2016年10月29日土曜日

【情報戦争の裏側】首相直属の情報機関を創設せよ! ~総合的な国家による情報戦略が安全保障の要となる~

「首相直属」で情報収集
テロ対策で対外情報機関の創設も
2015.02.05http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150205/plt1502051830002-n1.htm
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人やヨルダン空軍パイロットの殺害事件を受け、国連安全保障理事会は非難声明を発表、米軍を中心とする有志連合は「イスラム国壊滅」に向けて大攻勢を仕掛ける構えだ。一方、日本では、激動する世界情勢の中で、国民の生命と財産を守るため、首相直属の対外情報機関の創設を求める声が強まっている。米国のCIA(中央情報局)や、英国のMI6(秘密情報局)のような組織を創設することで、残忍・狡猾な国際テロ集団などと対峙しようという構想だ。
 「政府の情報機能を強化し、より正確かつ機微な情報を収集して国の戦略的な意思決定に反映していくことが極めて重要だ。ご指摘のような対外情報機関の設置については、さまざまな議論のあるものと承知している」
 安倍晋三首相は20152月4日の衆院予算委員会でこう答弁した。警察官僚OBで「外事警察のプロ」である自民党の平沢勝栄衆院議員の「対外情報機関を創設すべきではないか」という質問に答えた。
 先進主要国で、国際テロや大量破壊兵器、諸外国の政情などの海外情報を収集・分析する情報機関がないのは日本だけだ。同じ敗戦国であるドイツですら、BDN(ドイツ連邦情報局)を持っている。現在でも、外務省や防衛省、警察庁、公安調査庁などが、情報収集や分析にあたっているが、人員や予算面の限界や、省庁の縦割りの弊害などが指摘されてきた。
 こうしたなか、日本人10人が犠牲となるアルジェリア人質事件(2013年1月)が発生した。国際テロの情報収集力不足など、日本の危機管理上のさまざまな問題点が浮かび上がった。

この事件を受け、対外情報機関創設の機運が高まり、超党派の衆院議員団は昨年1月、英国を訪問し、国外情報を収集するMI6や、テロリストやスパイを監視するMI5(情報局保安部)などを視察した。MI6は、映画「007シリーズ」で、ジェームズ・ボンドが活躍した組織である。
 視察後、参加議員の多くは、「紛争回避やテロ防止、防衛力強化のためには、対外情報機関は不可欠だ」「他国の情報に頼るのは独立国のすることではなく危険だ」と感想を語った。
 自民、公明両党は2014年4月、対外情報機関の創設に向けて協議を進めることを確認した。そして、日本人にテロの脅威を改めて実感させた今回の事件を契機に「早急に詰めないといけない」(石破茂地方創生担当相)との声が高まっている。
 
日本の「情報のプロ」たちは対外情報機関の創設には賛成だが、外務省主導ではなく、首相直属の組織を提案する。
 
初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏は「『外交一元化』の名のもと、重要情報は外務省に集中してきたが、その情報を外務省が官邸に入れないケースが多々あった」と指摘し、こう続ける。
 
「安倍首相は今回、この苦しみを数カ月間にわたって味わい続けたのではないか。過去にも、重要な情報を外務省が握りつぶしていたことが後に発覚し、当時の小泉純一郎首相が激怒したことがある。戦前は首相直属の情報機関があったが、GHQ(連合国軍総司令部)の意向で廃止された。海外での日本人誘拐や身代金要求の多発が予想される今こそ、これを復活させなければならない」

元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏も「外務省の領事部や中東アフリカ局に、邦人保護で活躍できる人材がおらず、今回の事件では事実上何もできなかった。首相直属の対外情報機関を作らない限り、国際テロに対峙することなどできない」と語る。
 
対外情報機関を創設するメリットは、テロ対策だけにとどまらない。
 
前出の佐々氏は「慰安婦問題などで、中国や韓国が虚偽の情報を国際社会に流布するのを防ぐため、新機関に“日本の悪口探し班”を設けることも必要だ。各国の閣僚らの発言を常時チェックし、首相や官房長官の名で国連総会などで反論する態勢を作る。そうすれば『うかつに悪口を言えばすぐ反論してくる国』という認識が国際社会に定着する。ともかく、世論も熟してきている。安倍首相は、安全保障法制整備の次は、対外情報機関の創設に本気で取り組むはずだ」と語る。
 
「国民を守る」という、国家として当然の責務を果たすための態勢を整えなければならない。

【「内閣情報局」設置構想が再浮上】
極めて低い日本のインテリジェンスの総合力
2015.02.17http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150217/plt1502171140001-n1.htm
「内閣情報局」設置構想が再び浮上している。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(ISIL)による日本人殺害脅迫事件を受けた、安倍晋三首相の国会答弁が引き金となった。安倍首相は2015年2月4日の参院予算委員会で次のように語った。
 「政府の情報機能を強化し、より正確かつ機微な情報を収集して国の戦略的な意思決定に反映していくことが極めて重要だ」-。
 政府の情報収集・分析力強化を図るため米中央情報局(CIA)のような対外情報機関の設置に関して「さまざまな議論があると承知している」と、答弁したことが大きい。
 これに呼応するかのように、初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏も直近の『文藝春秋』(3月号)で内閣情報局創設を提言した。
 では、わが国にはどのような情報組織(機関)があるのか。

 まず、内閣官房に内閣情報調査室(内閣情報官・北村滋=1980年警察庁入庁)がある。

 外務省-国際情報統括官組織(国際情報統括官・岡浩=82年外務省)。

 防衛省-統合幕僚会議情報本部(情報本部長・宮川正=82年旧防衛庁)。

 法務省-公安調査庁(長官・寺脇一峰=78年法務省)

 警察庁-警備局外事情報部(外事情報部長・瀧澤裕昭=82年警察庁)。

 これ以外にも内閣官房に関連組織(機関)がある。昨年1月に発足した国家安全保障局(局長・谷内正太郎=69年外務省)と、内閣危機管理室(内閣危機管理監・西村泰彦=79年警察庁)である。



国家の危機管理に当たって不可欠なのは、単なる情報収集の機能ではなく、インテリジェンスの総合力である。
 それは「シギント」と呼ばれる通信傍受や衛星監視で収集・分析した情報と、「ヒューミント」と呼ばれる人間的要素の情報を総合した「情報力」を意味する。
 ところが、わが国の場合、総合的な情報力といえるようなものは端的に言って皆無に近い。
 情報を扱う政府機関はいくつもあるが、いずれも情報を収集・分析・評価する能力、つまりインテリジェンス機能は極めて低く、情報を総合化する仕組みが不十分なのだ。
 自前のインテリジェンスと情報管理体制を持たないに等しい。こうしたことから内閣情報局構想が浮上したのだ。
 縦割り組織の弊害は古くて新しい問題である。それにしても、現有の内閣情報調査室約170人、内閣危機管理室約70人、国家安全保障局約70人ではわびしすぎる。やはり「ヒトとカネ」なのだ。 (ジャーナリスト・歳川隆雄)

「国家中央情報局」の必要性

早急に国家情報局を内閣に設置すべき

【官邸の情報戦略を強化して早急に取り組んでほしいこと】

【自衛隊特殊部隊臨戦、対テロ極秘任務】北朝鮮拉致被害者「奪還」も
2015.02.06http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150206/plt1502061830002-n1.htm

イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害事件を受け、安倍晋三首相が、自衛隊による邦人救出に向けた法整備に意欲を示している。日本人が海外でテロ組織などに拘束された場合、その救出を他国に頼るしかない“情けない現状”が浮き彫りになったからだ。実現へのハードルは高いが、仮に自衛隊の救出命令が出されれば、特殊部隊が出動する。その作戦遂行能力はどのくらいあるのか。専門家が分析した。 
 
「海外で邦人が危険な状況に陥ったときに、救出も可能にするという議論を、これから行っていきたい」
 
安倍首相は2015年2日の参院予算委員会でこう強調した。人質事件が、日本人2人の殺害映像が公開されるという凄惨(せいさん)な結末を迎え、海外での自衛隊による邦人救出は通常国会の主要な論点に浮上している。

 国家にとって「自国民の保護」は重要な使命である。米国では、陸軍特殊部隊(通称グリーンベレー)や、陸軍第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊(同デルタフォース)、海軍特殊部隊(同シールズ)。英国では、陸軍特殊空挺部隊(同SAS)などが、海外での救出任務に当たっている。
 自衛隊が邦人救出に乗り出す場合、専門家の間で投入の可能性が高いと予測されているのが、陸上自衛隊習志野駐屯地(千葉県)に置かれている特殊部隊「特殊作戦群(特戦群)」だ。
 ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処が主任務だが、訓練の内容などは明らかにされておらず、隊員は家族にさえ特戦群に所属していることを告げてはならないという。


軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「海外での人質救出に出向くのは、特戦群以外にない。十分な作戦遂行能力を持っている。あとは政治判断だ」と指摘し、続けた。
 「対ゲリラ戦闘は、正規の戦闘とは大きく異なる。相手は組織の体をなした『軍隊』ではないので、どんな配置で戦いを挑んでくるかも予想しにくい。こうした状況に対応するには、高度なメンタル面の鍛錬も必要になるが、特戦群ではそうした訓練も行われている」
 特戦群では、北朝鮮による日本人拉致被害者の奪還を念頭に、離島に上陸して一般人にまぎれて目的地へと潜入する訓練なども行われているとされる。「砂漠、ジャングルなど、日本国内にない環境での訓練の充実と、語学に習熟した隊員の確保が必要」(井上氏)という課題はあるが、救出ミッションに挑む最有力候補といえそうだ。
 同じ習志野駐屯地の精鋭部隊「第1空挺団」も実力は高い。

 元韓国国防省北韓分析官で拓殖大客員研究員の高永●(=吉を2つヨコに並べる)(コウ・ヨンチョル)氏は「秘密裏の人質救出作戦にも対応できるよう、非常に厳しい訓練を積んでいる。相当の能力がある」とみる。
 このほか、米海軍シールズを参考に、海上自衛隊江田島基地(広島県)に創設された特殊部隊「特別警備隊(特警隊)」も高度な訓練を積んでおり、「救出作戦に適任」との指摘もある。
 ただ、元陸上自衛官で安全保障研究家の濱口和久氏は「特戦群も第1空挺団も特警隊も、極めて高い能力を持っているが、作戦遂行のためには、まずは『情報』が必要だ」といい、続けた。


 「今回の人質事件でも、日本政府はイスラム国について十分に情報を得ることができていなかった。情報もなく、単に『人質を救出せよ』というミッションを与えられても、部隊の能力は発揮できない。現地での人脈に通じた人材の育成などが必要ではないか」
 米国のCIA(中央情報局)や、英国のMI6(秘密情報局)のような、対外情報機関の創設が急務というわけだ。

 課題は他にもある。

 2014年7月の安保法制に関する閣議決定では、邦人救出の条件として「受け入れ国の同意」と「国に準ずる組織がいない」ことを掲げている。安倍首相は参院予算委での答弁で、「(今回の人質事件では)シリアが同意することはあり得ない」「法的要件を整えてもオペレーションができるのかという大問題もある」と指摘している。
 特殊部隊の経験者はどう思うのか。
 前出の海自・特警隊の創設準備に携わり、即応部隊を率いる小隊長を務めた伊藤祐靖(すけやす)氏に聞いた。伊藤氏は、沖縄・与那国島を舞台に、人質を取った武装集団に元特殊部隊隊員が立ち向かう姿を描いた、麻生幾氏の小説『奪還』(講談社文庫)のモデルにもなった人物である。
 伊藤氏は「作戦遂行能力があろうがなかろうが、やるならやる。(最高指揮官である首相が決断し、救出命令が出たら)何をしてでもやる」と語った。

《維新嵐》 精神論では海外の邦人救出はできません。国家的な情報戦略が駆使できる情報機関とのタイアップがあって、ピンポイントでの特殊作戦がうまくいくのです。要は、CIAのようなヒューミントによる情報機関のエージェント確保と無人機の活用でしょう。

自衛隊が20年後に無人機を独自開発!?



【ヒューミントによる情報戦略を学ぶための参考文献】

決して目立ってはいけない、生々しく描かれるスパイの姿
『最高機密エージェント』

中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)

ノンフィクションの力というものを強く感じさせられた本である。スパイというと映画「007」に代表される派手なアクションものを想像してしまうが、本書に出てくるスパイ像はそうしたものとは全く無縁の、言わば対極にある存在である。いかに隠密裏に機密情報を交換するかが勝負であり、決して目立ってはいけない存在なのである。
電話の盗聴、手紙の開封、タイプライターに仕掛けまで…
 自分の認識不足を恥じ入るばかりだが、本書を読むと、冷戦時代のアメリカと旧ソ連がいかに激しく対立していたのかということが、あらためてよく理解できる。冷静な筆致だが、内容は実にスリリングである。そうした意味で映画のような光景が目に浮かぶが、これは映画ではなく、実際に起きたことである。ワシントンポストの編集幹部で、ピューリッツアー賞も受賞した敏腕記者が、機密解除された公電など一級の情報を組み合わせて構成した。それだけに描かれるスパイの姿は実に生々しい。
 読み進めるにつれ、当時のアメリカにとって「使える」スパイを確保することがいかに重要なミッションであったことかがわかる。核、レーダー技術、航空装備、兵器開発計画など、アメリカがソ連から入手したい機密情報は山ほどあり、それをどう手に入れるかに躍起になっていた。ソ連からみればそうした情報をどう守るか。激しい攻防が、モスクワのKGB(国家保安委員会)周辺のごく狭いエリアで展開される。
 利用価値の高いスパイをなかなか得られない時期のアメリカの焦り。なんとかそれを得た後に、どう「育成」し欲しい情報を確実に手に入れるか。一連の活動を相手に悟られず、いかに秘密裏に進めるか。綱渡りのように緊迫する場面がいくつも出てくる。
 CIAの職員がスパイに接触するにあたり、KGBの監視をどう「まく」か。それがいかに大変なことなのかもよくわかる。当時のモスクワでは、アメリカに関するあらゆることがKGBの監視下に置かれている中で、電話の盗聴や手紙の開封はおろか、タイプライターに特殊な仕掛けをして、内容を盗み取ることにいたるまで「何でもあり」の世界である。KGBの監視を逃れる手法の一端が詳しく紹介され、「監視探知作業」という言葉があることも本書で初めて知った。それらは実に根気のいる、手のかかる作業である。

〈時間と距離の感覚を身につけ、隙間を通り抜ける目を養う〉
〈どこで曲がるか、どこで停止するか。身振り手振り、外見、錯覚など、ごく些細なことにも気を配った〉
KGBは怪しいと見ると獲物を狩り出すために車も人員もどんどん追加投入してくる〉
 こうした環境下での活動である。特殊な訓練を受けないととても対応できないことがわかる。
いきなり接触「役立つ情報がある」
 さらに驚くのは、スパイ自らがアメリカ側に接触を図ってくる場面の描写である。ガソリンスタンドで、あるいは街角で、いきなり「役立つ情報がある」と接触してくる。接触された方は「ワナではないか」と最初は警戒するのが当然だ。しかし、そうした中に驚くほど良質な情報を持った「本物」がいるのも確かである。次第に彼らの「価値」に気づいて、取り込んでゆく経過も詳細に描かれる。スパイの多くに、ソ連という国への義憤や私怨、絶望などの動機があるのも興味深い。
 情報収集機器の開発や進歩が、諜報活動に大きな影響を与えていることも示される。機密資料を撮影するための小型のペンダント型のカメラや、緊急時にスパイが自殺するための毒入りカプセルなど、あらゆる武器が登場する。ただ、そうしたものをスパイに支給することをアメリカ本国のCIAがなかなか決断できない様子も繰り返し描かれ、諜報活動の困難さを象徴している。事がうまく運べばよいが、失敗してスパイが相手側の手に落ちた場合のリスクも非常に高いからである。しかし、リスクを取らないと、望むような最高機密が得られないのもまた事実である。
 当時も今も、時代によって形を変えて、諜報活動は続いているはずだ。おそらく永遠になくならない活動であろう。ただそれを担っているのは感情を持った生身の人間である。本書でもスパイ本人はもちろんスパイと接触するCIAスタッフなど様々な人物が登場し、それぞれの場面で一人の人間としての感情が吐露される。秘密情報戦の中で人がどんな心理状態におかれ、何を考えるのか。そうした面からも興味深い力作である。

テロは「情報」で防ぐ、厳しい情報戦の中で日本は
『情報機関を作る』

中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)
20160707日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7216

「日本の話を聞きたいと言いつつ、あなたにも外国の情報機関のような人が接触してくるかもしれませんよ」
 海外駐在や留学に出る前に、ある人からこう言われた言葉が鮮明に記憶に残っている。「そんなことが本当にあるのなあ」とも思ったが、実際には自分のような者にはそうしたことは全くなかった。だが、本書を読むとメディアの関係者などもそういう対象になりうるということがわかる。
必要だが、創設はそう簡単ではない

 日本における情報機関の必要性は長年指摘されてきたが、なかなかできていないのが実情だ。先日もバングラデシュの首都ダッカで7人の日本人が命を落とす痛ましいテロ事件があったばかりだが、世界各地に日本人がいて、テロ事件などに遭遇する危険が常にある中で、高度な情報収集能力の有無が国民の生命や財産をはじめとする多くの国益を決定的に左右する。テロに限らず、安全保障、内政、財政、金融、企業活動なども含めて情報の大切さは論を待たない。秘密情報を狙う他国の動きが活発になる中、我が国としても情報収集に出遅れることはあってはならないのである。
 著者も指摘しているが、各地で頻発するテロ事件が示すように、暴力の行使という恐怖で一定の政治的要求を満たそうとすることが目的であるテロ行為は、話し合いでの解決などは有り得ない。故に、情報をもって対抗し、未然防止を図るしかない。
 情報機関というととかく「007」のようなスパイ映画を連想しがちだが、本書を読むと、実はもっと地味で、目立たないが、勝負するときにはしっかり勝負する存在であることがわかる。
 <日本以外の主要国はすべて備えている。我が国も早急にこの組織を作るべきなのである>というのが本書全体を貫く考え方だが、同時に、〈情報機関の創設と一口にいっても、そんななまなかな話ではない〉と難しさを指摘する。

 警視総監など警察の要職をつとめた著者だけにその言葉は重い。著者は〈自身で直接、某国情報機関員をリクルートしたことがある〉と書いているが、そうした経験も踏まえて「ヒューミント」と呼ぶ人から集める情報の大切さを説く。つまり高度な機密情報の「取材」である
 リクルートするノウハウは何か、この種の工作にどんな人材が適しているか、などが課題になるが、著者は「自前の情報があってこそ」と説く。
 〈各国(友好国)との間柄は、例えていうと“同業組合”のようなものだ。組合の決まり事がいろいろある。ギブ・アンド・テイク(交換)の原則である〉
 〈手持ち情報がない時は、あとから“お返し”するのがこの世界でも常識となる〉
 こうしたことが自前の情報機関を持つべき理由だとしている。同時に自国の防諜体制をいかに作り上げるかが課題になることも指摘する。
 具体的な情報収集にあたっての手法や、それに関連して旧ソ連や中国などが得意とする「ハニートラップ」の詳細などについても詳しく述べられている。人間の持つ様々な弱みや欲望を突く形で情報を取ろうとする相手が攻めてくることがわかる。上海総領事館で起きた館員自殺事件など過去の具体的な事例なども示されている。また著者がある大物政治家に指南したハニートラップを受けないための方法なども興味深い。
待ち構えているであろう長い道のり
 このほか、数あるスパイ小説の中でもフレデリック・フォーサイスとジョン・ル・カレのスパイ小説が考えさせられるという指摘も興味深い。ル・カレが一時期、情報機関に身を置いていたということは本書で初めて知ったが、小説ながらある種のリアリティーをもっていることはそうした背景を知れば理解も深まる気がする。
 さらに、映画「ジャッカルの日」が、かつて警視庁が要人警備の警察官の士気を高めるべく、封切り前に映画館から借りてきて警備部隊に見せたことや、旧ソ連のKGBもそれを見て参考にしたことなども紹介されている。スパイ小説は現実とはだいぶ違うはずだが、映像にすると、また別の意味で参考になる部分もあるということだろうか。最近はやりの「見える化」の効用なのかもしれない。

旧ソ連やロシアのスパイが、国の体制に絶望する形で情報をアメリカやイギリスなど事実上の「敵国」に流していた過去の事例なども興味深い。英国にひそかに機密情報を流していたロシアのスパイが、自分に嫌疑がかけられたのを知り、亡命を決意し、国境までの間に用意された多数の関門をかいくぐって協力者の車のトランクにひそんでフィンランドに脱出するくだりなどは、映画を見ているような緊張感にあふれた記述である。旧ソ連や現在のロシアは自国の機密情報が抜ける国であると同時に、必死になって防諜しなければならない国であることがわかる。同時に米英という国々は、あらゆる手段を尽くして旧ソ連・ロシアの情報を集め、いまも分析を続けている国なのだということを痛感する。
 本書を読み続けていると、こうした現実をまざまざと突きつけられる。国際情報戦の厳しさを実感するとともに、日本がそれに伍してやってゆくにはハードルが高く、長い道のりが待ちかまえているという印象が強い。しかし現実がこうである以上、対応せざるをえない。日本ができるところを少しずつ、著者のいう「トロでなくコハダ」、つまりトロ(米国情報)のように派手ではないが、味わい深いコハダ(日本情報)で渋く職人芸を見せる部分でやるしかないのだろう。まさに「千里の道も一歩から」である。



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