2015年7月15日水曜日

みんなで変えよう自衛隊! ~安全保障関連法案の成立の行方~

【派遣自衛隊のリアル見よ】安保法案審議にモノ申す
勝股秀通 (日本大学総合科学研究所教授)

20150715日(Wed) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5158


説明不足」とか「わかりにくい」といった国民世論に加え、自民党推薦の憲法学者が「法案は違憲」と指摘するなど、集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案の国会審議は迷走を続けている。
 政府・与党は、国会の会期を95日間延長することで、法案の確実な成立を目指しているが、これまでのような説明を続ける限り、国民の理解が得られるとは思えない。国会審議を聞いていても、活動の現場や法案の主人公である自衛官の姿が見えないからだ。
法設備の欠如で高まるリスク
 国会審議は冒頭、法案に反対する野党から、法整備によって自衛隊の活動範囲が広がり、「自衛官のリスク」が高まると指摘された。これに対し中谷防衛相は「自衛隊は厳しい訓練を重ね、リスクを極小化してきた」などと答弁するにとどまっている。災害派遣でも危険な状況に直面することがあるように、活動の幅が広がれば自衛官が死傷するリスクが高まるのは当然だろう。
 しかし、政府がなすべきは、法律がないために、現場で活動する自衛官たちが、何度も危険な状況に直面してきた事実を明らかにすることだ。
 その一つは、自衛隊が初めて国連平和維持活動(PKO)に派遣されたカンボジアでの出来事だ。199345月、民主化へのプロセスとなる総選挙が近づくにつれ、ポル・ポト派による選挙妨害が相次ぎ、日本人の国連ボランティアが殺害されたのに続き、岡山県警から派遣された文民警察官もゲリラに襲撃され死亡した。
 こうした緊迫した状況の中、日本からボランティアとして派遣されている41人の選挙監視員をどうやって守るのか─が、当時の政府の最大の懸案となった。開会中の国会では、「現地の自衛隊に守らせろ」という無責任な意見が大勢となっていた。
 なぜ無責任かと言えば、当時も今も、PKO協力法に基づく自衛隊の活動に、現地の日本人や一緒に活動する他国軍の兵士を守るという「警護」の任務は与えられていないからだ。警護は武器の使用が前提であり、憲法で禁じた武力の行使に発展するおそれがあるという判断だ。にもかかわらず、選挙監視員が犠牲となる事態を恐れた政府は、当時の防衛庁に対し、ひそかに警護手段を考えるよう要請していた。
 そもそも自分の身を守る場合(正当防衛)にしか武器の使用が認められていない隊員たちが、どうやって選挙監視員を守ることができるのか。防衛庁と陸上自衛隊が出した答えは、およそ軍事常識では考えられない『人間の盾』という作戦だった。
 本来、選挙監視員が武装ゲリラに襲撃されれば、自衛隊はその場に駆けつけ、ゲリラと交戦して監視員を救出する。ところが、そうした武器使用が認められていない隊員たちに求めたのは、自ら進んで襲撃するゲリラの前に立ちはだかり、ゲリラの標的になることで正当防衛を理由にゲリラを掃討する、つまり、隊員たちに「選挙監視員たちの盾になれ」という作戦だった。銃撃戦は必至との判断で、部隊では精鋭のレンジャー隊員ら34人をリストアップ、指名された隊員たちの多くは、妻や子、親兄弟に宛てた遺書を書き残し、“その時”に備えていたという。
幸い、彼らが人間の盾になるような悲劇は起こらなかった。だが、9411月には、ルワンダ難民の救援活動に派遣されていた自衛隊が、武装難民に襲われ、車両を奪われた日本の医療NGOのスタッフを救出したほか、200212月には、東ティモールの首都ディリで暴動が発生。緊急出動した現地の自衛隊は、孤立した国連事務所の職員ら、日本人を含む7カ国41人の民間人を救出し、自衛隊の宿営地に収容するなど、「駆けつけ警護」は海外に派遣された自衛隊がこれまで何度も直面してきた問題だ。
 今回の安保関連法案では、PKO協力法を見直し、一緒に活動する外国部隊の兵士やボランティアなどの民間人を助ける駆けつけ警護が任務として加わり、その任務への妨害を排除するための武器使用が認められている。
 自衛隊の活動は大きく広がるが、こうした国際協力活動の現場を知れば、法律が整備されることによって、自衛官に人間の盾などという人権を無視した作戦を強いることもなく、リスクを下げることにもつながることが理解できるはずだ。決して、野党が指摘するような「活動範囲が広がればリスクが高まる」といった単純な話ではないことに気づくだろう。
シーレーン防衛は恩恵に浴す国の債務
 一方、国民の理解が得られていない最大の焦点は、政府が集団的自衛権を行使する事例として説明してきた中東・ホルムズ海峡で機雷を除去するケースだ。しかし、これは丁寧に説明しなければ理解を得ることは難しい。
 前提として、この問題は00年代末に核開発をめぐって米欧と激しく対立するイランが、機雷を敷設して海峡を封鎖するおそれから浮上した議論だ。その後、イランは政権が代わり、米欧とも歩み寄りはじめており、現在、イランがペルシャ湾に機雷を敷設するような危機は遠のいたと言っていい。
 だが、過激派組織「イスラム国(IS)」に象徴されるように、世界は今、かつてないほど激しく動揺し、テロなど邪悪な犯罪も横行している。混沌としはじめた国際秩序の中では、海上交通路(シーレーン)の安全を脅かすいかなる事態がいつ起きても不思議ではない。
 その証拠に、ペルシャ湾やインド洋では、12年から毎年、30を超す国々の海軍が国際掃海訓練に参加し続けている。各国にとって、シーレーンの安全が何より重要だからだ。訓練内容も、機雷除去はもとより、小型船を使った自爆テロなど幅広い危機も取り上げられるようになり、しかも、訓練を主導しているのは、米英海軍と海上自衛隊だ。その日本が、危機になったとき、集団的自衛権が行使できないことを理由に、われ先にと国際協力という連携の輪から離脱するのだろうか。
 湾岸戦争(91年)で日本は、国際社会から「カネしか出さない」「一国平和主義」などと非難され、政府は海上自衛隊の掃海部隊をペルシャ湾に派遣した。自衛隊初の国際貢献活動だったが、部隊の到着を一番喜んだのは、アラブ首長国連邦のドバイやバーレーンなど中東の地で暮らす日本人だった。
 ドバイには金融機関や商社など日本の大手企業約70社、約500人の日本人が駐在していたが、湾岸戦争がはじまって以来、各国が次々と戦闘部隊や医療部隊を派遣してきたにもかかわらず、日本は「何もしない国」という不名誉なレッテルを貼られ、現地での商談は激減し、ビジネスマンだけでなく、その家族らも肩身の狭い思いをして暮らしていたからだ。
重量ベースで輸出入の99%以上を海上輸送に依存する日本にとって、中東からインド洋を経て日本に至るシーレーンの安全は、生存のために死活的に重要だ。この事実に異を唱える人は少ないだろう。ならばこの先、機雷やテロ、紛争などによってシーレーンの安全が脅かされる事態に直面したとき、多くの国々と連携して危機に立ち向かうのは、その恩恵に浴している国の責務ではないのか。
 これまで憲法などの制約によって、安全保障をめぐる問題では常に、「日本に何ができるか」ばかりを議論してきたが、本来は「日本は何をすべきか」を考えなければならないはずだ。ホルムズ海峡における機雷掃海などシーレーンの安全を維持する活動は、集団的自衛権の行使とは少し次元の違う問題だと思うが、新たな議論の出発点とすべきテーマではないだろうか。
法案は日本の安全高める手段
 国会審議を通じて、こうした具体的な事例や現場の状況が伝えられれば、「説明不足」とか「わかりにくい」といった批判は、少しは解消されるのではないか。ただし、今回の安保関連法案審議が迷走する最大の理由は、日本の平和と安全にとって最も優先順位の高い武力攻撃に至らない侵害、いわゆるグレーゾーン事態への対処が抜け落ちてしまったからだ。
 中国を刺激するなといった圧力や、警察と自衛隊の権限争いなどがその背景として取り沙汰されている。しかし、そもそも国民の多くが、総選挙を通じて安倍政権が進める安全保障の法整備を支持し、その必要性を痛感したのは、中国が尖閣諸島の領有権をめぐって挑発を繰り返し、東シナ海上空に防空識別圏を設定、海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射するなど危機をエスカレートさせているからだ。
 軍事衝突につながりかねない事態であり、日本は今、世界で最も厳しい安全保障環境に置かれているといっても過言ではない。国民にすれば、目の前の課題を議論しない国会審議を聞いていても、実感がわかないというのが本音だろう。
 とはいえ、審議中の安保関連法案の優先順位が低いかと言えば、決してそうではない。日本の平和と安全を高める手段として、極めて限定的であっても、万が一の危機に直面した際に、集団的自衛権を行使することができれば、アジア太平洋地域で圧倒的な抑止機能を果たしている米国との連携は今まで以上に強化され、中国や北朝鮮が軍事的な手段を用いて日本を挑発しようとするハードルが高くなることは間違いない。
 例えば、朝鮮半島有事で北朝鮮が弾道ミサイルを発射する場合など日本有事に直結しかねない事態において、地域の平和と安定のために汗を流す米軍をしっかりとサポートすることは、日本にとって当然だろう。さらに、他国軍に対する補給などの後方支援活動や、PKOなどの国際協力活動において駆けつけ警護が可能になれば、これまでにも増して日本がグローバルな安全保障にも貢献し、国際社会からより強固な信頼と支持が得られるだろう。

 安保関連法案は満足できる内容ではないが、成立させることが重要だ。国会審議の先には、グレーゾーン事態への対処や自衛官の身分など、まだまだ見直すべき課題は山のようにある。
【自衛隊派遣の「恒久法」】周辺事態法改正で対応~政府与党が検討
2015.1.23 07:00更新 http://www.sankei.com/politics/news/150123/plt1501230004-n1.html

 政府・自民党は自衛隊を迅速に海外派遣する方策として、新法による「恒久法(一般法)」を模索してきた。だが、通常国会には複数の安保関連法案を提出するため、審議日程を考慮し、周辺事態法改正による対応で調整している。政府・自民党の一部には新法による恒久法制定を求める向きもあることから詰めの作業を行ったうえで、平成26年度補正予算案が成立する2月中旬以降、自民、公明両党が法案の協議に入る。
 周辺事態法改正案では、新たな安保法制の整備に向けた昨年7月の閣議決定に基づき、非戦闘地域でなくても「現に戦闘行為を行っている現場」でなければ、自衛隊による他国軍支援を可能とする。公明党の主張に配慮し、自衛隊の海外派遣には原則として国会承認を必要とするが、派遣後の事後承認も認める。武器弾薬の提供や、発進準備中の航空機への給油や支援活動もできるようにする。


現行の周辺事態法は朝鮮半島有事を念頭に、事実上、日本周辺の後方地域での米軍支援に限定している。政府は、周辺事態を「放置すれば日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と定義し、地理的に特定、確定される「地理的概念」ではないと説明してきた。だが、「中東やインド洋で発生することは、現実の問題としては基本的に想定されない」との国会答弁もあり、活動可能な範囲は日本周辺に限定されるとみなされてきた。
 実際、自衛隊によるインド洋での給油活動は、平成13年にテロ対策特別措置法を制定して対応した。事態ごとに特措法を制定するのでは時間がかかる上、時限法のため期限が切れれば、自衛隊は活動の法的根拠を失う懸念があった。


安保法案、衆院特別委可決…自・公の賛成多数で
読売新聞2015715()1233分配信 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150715-00050043-yom-pol


多くの野党議員が「反対」されている法案とは?

 今国会最大の焦点となっている安全保障関連法案は2015年7月15日、衆院平和安全法制特別委員会(浜田靖一委員長)で採決が行われ、自民、公明両党の賛成多数で可決された。

 民主、維新、共産の野党3党は反発し、採決に加わらなかった。与党は、関連法案を16日の衆院本会議で可決、参院に送付する方針だ。

 特別委では、採決に先立ち、締めくくり質疑が行われた。安倍首相は答弁で、法整備の意義について「安全保障環境の変化に目をこらさないといけない。国民の命を守るために切れ目ない対応を可能とする今回の法制が必要だ」と強調。「残念ながらまだ国民の理解が進んでいる状況ではない。国民の理解が進むようにしていきたい」とも語った。

 民主党の長妻昭代表代行は「国民に説明を尽くしたのか。強行採決は到底認められない」と述べ、採決の取りやめを首相に求めた。維新の党の下地幹郎氏は「世論調査をみると、充実した審議にあたらない」と審議継続を訴えた。

※民主党という政党は、消費税増税法案の可決の時に、これくらいの剣幕で反対してほしかった。自公政権の安全保障関連法案の意義は、まさに安倍首相のいわれる通りでしょう。
 国家の主権と独立を守るため、国民の人権や生活、財産を守るために、激変する安全保障環境にあわせていかないとなりません。
 もうアメリカは世界の警察官をやってくれませんからね。

安全保障関連法案については、以下の論文のような視点も必要かと思います。



このままでは安保法案が新国立競技場の二の舞に?
コスト計算をせずになぜ議論ができるのか
北村 2015.7.23(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44358


日米同盟強化には国防予算削減に苦しむ米軍も期待している(海自と米海軍のP3哨戒機、写真:米海軍)

 新国立競技場の建設をめぐってコストの問題が顕在化し、結局は安倍首相の“英断”により新国立競技場デザインの白紙撤回という事態に立ち至ってしまった。この問題と安保法案(平和安全法制整備関連法案・国際平和支援法案)に関する議論とは、構造的な類似性がある。
 東京オリンピック開催決定後の201310月には、新国立競技場の建設費が3000億円に上ると報道された。しかし、124日には、自民・民主・維新・公明・みんな・生活・社民の超党派共同提案の「2020年東京五輪決議」内で「国立競技場の改築をはじめとする競技場など関連諸施設について、環境の保全に留意しつつ、着実に整備する」ことが衆議院文部科学委員会で採択された。しかしながら、国会での審議過程では、新国立競技場建設に関するコスト計算が議論された形跡がない。実際に国会での決議文にもコストが明示されていなかった。
 五輪決議と違って、安保法案に関する国会での審議は与党と野党の間で決定的な対立が生じているが、安保法案実施のためのコスト計算、すなわち国防費の裏付けに関する議論は、新国立競技場と同じく等閑視されている。

予算が捻出できなければ「絵に描いた餅」

 先日、衆議院を通過して参議院に送られた安保法案は、日本防衛にとって必要な安全保障システム、とりわけ日米同盟に関連する諸施策を整備し強化するために必要な法的環境を打ち出している。


このような法的環境は、ある意味ではオリンピック開催における競技場建設計画のようなものである。
 当然のことながら競技場がなければオリンピックはできない。また、せっかく建設するからには、理想的な姿の競技場デザインが求められる。しかしながら、いくら素晴らしいデザインの建設計画が打ち出されても、それを建設する費用が捻出できなければ、今回の新国立競技場の建設計画騒動のように白紙撤回に追い込まれてしまう。
 同様に、安全保障の法的環境が整っていなければ、民主主義国の防衛部門は行動することができない。そして、できるだけ多種多様な軍事的脅威に対処できるような理想的な姿の法令が必要とされる。同時に、どれだけ素晴らしい安保法案が制定されても、それを施工する予算が捻出できなければ、単なる「絵に描いた餅」になりかねない。

コスト計算の議論がない安保法案論戦

 衆議院における安保法案を巡る与野党の攻防過程を通して、極めて不自然だったのは、安保法案が成立して諸施策を実施するに際してのコスト計算に関する議論が不在であった点である。
 もちろん、法案成立を推進する政府与党は、法案を成立させた暁には、その実施のために必要な莫大な予算を確保する目論見を持っているはずである。そうでなければ、各種共同作戦を実施していくこととなるアメリカにおいて安倍首相がなした公約は、まさに「絵に描いた餅」であったことになる。
 一方、安保法案に反対する陣営は、法案審議を違憲性という形而上学的土俵に乗せてしまったり、あたかも法案が成立すると「戦争をする国」になるがごときプロパガンダを展開したり、法案とは直接関係のない「徴兵制の導入」といった議論を持ち出したりしている。しかし、そのわりには国会の責務であるべき安保法案施行に必要なコスト計算に関する徹底した議論を展開した形跡はない。


 このように、日本の国防政策にとって大転換点となる安保法案の国会審議において、少なくともこれまでの衆議院における審議において、法案成立によってどのような軍事行動が必要となる可能性があるのか? それらを実施するためにはどのような組織や装備が必要となるのか? といったプロジェクトマネジメントが等閑視されてしまっている。
 当然ながら、そのような議論が不在なため、安保法案に必要なコスト計算、すなわち必要な国防費の見積もりも議論されていないのだ。

安保法案に期待をかけるアメリカ

 アメリカ軍関係者で日米同盟に関与していたり関心が高い人々の多くは、安倍政権が実施しようとしている安全保障政策の大転換に関心を持っている。
 それは、安保法案の眼目である集団的自衛権の行使が、アメリカ軍との各種共同作戦の実施を推進させるものであると理解しているからである。そして、実際に米軍関係の作戦家たちなどの間では、さまざまな日米共同訓練の強化や、予想される各種共同軍事作戦などの青写真が論じられている。
 しかしながら一方で、とりわけ日本の政治状況に精通している戦略家などの間では、安保法案実施にとって必要となる国防費に関する議論が等閑視されている日本の国会の状況を不安に思っている人々も少なくない。
 現状では、9月下旬には安保法案が国会で可決されるであろう。そうすると、集団的自衛権の行使は名実ともに解禁となるし、各種多国籍軍への参加への道も開かれることになる。少なくとも、同盟軍であるアメリカ軍はそのように考える。
 そのアメリカ軍は、オバマ政権による大幅な国防予算削減のため、日本やオーストラリアから軍事的協力を最大限に引き出すことによって、中国に押されつつあるアジア地域におけるアメリカの軍事的優位性を保とうとしている。


したがって、アメリカ国防当局は自衛隊との共同訓練の質や量をますます強化しようとしている。また中国が猛威を振るいつつある南シナ海に対する自衛隊艦艇や哨戒機の常時展開を日本政府に提案することは必至である。同時に、アメリカ、日本、オーストラリアそれにフィリピンなどとの軍事的連携の強化も執拗に働きかけてくることは間違いない。
 このほかにも、現在も海上自衛隊艦艇や哨戒機が参加しているアラビア海方面における国際的海洋軍事協力活動への自衛隊のさらなる派兵も要求してくるであろう。そして、IS攻撃へのアメリカ軍の直接関与が強化された場合には、自衛隊による各種兵站作戦への協力を要請することも目に見えている。

議論にコストの見積もりは不可欠

 このような、さまざまな日米共同訓練、日米共同作戦、多国籍軍事活動などに自衛隊を送り出すには、現状の自衛隊の組織や規模では対応できないことは誰の目にも明らかである。当然のことながら、自衛隊の大幅な人員増加、あるいは抜本的な組織改編、それに必要な装備の調達などが必要になり、国防費の大増額が絶対的条件となるのである。
 安保法案の目的である日本の安全保障態勢の強化が現実のものとなるには、その法制が予定しているアメリカ軍や多国籍軍などに対する積極的な参加を実施することが大前提である。もちろん「口先だけ」や「カネだけ」の協力では話にならず、自衛隊部隊の出動が必要となる。
 そのような段階になってから、安保法案実施のための組織や装備を整備し維持するための国防予算が捻出できない、といった事態に立ち至った瞬間に、日米同盟は終結する。また、日本の国際的地位も地に墜ちる。


 このような事態に立ち至らないためにも、参議院での安保法案の審議は、コストの見積もり、すなわち国防予算に関する徹底した議論をリンクさせての建設的議論が求められているのである。


【関連リンク】~安全保障法案国会審議の背景~

東アジア黙示録

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