2016年2月13日土曜日

アメリカ海軍の戦略構想 ~中国海軍の脅威に備えて~

紛糾は必至、横須賀に2隻目の空母を配備したい米国
中国海軍の“快進撃”で新たに浮上する日本の基地問題
北村淳
 2016.2.11(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46013
横須賀を母港とする米海軍空母「ロナルド・レーガン」(出所:Wikipedia

 アメリカ海軍は20162月時点で10隻の航空母艦(すべて原子力空母)を運用している。それらのうちの5隻が太平洋艦隊(司令部ハワイ、オアフ島)に所属しており、2隻がサンディエゴ、1隻がエバレット(シアトル郊外)、1隻がブレマートン(シアトル郊外)、そして1隻が神奈川県・横須賀を母港にしている。
 米海軍空母10隻のうち、横須賀に配置されている1隻だけが“外国”に母港があり「前方展開空母」と呼ばれている。ちなみに横須賀を母港にする空母は、やはり横須賀を本拠地にする第7艦隊の指揮下に入ることとなる。
 このほど、アメリカの民間シンクタンクによる米軍のアジア太平洋戦略に関する検証レポートが、「前方展開空母を2隻に増加するべきかどうか」に関して言及した。アメリカ連邦議会が公聴会を開いてこの問題を取り上げたことをきっかけに、アメリカ海軍関係者の間で突っ込んだ議論が始まった。
中国海軍の“本格的”空母出現に備える
前方展開空母を1隻でから2隻に増やそうというアイデアが浮上したのには2つの理由がある。1の理由は、中国海軍が近々手にする“本格的”空母に対抗するためである。
現在、中国海軍が運用しているのは訓練用空母「遼寧」であるが、これに加えて“本格的”な空母2隻の建造に取り掛かっている。それらの1番艦は2018年頃に、そして2番艦は2020年頃に、中国海軍のラインナップに加わるものと考えられている(ただし、中国海軍の建艦スピードは、アメリカの海軍専門家たちの見積もりよりも早くなってしまうのが常である)。
 要するに、過去半世紀にわたってアメリカ海軍だけが空母艦隊を作戦行動させてきた東シナ海、南シナ海、それに西太平洋に、早ければ2018年には中国海軍空母艦隊が姿を現すことになるのだ。
 したがって、アジア重視政策を打ち出しているアメリカとしては目に見える形での海軍力増強、それも中国海軍の“本格的”空母出現に対抗するポーズを示すためにも、前方展開空母戦力を増強しようというのである。
より深刻な理由~形になりつつあるA2/AD戦略
2の理由、そして軍事的にはより深刻な理由は、中国の「接近阻止領域拒否」(A2/AD)戦略にアメリカ側が大いなる脅威を覚えてきた(少なくとも、極めて強い警戒感を抱いてきた)からである。
 中国人民解放軍が実施中のA2/AD戦略とは、大雑把にまとめると、中国沿岸そして将来的には第1列島線(日本列島~南西諸島~台湾~フィリピン諸島)にアメリカ軍戦力を接近させないとともに、アメリカ軍が東シナ海や南シナ海そして将来的には西太平洋で自由に作戦行動ができないようにするための戦略である。
 海軍力(海軍航空戦力を含む)でアメリカ軍に大きく遅れを取っていた中国軍は、中国沿岸や沿岸域の艦艇・航空機から発射する様々な長射程ミサイルの開発に努力を傾注してきた。その結果、海軍力そのものでアメリカに対抗できるレベルにはまだ達していないものの、アメリカ軍艦や航空機が中国沿岸に接近することを阻止できるだけの各種長射程ミサイルをずらりと取り揃えるに至った(今も増強は続けられている)。
それらの強力なミサイル戦力と近代化がめざましい航空戦力や海軍戦力によって、米中が軍事的に険悪な状態に陥った際には、東シナ海や南シナ海で、アメリカ海軍によって身動きが取れなくなるような事態を避けられる“拒否能力”も中国海軍は手にしつつある。アメリカ軍関係機関や、民間シンクタンクの多くのアナリストたちはその状況を危惧するようになった。このような中国のA2/AD戦略に対抗するには、軍事予算が縮小してしまったアメリカにとっては、日本やフィリピンといった同盟国による対中防衛網が強化されることが大いに期待するところである。
 しかしながら、極めて弱小な海軍力と空軍力しか保持しないフィリピンにそのような期待をかけることはできない。また、安倍政権は安全保障法制を刷新し、憲法改正も口にしているものの、国防予算の増額は微小に止まっており、とても中国のA2/AD戦略に立ち向かう力はない。したがってアメリカとしては、なんとか自力で中国を牽制する努力をしなければならないのである。
容易ではない「前方展開空母」の増強
前方展開空母を1隻増やすと言っても、空母は1隻で独立して行動するわけではなく、護衛用の艦艇などとともに「空母打撃群」という艦隊を編成して作戦行動をする。

米海軍の空母打撃群(写真:米海軍)

 空母打撃群は基本的には空母1隻、空母に積載される各種艦載機(7090機)、攻撃原潜1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦2隻、戦闘補給艦1隻で編成される。つまり、空母を1隻増強するには、その他の空母打撃群を編成する艦艇と航空機も同時に増やさなければならないのだ。
 空母に積載される艦載機は作戦によって種類と機数は様々であるが、空母に積載されて出動する期間以外は陸上の航空基地を本拠地としている。現在、横須賀を母港としているロナルドレーガン(CVN-76、最大で90機の各種航空機が積載可能)に積載される航空機は、厚木海軍飛行場を本拠地とする第5空母航空団(CVW-5)から供給される。そして、空母と空母航空団は11対応しており、空母1隻を前方展開(海外の港に常駐)させるということは、その空母と対応している空母航空団(200機近い各種航空機)も海外の飛行場に常駐させることを意味している。
 もし、現在横須賀を母港としている前方展開空母1隻を増強して2隻にするといっても、新たに空母1隻を横須賀に持って来れば目標が達せられるわけではない。そのような場合には、現在横須賀を母港にしている巡洋艦や駆逐艦それに補給艦なども倍増されることになるだけでなく、厚木海軍飛行場にも現在のCVW-5の倍の各種航空機が常駐することになるのだ。
 したがって、「横須賀海軍施設にも厚木海軍飛行場にも、それだけの軍艦や航空機を収容する容量があるのか?」という問題がまず浮上する。
 次に、増強される空母艦隊や空母航空団の将兵やその家族(1万名を超える)の住居(基地内とその周辺)を確保するという難問も生じる。
 さらに難しいハードルは、外国にアメリカ軍が駐屯する際の常として、受け入れ先との軋轢という問題である。実際に、そのような軋轢によって、CVW-5は現在の本拠地である厚木海軍飛行場から岩国海兵隊飛行場に移転することになっている。
このような乗り越えなければならない条件、とりわけ地元との軋轢(要するに“基地問題”)を考えると、横須賀がもう1隻の空母の母港となる(ならびに厚木あるいは岩国に2つめの空母航空団が常駐する)ことは極めて困難ということになる。
「それではどこに配置するのだ?」
 そこで、アメリカ海軍関係者たちの間では「2隻目の前方展開空母をどこに配置するのか?」という議論が本格的に開始された。もちろん、ディベートが始められたばかりなので、この先どのようにこのアイデアが進んでいくかは分からない。
 ある者たちは「韓国の釜山に展開させて、日米韓の連携を強化させては?」と主張している。別の人々は「かつて米海軍が大きな基地を構えていたフィリピンのスービック軍港に展開させて空母航空団もキュービ飛行場に常駐させれば南シナ海への睨みが強化される」と主張している。しかし、フィリピンにアメリカ軍が駐屯していた時期の事情を知っている現在の海軍首脳たちの多くは、フィリピンにおける政治的問題点や地元との軋轢の記憶を拭い去ることができず、スービック案には強く抵抗している。
 別の人々は「オーストラリアのパースを母港にすれば、今後中国海軍とのにらみ合いが深刻化するインド洋への出動が便利になるだけでなく、南シナ海にもそれほど遠くはない」と主張している。
 また、ある一派の人々は「横須賀や岩国、そして沖縄のように、外国に軍港や飛行場を確保し維持することは苦労が大きすぎる。グアムならばそのような外国政府との煩雑な交渉や、文化が違う現地の人々との軋轢、などに悩ませられなくて済む」とグアムへの配置を推進しようとしている。
 しかし、「これまで長年にわたってアメリカ空母が母港にしてきているという実績や、空母に対する整備能力の高さを考えると、やはり横須賀がベターだ。政治的問題や、環境への影響などの問題は、日本だけでなくオーストラリアでもフィリピンでも、そしてグアムでも生じている問題だ」と日本案を維持しようとする人々も少なくない。中国のA2/AD戦略の“快進撃”に伴って、日米間には新たな“基地問題”が生ずる日が近いかもしれない。

《アメリカ海軍の2016年2月段階のアジア空母配備状況》

J.C.ステニス空母打撃群、2016年24日に第7艦隊担当海域に進出

配信日:2016/02/08 20:55
http://flyteam.jp/airline/united-states-navy/news/article/59661
J.C.ステニス空母打撃群
ステニス艦上のF/A-18E

アメリカ海軍は、201624()、空母USSジョン.C.ステニス(CVN-74)を旗艦とする空母打撃群(JCSSG)が、日付変更線を越えて第7艦隊担当海域に進出したと発表しました。

JCSSG
は、115()にワシントン州ブレマートンなどを出港し、西太平洋地域へのパトロール航海を実施しています。航海中には同盟国軍と共同演習を行い、太平洋地域の安全保障を海上から支援します。

また、JCSSGは、海軍が進める「グレート・グリーン・フリート」プロジェクトの中心でもあり、代替燃料の使用やエネルギーの効率化に取り組みます。

JCSSG
は、ステニスと搭載する第9空母航空団(CVW-9)、イージス巡洋艦USSモービル・ベイ(CG-53)とイージス駆逐艦USSストックデール(DDG-106)USSウィリアムP.ローレンス(DDG-110)USSチャン・フー(DDG-93)などで構成されます。

なお、横須賀に前方配備されている空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)は出港しておらず、西太平洋地域で活動中のアメリカ海軍空母は、ステニスのみです。


CVW-9
所属飛行隊
41戦闘攻撃飛行隊(VFA-41)ブラックエイセス F/A-18F
14戦闘攻撃飛行隊(VFA-14)トップハッターズ F/A-18E
151戦闘攻撃飛行隊(VFA-151)ビジランティーズ F/A-18E
97戦闘攻撃飛行隊(VFA-97)ウォーホークス F/A-18E
25戦闘攻撃飛行隊(VFA-25)フィスト・オブ・ザ・フリート F/A-18E
133電子攻撃飛行隊(VAQ-133)ウイザーズ EA-18G
112早期警戒飛行隊(VAW-112)ゴールデンホークス E-2C
71海上攻撃ヘリコプター飛行隊(HSM-71)ラプターズ MH-60R
14海上戦闘ヘリコプター飛行隊(HSC-14)チャージャーズ MH-60S
30艦隊補給支援飛行隊第4分遣隊(VRC-30 Det.4)プロバイダーズ
C-2



J.C.ステニス空母打撃群、2016年214日グアムに到着

配信日:2016/02/18 22:25
http://flyteam.jp/airline/united-states-navy/news/article/60028
2016213日、ステニスを離艦するF/A-18E

アメリカ海軍は、空母USSジョン.C.ステニス(CVN-74)を旗艦とする空母打撃群(JCSSG)が、2016214()に、グアムに到着したと発表しました。ステニスに随伴するのは、イージス巡洋艦USSモービル・ベイ(CG-53)とイージス駆逐艦USSストックデール(DDG-106)です。

JCSSG
は、115()にワシントン州ブレマートンなどを出港し、24()に日付変更線を越えて第7艦隊担当海域に進出し、西太平洋地域のパトロール航海を実施しています。グアムでは、地域社会や同盟国との関係を深めるために、乗員たちが社会奉仕活動などを実施します。


※ステニスは暫定的にグアムに配置されてますね。


《アメリカ海軍仕様のオスプレイ》

海軍型オスプレイの正式名称、CMV-22Bと決定  

配信日:2016/02/08 12:30
http://flyteam.jp/airline/united-states-navy/news/article/59660
 アメリカ海兵隊のMV-22B

アメリカ海軍用のV-22オスプレイの正式名称が、CMV-22Bと決定しました。201623日に海軍航空システム軍団(NAVAIR)が発表しました。

同海軍は20152月に、艦載輸送機(COD : Carrier Onboard Delivery)V-22の採用を決定しましたが、V-22海上型と呼ぶだけで正式名称が未決定でした。

COD
の主なミッションは、陸上の基地から空母まで兵員や郵便、優先度の高い貨物をタイムリーに、洋上の司令官の元に届けることにあります。そのため、海兵隊型のMV-22Bと違い航続距離延長燃料システムと、高周波無線装置、放送装置を搭載するため、輸送機を表す「C」とマルチロール機の「M」、VTOL機の「V」を合わせてCMV-22Bとなった模様です。

しかし、空軍型がCV-22Bで海兵隊型がMV-22Bで、なんとも紛らわしい名称です。一時はHV-22Bという名称が流布しましたが、捜索救難機を示す「H」は不適当としてこの名称は破棄された模様です。

海軍では44機のCMV-22Bの導入を予定しており、2018年に生産が始まり2020年から納入が始まります。

《維新嵐》 共産中国の新造空母の情報もあり、海上打撃力の戦力均衡のためにアメリカも戦略を対応させていかなければならない事情があるのでしょう。
我が国海上自衛隊に「ひゅうが」「いせ」に続き、「いずも」「かが」という対潜哨戒、攻撃のためのヘリ空母が開発配備されたこともアメリカ海軍の側面的な補強という点では、効果的な意味があるものと考えられます。
何せ米海軍、空軍にしろ標的型攻撃やヒューミントによってアメリカの新兵器の情報がかなり共産中国へ流れてしまっているということもいわれており、カウンターインテリジェンスという側面からの対抗策の強化が不可欠であるようにも思えます。

北朝鮮を牽制するために続々とアメリカ軍の軍事戦力が投入されています。人民解放軍の海洋覇権戦略への牽制の意味もあるのでしょう。

金正恩氏が震え上がる?“要人”暗殺担う米特殊部隊が韓国入り

米軍、攻撃型原潜も派遣へ

2016.2.11 19:49更新 http://www.sankei.com/world/news/160211/wor1602110035-n1.html
 聯合ニュースは2016211日、米軍が来週、韓国に攻撃型原子力潜水艦「ノースカロライナ」を派遣すると報じた。巡航ミサイル、トマホークなどを搭載した同艦の派遣で北朝鮮による軍事的挑発を牽制する狙いがある。
 3月には米原子力空母「ジョン・C・ステニス」も参加し、韓国近海で史上最大規模の米韓合同軍事演習が行われる予定で、北朝鮮への軍事的圧力を一段と強める。
 米軍は核実験後の1月10日にB52戦略爆撃機を韓国に一時派遣したのに続き、B2ステルス戦略爆撃機やF22ステルス戦闘機の派遣も検討しているという。
 また、韓国国防省は11日、米韓両軍が、最精鋭の空挺部隊をパラシュートで降下させ“敵地”深く侵入させる合同訓練をソウル近郊で実施していると発表した。同訓練を合同で行うのは初めて。
 訓練は3日に始まり、18日まで行われる。こうした訓練の公表は異例で、聯合ニュースは「北朝鮮に対する強力な軍事的警告のメッセージが込められている」との見方を伝えた。

 在韓米軍などによると、イラクやアフガニスタンで要人の暗殺などを担った米特殊部隊も、米韓合同軍事演習に参加するため、韓国入りしている。




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