2016年8月25日木曜日

台湾を取り込んで南シナ海&東シナ海を覇権域にしたい共産中国の野望がみえる

海自とアメリカ第7艦隊の戦力分散を画策する中国
中国軍がこの時期に日本海で軍事演習を行った理由
北村淳
沖縄本島と宮古島の間を飛行する中国軍のH6爆撃機(2014年撮影、資料写真)。(c)AFP/JOINT STAFFAFPBB News
 2016年81720日、中国海軍が日本海で軍事演習を実施した。演習の詳細は発表されていないが、2つの戦隊による対抗演習(想定敵戦隊と中国戦隊による実働戦闘訓練)を行った模様である。
 中国海軍はロシア海軍との各種合同訓練を日本海で実施したことはあるが、中国海軍単独での日本海における本格的軍事演習は今回が初めてである。
日本海で実施された中国海軍対抗演習
2016年812日に駆逐艦1隻、フリゲート1隻、それに補給艦1隻により編成された中国戦隊が東シナ海から太平洋に抜け出て北上した。同戦隊は814日、オホーツク海から宗谷海峡を横切って日本海へ進入した。そして816日、フリゲート2隻と補給艦からなる中国戦隊が対馬海峡を北上して日本海へと入った。
 この2つの戦隊が日本海での対抗演習を実施したレッド(仮想敵)戦隊とブルー(味方)戦隊である。人民解放軍による報道発表では、「この対抗演習は特定の国をターゲットにしていない」ことを強調しているが、海上自衛隊戦隊を仮想敵戦隊としていることには疑いの余地がない。
 引き続いて818日と819日には、それぞれ早期警戒機と爆撃機数機からなる航空部隊が対馬海峡上空を抜けて日本海の演習空域へ飛来し、また対馬海峡上空を経て東シナ海上空へ達し、中国本土へ帰投している。
小規模だが戦略的意義のある演習
公海上で行われるこの種の海軍演習は、海上自衛隊や米海軍をはじめ世界中の海軍も行っている。そのため、中国海軍による対抗演習それ自体は何ら問題はない。
ただし、南シナ海そして東シナ海での中国海洋戦力(海軍、海警、海上民兵)による海洋攻勢が激しさを増しているこの時期に、公海上とはいえ日本海で対抗演習という実戦的訓練を行ったということには戦略的意義がある。
 すなわち、海上自衛隊とアメリカ第7艦隊の戦力を分散させるための布石の1つと考えられるからだ。
東シナ海と日本海それにミサイル防衛への戦力分散
現在、尖閣諸島周辺に、海上民兵や海軍特殊部隊を含むであろう多数の中国漁船や、それを監視保護する名目で多くの巡視船が出没しており、東シナ海から西太平洋にかけての海域や上空での中国軍艦や軍用機の活動も活発になっている。
 そうした中国海洋戦力の動きに対処するため、海上保安庁は尖閣諸島を中心とする東シナ海の巡視能力を強化し、海上自衛隊も東シナ海での中国艦艇の動きに目を光らせる態勢を固めている。
 ただし、イージス駆逐艦をはじめとする海上自衛隊の主力艦は、北朝鮮ならびに中国の弾道ミサイルに対抗するため、弾道ミサイル防衛(BMD)艦隊としての役割も負わされている。そのため中国との軍事的緊張が高まった場合には、少なくとも2つのBMD艦隊が日本海に展開し、少なくとも1つのBMD艦隊が東シナ海に展開しなければならない。
 中国による対日弾道ミサイル攻撃を監視し、発射された弾道ミサイルを捕捉し撃破するイージス駆逐艦と、それを敵の水上戦闘艦艇や潜水艦、それに航空機による攻撃から防御する任務を負った護衛艦艇からなるBMD艦隊には、中国艦艇それ自体を追尾したり攻撃する余裕はない。
 したがって有事の際に、中国海軍が東シナ海だけでなく日本海にもそれぞれ数個の水上戦隊を展開させた場合には、海上自衛隊は3つのBMD艦隊に加えて、それらの中国水上戦隊に対抗するだけの戦力を東シナ海と日本海に投入しなければならなくなる。
北朝鮮やロシアに構える港湾補給拠点
中国は直接日本海に面する領土を有していないため、中国艦艇が日本海で活動するには対馬海峡をはじめとする日本の海峡部を通過しなければならない。しかし、人民解放軍が日本と軍事的に対決する決断を下した場合、戦闘が開始される前に必要な艦艇を日本海に送り込んでしまえば、無傷で日本海に軍艦を展開させられる。
 そして、日本との軍事衝突が始まった後は、日本海に展開する中国軍艦は、北朝鮮の羅津、先鋒、清津などに中国が確保しつつある港湾拠点や、ロシアのポシェット湾に中露共同で建設されている大規模港湾施設(本コラム2014918日「南シナ海・東シナ海の次は日本海、中ロが北東アジア最大の貿易港建設を計画http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41729 参照)などからの補給を受けることが可能である。場合によっては、それらの中国の息がかかった港湾施設を中国艦艇が秘密裏に使用する事態も十二分に想定できる。
 北朝鮮やロシアの日本海沿海地域のこうした中国港湾施設は、中国吉林省からは陸路でわずかな距離しかない。よって、中国本土からはそれらの港湾施設に安定した補給ができる。
 だが、海上自衛隊や航空自衛隊には、それらの港湾補給拠点を攻撃する能力は備わっていない。港湾拠点から日本海上の中国艦艇への補給ラインを遮断する戦力もまた欠乏している。
 そして、吉林省からは港湾施設に対する補給ルートが延びているだけではなく、吉林省や黒竜江省の航空基地を飛び立った各種航空機が北朝鮮の上空を通過して日本海に繰り出してくることになる。
 今回の対抗演習では、中国軍機が東シナ海から対馬海峡の上空を北上して日本海に飛行したが、それは日本に対するデモンストレーションのためにわざわざ遠回りをしたのである。有事の際には満州側から直接日本海上空へ向かえば良いのだ。
要するに、中国が海洋戦力を日本海にも繰り出すとなると、海上自衛隊や航空自衛隊は東シナ海に集中させようとしていた防衛資源を日本海にも分散させなければならなくなる。しかし、ただでさえ戦力が十分とは言えない海上自衛隊や航空自衛隊に、そのような分散展開はきわめて困難である。その上、上記のように、海上自衛隊は弾道ミサイル防衛の責務も遂行しなければならないのである。
さらに分散を迫られるアメリカ第7艦隊
日中間の軍事衝突が発生しそうな場合に日本を支援し中国を牽制する役割が期待されているアメリカ海軍第7艦隊(本拠地は横須賀)も、戦力分散という難題に直面することになる。そして、その分散の度合いは海上自衛隊より大きい。
 中国による人工島基地群の建設や、スカボロー礁への侵攻姿勢の強化など、南シナ海情勢が緊迫している。そのため、第7艦隊は南シナ海への出動を常に念頭に置いておかなければならなくなっている。
 ところが、南シナ海に加えて東シナ海でも尖閣諸島周辺を中心に中国海洋戦力の展開が急速に活発化しており、東シナ海での有事の際に海上自衛隊を支援して中国海軍と対決する準備態勢を整えておく必要も生じてしまった。
 それに加えて、中国海軍や航空戦力が日本海でも作戦を展開するとなると、第7艦隊も海上自衛隊を補強するために、日本海に展開させる戦力を用意しなければならなくなる。さらに、海上自衛隊同様に第7艦隊も在日米軍施設を北朝鮮や中国の弾道ミサイルから防衛するために、弾道ミサイル防衛態勢も維持しなければならない。
空母打撃群を擁し多数の戦闘艦艇(原子力潜水艦3隻、イージス巡洋艦3隻、イージス駆逐艦7隻など)の威容を誇る第7艦隊といえども、南シナ海、東シナ海、日本海、それにミサイル防衛に戦力を分散させてしまっては、中国海洋戦力に対する抑止戦力とはなり得なくなってしまうのだ。
日本版A2/AD戦略の整備が急務
中国海軍による日本海での初めての対抗演習は、訓練規模そのものは脅威を感ずるほどのものではない。しかしこの演習は、中国海洋戦力が、東シナ海や南シナ海に加えて日本海でも作戦行動を本格的に始める先触れであると考えられる。そのため、海上自衛隊や航空自衛隊そしてアメリカ第7艦隊にとっては、深刻な戦略的課題を突きつけられたことになるのだ。
 日本政府は、海上自衛隊そして航空自衛隊に対して、東シナ海方面と日本海方面に対して同時に十二分なる戦力を展開できるだけの防衛資源(人員、装備、資金、戦略)をあてがわなければならない。
 しかしながら、海軍力や航空戦力を増強するには、陸上戦力の強化に比べると長い時間と莫大な予算を要する。
 そこで、伝統的な海洋戦力(艦艇、航空機)の強化と平行して日本版「A2/AD」戦略(※)を実施するのがとりあえずは急務である。

(※)「A2/AD」戦略とは、外敵が日本の領域に接近してくるのを阻止するための戦略。ミサイル戦力が中心となるA2/AD戦略態勢の整備は、伝統的な海洋戦力の強化に比べて時間も費用もかからない。


《維新嵐》 中国大陸の周辺海域、南シナ海、東シナ海の権益を中国共産党が望んだ時に、一番脅威であり、邪魔な存在が沖縄と日本列島に駐留するアメリカ軍となってきます。アメリカ軍に十分な力を発揮させないこと、アメリカ軍と自衛隊とを作戦連携させないこと、この2点は、一番に戦略目標になっていることでしょう。だから日米同盟も共産中国の軍事動向の分析を徹底して行い、軍事的な連携をさせないようにしなければ海洋権益は守れません。
アメリカ第七艦隊

南シナ海問題で台湾を抱き込みたい中国
 岡崎研究所 20160822日(Monhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7502

台湾は南シナ海をめぐる中比仲裁裁判を受け入れないとしていますが、台北タイムズの2016714日付社説は、蔡英文総統は従来の「U字線」ではなく実効支配に基づく主権主張をしていると分析、南シナ海の「島」への主権主張に向けて新たな法的構成を構築するよう説いています。要旨、以下の通り。



青天白日旗  iStock

絶対に判決を受け入れない
 南シナ海をめぐる中比仲裁裁判の判決(712日)は、台湾を法的に拘束するものではないが、台湾が支配する太平島(Itu Aba)を含む、スプラトリー諸島の全ての「高潮時地物」を岩に格下げしたのは驚きだ。太平島は、元来フィリピンが提起した仲裁に含まれていなかったが、台湾外交部の発表によれば、仲裁裁判所は自らの権限を拡大し、太平島は排他的経済水域(EEZ)を持たない岩であると宣言した。
 蔡英文政権は、馬英九前政権が支持していた中華民国の「U字線」政策への調整を行っていた。U字線、あるいは「11段線」は、1947年に中華民国により引かれた。これを、国民党が国共内戦に敗れ台湾に逃れた後、中国共産党が1953年にベトナムに配慮して「9段線」とした。蔡政権は最早、太平島への主権を「歴史的権利」ではなく、実効支配に基づき主張しているようである。12日夜、総統府は、判決を「絶対に受け入れない」との声明を発表したが、U字線への如何なる言及も避けた。
 総統府は、「太平島についての仲裁裁判所の決定は、台湾の南シナ海における島と付随する水域への権利を深刻に損なった」と述べた。太平島のみならず南シナ海の「島」への主権をU字線政策無しでいかに維持するのか疑問が残るとの議論があり得るが、蔡政権は、台湾の主張とレトリックを国際慣行に沿ったものとする努力をした。
 仲裁裁判では、台湾は「中国の台湾当局」と言及され、台湾外交部は「中華民国の主権国家としての地位を貶めるものだ」と非難している。しかし、「一つの中国」の枠組みの下での昨年の馬英九と習近平の会談を考えると、台湾と中国が連携しているとの認識を世界が振り払うのは困難かもしれない。国民党は、蔡政権はU字線を支持するよう主張しており、国民党には、台湾に共に先祖伝来の財産を守るよう呼びかけている中国との協力を主張する立法委員もいる。
 判決は、太平島を岩に格下げしたが、同島への台湾の実効支配や主権をはく奪するものではない。蔡は太平島につき強硬な姿勢をとるよう圧力を受けるかもしれないが、台湾の将来の法的議論の構築には、新たな基盤と努力が可能であるし、そうすべきである。
出典:‘Rock-solid sovereignty over Itu Aba’(Taipei Times, July 14, 2016
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2016/07/14/2003650975
南シナ海についての国際仲裁裁判所の判決は中国の「9段線」に関する主張を拒絶した点で歴史的意義を有するものとなりました。ただし、この裁決は、台湾との関係では、台湾当局を特殊な問題に直面させることになりました。
本社説は、台湾が主権を主張し、実効支配してきた「太平島」について、台湾としては、新たな法的論拠を構築して今後とも主権を確保する必要がある、と述べています。この社説の内容は、今日の蔡英文政権の立場を反映するものです。
台湾との共闘を探る中国
 蔡政権としては、裁定を受け入れることはできない、との立場をとっていますが、中国の本件裁定に対する立場とは一線を画しており、中国の主張する9段線を含むいわゆる「U字線」についての歴史的主張を行うことなく、ただ、「太平島」が島としての十分な条件を備えたものであり、単なる岩ではないとの主張を行うにとどめています。
 今回の裁定が台湾当局に言及した際、「中国の台湾当局」と記述した点は、複雑な中台関係に対して十分な配慮が行われていないものとして、台湾では与野党がともに裁定を非難しています。中国としては、今回の仲裁裁判の裁定直後に、台湾との間で、南シナ海問題全体に関し、「共闘できないか」との態度を示したことがありましたが、蔡政権としては、あくまでも「太平島」の主権問題は歴史的経緯をもつ9段線(「U字線」)の問題とは関係がなく、「太平島」という特定の島の主権問題であるとして、はっきりと中国の立場と距離を置く対応をしています。
 台湾では、これまで民進党政権、国民党政権ともに、「太平島」をEEZを持つ島として扱い、陳水扁、馬英九の両総統はともにこの「島」を訪問したことがあります。日本にとって直接関連を持つ島の主権問題として「沖ノ鳥島」があります。馬政権の末期に台湾は「沖ノ鳥島」は島ではなく、岩であるとの立場をとり、日本政府の立場に強く異を唱えましたが、蔡政権になってから、これを急きょ変更し、「沖ノ鳥島」が島であるか、岩であるかは、国際ルールに従うべきであって、それまでは台湾としてはいかなる法的立場もとらない、との基本方針を打ち出しています。
 日本としては、「沖ノ鳥島」をめぐる歴史的経緯、地理的条件などに加え、国際ルールについての自らの立場を十分に理論武装しておくことが、中国、韓国のほか、台湾に対処するうえでも喫緊の課題となるでしょう。
《維新嵐》 南シナ海の海洋覇権獲得のためには、陸地では台湾の戦略的重要性の担保は共産中国にとって十分理解できる話です。ちょうど南シナ海への出入り口にあたる台湾が政治的に離れる事態だけは懸念していると思いますが、だからこそ蔡英文新総統の手腕に期待したいところですし、日米の支援がどれだけできるかがカギになりますね。
沖ノ鳥島は国際仲裁裁判所の判定に厳密にそって判断すれば「岩」ですよ。

【そして朝鮮半島のミサイル戦略のバランスをとるためか?】あの国がまたやらかしてしまいました!
北朝鮮、潜水艦からミサイル発射
 BBC News 20160824日(Wedhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7601
米韓両政府によると、北朝鮮は平成28824日午前、潜水艦発射弾道ミサイルを発射した。米政府は強く非難している。
北朝鮮は、咸鏡南道新浦(ハムギョンナムドシンポ)沖から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星1号」(KN-11)を発射。米政府関係者によると、約500キロ飛行し、日本海に落下した。
韓国軍合同参謀本部は、ミサイルが日本の防空識別圏内に落下した模様だと明らかにした。聯合通信によると、韓国軍は「韓国と米国の軍事演習に反応して、軍事的緊張を悪化させるのがねらいのようだ」と批判し、「北朝鮮によるいかなる挑発にも厳しく協力に反応する」と表明した。米韓軍事合同演習は22日に始まった。
日本の安倍晋三首相は記者団に対して、「我が国の安全保障に対する重大な脅威であり、地域の平和と安定を著しく損なう許し難い暴挙だ」と強く非難し、北朝鮮に厳重に抗議したと明らかにした。
米国務省は「強く非難する」とコメントし、これまでのミサイル実験に加えて今回の発射も国連で問題となるだろうと表明した。
北朝鮮のSLBM発射は、東京で24日に開かれる日中韓外相会議と重なった。
SLBM発射実験としてこれまでよりも技術が向上した様子。SLBMは潜水艦を使うため移動が容易で、発射準備も探知されにくいだけに、周辺諸国は警戒を強めている。
これに先立ち北朝鮮は米韓合同軍事演習を非難し、朝鮮半島が戦争の瀬戸際に追い込まれていると警告していた。北朝鮮は、米韓の合同演習を侵略の予行演習とみなしている。
北朝鮮は核兵器を開発しているとみられており、弾道ミサイルの使用を国連に禁止されているが、今年に入ってミサイル発射実験を繰り返し、5回目の核実験に向けて準備しているとみられている。
こうした状況で米韓両政府は20167月、北朝鮮の脅威対抗を目的に掲げ、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム、終末高高度域防衛(THAAD)ミサイルの配備に合意した。
北朝鮮は平成281月、4回目の核実験を実施。初の水爆実験に成功したと発表した。
続く2月には、長距離ロケットを発射。国連安保理決議で禁止されている長距離弾道ミサイルの発射実験とみられている。
また8月に入ってテ・ヨンホ駐英公使が韓国に亡命するなど、北朝鮮政府高官の亡命が相次いでいる。北朝鮮はテ・ヨンホ氏を「人間のクズ」と罵倒した。
《維新嵐》 北朝鮮の動きを牽制するためには、共産中国の影響力も大きな意味がありますね。

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