2015年5月11日月曜日

日米同盟を考える

戦争になったらアメリカが守ってくれるんでしょう。」
現代日本のメディアを通じて、また身近な場面でよく聞かれるフレーズである。

20109月に起きた尖閣諸島沖合での中国漁船による海保巡視船への衝突事件の際にアメリカ国務長官であるヒラリー・クリントン氏は、尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用範囲であるとし、日本の防衛意思をあらためて表明した。
 法的根拠となった日米安全保障条約第5条の条文の中では、「各締約国(日米)は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」
 とされるものであり、中国の民間漁船による衝突事件といえども第5条の規定にある「武力攻撃」とみなし、日米が「共通の危険」(さらなる中国側からの攻撃)に対処していくことを明確にしたものと考えられる。

 第5条の規定を受けて次の第6条においては、
 「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」
 とされアメリカ軍が我が国の「安全に寄与」し、「極東における国際の平和」及び「安全の維持に寄与する」ために我が国国内の「施設及び区域」を「使用することを許される」とし、この第6条を根拠にして在日米軍は沖縄本島をはじめ我が国各地に軍事基地を維持している。
 すなわち我が国や北東アジアの平和と安全のためにアメリカ軍は日本列島や南西諸島の土地と施設を使用できるということが日米安保条約の基本的な理念といえる。そして我が国政府はこの駐留アメリカ軍の駐留費用も負担しているから一見すると極めてアメリカ有利な片務的な条約のようにみえるが、アメリカ軍の北東アジアでの軍事プレゼンスを担保することになっているから、アメリカが北東アジアの防衛義務を負うという意味で双務的な同盟関係が成立しているといえる。

 そもそも我が国国内のアメリカ軍駐留が始まった背景には、第二次大戦における日米戦争により我が国がポツダム宣言を受諾し、武力行使を放棄、実質敗戦を受け入れたことによりアメリカ占領体制下での基地、演習場の整備が行われたことがある。
 戦争は外交の一手段であり、アメリカは武力により我が国に対し外交的要求を受け入れさせたわけである。つまりそこでアメリカが我が国に対して得た領土の権利は正当な権利であり、合法的な手続きで獲得した権利といえる。
 すなわち日米戦争でアメリカが我が国から獲得した領土の権利を軍事的な利権に限り、未来永劫担保できるような内容が日米安全保障条約であるといえる。日米同盟は双務的な「軍事同盟」である。この点は確実にふまえておかなければならない。
 平成218月の総選挙で民主党政権が誕生し、鳩山首相は自公連立政権時代に日米のトップ同士の会談で移設が決定していた沖縄のアメリカ海兵隊普天間基地の移設に関して「国外移設、最低でも県外」との方針を打ち出し、日米の信頼関係を損ねるような外交を展開してしまったが、そもそも普天間基地自体は日米戦争の沖縄戦の折にアメリカ軍がきたるべき我が国本土決戦用の基地として建設したことにより存在しているのであり、それが可能であった背景は「沖縄がアメリカに軍事占領された。」我が国の軍隊も官民あわせて沖縄を死守せんと奮闘し、九州四国への米軍上陸を阻止するに至ったが、無念にも「沖縄の領土主権をアメリカに奪われた。」ことによるものである。
 ということは沖縄本島におかれている普天間基地をはじめ多くの米軍基地はアメリカが多くの同胞の血の代償として勝ち取った軍事的権益であり、施政権が我が国に返還されてもアメリカの北東アジアの戦略上手放すことのできない拠点であるということである。
 いったん外国に占拠された国土はまず返還されることはないのが国際的な常識であることを考えると沖縄の施政権を返還してでも軍事的利権を守ろうとするアメリカの姿勢は沖縄や日本列島がどれだけアメリカにとって軍事的に重要な地域かを雄弁に示すものである。

 ちなみに海兵隊の普天間基地は、海兵隊が沖縄からインドネシア、バングラデシュ、アフガンやイラクへ出動するエアブリッジの起点となる基地である。そうした最重要基地の移設にアメリカ側が応じたこと自体が、日米のトップ会談での成果であり、アメリカが前方展開拠点としての沖縄の軍事的重要性にいかに認識しているか、沖縄の住民感情、日本国民の対米感情にいかに神経をとがらせているかが伺えるのである。
 さらに平成5年の日米安保共同宣言により、日米同盟がアジア太平洋地域の安定維持に不可欠の要素であることが確認され、我が国の防衛協力がさらに求められるようになり、近年アメリカ海兵隊と我が国陸上自衛隊との共同演習が盛んに行われる点をみても単に日米軍事関係が占領・被占領の関係ではなく、我が国自衛隊をはっきりと「ある意味対等な軍事パートナー」として認識していると感じられるのである。
 最後にアメリカ海兵隊シュタルダー中将の言についてみていくことでアメリカ軍の我が国駐留の意義について考えてみたい。

① 「我々海兵隊は、日本を防衛するために駐留しています。」
② 「我々(海兵隊)もまた日本の防衛を誓っている。」
③ 「日本防衛のために喜んで命を捧げるつもりだ。」
④ 「日本のために命を捧げようという若き海兵隊員たちもいるのです。」

まず、①~④の項目で「日本を防衛」「日本のために命を捧げる」という文言がみられるが、これをアメリカ軍が日本の国家主権を防衛する、日本人の生命財産を守ることに命をかける、と解釈するともう我が国は独立国家ではない。完全にアメリカ合衆国の保護国である。
 「日本を防衛」の意味がおそらくよくわかっているのだろうから、海兵隊司令官に限らず在日米軍の関係者は日本の国家主権を守るとか日本人の生命財産を守る、とはいわないだろう。
もしこの海兵隊中将の発言が「日本の国家主権の防衛」だとすると、④の項目などは、なぜ外国人であるアメリカ海兵隊員が日本国家防衛に命を捧げるのかという疑問すらわいてくる。
ではこのシュタルダー中将の「日本の防衛」の意味はどういうものであろうか。
 これを理解するのは、先にとりあげた在日米軍基地はアメリカが日米戦争で我が国から獲得した軍事的権益という点から理解されていなければならない。
 すなわちこの海兵隊のシュタルダー中将をはじめアメリカ軍の軍人たちがいうところの「日本の防衛」は「日本国内に存在するアメリカ合衆国の既得権益の防衛」という意味である。何のことはない、アメリカ軍の兵士はやはり自分たちの国の権益が担保されている日本を守る、日本国家を命がけで防衛するのではなく自国であるアメリカの国益の防衛に命を捧げているという意味なのである。
 では我が国の国益、権益を防衛するのはだれかといえば、いうまでもなく陸海空の自衛隊であり、広義に考えれば日本国民である。
 北東アジア全体に軍事プレゼンスを発揮する在日米軍と第七艦隊の力を借りながら組織的効率的に自衛隊の力を高めていかなければならない。なぜなら北にロシアが存在し、西に経済成長著しい中華人民共和国が存在し覇権拡張主義政策を取り続ける限り地域間での防衛を一国のみで行うことが非効率になってきているからである。
 自らの国は自らの手で守る、この自主防衛の気概がベースにあって日米同盟や多国間における防衛連携がうまく機能するのである。外国人に自国の防衛をまかせてよしとするような国は独立国ではないし、合理主義のアメリカがそんな国と同盟関係を構築するとはとても考えられない。
(http://www.ryunosuke-megumi.com/article/14517721.htmlより)

 アメリカにとって日本列島及び南西諸島は自国防衛の最前線であり、部隊をトレーニング、待機させておくのに都合のいい前方展開拠点としての意味づけを持つ。
 我々日本人はいつまでも「敗戦国」としての国民意識に縛られていると国際外交の意義を見誤る。冒頭のあげたような戦争になればアメリカが守ってくれる、という感覚自体を平気でいえるような風潮自体は是正しなければならないだろう。
 そのためには義務教育段階、或いは家庭教育の段階から国体とはどういうものか、国家とは何か、軍隊とは戦争とはどういう意義をもつかについて認識させていくことが不可欠である。

【日米首脳会談】平和構築に同盟強化で一致~共同声明を発表~新指針「日本がより大きな役割」
2015.4.29 01:50更新 http://www.sankei.com/politics/news/150429/plt1504290004-n1.html

【ワシントン=峯匡孝】安倍晋三首相は2015年4月28日午前(日本時間同日深夜)、オバマ米大統領とワシントンのホワイトハウスで会談した。自衛隊と米軍の新たな役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定を踏まえ、東アジアで軍事的緊張を高める中国をにらんだ連携と、強固な同盟関係を確認。両首脳は、アジア太平洋地域や世界の平和構築に向けた関係強化で一致した。会談に合わせ、戦後70年の節目に「新時代の同盟関係」を掲げた共同声明を発表した。

 会談後の共同記者会見で、オバマ氏は新指針について「より柔軟性を高めるものだ。日本がより大きな責任を果たす」と評価した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜)野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設を推進する方針に関し「より柔軟に対応する」と表明した。オバマ氏は沖縄県の尖閣諸島が米国による日本防衛義務を定めた日米安保条約5条の適用対象だと改めて確認。北朝鮮による日本人拉致被害者問題に対する日本の対応については支持するとした。首相は慰安婦問題について「非常に心が痛む」と述べ、河野洋平官房長官談話を継承する考えを示した。

 声明では、戦後70年の日米関係を「和解の力を示す模範」とし、ルールに基づく国際秩序の構築に寄与してきたと評価した。ガイドラインについては「海洋安全保障を含む事項についてより緊密な形で取り組む」と明記。同時に、中国などを念頭に「力や強制により一方的に現状変更を試みることで主権や領土一体性の尊重を損なう国家の行動は国際秩序への挑戦」と強調した。
 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の日米協議が最終局面を迎えていることを踏まえ、早期妥結への連携を確認した。

<参考文献>
『写真でみるトモダチ作戦』 北村淳編著 並木書房 2011.6


MAMOR2009/5月号日米安保はどう変わるか


軍事的意味はない? でも意義がある米海兵隊の沖縄駐留
THE PAGE 2015/4/24 14:00 http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150424-00000004-wordleaf-nb


 普天間飛行場及び在沖海兵隊の移設問題は、安倍晋三首相と沖縄・翁長雄志知事が会談しても、一向に両者の対立が解ける様子はありません。翁長知事は、自ら訪米し、直接アメリカにアプローチする意向も示しています。
 「ありとあらゆる手段を使って、日米同盟、日米安保体制の安定のためにも辺野古基地はつくってはいけないと。そういったことを踏まえ、訪米もその一環となる。色々やっていきたいと思う」
 この発言は、辺野古に基地を作れば、日米安保を脅かすぞ、というブラフ(脅迫)にも聞えますが、翁長知事がそこまでして辺野古への移設に反対していても、なぜ政府は、普天間基地の県外移設を否定するのでしょうか。

「政治的に最適」の別の見方

 政府が県外移設を否定する理由は、201212月に、森元防衛大臣(当時)が「軍事的には沖縄でなくてもよいが、『政治的』に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べたことに端的に表われています。
 一部メディアは、この発言を、沖縄ならば海兵隊を押しつけることが政治的に可能だという意味と解釈していますが、異なる見方も可能です。ポイントは、在沖海兵隊がどこで作戦行動するための、どのような性格の部隊かという点にあります。
 在沖海兵隊の存在意義は、歴史的には変遷していますが、現在では、中国による台湾侵攻に備えるという性格が強くなっています。

 1996年に発生した台湾海峡ミサイル危機以後、中国の判断は、軍事行動は適切ではないという認識になっているようですが、今まで3回発生している台湾海峡危機が再び発生し、第4次台湾海峡危機が起きないとは限りません。台湾海峡ミサイル危機が、アメリカの介入により阻止されたことを考えれば、アメリカが介入しなければ、危機は再び起こるとも言えます。
 中国が、本格的に台湾侵攻を企てた場合、在沖の海兵隊では、数的にも質的にも不足だとする軍事専門家も、数多く存在します。主力である第3海兵師団の構成部隊は、ローテーション配備される部隊が大半ですし、総兵力でも17千に過ぎません。装備も、オスプレイで台湾に移動できる程度では、極めて軽装備となります。空爆や弾道ミサイル攻撃、それに揚陸部隊が機甲戦力を投入して来た場合には、死者を増やす結果にしかならないかもしれません。しかしそれでも、ある意味、それだからこそ、在沖海兵隊を台湾に投入する意義があります。

台湾に海兵隊を投入する意味

 在沖海兵隊は、台湾有事が生起した場合に、素早く台湾に投入することで、中国による攻撃の結果、アメリカ兵が死傷することがあれば、アメリカ政府として見過ごすことはできないという、アメリカの覚悟を見せるための部隊です。

 そうした”政治的”役割だけでなく、もちろん軍事的にも意味はあります。現代で言えばパラシュートによって敵の前線部隊の後方に降下する空挺部隊、戦国時代で言えば、出城の守備兵のようなものです。
 戦国時代、侵攻軍が出城を落とそうとすれば、落とすことは可能ですが、それなりに時間がかかるため、出城を攻めていれば、主目標である城は防備を固めてしまいます。それに、他国から援軍がくるかもしれません。第2次上田合戦において、真田昌幸・信繁(幸村)親子が、徳川秀忠を足止めし、結果的に関ヶ原の戦いに遅参させたのは、同じような用兵の例です。
 空挺部隊も同じように使われることがあります。囲碁で言うところの放り込みと同じで、敵の勢力圏に石を放り込むことで、放り込んだ石の処理をするか、前線強化を優先して放り込んだ石の生きを許してしまうかの二択を強要します。放り込みの石と同じですから、最初から捨て石となる可能性があります。
 海兵隊では、そうした精神的な事も考慮しているためか、在沖海兵隊は、ほとんどがローテーション配備です。これは、新撰組における死番制度と同じです。人間、常に死ぬことを要求される事には耐えられませんが、たまたま運が悪く死ぬ番にあたるなら、士気の維持ができるからです。ローテーション配備を、単なる国外勤務の負担軽減と見るのは、間違っています。
軍事的には沖縄以外も可能
 本来なら、こうした役割を負うためには、出城の守備兵と同じで、台湾に常駐させることが望ましいと言えます。しかし、中国が2次大戦における連合国であることなどもあり、アメリカは台湾に直接戦力を置けません。アメリカは、これを補うため、1979年に事実上の米台軍事同盟である台湾関係法を制定し、台湾に対するコミットメントを示していますが、法律ではなく、実際の戦力の「プレゼンス」として存在しているのが在沖海兵隊です。

 台湾に置けないため、最も近い沖縄に配備しているものの、日米同盟による在日米軍に対して、在日米軍人質論が存在するのと同じように、在沖海兵隊は、台湾にとっての人質という訳です。
 軍事的には、台湾に迅速に投入できれば、どこであっても構いません。ヘリがオスプレイに変わったことで、沖縄ではなく、奄美や佐世保近辺であっても迅速な投入は可能となりました。そのため、海兵隊の所在地は、軍事的には奄美や佐世保であっても、この役割を遂行させることは可能です。ただし、沖縄本島からであれば、オスプレイは無給油で往復が可能なため、軍事的にもベストであることは変わりません。
 ですが、在沖海兵隊は、アメリカの台湾に対する、「我々はあなたを見捨てない」というメッセージ(プレゼンス)ですから、「政治的」に近い方が好ましいのです。

 地理的には、フィリピンのルソン島でも構いませんが、フィリピンは沖縄以上に反米感情が強く、それが故に1991年にスービック海軍基地を閉鎖し、アメリカが撤退した経緯がありますので、再度フィリピンに駐留させることは、南沙問題があるにせよ、普天間を辺野古に移転させる以上に困難です。

県外移設にこだわるならば

 翁長知事が、海兵隊を、こうした意義を持つ部隊であることを承知しているかどうかは分かりません。
 ですが、もし認識されているのだとしたら、海兵隊を沖縄から追い出すためには、アメリカの民主党支持者に多い台湾放棄論を盛り上げるように運動するべきです。アメリカが、台湾への肩入れを止めるならば、沖縄に海兵隊を置いておく必要はありません。国外への兵の駐留は、アメリカにとっても負担ですから、当然に撤退することになるででしょう。
 ただし、その結果、台湾が中国に取り込まれた後、沖縄がどうすべきかも考えておく必要があります。その時は、沖縄が最前線ですが、アメリカが人質を置いてくれるかどうかは分かりません。台湾放棄論が出るのですから、日本政府がどう考えたところで、アメリカで沖縄放棄論が出ることも考慮しておくべきです。


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