2016年1月30日土曜日

アメリカ海軍の戦略構想 ~「国防圏」をどう維持するのか?~

米海軍トップが新たな戦略構想を発表
「情報」をさらに重視し、ロシアと中国を警戒
 下平 拓哉 2016.1.19(火)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45797

(しもだいら たくや) 米海軍大学客員教授、防衛省海上幕僚監部防衛部 1等海佐。 防衛大学校(電気工学)卒、筑波大学大学院地域研究研究科(地域研究学修士)、アジア太平洋 安全保障センター(APCSS)(エグゼクティブ・コース)、国士舘大学大学院政治学研究科(政治学博士)。護衛艦いしかり艦長、護衛艦隊司令部作戦幕僚、統合幕僚監部防衛交流班長、第1護衛隊群司令部首席幕僚兼作戦主任幕僚、幹部学校第2教官室長、同校防衛戦略教育研究部課程管理室長などを経て、現職。専門分野は非伝統的安全保障、米国戦略、終戦外交。
米海軍作戦部長、ジョン・リチャードソン大将(出所:米海軍)

201615日、米海軍のトップである米海軍作戦部長、ジョン・リチャードソン(John M. Richardson)大将が「海上優勢を維持するための構想」(A Design for Maintaining Maritime Superiority)を発表した。2015918日に就任して以来、初の戦略ガイダンスの発表である。この戦略構想は、主として「戦略環境」「判断基準」「4つの努力」について書かれている。ここではその概要を紹介し、戦略としての特徴について若干のコメントを述べてみたい。
「海上優勢を維持するための構想」を説明する8ページから成る冊子
米海軍を取り巻く戦略環境
本戦略構想は、戦略環境に大きな変化を与えている要因として、第1に「海洋システムと情報システム、テクノロジーの進展とそれらの相互作用」、第2に「ロシアおよび中国の急速に発展する軍事能力」を挙げている。
 具体的には、まずグローバル経済の拡大に伴う海上交通の増大、新たなテクノロジーの進展に伴う北極海航路の開発や水中資源開発、その他、移民の増大や禁制品の輸送などによって、伝統的な海洋システムはこれまで以上に重要度が増すとともに、争われるようになってきている。
 また、情報システムの進展により人々の繋がりが拡大し、変化のスピードは急速である。さらにテクノロジーの進展は、情報システムにとどまらずロボットやエネルギー貯蔵、人工知能などにまで加速度的な広がりを見せている。そして、これら海洋システム、情報システム、テクノロジーという3つの相互作用がより大きな影響を及ぼしている。
 第2に、米国は、25年ぶりに大国間競争に直面している。ロシアと中国は、急速に軍事的能力を発展させ、米国の弱点を突いた高性能な戦闘能力を追求しており、それとともに強制的で競争的にもなっている。なかでも、中国海軍は、世界中に展開しようとしている。
 さらに、ロシアと中国の台頭に加えて、北朝鮮やイラン、国際テロへの対策も迫られている。そうした状況の中で米海軍は特に高度なテクノロジーを取得することにより、上記の3つ要因を利用しようとしている。
決定を下し行動に移す際の判断基準
本戦略構想は、米海軍の判断基準について次のように記している。
 米海軍がおかれた戦略環境はこれまでにない非常に「複合的な(Complex)挑戦」を受けている。したがって、指揮官の意図を体した分散型の作戦について準備しなければならず、そこでは明確な理解に基づいた信用と信頼が求められている。米海軍がプロフェッショナルとして決定を下し、行動に移す際の判断する基準は次の4つである。
1)誠実
 集団、個人および公然、非公然を問わず、プロとしての行動をとること。
2)説明責任
 問題を明らかにして任務を完遂し、それを正直に評価して、必要に応じて調整すること。
3)主導
 最善を尽くせ。進んで問題解決の姿勢をとり、広く意見を聞いて新たな考えを創出すること。
4)忍耐
 厳しい訓練とファイティングスピリットを維持すること。決して諦めるな。
米海軍が集中的に努力する4つのこと
本構想を実行に移すためには、「戦闘」「知的能力の加速」「海軍チームの強化」「パートナーシップの構築」の4つの努力に集中しなければならない。そして、それぞれは緊密に関係し合っている。
1)戦闘
 海上における、そして海上からの海軍力を強化する。特に、戦略原子力潜水艦の維持・現代化、海兵隊との連携強化、電磁気戦・情報戦・宇宙サイバー戦を進展させる。
2)知的能力の加速
 最高のコンセプト、科学技術、手法を適用するために、個人、チーム、組織としての知的能力向上を加速させるとともに、戦闘能力の効率化のため海軍の知的組織を最適化する。
3)海軍チームの強化
 現役、退役軍人、シビリアン、家族からなる海軍チームを強化して将来に備える。「Sailor 2025」を推進する。
4)パートナーシップの構築
 他の軍種や省庁、同盟国、パートナー国のみならず、産業界や学術界、非伝統的なパートナーとの協力関係を強化する。
将来を描くためには「構想手法」が不可欠
以上が米海軍の「海上優勢を維持するための構想」の概要である。本戦略構想の最大の特徴は、「構想(Design)」という言葉を使っていることだ。
 筆者が教鞭を執っている米海軍大学の「統合軍事作戦」(Joint Military Operations: JMO)というセミナーにおいても、様々なケーススタディを考える際に同様の「構想手法」(Design Methodology)を適用している。それは、従来の作戦計画策定要領等では解くことに限界がある、「構造が不明確(ill-structured)で複合的な問題」を解決する糸口を探すために使用される。
「構想手法」では、(1)現在の作戦環境を理解し、(2)問題点を明確化して、(3)将来のための解決策を案出するというステップを踏む。そこで最も重要視されていることが、(1)の作戦環境の理解である。
 わずか8ページの本戦略構想のなかで、「情報」(information)という言葉が17回も使われている。そのことからも、作戦環境を正確に捉えるための情報の重要性が分かる。リチャードソン大将は、就任のわずか3週間後に米海軍大学を訪れ、米海軍大学の重要性と役割について講演で次のように述べた。
「世界の変化は激しいが、長い歴史を有する米海軍大学は、それにシームレスに対応し続けてきた。つまり、様々なやり方で将来の安全保障環境を定義し、どのような将来かを描くのだ」
 より変化が激しく難解な、将来の複合的な安全保障問題を解くためには、将来を描く「構想手法」が不可欠であり、そのためには知的能力を集中し、最大限に加速することが必要なのである。何よりも現下の安全保障環境は、従前の受動的な姿勢では対応の時期を逸し、大きく国益を損なう危険性を孕んでいるほど厳しく急激であることを再認識しなければならない。(本見解は執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。)
アメリカ海軍新兵募集VTR
中国台頭で変わる米海軍 本格化する国防省対中戦略
岡崎研究所
20160127日(Wedhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/5948

戦略の専門家で、ジョンズホプキンス大学大学院や米海軍大学で教鞭を執るトマス・マンケン教授がインタビューに応じ、米海軍の直面する課題とその将来について語っています。以下は、そのインタビューの要旨です。
冷戦後のシーパワー変化の特徴について
 水上艦や潜水艦、航空機への投資は大規模になるので、数十年にわたる使用を念頭に計画される。だから、現在の米海軍を含む世界の海軍に冷戦期の名残があるのは驚くべきことではない。ただしこの前提は、急速に近代化する中国海軍には当てはまらない。彼らの大部分は冷戦後に整備されたものだからだ。
 冷戦後の大きな変化の1つは、いわゆるA2/ADである。精密誘導兵器やセンサー、指揮統制能力の拡大により、航空機や水上艦は徐々に脆弱になってきている。ゆえに、潜水艦がシーパワーの中でも重要な存在となってきており、今後もそれは続くと思われる。
冷戦後の海軍における技術上の発展・革新について
 最重要分野の1つは無人システムの発展である。それは無人航空機(UAV)にとどまらず、無人水上艇(USV)や無人潜水艇(UUV)についても言える。今後は無人システムが偵察から攻撃まで、様々な分野で活躍することになろう。
 それ以外の分野で実用化が見込まれるのは、洋上で使用する防空・ミサイル防衛用のレーザー兵器やレールガンだ。レーザー兵器はその実用性が実証されれば、(攻撃優位とされている)ミサイルとミサイル防衛のバランスを変化させるかもしれない。レールガンの実用化は、海軍の地上攻撃能力向上に繋がる。
海軍に変化をもたらした要因について
 海軍は、冷戦後、イラク・アフガン戦争時、そして現在と、常に予算削減に直面してきた。その一手段として、能力は控えめでも、数を多く揃えるというコンセプトでLCS(沿海域戦闘艦)のような計画が進められた。
 しかし近年、中国の能力向上や、ロシアの挑発のような外国の軍事発展が海軍の技術を促進するようになっている。中国は海空軍事力の増強に力を入れ、ロシアはミサイル分野、特に洋上発射型巡行ミサイルで世界をリードしている。それは最近のシリア攻撃で見た通りだ。
海軍に600隻規模の艦船が必要という意見について
 海戦において、量と質の両面が重要である。艦船の保有数は、プレゼンスや抑止、同盟国への安心供与の観点から、海軍の重要な役割を担保している。
 だが質も重要となる。プレゼンスや抑止、安心供与は、信頼できる戦闘力に基づいている。LCSのような船舶は比較的安く調達できるが、戦闘力の信頼性が低下しているため、最終的に抑止効果や同盟国への安心供与を弱めている。
民間企業との協力について
 予算制約が続けば、海軍が新技術を開発するのに民間企業に頼る機会は増えてくるだろう。総じて、国防省はアイディアのみならず、開発費についても民間に依存するようになるだろう。
海軍の役割の変化について
 海軍はソ連崩壊以降有力な競争者がいなかったが、戦争の性格が変わるとともに、中国が急速に有力な競争者になっている。この双方が、今後の米海軍のあり方に大きく影響する。
出典:Thomas Mahnken Naval Warfare‘(Cipher Brief, December 20, 2015
URL
http://thecipherbrief.com/article/naval-warfare
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本格化し始めた国防省の対中戦略
 上記インタビューで、マンケン教授は、中国の急速な台頭が、米海軍のありかたに大きな影響をあたえていると述べています。
 マンケン教授は、特にA2/ADの挑戦に立ち向かう必要があり、そのために米国の技術的優越を死守することが重要であると述べていますが、これは、国防省の考えと軌を一にするものです。精密誘導兵器やセンサー、指揮統制能力の拡大により、航空機や水上艦が徐々に脆弱になってきているなかで、レーザー兵器やレールガンの実用化に力を入れているのは、A2/ADを念頭に置いた米海軍の新しい戦略です。
 米政府はアジア・リバランスを明らかにしましたが、このような米海軍の新戦略は、米海軍がアジア・リバランスを実施していることに他なりません。アジア・リバランスはいろいろな側面がありますが、米海軍のアジア・リバランスは、対中戦略の核心です。それは選択によるリバランスではなく、アジアにおける中国の軍事的優位を許さないという、必要に迫られたリバランスです。
 この戦略の裏付けとなるFY2016の国防予算は、一度オバマ大統領の拒否権に直面したものの、最終的には当初要求の99%を満たす計6068億ドルが授権されるに至っています。南シナ海問題やアジア・リバランスの実効性など、オバマ政権の政策には批判的見方も少なくありませんが、今回の国防予算の成立を鑑みるに、将来の対決をも視野にいれた国防省の対中政策はいよいよ本格化し始めていると言えましょう。
 トマス・マンケン教授は、日本での知名度は決して高くありませんが、かつて政策企画担当の国防次官補代理を務め、過去にはQDR4年ごとの国防見直し)やNDS(国家防衛戦略)の立案にも携わった米戦略コミュニティの中心人物の1人です。それを象徴するように、来る3月にはアンドリュー・クレピネビッチの後任として、CSBACenter for Strategic and Budgetary Assessment)の新代表に就任することが決まっています。
アメリカ海軍第七艦隊 世界最強艦隊の全貌
アメリカ海軍、国防総省の戦略構想をふまえた上で、以下の諸氏があげる問題点についてそれぞれ考えをめぐらせていただければと思います。
日米両首脳はなぜ中国の脅威から目を背けるのか
安倍首相もオバマ大統領も現状認識が甘すぎる
北村 淳 2016.1.28(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45891
中国・北京の天安門広場で行われた軍事パレードに参加した中国軍の大陸間弾道ミサイル「DF(東風)5B」(201593日撮影、資料写真)。(c)AFP/ROLEX DELA PENAAFPBB News

安倍首相の施政方針演説では、日本を取り巻く緊迫した軍事情勢と、それに対する政府の基本方針が全く語られなかった。さすがに安倍政権寄りの一部日本メディアも、その姿勢には少なからぬ危惧の念を表明していたようである。
 だが、それらのメディア以上に不満を口にしているのが、極東軍事戦略に携わるアメリカの軍事関係者たちだ。
日本を取り巻く不穏な情勢への言及は?
米海軍関係大学院で極東戦略の教鞭をとる退役将校は次のようにこぼす。
「安倍政権は昨年、国民的議論として盛り上がった安全保障関連法案を成立させた。その際、せっかくリーダーシップを発揮した(アメリカの軍関係者たちの目から見てだが)にもかかわらず、その後は日本の具体的な国防政策に目立った動きが見られない。安倍首相の施政方針演説でも、安全保障関連法制に基づいた国防戦略や具体的方針などへの言及がなされなかった。アメリカと違って、スローテンポでじわりじわりと政策転換を進めていくのが“日本方式”なのかもしれない。しかし、日本を取り巻く軍事情勢は急展開している。日本国内の内政問題と違い、相手が外国勢力である軍事外交に“日本方式”は危険ではなかろうか?」
 たしかに、昨年(2015年)末から正月を挟んでのわずかの期間だけでも、以下のような出来事が立て続けに起きている。
1)中国海警局の重武装巡視船が尖閣周辺海域に出没を繰り返す。
2)中国海警局の超大型“モンスター巡視船”が尖閣周辺海域と南沙諸島海域に同時に展開できる態勢が整う。
3)南沙諸島の中国人工島に建設されていた3000メートル級滑走路が運用可能な状況に立ち至った。
4)北朝鮮が水爆実験と称する核実験を実施した。
5)中国人民解放軍が、日本が大金を投じてアメリカと共同配備を進めている弾道ミサイル防衛システムを打ち破る能力を持った極超音速グライダーの開発に成功していたことが確認された。
6)日本を射程圏に収める各種長射程ミサイルを開発し配備する司令塔である「人民解放軍第二砲兵部隊」が「人民解放軍ロケット軍」に改組され、さらに強化された。
7)ロシアが中国人民解放軍に対して、世界最強戦闘機の1つと言われているSu-35戦闘機の本格的な供給を開始した。
 このように日本に直接悪影響を及ぼしかねない軍事情勢だけでも、次から次へと発生しているのである。
 しかしながら施政方針演説では、日本の領土領海が脅かされている東シナ海情勢についてまったく触れなかった。日本に対する様々な軍事的脅威を強めつつある中国人民解放軍についての言及もなされず、南沙諸島をはじめとする南シナ海情勢も無視された。

2013年に本コラムに掲載した人民解放軍の長射程ミサイル(弾道ミサイル、長距離巡航ミサイル)による対日攻撃態勢図。このような対日攻撃準備は現在も強化されている。そして、移動式地上発射装置によって地上からのミサイル攻撃を担当する「第二砲兵部隊」は20151231日をもって「ロケット軍」に格上げされた。また、日本とアメリカが取り揃えている弾道ミサイル防衛システムを打ち破るための極超音速グライダーも開発されている。
オバマ大統領も中国軍の動向に触れず
南沙諸島での人工島建設や軍事拠点の設置をはじめとする中国による南シナ海支配態勢の加速度的進展状況に関しては、アメリカのオバマ政権も口をつぐんでしまっている。
 安倍首相の施政方針演説に先立つ112日に行われたオバマ大統領の“最後の”一般教書演説(アメリカ版施政方針演説)でも、一般教書演説としては珍しく国防問題に関してはあまり言及がなかった(安倍首相の施政方針演説よりも、演説全体に占める割合は大きいが)。
 さすがにIS(イスラム国)を中心とする対テロ戦争に対しては詳しく言及し、IS壊滅に全力を投入するという意向は明言した。しかしながら、具体的にどのような戦略を実施するかについては語ることはなかった。そしてオバマ大統領は、アメリカ(とりわけ政治サークル)にとって伝統的に東アジア情勢よりも関心が高いイスラエル・パレスチナ問題に対しても触れなかったため、一部の親イスラエル派などでは、「オバマ大統領のイスラエル潰しが加速された」といった反発すら生じている。
 アメリカの大多数の政治家や軍関係者たちにとって最大の国防問題は中東問題・対テロ戦争である。しかし、それらに対してすら、米海軍関係者の口を借りると「ほとんど中身のあることは述べられていない」したがって、オバマ大統領が今回の一般教書演説で、中国や北朝鮮の軍事動向、あるいは中国・北朝鮮周辺の同盟・友好諸国に対する軍事的脅威に関して触れることがなかったのは当然だったと言えよう。
「アメリカは弱体化していない」とオバマ大統領
 もっとも、オバマ大統領は「世界最大規模の軍事予算を支出しており、人類史上最も優れた軍隊を要するアメリカは、依然として世界最強の軍事大国である」と明言した。そして「(中国やロシアなどの)仮想敵国が強力化しつつあるのに反して、アメリカが弱体化している」という“レトリック”は、「間違っているにもほどがある!」と3度も繰り返している。しかしながら、アメリカ海軍関係戦略家たちの間では、アメリカ海軍力の低下が真剣に取り沙汰されている。そして、それ以上に海兵隊や陸軍など地上戦力での戦闘力低下に対する危惧の声が上がっていることも事実である。もちろん、軍内部からのそのような声があがるのは、予算確保と人員削減への牽制、といった思惑がないわけではない。しかしながら、軍事関係シンクタンクや軍教育機関の研究者の多くも、オバマ大統領が切り捨てた「敵勢力が強力化しつつあり、米軍戦力が弱体化しつつある」という“レトリック”を、具体的データを基にして論じている。
 例えば、「中国が南シナ海で人工島を7つも建設した」「軍用滑走路を3本も完成させた」「アメリカ空母を撃破する対艦弾道ミサイルを実用化した」「アメリカの弾道ミサイル防衛システムを打ち破る極超音速グライダーの開発にこぎつけた」といった数々の事実が、今、アメリカの眼前に突きつけられている。
 そうしたいずれの脅威も「世界最強のアメリカ軍にとっては恐れるに足りないため、一般教書演説では無視し去ったということなのだろうか?」と、オバマ大統領の対中姿勢に対する疑問の声も少なくない。
頼みの綱のアメリカが本当に抑止力となるのか?
ある米海兵隊関係者は次のような疑問を呈する。
「安倍政権は、南沙諸島をめぐりオバマ政権がようやく重い腰を上げて踏み切ったFONOP(公海自由航行原則維持のための作戦)への支持を表明している。それにもかかわらず、施政方針演説では南シナ海問題には一言も触れていない。それでいながら、『日米同盟を強化して抑止力を維持していく』ことが安倍政権の国防政策の根幹であると強調していた。日本国防当局は、“沖縄の基地問題”というローカルポリティックス、あるいは地方の不動産問題を解決することが日米同盟強化にとって最大の懸案と思い違いしているのではないのだろうか?」
 たしかに日本政府、とりわけ安倍政権にはあまりにも現状を甘く見ている姿勢が見受けられる。「日米同盟という“枠組み”が波風立たずに維持さえされていれば、アメリカ軍という“虎の威”に中国は恐れをなして、日本に対する軍事攻撃や軍事的圧迫を思いとどまる」と考えていると見なされても致し方がない。
 しかし、いくらオバマ大統領が「現在もアメリカ軍が世界最強である」と強調しても、東シナ海戦域、南シナ海戦域、東北アジア戦域といったように、局地的軍事紛争を考えた場合には「アメリカ軍最強論」こそレトリックにすぎない状況になりつつある。
 今回の安倍首相の施政方針演説だけが日本の国防政策の表明ではないが、「日本自身がどのような国防戦略を実施するのか」という基本方針を明確にしないで、ただ「日米同盟を維持することによって抑止力を確保する」と繰り返しているだけでは、決して真の抑止力は生まれない。

《維新嵐にいわせてください》我が国の場合は、安倍政権や自公与党が有効な安全保障政策を打ち出しても自公のやること自体が気に入らない民主党が「反対勢力」を結集して横やりをいれてきます。
北村氏のいわれることはもっともと思いますが、リベラル勢力が中核にいる政党が野党第1党にいる今の国会の現状では、革新的な安保政策は厳しいでしょう。何といっても「国防軍」の構想がでただけで真っ青になってつぶしにかかる方々がいるくらいです。「自衛隊」という呼称自体がアメリカ追随ということに気づかない日本人が多すぎます。「国防軍」が「普通の」国の安保感覚です。
アメリカは、台湾の戦略的な重要性を忘れていない様子が以下の記事からわかります。戦略的に西の国防線を守ろうとすれば、台湾と沖縄は外せません。尖閣諸島は共産中国が「要塞化」しようとする意図がみえてますから、沖縄と台湾を分断されないようにするには抑えておくべき要衝ですよ。

米対台湾武器売却に中国猛反発
岡崎研究所
20160128日(Thu)  http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5950

20151216日、オバマ政権は4年ぶりとなる台湾への武器売却計画を発表。中国側は直ちに抗議をしましたが、1224日付ニューヨークタイムズ紙社説は、売却内容はさして目くじらを立てるほどのものでないとして、次期民進党政権との間で建設的関係の構築に力を入れるべきだ、と述べています。

台湾を大きく凌ぐ中国の軍事力
 オバマ政権が台湾に対する約18億ドルの武器売却計画を発表したことにつき、中国は予想通り騒々しく不満を訴えている。鄭沢光外交部副部長は、米国は米中共同コミュニケを破っただけでなく、中国の主権と安全保障にダメージを与えた、と言っている。
 だが、中国の訴えは大げさである。長らく、米国は台湾に武器を売却してきたし、今回の売却も控えめで驚くにあたらない。より重要なのは、中国の軍事力は台湾のそれを大きく凌いでいるということである。
 今回の売却パッケージには、2隻のフリゲート(オリバー・ハザード・ペリー級)、対戦車ミサイル、機雷掃海用戦闘システム、水陸両用車、通信システムが含まれている。米国からの武器売却は2011年以来となり、これで計140億ドルの兵器が売却されたことになるが、そこには中国を間違いなく怒らせることになるであろう、新型のF-16C/D)や潜水艦は含まれていない。
 もし中国が空爆や侵攻を決断すれば、台湾はそれを撃退できない。それほどまでに中国は自身の軍事能力を向上させている。そうした中、米国の武器供与は、中国に米国と直接対峙する可能性につき、再考を促す材料になっている。
 中国は、武器売却に関わる米企業と取引しないと脅しをかけているが、そもそも米防衛産業は中国への武器売却を禁じられているので、その脅しがどこまで効果があるかは不明である。
 今回の武器売却は、台湾総統選の1ヶ月前という時期に公表された。次期総統選では、中国と距離をとる民進党が勝利すると目されていた。民進党の呉秘書長は、武器売却を歓迎し、台湾の強固な防衛力が中国との関係拡大に更なる自信をもたらすと述べている。
 中国は、両社会の平和と繁栄に寄与するよう、台湾との建設的関係を築くことに注力すべきである、と主張しています。
出典:‘Chinas Tantrum on Taiwan Arms Deal’(New York Times, December 24, 2015
http://www.nytimes.com/2015/12/24/opinion/chinas-tantrum-on-taiwan-arms-deal.html?_r=0
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武器売却は中台軍事バランスに影響を与えるのか
 今回の米国の対台湾武器売却計画の発表に関する中国の抗議が大げさであるというのは、社説の言うとおりでしょう。
 まず、米国は馬英九政権にすでに3回も武器を売却しています。その上、売却武器に新型のF-16C/D)や潜水艦といった攻撃性の高い武器は含まれていません。
 中国と台湾の軍事バランスは、中国の着実な軍事力強化で近年急速に中国に傾いています。中国は数分のうちに台湾の目標に照準を合わせることのできる弾道ミサイルを2,000基近く保有しています。また、対艦弾道ミサイル、衛星攻撃兵器、最新のジェット戦闘機、攻撃型潜水艦など、米国の接近を阻止する兵器を増やしています。台湾の国防部は10月、2020年までに中国が米国の干渉をはねのけて台湾を侵攻する能力を持つであろうとの公式見解を発表しました。
 今回の武器売却は、このような中台間の軍事バランスに影響を与えるものではありません。それにもかかわらず中国が抗議したのは、原則の問題であるとともに、米国が攻撃性の高い武器を台湾に売却することを牽制する狙いがあったものとみられます。

 米国が、台湾の中国に対する軍事力の強化にさして貢献しないレベルの武器の売却をしたのは、いざという場合の米国の台湾防衛へのコミットメントを再確認するという意思表明であったと考えられます。それは、中国に台湾の武力解放を躊躇させるという意味で、台湾にとっても意義のあることです。
アメリカ海軍戦士の歌


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