれを大げさに騒ぎ立てたとしつつ、週末に無人潜水機を返還することに同意したが、中国海軍の行為は意図的な挑発であった。中国は公海での航行の自由を維持する米国の決意を試している。
 人民解放軍(PLA)は以前からこういう危険行為をしてきた。20014月、PLAは公海上で米国の偵察機を阻止しようとした。距離測定を誤り、衝突、中国のパイロットは死亡、米軍機は中国に不時着した。10日間の対決の後、中国は乗組員と機体を返還した。20093月、PLAは米艦インぺカブル号が曳いていた音響測定器を窃取しようとした。
 中国の行動は隣国を威嚇し、東アジアでの覇権を確立する意図を示している。最近、PLAは沖縄と台湾の近くで爆撃演習を行った。日本の対中スクランブル回数は2010年の96回から2015年の571回に急増した。最近中国は、南シナ海の紛争中の岩礁に、約束に反し軍事力を展開した。
 中国はこれらの基地近辺を米国の海・空軍が通過することに反対している。無人潜水機の窃盗は、トランプ政権がそういう哨戒を増やせば嫌がらせに会うとの警告かもしれない。中国はまた潜水艦艦隊を急速に拡張している。無人潜水機は潜水艦への対策に資する。
 中国による無人潜水機窃盗は、スービック湾の米軍基地から50海里のところで起こった。フィリピンのドゥテルテ大統領の反米発言で米比関係が悪化している中、中国はそれを更にひどくしようとしたのかもしれない。
 これらすべては、トランプが少なくとも当初は中国にきつい態度をとることを示す中で起こっている。トランプの目標は明確ではないが、アメリカの太平洋でのプレゼンスを強化するために米海軍を再建するとの約束は実施しそうである。中国の指導者は、これらの力の誇示がオバマと同じようにトランプを威嚇すると考えているかもしれないが、逆効果になる可能性がある。
出 典:Wall Street Journal China Tests U.S. Resolve (December 18, 2016)
URL
http://www.wsj.com/articles/china-tests-u-s-resolve-1482086206

 今回の中国による米海軍の無人潜水機奪取は、米中間の軍事衝突を引き起こしかねない事件でした。習近平の了承を得たうえで行われたものか、あるいは現場の指揮官またはその上司の独断で行われたものか、よくわかりません。中国指導部の上の方の決定でこういう国際法違反行為がなされたというのであれば、問題ですし、そうではなく軍の下のレベルでの決定で行われたというのであれば、文民統制が効いていないことを意味し、これも問題です。
 中国側はすでに無人潜水機を米側に引き渡し、「道」に変なものが落ちていたので拾って調査しただけなどと言います。しかし米艦は現場で抗議したとされており、落とし物を拾ったケースではありません。
 2001年の偵察機の海南島不時着のケースでは、乗組員と機体を人質にとられている中での交渉でしたが、今回はそういうことはありません。厳重に抗議し、再発防止の約束をさせるべきです。そうすることで、このような危険な行為に指導部であれ、現場であれ、乗り出すことを将来にわたって抑止することを狙うべきでしょう。
声を大にして騒ぎ立てるべき
 こういう不法行為には静かな解決を求めるよりも、声を大にして騒ぎ立てるのが良いです。しかるにCNNが報じるまで、オバマ政権は中国と静かに本件を解決しようとしました。いい判断であったかどうか疑問です。
 中国の海洋での不法な主張や、今回のような9点線外での行動は、航行の自由や公海利用の自由に対する挑戦です。こういう挑戦には毅然として対抗していくことが、不測の事態の生起やそのエスカレーションの危険を防ぐために必要です。中国はサラミを切るように徐々に行動をエスカレートし、相手に小さな変化になれさせる戦術をよく用います。民主国家は気が短いところがありますし、記憶も短いですが、中国は気が長いですから、こういう戦術が有効になります。そのことに我々は注意を払うべきでしょう。

 なお、ニューヨーク・タイムズ紙は、「無人潜水機の中国による奪取への静かな米国の対応はアジアの同盟国を心配させている」との論説を掲載し、米国のより強い対応が必要だと論じています。その通りです。

「南シナ海の人工島には近寄らせない。」アメリカ新国務長官が中国に警告

【トランプ大統領始動】南シナ海「占拠から防衛する」 中国の軍事化牽制:スパイサー米報道官
産経新聞
【ワシントン=加納宏幸】スパイサー米大統領報道官は20171月23日の定例記者会見で、中国が造成した人工島で軍事施設建設が進む南シナ海について「1つの国による占拠から防衛する」と語り、中国を強く牽制した。トランプ大統領が指名したティラーソン国務長官候補も、上院の指名承認公聴会で中国の人工島への接近を認めない可能性を示唆しており、オバマ前政権に比べて中国に厳しく臨む姿勢を明確にした形だ。
 中国は南シナ海のほぼ全域で自らの管轄権を主張しているが、スパイサー氏は「南シナ海は公海の一部であり、米国は自らの利益を守ることを確実にする」と述べた。中国による人工島への接近を拒否するかは明確にしなかった。
 南シナ海をめぐっては、ティラーソン氏が20171月11日の公聴会で「中国に対し、人工島建設を終わらせ、そこへの接近は認められないという明確な警告を送らなければならない」と発言。中国側は米国が南シナ海での海上封鎖を意図しているとみて、反発している。
 オバマ政権は南シナ海で米艦船を航行させる「航行の自由」作戦を実施したが、それ以上の強い姿勢は取らず軍事化を食い止めることができなかった。
 これに対し、トランプ氏は就任前の1月11日の記者会見で、中国が南シナ海で「巨大な要塞」を建設していると非難し、「私たちは非常に大きな被害を受けている」と語っていた。
 一方、スパイサー氏は記者会見で、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討を重視するトランプ氏がロシアとの協力に前向きであると指摘した。また、露軍との共同作戦に関しても「ロシアであれ他のどの国であれ、ISと戦う方策があるのなら共通の国益があり、実施することになる」と述べ、否定しなかった。

2017年1月20日金曜日

アメリカの対中政策とアジアの同盟国の動き

トランプへの期待は禁物、米軍は尖閣にやって来ない

「次期国務長官が尖閣防衛を確約」は手前勝手な解釈だ

北村淳
2017.1.19(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48942
 トランプ次期大統領が国務長官候補に前モービルエクソンCEOのレックス・ティラーソン氏を指名した。2017年111日、そのティラーソン氏に対する指名承認公聴会が、アメリカ連邦議会上院外交委員会で開かれた。

 公聴会では、尖閣諸島に中国が侵攻してきた場合の対処方針についての質疑もなされた。ティラーソン次期国務長官は、「尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲であるため、アメリカは条約の規定に従って対処する」と述べた。共和党政権・民主党政権を問わず伝統的にアメリカ外交当局高官が表明してきた通りの発言である。
アメリカ当局の伝統的な模範解答
日本政府や多くのメディアは、アメリカ政府高官が尖閣問題について言及すると一喜一憂するのが常である。今回もその例に漏れず、主要メディアはこぞってティラーソン氏の“尖閣発言”を取り上げていた。
 それらの記事の中には「指名公聴会で次期国務長官が尖閣防衛を確約」といった内容のものまであった。だが、これぞトランプ次期大統領が口にした“フェイクニュース”に類する報道姿勢とみなさざるを得ない。
 このような見出しの文言から多くの日本国民が受ける印象は、「アメリカは尖閣諸島を防衛する義務を負っており、万が一にも中国が尖閣諸島へ侵攻してきた際にはアメリカが防衛義務を果たすことを次期国務長官は確約した」ということになる。
 しかしながら、ティラーソン氏は、「中国が尖閣諸島を占領するために軍事侵攻した場合に、アメリカが軍事力を行使して中国の侵攻を阻止する」と明言したわけではない。「日本とは長年の同盟関係にあるアメリカは、日米安全保障条約の取り決めに従って対応する」と述べただけである。
 このような尖閣諸島に対するアメリカ政府高官の表明は、オバマ政権下においてオバマ大統領やヒラリークリントン国務長官が発言してきた内容とまったく同じであり、アメリカ外交当局の伝統的な模範解答ということができる。
 すなわち、
1)尖閣諸島の領有権が日本に帰属するということに関しては触れずに「現状では、尖閣諸島は日本の施政下にあると理解している」との米側の認識を繰り返し、
2)「日本の施政権下にある以上、尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲ということになる」という原則論を述べ、
3)「条約の適用範囲にある尖閣諸島に中国が侵攻してきた場合、アメリカは日米安保条約第5条に即して対処する」
という、条約が有効な限り当たり前のことを述べているのだ。
 この模範解答を「中国が尖閣諸島へ侵攻を企てた場合には、日米安保条約に基づいて、アメリカが日本救援軍を派遣して中国と対決する」と理解するのは、日本側のあまりにも身勝手な解釈である。
日本救援軍派遣の前に高いハードル
日米安保条約第5条の規定よれば「日本の施政権下にある領域が武力侵攻を受けた場合、アメリカはアメリカ合衆国憲法上の規定および手続きに従って対処する」ということになる。
 ここで明確に理解しておくべきなのは、アメリカ政府による“対処”は、日本防衛のための部隊を派遣して中国侵攻軍と対決することを意味しているわけではないということだ。
 もちろん、そのようなオプションがあり得ないわけではない。1973年に成立した「戦争権限法」によると、アメリカの国益を大きく左右するような極めて重大な緊急事態が勃発した場合に、アメリカ大統領は議会の事後承認を得ることを前提として、アメリカ軍最高指揮官としての大統領権限においてアメリカ軍を海外へ派兵することが可能である。この場合、大統領は軍隊派遣決定から48時間以内に連邦議会に報告し、戦闘期間は60日間を越えてはならず、その間に連邦議会からの承認を取りつけなければならない。
 このような大統領権限があるものの、ホワイトハウスが軍隊を動かす場合には原則として連邦議会の承認を取りつけてからというのが原則である。まして中国の尖閣侵攻に際して日本救援軍を派遣するような場合は、当然のことながら米中戦争を大前提とした軍事行動ということになる。そうである以上、「戦争権限法」に基づいて大統領が独断で日本に救援軍を派遣するためのハードルは、極めて高いものとなる。
米国は日本のために中国と闘うか?
 さらに、中国軍による尖閣諸島侵攻というシナリオは、日本にとっては「国土と領海を奪われてしまいかねない国家の最重大危機」であるが、アメリカにとっては「アメリカ国民の誰もが知らない東シナ海に浮かぶちっぽけな岩礁を巡って日本と中国が対立しており、とうとう中国が武力に訴えた」というだけのストーリーであり、アメリカにとっての危機と捉えられる類いの紛争ではない。
 このことは、フォークランド戦争勃発前に同盟国イギリスから支援要請を受けたアメリカ政府の態度からも容易に類推可能である。
(レーガン政権の幹部たちは、南大西洋の絶海に浮かぶちっぽけな島を巡って軍事衝突など馬鹿げているという姿勢を示した。イギリスのサッチャー首相はその対応に激怒した。もっともイギリスと対立していたアルゼンチンもアメリカの同盟国であった。)
 たとえ、トランプ新政権が中国の軍事力行使に対して(オバマ政権とは違って)強硬な姿勢を示す方針を貫くとしても、大多数のアメリカ国民の目からは、尖閣諸島は“ちっぽけな岩礁”としか理解されない。そんな岩礁を巡る日本と中国の軍事衝突にアメリカが本格的に軍事介入し、米中戦争に突入することは(100%に限りなく近く)あり得ない。
5条解釈の手前勝手な垂れ流しは危険
 日米安保条約のどこを探しても「日本が軍事攻撃をされた場合に、アメリカは軍隊を派遣して日本を救援しなければならない」という趣旨の文言は存在しない。したがって、中国が尖閣諸島への侵攻を企てた場合に、アメリカ軍が中国人民解放軍と戦闘を交えなくとも、条約を履行しなかったという批判を受ける理由はない。
「アメリカ第一主義」を表看板に掲げるトランプ政権が誕生した現在、日本政府もメディアも、あたかも「尖閣有事の際にはアメリカが本格的軍事介入をなして日本を救援する」といったニュアンスを日本国民に植え付けるような言動はいい加減に差し止めなければならない。
 むしろトランプ政権の誕生を機に、日本国民を欺くような手前勝手な日米安保条約解釈に頼ろうとするのではなく、少なくとも日本の領域は自国の国防力で守り切るだけの態勢を構築する努力に邁進する必要がある。

《維新嵐》ティラーソン氏の発言は、議会向けの発言という見方もできますが、至極妥当な、当然の発言であろうと思います。
そもそも日米安全保障条約はアメリカ軍の日本列島、南西諸島での軍事的な駐留を保障しているといえます。在日米軍は、アメリカ合衆国の国防軍です。在日米軍が「守るべきもの」は、「日本国」の主権と独立ではありません。アメリカ合衆国の主権と独立、政治的経済的権益となります。そこのところを多くの日本人は勘違いなさらないように願います。我が国の防衛は、我が国の国民の責務なんです。国民それぞれが職域の中で、職務を通じて国民としての「国防」義務を果たすのです。自衛隊は我が国の独立を「軍事力」で破壊しようとする敵を排除するための「暴力装置」となります。だから警察の延長的存在ではなく、純然たる軍事組織「国防軍」でなければなりません。看板も中身も「国防軍」にトランスフォームすべきなのです。そうなってこそ警察組織や沿岸警備隊たる海上保安庁が働きやすくなるわけです。

自衛隊新兵器実験!スターウォーズ並みの破壊力に驚愕!(防衛省技術研究本部 開発試験) 
2013/12/12 に公開 https://youtu.be/ft___mqgQEc



緊張高まる尖閣防衛の最前線
南シナ海裁定に対抗…中国の行為は異常だ

論説委員・井伊重之
 東シナ海で日中両国の緊張が高まっている。中国海警局の公船と中国漁船が今月初め、沖縄県の尖閣諸島の領海に初めて同時に侵入した。一時は接続水域に230隻に上る中国漁船が集まり、10隻以上の公船とともに日本の領海や接続水域に入ったことが確認された。日本政府が抗議を繰り返す中で、意図的に緊張をもたらそうとする中国の行為は異常だ。
 中国の狙いは明確だ。南シナ海の領有権をめぐり、フィリピンの申し立てを受けてオランダ・ハーグの仲裁裁判所が先月、中国側の主張を全面的に退けた。中国は反発しているが、日本は米国などと協調して中国に裁定の受け入れを求めている。これに対する中国側の対抗措置だろう。
 国連海洋法条約に基づいて仲裁裁判所が出した裁定は、南シナ海のほぼ全域に自らの主権が及ぶとする中国にとって、大きな痛手となった。中国が主張する歴史的な権利について、一方的で国際法違反だと断定したからだ。中国側が埋め立てを進めた岩礁も、国際法的には「島」とは呼べず、排他的経済水域(EEZ)などに関する海洋権益を主張できないと断じた。
 中国にとって最大の誤算は、南シナ海のほぼ全域を囲う「九段線」内で中国側が主張する管轄権の法的根拠が否定されたことだ。事前の予想を上回る明確な裁定だった。
 中国が1950年前後から主張を始めた九段線は、ベトナム沖からマレーシア沖、フィリピン沖を囲む広大な海域だ。九段線は50年代に西沙諸島、80年代に軍事力で南沙諸島を実効支配するに当たっての根拠としてきた。その前提が一気に覆された格好だ。
 力で現状変更しようとする中国に対し、国際司法機関が「ノー」を突き付けた意味は重い。
 川島真東大大学院教授は「南シナ海をめぐる常設仲裁裁判所判決と中国の対応」(中央公論)で、「中国は国家イメージに大きな打撃を受けた。しかし、この判決が中国の対外行動を変えるほどの力を持つのかは、依然として疑問だ」と指摘する。
 川島は「仲裁裁判所は領土問題の結論を出そうとしたわけではない。あくまで国連海洋法条約に照らして中国の主張を判断した。当事国がその受け入れに合意しなければ、裁定に拘束力、強制力はない」と厳しい見方を示している。
 中国は裁定が出た直後に猛反発する政府声明を公表し、新華社通信は「裁定は単なる紙くずだ」との論評を配信した。こうした中国の強硬姿勢が国際的な孤立を招くと分析するのは石平拓殖大客員教授だ。

「習近平外交の大失敗」(Voice)で、「仲裁裁判所の裁定を最初からいっさい認めない、受け入れないという頑(かたく)なな姿勢を取っているからこそ、中国政府は結局、フィリピンとの直接対話の模索においても、この一線から後退できない」と論考している。
 そのうえで「『裁定は認めない』という外交姿勢を対話の条件としてフィリピンに押し付けた結果、当初は対話路線だったフィリピン新政権までも怒らせ、両国間協議の芽を自ら摘んでしまった」と批判する。
 一方、山田吉彦東海大教授は「中国は尖閣を『戦いの海』にする気だ」(WiLL)で、「南シナ海で起きたことは東シナ海でも起きる。それが中国のパターンだ」と警告している。
 この中で山田は、とくに尖閣諸島海域への警戒が必要だと強調する。「中国国民の目を仲裁裁判所の判断から逸(そ)らすため、東シナ海への進出を強化してくるだろう」と指摘し、まるで最近の中国の動きを予測していたかのようだ。
 山田は「わが国は南シナ海の航路を利用し恩恵を受けている。そのためにも南シナ海の紛争抑止や海洋環境の破壊阻止、航行の安全などに積極的に関与すべきだ」と日本政府にも覚悟を求めている。

 中国が露骨な示威行動に出る中で、その最前線に立つのが海上保安庁だ。初の生え抜き長官として注目された佐藤雄二前長官は「尖閣は海保が守り抜く」(文芸春秋)で領海警備の現場を紹介している。
 「中国漁船の多くが中国版GPSを政府に持たされている。これにはメール機能が搭載され、自船の位置を知らせたり、一斉通報を受けられたりする。民間漁船も中国政府とつながっている」としており、中国漁船の尖閣侵入も政府と一体の動きといえよう。
 心強いのは現場の士気が高いことだ。海保の活躍を描いた「海猿」ブームの影響もあるが、佐藤は「若い職員は尖閣の問題をみて海保に入ったと答える。緊迫する国際情勢が若者の心を動かしている」と語る。

 大型巡視船の新規投入など、今後も尖閣警備体制の強化が欠かせない。日本が国を挙げて尖閣を守り抜く姿勢を示す。それが中国に対する強いメッセージとなるだろう。

《維新嵐》 国連海洋法条約の精神に基づくこと。外洋の秩序も法秩序が確立されなければなりません。まずは自衛隊よりも海保でしょう。領海防衛は海上保安庁が先兵となって進められるべきです。
尖閣諸島については、「無人島」にしているのがそもそもの大間違いです。魚釣島については海保が遭難者救護を想定して、隊員の常駐化、ヘリ発着用のヘリポートや港を整備していかなくてはいけません。