2015年5月6日水曜日

在沖縄アメリカ海兵隊の民生支援 ~「市民権」をかけた戦い~

【アメリカ軍の民生支援活動】

 イラク戦争後、アメリカ軍全体で軍の整理、削減が要求されるようになり、こうした動きに伴い各軍種で組織の生き残りを図るために新機軸が打ち出されるようになる。
 アメリカ海兵隊は、平時としての自己存在理由を示す、リソースをふりむけていくために災害支援活動、人道支援活動に積極的に取り組むようになる。


ロバート・D・エルドリッヂ氏(元在沖海兵隊基地総務外交部次長/政治学博士)

【アメリカ海兵隊の民生支援の意義と実情】

 沖縄の住民による協力により安定した基地の運用があり、それがアジア太平洋の安全安定につながり、結果的に沖縄の評価と地位向上につながる。
 海兵隊の戦闘継続力2週間を支える態勢になっている。
西太平洋地域の兵站機能の中心となっている沖縄の太平洋海兵隊基地司令部が、ARG(両用即応グループ)を構成(MEU+強襲揚陸艦)し支えている。
3海兵兵站群(司令部 キャンプキンザー)に第3歯科大隊
35戦闘兵站部隊に第3医療大隊
キャンプハンセン(中部訓練場)で人道支援活動をテーマにした訓練を行う。(31MEU
部族対立のある地域に国連の緊急援助物資を輸送する。
(沖合の強襲揚陸艦よりCH53で内陸へ空輸、対象地域にコンボイで輸送。)

【東日本大震災における民生支援】

平成23312日~412日の一カ月の間、食糧医療支援及びがれきの撤去作業に従事する。支援業務の指揮はキャンプ富士司令コゼニスキー大佐。(トモダチ作戦)
① 空輸作戦 ~航空法を遵守し、「機体の不備から食糧物資を緊急投下」する形をとる。
② 揚陸能力の発揮 ~気仙沼大島への支援活動。食糧の搬送、がれき撤去。陸自車両の搬送も行う。
③ 仙台空港の復旧 ~滑走路啓開作業をアメリカ陸軍、国交省、民間作業員と協力して行う。臨時の管制業務を行う。
 平成241月、気仙沼大島島民より第3海兵遠征軍司令官グラッグ中将に感謝状が贈呈され、今後も良好な関係を継続していくことを誓い合う。

【知られざるトモダチ作戦の軍事抑止力


 すべての日本人にとって忘れてはいけない平成23311日の東日本大震災の地震や津波の被害により、福島県の東京電力福島第一原子力発電所のすべての電源が喪失し、原子炉が炉心溶融をおこしました。
 この大事故のあった同じ月(3月)の下旬に、共産中国の人民解放軍の幹部の間である作戦が検討されていました。
 それは、東日本大震災や福島第一原発の事故による日本国内の混乱に乗じて、福島第一原発に弾道ミサイルを撃ち込み、日本全土に放射性物質を飛散させようというものでした。
 しかしアメリカ軍が事前にこれらの情報を察知して人民解放軍を牽制したことにより、共産中国による「恐怖の作戦」は最後まで強硬に攻撃中止に反対した軍幹部がいたにも関わらず不履行におわったということです。
 共産中国軍による福島原発への弾道ミサイル攻撃を断念させた抑止力とは何か?

 実はこれこそが、アメリカ海軍、海兵隊による災害人道支援「オペレーション・トモダチ」であったのです。
 震災直後から1ヶ月、米軍が東北において災害人道支援活動に従事したことにより、また第七艦隊の横須賀を母港とするジョージワシントンを中心とする空母打撃群が支援活動中、東シナ海にでて警戒していたことにより、アメリカと事を構えたくない共産中国は、我が国を攻撃することができなかったのです。

~『中国が沖縄を奪う日』幻冬舎ルネッサンス新書080 20138月 より抜粋要約~
 
その他の沖縄での民生支援

 沖縄に駐留するアメリカ海兵隊と沖縄の住民との関係の実際については、ネガティブな話(実際のの話も含めて)はまれである。多くの実情は「共存関係」にある。

① 沖縄に赴任する隊員には、沖縄の歴史、文化についての教育プログラムが組まれている。沖縄(地元)への配慮と敬意がある。
② 在日アメリカ海兵隊基地消防隊の活躍 ~ 県民生活に密着して生活を守る。
北谷町、嘉手納町、読谷村、うるま市、沖縄市、国頭村と在沖縄海兵隊との間で消防活動の上での相互支援協定を結んでいる。
 キャンプフォスター近くに本署(日本の主要各基地に9つのステーション、キャンプ富士)があり、200名ほどの職員のうち約9割は日本人。消防の装備はアメリカの基準。アメリカ海兵隊基地内の消火活動(化学火災、航空機火災)、急患搬送を実施している。
 基地外の火災にも対応出動は可能である。
③ 太平洋海兵隊基地司令部(キャンプバトラー)内に外交政策部を設置。
部長(大佐、司令官の対外政策アドバイザー)
次長(民間人、日本語に堪能である。民間交流プログラムに実績がある。)
基地渉外官(アメリカ人)
基地従業員(日本政府が雇用)

④ 民間交流事業/ 3海兵遠征軍司令部キャンプコートニー内。
月に数回、地元市民病院にて英会話教室開催。
 海兵隊員がボランティア活動として、日本の新聞を英訳してグループディスカッションを行う。日本語は禁止、話せる英語を学ぶ。

⑤ 民間交流事業
兵士の家族が個人的に英語を教える。

⑥ キャンプバトラー内 外交政策部職員の公募。
沖縄県内外の大学生を対象としたアメリカ海兵隊紹介セミナーの開催。
海兵隊員とのディスカッションあり。

⑦ 民間交流事業/名護市辺野古キャンプシュワブ
キャンプシュワブ自体が辺野古地区11班となっている。地域自治区のひとつが海兵隊基地になっている。
年に数回の辺野古地区のお祭りに海兵隊員が必ず参加する。
テントの組み立て、ゴミ清掃など力仕事で海兵隊員が活躍している。戦後の時期は食糧の配給も行っていた。辺野古地区住民の海兵隊への感謝の気持ちは大きい。

⑧ 天願川の清掃活動/キャンプコートニー近く
1個小隊の海兵隊員が地元住民と一緒に活動するミッション。
基地渉外官からの声かけによるボランティア活動。

⑨ 沖縄の海兵隊員のほとんどが、日本人への臓器移植提供を承諾する意思を表明した書類にサインしている。
 これのきっかけは、平成1211月にキャンプキンザー司令官であったパケット大佐が入浴中に脳梗塞で倒れ、北谷町キャンプレスター内の米海軍病院に搬送されるが脳死状態になり、家族が生前のパケット大佐の意思により、日本臓器移植ネットワークに臓器提供を申し入れた。
 大佐が心肺停止後に角膜と腎臓が摘出され、九州と沖縄の患者に提供される。
このパケット大佐の功績を記念して、キャンプキンザーのチャペル横に碑文が建立されている。(パケットパーク)

 以上とりあげた以外にも海兵隊の航空兵団のヘリが海難救助に活躍したり、沖縄本島以外の離島よりの患者搬送を行ったということもある。
これらを丁寧にみていくと粗暴で女性に乱暴ばかりする米兵という側面だけでは、説明できないことがよく理解できる。
また女性暴行事件報道の背景で、米兵と地元女性との結婚も少ないくないようである。
 考えてみれば沖縄は昭和204月にアメリカ軍により占領されて島の日本軍が降伏して以来、沖縄返還までの間アメリカ合衆国の統治下にあったわけである。
 施政権は我が国に返還されたといっても海兵隊基地をはじめとする軍事基地はアメリカが日米戦争により、我が国から獲得した軍事的権益といえる。
 沖縄県という一つの地域に日本とアメリカという二つの国家主権が存在するという特殊な事情にある中では、沖縄住民はアメリカ軍とは対立するよりも「協調」或いは「共存」を強いられることとなる。
 しかしこうした事態はそもそも日米戦争の沖縄戦において我が国守備隊が無条件降伏した時から生じていることであるし、戦後の沖縄の住民による「日本本土復帰運動」は、ついに沖縄の施政権返還という形で実を結んだ、いわば「非暴力の戦い」がアメリカに対して勝利することができたことで実現できたことであれば沖縄の住民にとっては価値のある「協調」であり「共存」であろう。
 新型輸送機オスプレイの配備反対問題、沖縄市や宜野湾市の風俗街摘発、そして普天間基地移設にしても政治的な主義主張にとらわれなければ、ともに沖縄県の住民として「協調」をはかることにより相互理解が深められるとはいえないだろうか。

 沖縄での女性や子供に対する性暴力、暴力犯罪については、海兵隊をはじめ四軍全体に綱紀粛正を厳にしていただきたいところではあるが、例えば日米地位協定の改定、強化、海兵隊の夜間の外出禁止措置、また最近は夜間の飲酒も禁止状態であると聞くが、こうした法的な措置だけでは、厳しいトレーニングと前線での戦闘からくる不安や恐れからくるであろう多くのストレスの解消につながるとはとうてい思えない。

 海兵隊をはじめとする在日米軍が我が国との軍事同盟関係以上に、日本人と理解しあい協力していけるという関係構築がなされていかなければならない。


そのためにも一部沖縄日本人や彼らを扇動するリベラル思想の方がたは自らの保身のためだけの政治運動は一切やめて、沖縄の子供たちが将来アメリカ軍と力をあわせて沖縄を狙っているといわれる中共から故郷を守っていけるよう愛郷心を育むことが今後ますます不可欠な要素になるのである。

【関連リンク】

殴りこみ部隊だけじゃない!アメリカ海兵隊の災害救助訓練とは何か?
アメリカ海兵隊&海軍がめざす「立体的上陸作戦」について
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